2007/08/01 Wednesday
2007/08/01(Wed)
この農業情報研究所さんのサイト「アイルランド 農業所得の98%が補助金 輸入増大で牛・羊農家は大赤字」にかかれているアイルランドの農家の家計の実態は、2006年ナショナル・ファーム・サーベイによれば、アイルランド農民の農産物販売年平均収入はたったの334ユーロ(1ユーロ=150円で換算して5万円余り)、1日あたり1ユーロにもならず、収入の98%までがEUからの直接支払だったという。
農村環境保護計画(REPS)による直接支払の帰結は、REPSに参加している農家の農業所得が、REPS不参加農家平均よりも13%高い17.713ユーロの平均農業所得を得ていたという結果となっているようだ。
つまりは、直接支払いによる農家の措置化は、決して、農業所得の増加には結びつかず、農家・農民を、産業ではなく、単なる農村空間管理のための偽装公務員化に向かわせるに資するに過ぎなかったという帰結を示している。
もし、日本の戸別所得補償制度の帰結が、このようなものに終わるのであるのなら、日本の真の農業改革者たちは、決して、このような屈辱への道は選ばないはずだ。
追記-「農業者戸別所得補償法案(仮称)」という名称になったようだ。
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2007/07/18 Wednesday
2007/07/18(Wed)
WTO交渉で、ファルコナー交渉議長から、「細目合意」の草案(モダリティー合意案)(「Agriculture text」)が提示された。
現物は、このサイト
WTO: Revised draft modalities
にあるが、まだ、詳しくは、見ていない。
内容は、
1.高関税を維持しうる「重要品目」について、特定の条件の下では、全関税化品目数の最大4または6%に制限
(日本の主張は、重要品目数を最大15%まで確保すべきと、主張、このファルコナー案に従えば、、日本の重要品目は約40品目または約60品目程度にとどまり、日本が重要とする品目である、コメ17、小麦20、乳製品47、砂糖56など200品目を大きく下回る。)
2.上限関税の制度は盛り込まれなかった。
関税が100%を超える農産品が全体(有税品目)の5%を上回った場合、低関税輸入枠を拡大する。
(日本は、上限関税制度に反対)
3.国内補助金の削減策は、第二階層では、66%または73%の削減を規定。
これを米国についてみると、支出上限は、年間130億ドルから164億ドルに制限
4.、鉱工業製品については、途上国に対しては平均12%までの関税引き下げを規定
(日米欧は、途上国の関税率を平均で10%程度まで下げるよう求めていた。ここの部分は、ステファンソン鉱工業品交渉議長担当分「the Non Agricultural Market Access (NAMA) text 」)
以上が、今回ファルコナー交渉議長から提示されたモダリティー合意案であるが、WTOは、議長提案をもとに、9月以降、本格的な交渉に入る予定だ。
なお、原文をAMSの削減率関係と青の政策についてのみ、ざっと見た限りでは、次のような内容のようである。
1.AMSの削減率について
いわゆる階層(tiered formula)スキームだが、
Overall Trade-Distorting Domestic Support(貿易歪曲的国内支持全体の削減)については、
1.AMSが600億ドル以上は、75-85%削減
2.AMSが100億ドル以上は、66-73%削減
3.AMSが100億ドル以下は、50-60%削減
Final Bound Total AMS(助成合計総量の最終譲許-約束-水準)については、
1.AMSが400億ドル以上は、70%削減
2.AMSが150億ドル以上は、60%削減
3.AMSが150億ドル以下は、45%削減
ということで、これを一昨年のラミー提案と比較すると。
ラミー提案では、
削減率70-83%をthe top tier
削減率60-70%をthe middle tier、
削減率37-60%をthe bottom tier、
として、ほぼ変わらないが、金額ベースを提示したことで、
AMSが
EU 671.59億ユーロ(925億ドル)
アメリカ 191.03億ドル
日本 3兆9729億円(325億ドル)
とすれば、
EUは、the top tier
アメリカは、the middle tier
日本は、the middle tier
ということになりそうだ。
2.青の政策(Blue Box)について
ウルグアイラウンドでのURUGUAY ROUND AGREEMENT Agreement on Agriculture (AOA)規定のArticle 6.5適用については、次の通り
Article 6.5に基づく青の政策適用については、基準期間での農業生産の平均総価格の2.5%以内とする。
すでに青の政策適用分については、基準期間での40%分が、AMS削減分としてカウントされる。
Article 6.5に基づく支持価格値は、1995年から2000年の間での平均支持価格値を超えることはできない。
以下略
以上が、ざっと見た、今回のファルコナー交渉議長案の概要だ。
現在、参議院議員選挙で民主党のマニフェストにうたっている戸別所得補償制度なるもののスキームが、これらのWTOの現在の動きと、いかにかけ離れたノー天気なスキームであるかは、上記のファルコナー提案内容からもわかるであろう。
参考1.
重要品目について
各国は、WTOにおいて、譲許表(国別約束表)(schedule of tariff concessions)を提出している。
各国がWTOにおいて約束している譲許表(国別約束表)は、このサイト「Current Situation of Schedules of WTO Members」において、見ることができる。
このサイトの中の「Annex Situation of Schedules of Concessions in Goods」の表のリンクをクリックすれば、各国の タリフライン(tariff line)=譲許表に掲載されている関税分類品目のこと=がわかる。
日本の譲許表は、「関税及び貿易に関する一般協定に附属する第三十八表」(Schedule XXXVIII – Japan, G/MA/TAR/RS/57)とされる。
他の国のスケジュールナンバーについては、こちらのサイト「GENERAL AGREEMENT ON TARIFFS AND TRADE」をご参照
(これらの加盟国の資料については、データベース「Integrated Data Base (IDB) and Consolidated Tariff Schedules Data Base (CTS)」-有料-がある。 )
たとえば、日本の米についてみれば、米といっても、関税番号(HS Numbers)によって、下記のように分けられており、「もみ、玄米、精米、砕米、ひき割りした米、米のペレット、ベーカリー製品製造用混合物、米調整品等」の17の区分がある。
HS Numbers Commodity
1006 Rice
1006.10 Rice in the husk
1006.20 Husked (brown) rice
1006.30 Semi-milled or wholly milled rice
1006.40 Broken rice
このHS Numbersをさらに細分化し、統計品目番号の9桁で見ると、次のようになる。
1006 RICE:
1006.10 -Rice in the husk
1006.10.00 T - Rice in the husk (paddy or rough)
1006.20 - Husked (brown) rice:
1006.20.10T — Long grain
1006.20.20T — Short; medium grain
1006.30 - Semi-milled or wholly milled rice, whether or not polished or glazed:
1006.30.25T — Whole long grain– Whole short and medium grain rice:
1006.30.31T — Vitamin enriched
1006.30.39T— Other
1006.40
1006.40.00T - Broken rice
参照
http://www.abs.gov.au/ausstats/abs@.nsf/
66f306f503e529a5ca25697e0017661f/FD2542A0787D05DBCA
256B2100000139?opendocument
日本の場合は、タリフ・ラインは、合計1326品目(うち有税タリフライン1024品目)あり、内訳は、コメ17、小麦20、砂糖56、乳製品47などである。(上記の統計品目番号の9桁で見ると、品目の数は、もっと大きくなる。)
ちなみに、EUのタリフラインは、2,726 品目、アメリカのタリフラインは、1,779品目であり、カナダは、1,429 品目である。
参照「Third World exports still face major tariff barriers 」
これらのタリフ・ラインのうち、各国は、市場アクセス上で高関税を維持しうるセンシティブな品目として、それぞれ重要品目(Sensitive Products または、import-sensitive tariff lines または、Unbound Tariff Lines)を想定している。
今回のファルコナー交渉議長からの、「細目合意」の草案(モダリティー合意案)での提案内容「高関税を維持しうる「重要品目」について、特定の条件の下では、全関税化品目数の最大4または6%に制限」に日本が従うとなると、「日本のタリフ・ラインの合計1326品目のうち有税タリフライン1024品目×4%または6%」ということになり、高関税を維持しうる日本の重要品目は、「40または61」ということになる。
参考2
「URUGUAY ROUND AGREEMENT Agreement on Agriculture (AOA)」
Part IV: Article 6
Domestic Support Commitments
5. (a) Direct payments under production-limiting programmes shall not be subject to the commitment to reduce domestic support if:
(i) such payments are based on fixed area and yields; or
(ii) such payments are made on 85 per cent or less of the base level of production; or
(iii) livestock payments are made on a fixed number of head.
(b) The exemption from the reduction commitment for direct payments meeting the above criteria shall be reflected by the exclusion of the value of those direct payments in a Member’s calculation of its Current Total AMS.
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2007/07/15 Sunday
2007/07/15(Sun)
ある民主党参議院議員候補者のブログの中に、次のような気になる表現があります。(キャッシュは、こちら)
「民主党案の戸別所得補償がWTO上の「黄色の政策」と認定されたとしても日本は削除すべき助成措置を約束水準の19%、7448億円まで下げているので、結果として3兆9929億円までの範囲であれば、WTO違反とはならないのです。いかに自民党によるバラマキだ!WTO違反だ!が正しくないのかわかります。」
まあ、私のブログ
「民主党さん。戸別所得補償制度創設は、マニフェストから削除した方がよろしいですよ。」
「小沢民主党が掲げる個別(戸別)所得補償制度は、貿易歪曲的補助金ではないのか?」
などで指摘している「民主党のマニフェストに掲げている個別(戸別)所得補償制度は、WTO違反ではないのか?」との指摘に対する反論とも受けとられる文面なのですが。
ここでおっしゃっている「約束水準」というのは、
総合AMS(助成合計量=�_然併抻�相当額+�∈鏝座仂殃篏�金額)の全品目の総計 Total Aggregate Measurement of Support )
の削減目標のことで、
総合AMSは
EU 671.59億ユーロ(2001年時点で、約束水準の64%まで削減))
アメリカ 191.03億ドル(2001年時点で、約束水準の75%まで削減)
日本 3兆9729億円(2002年時点で、約束水準の18%まで削減)
参考「WTO農業交渉の状況」
(注−削減率37-60%をthe bottom tier、削減率60-70%をthe middle tier、削減率70-83%をthe top tierとしている。tierは階層という意味。日本とアメリカは、the middle tier、EUはthe top tierとされている。)
となっています。
参照
国内支持に関する日本のモダリティ案
(支持水準)
(1) 協定上削減を免除されるものを除くすべての国内支持を対象に、総合AMSによる約束を行う。
(2) 約束は、URにおける最終譲許水準を基準に、実施期間の間、毎年均等に行い、実施期間の最終年度に基準のX%削減値で譲許する。Xは今次交渉で合意される率とする。
「WTO AMS」
「Aggregate Measurement of Support (AMS) ceilings by country」
「CURRENT WTO NEGOTIATIONS ON DOMESTIC SUBSIDIES IN
AGRICULTURE: IMPLICATIONS FOR INDIA」
この数字は、デミニミス(De Minimis)(品目を特定していない国内支持で、全ての農業生産額の5%以下の国内助成であれば、WTOの削減対象から除外される。)を含む黄色の政策(amber box)の合計です。
これを、2002年までに、アメリカは、約束水準の75%までに、EUは、約束水準の64パーセントまでに、日本は、約束水準の18%までに、縮小してきている。
ということです。
アメリカの次なる削減目標は、AMSの60%まで、ということらしいです。
ですから、上記の参議院候補者のブログでいわれる「7448億円まで下げているので」というのは、「日本の総合AMS3兆9729億円×削減率」の数値です。
ここまでは、よろしいでしょう。
問題は、次からです。
「結果として3兆9929億円までの範囲であれば、WTO違反とはならないのです。」
ええっ?
です。
つまり、この主張ですと、いったい、今、何で苦労してドーハラウンドを各国でまとめようとしているのか、その根底を否定する発言となってしまいますね。
つまり、この主張ですと、
「削減対象となっている総合AMS全体額が、既得権として、黄色の政策分として、WTO違反とはならないで、認知される。
日本は、これまで、せっかく削減した総合AMS分についても、黄色の政策分として復活させて使っても、WTO違反とはならないで、余力として使える」
っていう主張になってしまいますね。
とても、農林水産省出身の参議院議員候補者とはいえない、乱暴な主張ですね。
ちなみに、さらに付け加えれば、一昨年12月18日の香港でのWTOでの最終合意閣僚宣言では、
「青の政策部分と、デミニミス部分の合計が、全体のAMSの削減額よりも、多くなることはできない」
としていますね。
閣僚宣言の原文は、下記の通りです。
「The overall reduction in trade-distorting domestic support will still need to be made even if the sum of the reductions in Final Bound Total AMS, de minimis and Blue Box payments would otherwise be less than that overall reduction. 」
(貿易歪曲的国内支持全体の削減は、助成合計総量の最終譲許水準、デミニミス及び青の政策の削減の合計の方が全体の削減より小さくても行われる必要がある)
参考 「財務省仮訳 ドーハ作業計画閣僚宣言案」
ここの部分の解釈について、このICTSDのサイト「LAMY SETS END-JUNE DEADLINE FOR AG, NAMA MODALITIES」では、次のようにいっていますね。
「この宣言部分は、WTO加盟諸国が、実際の農業補助減額金額をすくなくするために、異なったカテゴリーの元で、既存の補助金を分類し直す(reclassify subsidies)ことを、困難にさせるためのものである。」
(This was an attempt to make it harder for Members to reclassify subsidies under different categories in order to minimise actual reductions.)
このように、閣僚宣言のここの部分の意味のひとつは、「削減した金額は、青の政策部分と、デミニミス部分にのみ、回すことができる、」という意味ですね。
さらに、もうひとつの意味は、「青の政策」として、黄色まがいの政策を夜陰に乗じて、紛れ込まそうとする各国の動きに対しても、「青の政策はAMSの削減分だけですよ」と強調することで、これらのグレーゾーンへの国内政策の駆け込みシフトをも、この宣言で、牽制しているのですね。
以上を整理しますと、次のようになるでしょう。
1.個別(戸別)所得補償制度が、黄色の政策であるとしたら、日本のこれまでのAMSの削減額如何にかかわらず、WTO違反である。
2.たとえ、仮に、個別(戸別)所得補償制度が、青の政策として認められたら、これまでの日本のAMSの削減額までは、認められる。
3.しかし、個別(戸別)所得補償制度が生産制限的でない限り、青の政策として認められることは、ない。
4.従って、個別(戸別)所得補償制度(「農業者戸別所得補償法案(仮称)」)が、現在の非生産制限的スキームである限り、WTO違反である。
以上にみたように、個別(戸別)所得補償制度というスキームの最大の欠陥は、とかく自民党筋からいわれている財源問題以前に、「生産制限的でない」という点にあり、この点がWTO違反となる理由である、ということです。
参考
「WTO交渉の枠組み・モダリティ関連」
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2007/07/10 Tuesday
2007/07/10(Tue)
民主党の掲げる個別(戸別)所得補償制度の問題点については、昨年秋に、ブログ記事「小沢民主党が掲げる個別(戸別)所得補償制度は、貿易歪曲的補助金ではないのか?」で、問題点を詳細に指摘したとおりであるが、昨日発表された民主党のマニフェストには、懲りずに、その創設をマニフェストとして掲げてあるのには、いささか、あきれた。
つまり、この政策スキームは、限りなくWTO違反のスキームであるからである。
アメリカが、現在の黄色の政策のスキームを、新青の政策として、すり抜けようとしているのと、おなじ、問題点を、このスキームは抱えているからだ。
WTO違反が明確な貿易歪曲的政策を、野党といえども、マニフェストとして掲げるのは、いかがなものであろうか。
そして、これらの新青の政策が入った、肝心の、アメリカの「2007年農業法」の審議であるが、ここにきて、米議会審議での膠着状態が続いている。
これは、ブッシュ大統領が、この6月末で、ファストトラック権限を失ったこと、ドーハラウンドが、インド・ブラジルの反対で、膠着状況に再び陥ったこと、などが、影響しているものと見られる。
そんな中で、この際、2007年農業法の成立は、新大統領選出以後に繰り下げ、当面は、現在の2002年農業法の延長ですまそうという動きが出てきたようだ。
このことは、コンプライアンス違反が明確な、黄色の政策を新青の政策と言いくるめる無理なスキームの入った2007年農業法は、ドーハラウンドの決着や帰趨を見てから、という考えにたったものなのだろう。
そのような国際的な動きから見ても、今回の民主党の戸別所得補償制度創設主張は、あまりに、無責任な政策主張といえそうだ。
以前のブログ「小沢民主党が掲げる個別(戸別)所得補償制度は、貿易歪曲的補助金ではないのか?」にも書いたように、本来は、政府の経営所得安定対策の「品目横断的経営安定対策」における『黄色い政策』度を、WTOコンプライアンスの観点から検証し、批判し、是正を促すべき民主党が、生産制限的でなく、政府・与党案よりも、より『黄色い政策』度の高い『個別(戸別)所得補償制度』案を持って対抗するという構図には、いかに選挙目当ての政策といえども、問題が多いと思われる。
いま必要なのは、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立と思われる。
繰り返しになるが、もし、民主党がアメリカの農業政策を参考にしうるとすれば、WTOの流れから逸脱しかねない、このような旧態依然とした所得補償政策によるのではなく、同じアメリカの民主党のケリーが、三年前の大統領選挙でしめした「ルーラル・アメリカ強化プラン」によるべきなのではなかろうか。
つまりは、ダイバーシフィケーション政策をも含む、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立ということになる。
参考
「Johanns Says Progress Being Made on Farm Bill」
追記-「農業者戸別所得補償法案(仮称)」という名称になったようだ。
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2007/06/04 Monday
2007/06/04(Mon)
今月末で、ブッシュ大統領のファストトラック権限が喪失するのを機に、先週木曜日、ブッシュ大統領は、下院議長のナンシィ・ぺロシ氏(民主党)をはじめ、民主党議員らと、以下の合意に取り付けた。
すなわち、今後の労働・環境問題にかかわる、いくつかの貿易関連事項については、民主党は、邪魔はしない、ということについての合意である。
労働問題では、貿易相手国における団結権の保障とか、幼年労働の禁止とか、についてのものであり、また、環境問題では、国際的な環境問題についての各国との合意事項についてのものである。
ブッシュ大統領と民主党との超党派(バイパルチザン)(bipartisan) 的対話は、今回が始めてである。
しかし、当面は、労働・環境問題にかかわる貿易事項にとどまるが、これを突破口として、さらに、ドーハラウンド問題や、二国間貿易協定問題にまで、拡大するものと予想されている。
二国間貿易協定については、コロンビア・パナマ・ペルー・韓国の四カ国についてである。
ドーハラウンド問題については、アメリカ国内の農業法も含めての問題になるが、民主党としては、無制限に、ブッシュ大統領との合意事項を増やすことには、足元の民主党から、輸出産業関連業界を中心として、不満が出てくるおそれがあるとして、警戒的のようである。
なお、『2007年農業法』(Farm Bill Extension Act of 2007 H.R.2419)の審議は議会で始まっている。
参照
「Bush and Democrats in Accord on Trade Deals」
「Top senator will “nip at edges” of WTO rules」
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2007/05/13 Sunday
2007/05/12(Sat)
今月5月9日に、経済財政諮問会議が発表した「強い農業への第一歩 ――農地の「所有」から「利用」へ――」というのだが、
中身は、
「農地について定期借地権制度を創設する。」
「高齢、相続等により農地を手放すことを希望する人が所有権を移転しやすくするため、農地を株式会社に現物出資して株式を取得する仕組み等を創設する。」
ということになっており、主体が、故意にか不明になっている。
まあ、「農地所有者にとっては、農地を手放せるスキームを用意するから、』というところまではわかるのだが、では、株式会社の構成要員は、誰なのか、が、このペーパーでは明らかになっていない。
私は、平成元年に、市民農園用への農地貸付のスキームとして、初めて不磨の大典である農地法に風穴を開けたという、当時としては、思い切った「特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律」を作ったのだが、これと同種のスキームを考えているのであろうか。
ざっと、この提言を見た感じでは、、『何のために、農地をまもるの?』って言う素朴な疑問に、この提言は答えていないってことは、言えそうだ。
ありていに言えば、今の農村地域の最大の悩みは、農業に代わる換金回路であった誘致企業が中国に撤退し、その代わりの受け皿になりうるものがなく、唯一の農村地域における有力な換金回路であった建設企業が、公共投資減で、雇用力がなくなっているっていう問題に尽きてしまう。
つまり、農家の悩みは、本来の農業の変化・変質にあるのではなく、低収益化した農業に代わりうる換金回路の変質にあるって言うわけだ。
そこらを見誤ると、いくら農業が大事にされても、農村地域に定住を試みるかたがたのためには、なんら、効力を発揮しないということになりそうだ。
どうも、その辺の農村地域の切実な要求が、経済財政諮問会議には、理解できていないようだ。
いま、農村地域に必要なのは、農業政策そのものなのではなくて、農村地域政策ってことを、これらの提言は、その原点で、忘れているような気がする。
なぜ、EUが、『LEADER』などの地域政策に重点をシフトせざるを得なかったか、ということについて、もっと、日本は、学ぶべきではなかろうか。
日本の農業政策には、これまで、『規模の経済依存症』のスキームが横行してきたように思える。
規模が大きくなれば、コストが下がる、ある意味真実だが、それは、川下に、消費者として無知で、大量のデマンドがある場合にのみ可能ということなのだろう。
むしろ、農業の場合には、規模の経済と同時に、多様な「範囲の経済」(複数の産品を一つの主体が同時に生産・販売する方が、各々の産品を単独に生産・販売したときの合計の費用よりも割安につく。多角的資源利用、ファーム・ダイバーシフィケーション)というものも、考えなくてはならないように思える。
昨年だったか、フランスで小農民たちが、EU共通農業政策の不均衡是正を求めて、ハンガーストライキをやったことがあったが、彼らの主張は、EU共通農業政策が、大規模企業農業グループのみを優遇し、持続可能な農法を採用する農民たちを冷遇しているという不満にもとずくのであった。
多様性のスキーム欠如という構図は、ヨーロッパでも、変わらないようだ。
その意味で、現在の日本の農業政策の志向する担い手農家優先政策も、今後、手痛いしっぺ返しを食らう可能性は、大いにありそうだ。
では、零細なファミリー農家と、土地集約化型農業に対して、どのようなインセンティブを与えていくのか。
今、経営の世界では、ファミリービジネスのよさが見直されているが、このあたりに、ヒントがありそうだ。
つまり、所有と経営が分離する形の中で、ファミリー農家の換金回路が発生するという仕組みだ。
農地のホルダーとしてのファミリー農家、資本と技術力、マーケティングの注入源泉としての民間の別の主体、そして、その両者をつなぐ、農地の完全民間移転化を防ぐ、バッファーとしてのボード・ディレクター的存在、というようなスキームが必要な気がしている。
農協(JA)は、株式会社の農地取得に反対しているが、では、なぜ、農協(JA)自身が、農地の取得・営農事業ができる経営母体になれるように、農協法改正を主張しようとしないのか。
つまり、上記のボード・ディレクター的存在としての農協、所有は、ファミリー農家、経営は、民間、というトロイカ方式による、スキームの提言を農協自身がなぜしないのか、ということだ。
このようなスキームを構築しつつ、農協法第10条(事業)の改正も、視野に入れるべきときだとおもう。
農地が、完全に民間移転にならずに、ファミリー農家の農地返還権(買戻し特約登記)確保のもとに、協同組合組織の下にとどまり、農協が、ボード・ディレクター的存在として、所有と経営のガバナンスをコントロールできる結節点にある、というようなスキームを、農協(JA)自ら提案すべきときにきているとおもう。
ちょっと、古い記事だが、このサイト「シリーズ 農協のあり方を探る-6」の対談は、われわれに、いろいろな示唆を与えてくれる。
この中から、抜粋すると、次のような箇所がある。
「農協は営農事業ができないという法解釈はもともとおかしいのですよ。日本で最初に農協法をつくった時の農水省の担当課長・小倉武一さんは、農協は実行組合を持って生産活動ができるようにするという構想を終始抱いていました。GHQの反対や、その後の農地法の制約から結局は実現しなかったのですが。」
ここでのJA山形おきたま(不祥事も近年あったようで、ちょっと、このごろ元気がないようなのですが。)は、「農協本体では営農事業ができないため、65%出資(農協出資型法人、ほかに、アグリジビネス投資育成株式会社も出資)の別会社(農業生産法人「有限会社アグリサポートおきたま」)をつくって農業経営に乗り出し、既存の農業生産法人や大規模農家などを補完する有限会社」ということだが、ここで、なにもかもJAで仕切るのではなくて、JAは、ボード・ディレクター的存在に徹して、ここをプラットホームにして、コラボレート的に、民間の技術なりマーケティングチャンネルの参入を図るほうが、効率的なような感じがする。
この法人は、有限会社だが、法人同士の連携を行う場合、現在の農協法では、このスキームがないため、中小企業等協同組合法にもとづく事業協同組合を使っている場合が多いようだ。
この辺の農協法の改正も必要なのではなかろうか。
今回の参議院選挙では、せっかく、農協中央会ご出身の山田俊男さんが出られているのだから、この辺のビジョンをしっかり提示してもラわなけれれば困る。
今、政治が、農村地域に対してすべきことは、政治が農家や農業団体に対して、政治的裨益を求めないことだ。
俄仕立てで『あぜ道で車座集会』なんて、何にもならないことは、政治家はしなくていいのだ。
総合的な地域バランスの元で、農村地域は、今、真の自立をはかろとしているのだから。
参考-農地法と農業協同組合法との関係
1.農地法における農業生産法人には、農業協同組合法第72条の8規定の農事組合法人を含む。
2農業協同組合についての、農地法第7条の「所有制限の例外」となる小作地は、
(1)農業協同組合がその組合員の行う耕作又は養畜の事業に必要な施設の用に供している小作地
(2)農業協同組合法第10条第2項に規定する事業(組合員の委託を受けて行う農業の経営の事業)を行う農業協同組合がその所有者(法人を除く。)から委託を受けて、農業協同組合法第10条第2項に規定する事業に供している小作地
(3)信託事業を行う農業協同組合(農地保有合理化法人としての農協を含む)が所有する小作地で信託事業に係る信託財産であるもの
3.農業協同組合法第10条第3項の信託(組合員の委託により、不動産を貸付けの方法により運用又は売り渡すことを目的とする信託)の引受けにより所有権を取得する場合には、農業委員会の許可を受けなくていい。
4.農業協同組合が、農業協同組合法第10条第2項に規定する事業を行うため、農地又は採草放牧地の所有者から委託を受ける時、農業生産法人以外の法人が、所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得する場合には、農業委員会の許可を得ることができる。
なお、ファミリービジネス再評価の動きについては、下記サイトご参照
http://workingknowledge.hbs.edu/item/2469.html
http://hbswk.hbs.edu/item/2536.html
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2006/11/21 Tuesday
2006/11/21(Tue)
アルゼンチンの農務長官Miguel Campos 氏は、11月17日、次期収穫期(2月)以降の新しいコーンについて、輸出を停止すると発表した。
すでに契約済みのコーンの契約トン数は、一千五十万メトリックトンあるといわれる。
輸出停止の理由として、輸出量の増加が、アルゼンチン国内流通量を制約する結果、国内消費者に高いコーンを買わせている結果(国内消費分は、一千七百五十万トンのうち、八百万トン程度とみられている。)となっているためとの理由をつけている。
この輸出停止が、すでに契約済みの一千五十万メトリックトン分にも及ぶかどうかは定かではないが、コーンの国際市況に大きな影響を与えるものとみられる。
この発表のあと、シカゴのコーンの相場は、1996年7月以来、10年来の高値を示し、3パーセント以上の上昇を示した。
ちなみに、世界のトウモロコシの輸出量のうち、米国が70%であり、アルゼンチンは、2位の13%、そして三位は、中国の、3%である。
日本のトウモロコシ輸入量に占めるアルゼンチンのシェアは、年なり季節なりによって異なるが、 5 %から15%程度とみられている。
以前は、口てい疫の関係で、飼料用がストップしたことがあったほか、二三年前には、遺伝子組み換えコーンの輸入騒ぎもあったようだ。
このアルゼンチンのコーン輸出停止は、世界のエタノール生産の今後にも、少なからぬ影響を与えるものとみられる。
また、アメリカの干ばつの影響によるコーンの不作もあり、きわめて不安定な市況となるものと、今後、みられる。
参考
「Corn Rises as Argentina Halts Exports to Conserve Supplies 」
「Argentina Said to Take Action on Corn Exports」
为翻译对汉语, 使用这
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2006/10/01 Sunday
2006/10/01(Sun)
後日記(2009年8月)
この記事を書いてから、大分、日にち(3年近く)がたちました。
その後のWTOドーハラウンドの動向などを見ますと、この農業者戸別所得補償方式は、私が当時、見通したように、WTOコンプライアンス上、ますます、
アンバー(Amber.黄色)
となりつつあるようです。
この記事以降も、下記のようなサイトを書いてありますので、あわせてご参照ください。
このブログ記事以降に私が書いた関係ブログ記事のリンク
「覚書-民主党の戸別所得補償制度とアメリカの直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)との違い」
「WTOとボックス・シフティング規制ルールについて」
「10月4日にアメリカが提出した黄色の政策(AMS)とOTDSの実績」
「「意外と重要な合意への一里塚になりそうな、9月のWTO非公式閣僚会合」
「すでにポスト・ドーハラウンドに動き出したか?農林水産省」
「ドーハラウンド合意を想定した日本の品目横断的経営安定対策のスキーム見直しの必要性」」
「WTOドーハラウンド−今月末までに、改訂版ファルコナー・テキスト提示の見通し」
「WTO交渉で、ファルコナー交渉議長からモダリティー合意案提示」
「ブラジルとカナダが、ここにきて、アメリカの農産物価格支持補助金について、イチャモン」
「アメリカ下院を通過した2007年農業法のポイント」
「WTO農業交渉の今後の日程」
「韓国のFTA事情」
「韓国がアメリカとのFTA締結で行う国内対策の概要」
「「部分最適、全体最悪」の農政では、困ります。」
「民主党さん、朝三暮四の農業者戸別所得補償制度創設では困りますよ。」
「何とかしてくれ、民主党農業政策のパラノイア現象!!!!」
「アメリカとのFTA締結問題を、いとも、気軽に民主党はマニフェストで言い出してしまったものですね。」
「戸別所得補償制度の帰結を見るようなお話」
「民主党参議院議員候補者のブログの中の気になる表現」
「民主党さん。戸別所得補償制度創設は、マニフェストから削除した方がよろしいですよ。」
など
なお、私の農業関係ブログ記事一覧は、こちらをクリックしてごらんになってください。!
以下本文
小沢民主党が個別(戸別)所得補償制度(後記−後に正式名称は農業者戸別所得補償制度となった。)の創設なるものを掲げている。
内容は、詳しくは分からないのだが、この小沢一郎さんのサイト『私の基本政策』には、次のように書かれている。
個別(戸別)所得補償制度の創設
世界貿易機関(WTO)における貿易自由化協議と、各国との自由貿易協定(FTA)締結を促進する一方、農産物の国内生産を維持、拡大する。
そのために、基幹農産物については、わが国の生産農家の生産費と市場価格との差額を各農家に支払う「個別(戸別)所得補償制度」を創設する。
また、民主党のサイトでは、これについて、次のように書かれている。
「主要農産物を計画的に生産するすべての販売農家を対象に直接支払いを行うこととしている。また、予算規模1兆円を明示し、食料自給率を10年間で10%アップして50%にすることを約束している。具体的には、小麦は83万トンを400万トンへ、大豆は27万トンを52万トンへ、 菜種(油脂)は600トンを32万トンへと増収を図ることで、それぞれ8%、1%、1%の自給率向上を図るものである。 」
個別(戸別)所得補償制度とアメリカの価格変動対応型支払制度との類似性
想像したところ、アメリカの価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)に似たものを想定しているようだ。
このアメリカの価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は、2002年農業法(the 2002 Farm Bill)に基づくもので、従来あった商品金融公社(CCC)から融資するスキームのなり代わりのスキームとでも言うべきものである。
具体的には、主要作物(小麦、トウモロコシ、コメ、大豆等)に関し、現在の価格支持融資・直接固定支払いを継続しつつ(それぞれの単価は引き上げ)、96年農業法で廃止された不足払い制度(新法では価格変動対応型支払い)を事実上再導入するというものである。
黄色の政策を青の政策と言い換えようとするアメリカの画策
ところが、この価格変動対応型支払い制度の根拠法となる2002年農業法(the 2002 Farm Bill)が、2007年に失効し、2007年農業法(the 2007 Farm Bill)に変わる予定なのだが、WTOでは、このアメリカの価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は貿易歪曲的補助金(trade-distorting subsidies)なのではないのか?と、され、その継続が、疑問視されている。
ちなみに、WTOでは、各国の国内農業政策を、貿易歪曲度に応じて、三つの色(amber−琥珀色、黄色, blue−青, green−緑)の箱に、カテゴリー分類し、amberは、もっとも、貿易歪曲度がある政策で、毎年の支出額制限に従い、 blueは、特定の生産削減プログラムを含む狭義の定義がされているが、支出額制限はなく、greenは、もっとも、貿易歪曲度がない政策で、支出額制限は、ない、との分類となっている。
参考
<農業協定における国内補助金の区分>
黄色の政策:「緑」、「青」以外の政策で、生産関連補助金や価格支持政策な
ど貿易や生産に影響のあるもの。
青の政策 : 生産調整を伴う直接支払いのうち、特定の要件を満たすもの。
緑の政策 : 廃業・転業などの構造調整援助、試験研究、公的備蓄や災害救
済など生産に結びつかない公的資金。生産者に対し価格支持の
効果のない直接支払いなど。
(注)農業生産額の5%以下の補助については、少量であることから、「デミニミス」として削減対象から除外されている。
『農業交渉の現状』参照
このamber box(黄色の政策)は、更に、産品特定的な助成(commodity specific) と産品特定的でない(品目横断的)助成 (non-commodity specific)とに分けられるが、価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は、後者の産品特定的でない(品目横断的)助成(non-product specific amber)に分類されており、デミニミス(De Minimis)の範疇に入るものと、USDA自身は、解釈しているようだ。
参照「United States Department of Agriculture—2007 Farm Bill Theme Papers Risk Management May 2006」
「U.S. farm policy and the WTO」
アメリカでは、現在は、amber box(黄色の政策)とみなされている、この価格変動対応型支払いをblue box(青の政策)に位置づけるため、その要件変更(New eligibility criteria for Blue Box subsidies )を画策していると言われている。
参考「A little blue lie: harmful subsidies need to be reduced, not redefined」
「Boxed In? Implications of WTO Rules and Rulings for Farm Policy」
「The new Blue Box: A step back for fair trade」
「The WTO and Competing Policy Issues」
2004年7−8月に合意されたフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)においてアメリカ側は、「総支出額に上限を設け、一国内の農業生産総価値の5パーセントを上限」とするNew Blue box(新・青の政策)案を提示した。
このNew Blue boxについての討議の経過については、『WTO Agricultural Negotiations The New Blue Box Proposal on Domestic Support and the Doha Development Round』をご参照)
ちなみに、アメリカのWTOに対する要求は、次の点にあるとれさている。
��amber box(黄色の政策)のリミット60パーセント減少
�� counter-cyclical payment は、blue boxにカウント
��amber box(黄色の政策)とblue box(青の政策)の政策カテゴリー分類見直し
参照「Understanding Farm Commodity Programs and their Relation to the WTO」
なお、アメリカの現在のamber box(黄色の政策)のリミットであるAMS(aggregate measurement of support)(助成合計量)は、191億ドルであリ、一方、価格変動対応型支払分(DCP payments)は、200億ドル(日本円換算で、2000年約束水準は、アメリカ2.3兆円、日本4兆円、EU6.7兆円)となっている。
(この図は、2001年までのamber boxの余力図であるが、この時点で、既に、Unused amber boxを示す、橙色の斜線部分が、限界に近くなっていることがわかる。)
ドーハラウンドの決裂が、価格変動対応型支払制度に与える影響は、深刻
ところが、この交渉の舞台となるドーハラウンドは、今年7月に決裂し、まだ再開の日程すら決まっていない。
(昨年12月に香港で行われたWTOでの農業関係(Annex A)合意(曽俊華議長・ラミーWTO事務局長が12月18日に作成した、私的メモ「たたき台」(Draft Ministerial Text (18 December version) )については、私のブログ『WTOの農業関係合意事項』
「WTO 新多角的貿易交渉ドーハ・ラウンドの挫折」をご参照。)
(皮肉な見方をすれば、この7月26日のドーハラウンド決裂で、もっとも、ほっとしたのは、これに先立つ一ヶ月前(2006年6月21日)に、限りなく『黄色の政策』である「品目横断的経営安定対策」の根拠法である、「農業の担い手に対する経営安定のための交付金 の交付に関する法律」が成立していた日本の農林水産省ではなかったのかとも、推察される。
いわば、駆け込み成功の瞬間でもあったのだ。)
ブルーボックス(Blue box 、青の政策)については、現在のシーリングである5パーセントを2.5パーセントに縮小する提案があったが、他方、これまでのブルーボックスに代わるシステムを、との提案や、旧ブルーボックスと、新ブルーボックスとのミックスを提案するものもあった。
その後、今年2006年3月22日に、非公式で開かれたコンサルテーション会議では、blue boxとgreen boxについての討議がされた。
ここでは、従来型のblue boxと、2004年7−8月に合意されたフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)において、アメリカ側提案のNew Blue box(新・青の政策)とは隔絶して考えるべきとしている。
前者は、生産制限を伴った貿易歪曲的国内生産支持政策とし、これ以上のamber box(黄色の政策)の貿易歪曲化を避けるための改革を台無しにするものではないとし、これをOld Blue Box(旧・青の政策)と名づけた。
後者のNew Blue boxについては、より、厳格な規律を用意すべきとの対応が話し合われた。
これについては、「TWN Info Service on WTO and Trade Issues (Mar06/16)」をご参照)
そこで、アメリカの農業団体では、WTOが決着するまで、2002年農業法の延長をUSDAに働きかけているようである。
「Farm groups call for farm bill extension - with a little tweaking」参照
この価格変動対応型支払いは、2005年10月1日から始め、現在の実績は、このサイト「USDA ANNOUNCES 2006 DCP SIGN-UP BEGAN OCTOBER 1」の通りであり、2006年10月1日から、2007年6月1日までのサインアップが始まるとのことである。
参照「Johanns announces 2007 DCP sign-up begins Oct. 1」
「Direct and Counter-Cyclical Program 2006 Crop Year」
この価格変動対応型支払制度の根拠法たる2002年農業法が失効するのが先なのか、それとも、ドーハラウンドが決着するのが先なのか、というところなのだが、いずれにしても、この価格変動対応型支払いを「新・青の政策」(New Blue Box)にさせようとするアメリカの作戦は、頓挫しそうな雲行きではある。
参照「Doha collapse threatens US farm reform」
「青の政策」たりうる条件
ちなみに、OECDの定義では、農業には「農産物の生産機能」と、「非農産物の生産機能」があるとして、後者を「NTCs」(非貿易的関心事項 Non-trade concerns)と呼んでいる。
その中間として、青の政策(ブルー・ボックス補助金、Blue Box measures)というのがあって、これは、生産制限を条件とした補助金(=所得補償)というものである。
参照「WTOの動向について」
NTCsには、食糧安全保障に関係するものと、環境保護に関するものとがあるとされているが、その仕分けは、明確なものではないようだ。
参照「「非貿易的関心事項(NTCs)をめぐるWTO・FTA交渉パターンの一考察」
上記にいう青の政策とは、「ドーハ宣言(the Doha Ministerial Declaration.)」のパラグラフ13.14.15に規定されているもので、次のようなものである。
青の政策(Blue Box)
13.加盟国は、農業改革の促進における青の政策の役割を認識している。この観点において、農業協定第6条第5項(ウルグアイラウンドでのURUGUAY ROUND AGREEMENT Agreement on Agriculture (AOA)規定のArticle 6.5)は、加盟国が次の措置を使用することができるよう再検討される
。
・生産制限計画による直接支払であって、次のいずれかに該当するもの。
−更新されない一定の面積及び生産に基づいて行われる支払
−更新されない基準となる生産水準の85%以下の生産について行われる支払
−更新されない一定の頭数について行われる家畜に係る支払
又は、
・生産が求められない直接支払であり、かつ
−更新されない一定の面積及び生産に基づいて行われる支払、又は
−更新されない一定の頭数について行われる家畜に係る支払であり、かつ
−更新されない基準となる生産水準の85%以下の生産について行われる支払
14.更なる基準とともに、上記の基準が、今後交渉される。そのようないかなる基準も、以下の理解の下、青の政策の支払がAMSの措置よりも貿易歪曲性が低いことを確保するものとする。
・新たな基準は、いずれも、WTOに関する権利義務のバランスが考慮されることが必要。
・今後合意される新たな基準は、いずれも、現在進行中の改革を阻害するような悪影響を与えない。
15.青の政策は、過去の期間における加盟国の農業総生産額の5%を超えないものとする。この過去の期間は、交渉において確立される。この上限は、現在青の政策を使用している又は今後新たに青の政策を使用するいかなる国にも実施期間の当初から適用される。加盟国が例外的に大きな割合の貿易歪曲的支持を青の政策として保持している場合は、今後合意される基礎に基づき、完全に不均衡な削減を求められないよう、何らかの柔軟性が供与される。
注-上記日本語訳は、『ドーハ作業計画 2004年8月1日一般理事会決定』による。
個別(戸別)所得補償制度は、限りなく『黄色の政策』
ところで、この小沢一郎民主党さんがおっしゃる個別(戸別)所得補償制度の創設が、WTO違反に当たるものなのかどうか(WTO Compliance Subsidy Programであるかどうか。 )なのだが、この制度の詳細が分からないのでなんともいえないのだが、ひとえに、上記の青の政策の条件を満たしているかどうかに、かかっている。
もし、「農業の多面的機能」のためのインセンティブであれば、NTCsと、みなされるかも知れないし、ブルー・ボックス補助金的性格を強調するのであるのなら、基幹作物の国内農家の生産制限目標を明確にしうるものでなくてはならないだろう。
更に、品目横断的 (non-commodity specific)な助成であるかどうかも、重要なポイントになる。
品目を特定していない国内支持であれば、全ての農業生産額の5%以下の国内助成は、WTOの削減対象から除外される。
これをデミニミス(De Minimis)というが、これが、抜け穴(De Minimis loophole)になっているとの指摘もある。
アメリカは、このデミニミス(De Minimis)にカウントされ、黄色の政策からの計算除外をされるものとして、
��1998年から2001年にかけての市場損失支援支払い
�∈酳�保険金
��counter–cyclical payments(注-このcounter–cyclical paymentsについては、De Minimis loopholeカウントに入れるか、それとも、2004年7−8月に合意されたフレームワークでアメリカが提案した「新・青の政策」(New Blue Box)のカウントに入れるか、ドーハ・ラウンドでの決着次第の「両面待ち」といったほうがいいのかも知れない。)
を想定しているものとされる。
これについては、
このサイト「Questions & Answers-US Farm Bill」の5ページにある『What is the “de minimis” loophole?』
「Boxed In? Implications of WTO Rules and Rulings for Farm Policy」をご参照。
昨年12月18日の香港でのWTOでの最終合意閣僚宣言では、
「青の政策部分と、デミニミス部分の合計が、全体のAMSの削減額よりも、多くなることはできない」
として、これらのグレーゾーンへの国内政策の駆け込みシフトを牽制している。
参考「ドーハ作業計画 閣僚宣言案(仮訳)」
この観点からすると、現在、農林水産省が平成19年産から導入しようとしている経営所得安定対策の「品目横断的経営安定対策」についても、きわめて、グレーゾーンに近い領域(あるいは、アメリカと同じく、「新・青の政策」(New Blue Box)ドーハラウンド決着を見越しての両面待ちか?)への駆け込みシフト策といえる。
ちなみに、農林水産省の須賀田菊仁氏の国会(平成17年4月21日衆議院農林水産委員会)での説明によれば、品目横断政策のWTOコンプライアンス上での位置づけを下記のように考えているものと見られる。
「品目横断政策を、「げた」部分と、「ならし」部分の二つに分け、さらに、「げた」部分について、その1、その2の二つに分ける。
� 屬欧拭徂�分-生産性条件格差の是正対策
「げた」その1-過去の作付面積に基づく支払い。
WTO規約では、現実の生産と関連していないので、緑の政策に該当。いわゆる「緑ゲタ」部分
「げた」その2-年々の生産量等に基づく支払い。
WTO規約では、黄色の政策、いわゆる「黄ゲタ」部分
�◆屬覆蕕掘徂�分-販売収入の変動緩和対策
WTO規約上は、条件をどうするかによって、青の政策に該当。
例えば、生産調整を義務づけるということであれば、この生産制限計画に基づく支払いとして青の政策性が出てくる。」というものである。
いってみれば、農林水産省さんは、「げた」その2については、現在、黄色だが、アメリカ提案の『新・青の政策』(New Blue Box)該当頼み、「ならし」部分については、『旧・青の政策』(Old Blue Box)に該当させるように生産制限条件をつける。 というような考え方にあるように見える。
いかにも、三色団子のトリッキーな発想に基づくスキームなのだが、今回のドーハラウンドの決裂で、いずれも、そのWTOコンプライアンス如何が問われそうな気配のスキームではある。
なお、上記の農林水産省の『「げた」その1は、緑の政策であり、「げた」その2は、黄色の政策である。』との見解については、「過去の作付面積に基づく支払いと各年の生産量・品質に基づく支払いが別個のものであれば、一方は緑、他方は黄色とできる。
しかし、過去の作付面積に基づく支払いに各年の生産量・品質をリンクするのであれば、全体が黄色の政策となってしまう。」との意見がある。
参照「食料・農業・農村基本計画の問題点(1)―“緑”ではない“品目横断的政策”―」
一方、小沢一郎さんのご著書『小沢主義』では、農林水産省が志向する大規模農家を対象にした「直接支払い」でなく、全販売農家対象にした「不足払い」を、とのみかかれている。
では、この『不足払い』(deficiency payment )が、WTOでは、どう位置づけられているかなのだが、これは、PSE(the Producer Subsidy Estimate)(生産者支持推定量)では、どう位置づけられているかの問題でもある。
PSE(当初は、the Producer Subsidy Equivalentであったが、後にOECDは、Producer Support Estimateと改名)(生産者支持推定量、生産者に直接的に与えられる補助金であり、これに消費者を通じて与えられる補助金 CSE(Consumer Support Estimate)などを合わせて、TSE(Total SupportEstimate)と呼ぶ。)の定義を、OECDでは、以下のAからHにいたる支払いの合計であるとしている。
A.市場価格支持
例−�\源哉鸚�限的なもので、アメリカのミルク・砂糖プログラム、�∪源裟�限的なもので、EU・カナダのミルクプログラム
B.生産ベースでの支払い
例-�\源哉鸚�限的なもので、ノルウェイの不足払いプログラム、�∪源裟�限的なもので、日本の米減反プログラム、アメリカ・カナダの収穫保険プログラム
C.畜産飼養頭数面積による支払い
例−�|楼茵ζ�数限定的なもので、限られた頭数・面積での支払い、��地域・頭数非限定的なもので、EUの補償支払い
D.歴史的政府給付に基づく支払い
例-�〆酳�、畜産頭数、生産についての歴史的な支払いで、メキシコでのPROCAMPO、�⇔鮖謀�な支持プログラムで、アメリカでの生産融通性縮小プログラム。
E.投入用途に基づく支払い
例-�_鎚囘�投入量の用途に基づく支払いで、投入補助金、利子減免、��農家サービスに基づく支払いで、エクステンションサービス、害虫・病気のコントロールのための支払い、�8把蠹蠧�量の使用に基づく支払いで、資本補助金、利子補給、減税。
F.投入制限に基づく支払い
例-�_鎚囘蠧�量の用途に基づく支払いで、制限に基づく支払いで、化学肥料・殺虫剤使用の制限。��固定投入量の制限に基づくもので、アメリカのCRP。�0賚△療蠧�制限に基づくもので、有機農業。
G.全体の農業所得に基づく支払い
例-�’晴箸僚蠧誠綵爐亡陲鼎�もので、所得減税があり、カナダのNISA。�⊇祥茲虜把禺�入に基づくもの。
H.様々な支払い
�々餡隼拱Гき⊇犢餡隼拱Г�
「Measuring Agricultural Policies」の3ページ「Classification of policy measures included in the OECD Producer Support Estimate」による。
その他の国の支持政策の色分けについては、「Domestic Support and the WTO: Comparison of Support Among OECD Countries」の10ページの表『Table 2 – Mapping domestic subsidies from OECD PSE data into WTO “colors” by OECD label for five countries』をご参照
上記でいくと、小沢さんの言われる非生産制限的不足払い支払いと同種のものは、ノルウェイの不足払いプログラムのみとなる。(注-ノルウェイの農産物支持政策については、『Regional Impacts of EU Membership on Norwegian Agriculture』をご参照)
この小沢民主党の構想では、全部の販売農家を対象にして、基幹作物に品目を特定した価格補填を意図しての所得補償制度の創設をうたう一方で、増産をやむなくさせる食料自給率100パーセントをうたっているようなので、この限りでは、青の政策とは、程遠い、『黄色の政策」であるような感じは受ける。
総じて、政府の『経営所得安定対策』スキームよりも、『黄色い政策』度は、高いように見受けられる。
まあ、いってみれば、政府案が三色団子的であるとすれば、民主党案は、生産制限的でない、「総ならし」政策であり、きわめて、黄色一色のキビ団子的であるといえる。
(追記-このブログを書いた後だったが、10月2日の衆議院の施政方針演説に対する質疑において、民主党の松本剛明政策調査会長が、「この個別(戸別)所得補償制度は、WTOでも、緑の政策として認められる。」と発言していたが、いくらなんでも、それはないような気がしている。)
すなわち、この種の政策の提示は、いまや、国内基幹作物農家にとっては、両刃の刃となりうるものなのである。
政策提示する政党も、これらのデカップリング政策の二面性というものをよく熟知して、政策提示しないと、アメをしゃぶらせるつもりで、図らずも、毒をもってしまうことにもなりかねない。
民主党の前ネクスト農林水産大臣であられた山田正彦議員のブログでは、
「政府が今回手当てする担い手対策の品目横断的支払いのうち、「ならし」と呼んでいる部分は、政府自らも認めているようにWTOのルールに反する部分といえる。それでいて小沢ビジョンに対する批判は当たらない。」
とされており、
また、このたび、新ネクスト農林水産大臣となられた篠原孝議員のブログ発言では、
「これまで、農産物の価格を補填する役割だった補助金を、農家の所得を補償する制度(直接所得補償)へと転換するという点は、政府案と民主党案も盛り込んでいます。ただ、政府案は大規模農家(耕地面積が本州内は4ha以上、北海道で10ha以上)の農家にしか補償しないのに対し、民主党案はすべての販売農家を対象としています。民主党案は、補償の対象とする作物を食料自給率の向上に資する米・小麦・大豆・菜種などとし、例えば消費者の要望の強い国産小麦を増産して自給率を向上しようと計画していますが、政府案では小麦の生産量をほぼ現状維持と計画するなど、自給率向上に対する姿勢に欠けています。」
と、書かれている。
(注−上記の山田正彦さんのご発言にある農林水産省見解は、ちょっと違うようで、「「げた」部分のうち、年々の生産量等に基づく支払いは、黄色い政策であり、「ならし」の部分は、生産制限的条件であれば、青の政策と認められうる。」との見解を、農林水産省はもっているのではなかろうか。」)
本来は、政府の経営所得安定対策の「品目横断的経営安定対策」における『黄色い政策』度を、WTOコンプライアンスの観点から検証し、批判し、是正を促すべき民主党が、政府・与党案よりも、より『黄色い政策』度の高い『個別(戸別)所得補償制度』案を持って対抗するという構図には、そのまま、現在の民主党の政策立案能力の限界をも、感じさせるものがある。
また、政府の経営所得安定対策の「品目横断的経営安定対策」にしても、「げた」部分の「年々の生産量等に基づく支払い。』については、農林水産省自ら、『黄色い政策』と、認めているわけだし、ドーハラウンドが決着していない段階での、アメリカ提案の「新・青の政策」(New Blue Box)」への駆け込み的スキーム提示だったわけなのだから、2006年3月22日に、非公式で開かれたコンサルテーション会議での論議で、従来型のblue boxと、2004年7−8月に合意されたフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)において、アメリカ側提案のNew Blue box(新・青の政策)とは隔絶して考えるべきとの考えが示されたところから、今後、この見解にしたがって、ドーハラウンドの決着推移を見て、WTOコンプライアンスの観点から、改めて、「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律」の見直しが必要なものと思われる。
(注-この点について、平成18年4月20日の衆議院農林水産委員会で、岡本充功委員の質問に対して、外務省大臣官房審議官(経済局担当)木寺昌人氏は、次のように答弁している。
「本日委員の御質問の、品目横断的経営安定対策の支払いに関連してでございますが、WTO交渉の結果新たに導入されます国内支持のルールに基づく緑、青、黄色のそれぞれいずれに該当するかという点につきましては、委員御指摘のとおり、WTO農業協定上黄色の政策に該当するのではないかと思われる部分がありますが、今後の交渉の結果を踏まえて検討する必要があると考えております。
しかしながら、我が国は、これまでの農政改革によりまして総合AMSを二〇〇二年には約束水準の一八%にまで削減してきております。その他のAMS主要国のアメリカ、これは七五%、EUは六四%、これらと比較しても大幅に削減してきております。したがいまして、我が国として使用いたしますAMSを今回の交渉の結果として決まる約束レベルの範囲内とすることは十分に可能であり、このために我が国が交渉上不利になることはないと考えております。
いずれにいたしましても、外務省といたしましては、関係省庁と協力をして、政府一体となって我が国の主張がドーハ・ラウンドの成果に最大限反映されるよう努めてまいる所存でございます。」
更に、平成18年4月5日の衆議院農林水産委員会で、井出道雄政府参考人も、この点について、次のように、発言している。
「新たに導入いたします品目横断的経営安定対策、これを持続的、安定的に運用していくためには、現行のWTO農業協定におきまして削減対象とされておりません緑の政策に該当するものにする必要があると考えております。
しかしながら、欧米諸国で実施されております直接支払いのように、緑の政策に該当する過去の生産実績に基づく支払いのみの制度とした場合には、捨てづくりをする場合でも支払いを受けられるなどのモラルハザードを招く可能性もございます。
また、我が国におきましては、まだまだ小規模、零細な農業構造の中で、規模拡大等による生産性の向上を図る必要があることに加えまして、品質の面でも、消費者、実需者のニーズに生産者サイドが十分に対応し切れておらず、需要に応じた生産の確保を図る必要があるというようなこともございまして、WTO農業協定上は削減対象の黄色の政策ではありますけれども、毎年の生産量、品質に基づく支払いを緑の政策とあわせて講ずることが必要だと考えておりまして、今回の制度の仕組みを構築したものでございます。」
また、平成17年03月31日の参議院農林水産委員会において、政府参考人須賀田菊仁氏は、次のように発言している。
「品目横断的経営安定対策の中に支払方法の一つに生産量と品質に応じた支払というのが検討課題になっているわけでございます。
一方で、このWTOの国内支持の要件を見ておりますと、まず削減対象外の緑の政策、これは生産と関連しないデカップリング支払、あるいは明確な環境保全政策に基づく支払、まあ環境支払、こういうものがある。それから、上限は設定されますけれども、青の政策としては生産制限計画に基づく支払というのがございます。
率直に考えますと、生産量や品質に応じた支払は生産に関連をしておりますので、削減対象である黄色の政策というふうに換言できるのではないかと思いますけれども、今後更にいろいろな要件を課していくうちに、環境支払だとか、あるいは生産制限支払だとか、そういうものへの該当性が考えられるかどうか、更に詰めていきまして、できる限り国際規律適合性を持たせるようにしたいというふうに思っております。」)
検証すべきは、WTOコンプライアンス
先週、シカゴ外交問題評議会農業タスクフォース(the Agriculture Task Force The Chicago Council on Global Affairs)が、2007年農業法による現行農業・食料・農村政策の根本的改変を要請する報告書「Modernizing America’s Food and Farm Policy:Vision for a New Direction」を発表し、その中で、2002年農業法で導入された、この価格変動対応型支払い制度の全廃を提言した。
そして、これらのプログラムは、貿易を歪曲せず、WTOルールに合致する新たなプログラムに置き換えられねばならない、とし、さらに、2007年農業法は、貿易歪曲的補助金の廃止で浮いた金を、特定のタイプの生産あるいは市場条件に関連しない直接支払に振り向けるべきだとの提言をした。
参照「Adopt new farm support plan, cut costs: report」
このほか、先月9月21日にアメリカ下院で行われた2007年農業法に関する公聴会では、作物価格の低下補償ではなく、天災・災害などによる所得減少を補償するスキームを盛り込んだmulti-tiered revenue-based programなるものを提唱するthe National Corn Growers Association (NCGA) からの提案も、あったようだ。
参照「The Devil’s in the Details: Why a Revenue-based Farm Program is No Panacea」
「House Hearing on Farm Bill Draws Different Ideas」
このシカゴ外交問題評議会の指摘と提言は、そのまま、小沢民主党の個別(戸別)所得補償制度への批判と改変への提言につながりうるものなのかも知れない。
必要なのは、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立
もし、民主党がアメリカの農業政策を参考にしうるとすれば、WTOの流れから逸脱しかねない、このような旧態依然とした所得補償政策によるのではなく、同じアメリカの民主党のケリーが、一昨年の大統領選挙でしめした「ルーラル・アメリカ強化プラン」によるべきなのではなかろうか。
参考「ケリー米大統領候補の「ルーラル・アメリカ強化プラン」には、日本のわれわれをも、奮い立たす何物かがある」
「ブッシュ大統領が、農業部門補助の大幅カットを明言」
つまり、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立ということになる。
「グローバルマーケットの支配に、風前のともし火と化している、日本の家族農業の再興こそ、真のルーラル日本の地力ある地域経済の復権につながるという考え方」にもとづくトータルな政策の提示こそ、今の疲弊した農村に必要な政策であると思う。
追記-「農業者戸別所得補償法案(仮称)」という名称になったようだ。
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2006/07/12 Wednesday
2006/07/12(Wed)
青森県りんご協会がカナダのNISA(純所得安定口座)方式に倣った「りんご再生産積立制度」を、採用することを提案している。
一方、青森県農協グループのほうは、「生食用りんご価格安定対策事業」を提案しているという。
このうち、青森県りんご協会が提案しているカナダのNISA(純所得安定口座)方式は、「Net Income Stabilization Account」といわれるもので、現在では、この制度は、2003年から、Farm Income Disaster Program (FIDP)プログラムと合体し、,新しくできた「Canadian Agricultural Income Stabilization (CAIS)」に移行している。
参照
http://www.agr.gc.ca/caisprogram/main.html
http://www.agr.gc.ca/nisa/winddown.html
このNISAまたはCAISは、災害プログラム(disaster programs )と呼ばれるもので、任意加入の互助制度である。
カナダ政府からの財政援助も、安定的に、得ている。
政府対生産者の赤字負担額は、二分の一づつのため、結果、損失額が巨大になると、政府負担額は、増加してしまうという。
加入生産者は、毎年、一定のデポジットを積み立て、不作年の低収入時には、そのデポジットを取り崩すという、一種の基金方式のようである。
支払額は、その農家の作物種類や作物価格とは、切り離され、あくまで、その農家の総収入を基準に支払われることが、特徴といえる。
畜産関係は、対象となっていないようだ。
一農家当たり、大体、一万六千カナダドル(1カナダドル=100.92円として、約160万円)というのが相場のようだ。
CAISでは、毎年の要補償額と、払い戻し可能金額を、農家が選択できるようになっている。
この払い戻し可能金額というスキームがミソであるが、おんぶに抱っこの日本農政の場合は、この選択を農家が自制心を持って、することは、可能なのであろうか?
今回、このカナダの制度を手本とした青森県のりんご再生産積み立て制度は、下記のとおりであるが、県市町村の財政援助が無ければ、このスキームは成り立たないだけに、その点が、すべてのポイントになるように思われる。
これまでの農業関係の基金制度というものが、すべて破綻しているのが実際だけに、外国のスキームを手本とした夢だけではなかなか、うまくいかないのも事実だろう。
参考1
「農業収入の変動状況と、安定化対策に関する分析」
5−6ページより引用
「NISAのスキーム」
毎年,農家が自分の当該年の農業収入に拠出率(1%,2%および3%について試算)を乗じた額を口座に預け入れると,政府も同額を拠出する。
政府は農家拠出分の残高に対して3%のボーナス金利を与える。
農家は当該年の農業所得が前5年間の平均農業所得を下回る場合に,その差額(引出必要額)を口座から引き出す。
口座残高が引出必要額を下回るときには,口座残高が引出額の上限となる。
したがって,口座残高がゼロであれば,引出基準に該当しても全く引出を行うことはできない。
以上、引用終わり
参考2.
【りんご再生産積立制度】(青森県りんご協会)
積立額は農薬費相当とし、1年で十アール当たり1万円(生産者50%、県・市町村50%)。
5年を一期とし、生産者は運営費として十アール当たり300円を別途負担する。
積立金は掛け捨てにせず、脱退者には返金する。
加入対象は50アール以上300アール以下を栽培する全生産者。再生産資金の発動と発動割合は県(委員会)が決め、積み立てた金額の範囲内で加入者に交付する。
参考3.
カナダのNISAシステムに関するスライド
http://www1.oecd.org/agr/irm/ppt/irmcan/irmcan.ppt
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2005/12/18 Sunday
2005/12/18(Sun)
香港で開かれているWTOでは、農業関係(Annex A)では、次の事項について、合意が得られる模様。
最終のドラフト(細目合意)は、2006年4月30日までに完成の予定。
以下は、最終合意に至る前の曽俊華議長・ラミーWTO事務局長が12月18日に作成した、私的メモ「たたき台」(Draft Ministerial Text (18 December version) )によるものである。
(WTO最新情報は、こちらのサイトをご参照)
国内農業保護カット(Overall Cut)
全体では、先進国において、国内農業保護総額(国内助成)をベースに「限界値」(Thresholds)を次の三つの帯域に分割し、それぞれのバンドごとに、国内農業保護のカット率を決める。(国内農業保護総額の大きい国ほど、カット率が大きいという仕組み。階層方式適用)
第一バンド-「限界値」0から100億ドル カット率31%-70%
第二バンド-「限界値」100億ドルから600億ドル カット率53%-75%
第三バンド-「限界値」600億ドル超 カット率70%-80%
この帯域では、EUは、第一バンドに該当、アメリカと日本は、第二バンド、その他の国は、第三バンドに該当。
最低限(de minimis)ルール例外(デミニミス)
(助成額が特定産品総生産額の一定の%以下の場合に除外することができる。)
先進国 50% と80% のゾーンの間
発展途上国 カットなし
ブルーボックス(Blue box 、青の政策)
( 余剰生産を回避するため農産物の生産量制限措置、ブルーボックス支払いは、農業保護相当額(AMS)の対象とはならない。)
これについては、現在のシーリングである5パーセントを2.5パーセントに縮小する提案があったが、他方、これまでのブルーボックスに代わるシステムを、との提案や、旧ブルーボックスと、新ブルーボックスとのミックスを提案するものもあった。
農業保護相当額(AMS)
三段階の「限界値」を設ける事には、異論がなかったが、そのバンド幅については、特に、「0-12/15」(カット率37-60%)「12/15-25」(カット率60-70%)「>25」(カット率70-83%)の案も検討された。
グリーンボックス(Green Box)
(貿易に最小限の影響しか与えない国産農作物に対する支持政策)
賛否両論に分かれ、終息できなかった。
しかし、『開発調和型』のあたらしい『グリーン・ボックス』の概念を探る動きも合ったが、大勢とはなっていない。
輸出補助金撤廃
撤廃時期
具体的な最終期日(2013年)は提示されたが、現時点で、結論には至っていない。
輸出信用
信用期間について、180日以下との提案があったが、多くの問題が残っている。
国営企業の輸出について
この国営企業の定義と透明性について、更なる詰めが必要
食糧援助
WTOが、真の食糧援助の妨げにならないようにとの提案と議論があった。
特別・差別的措置
発展途上国における国営企業への差別的措置について、提案がされたが、議論は残っている。
特別・例外的状況
発展途上国への特殊事情による例外的輸出についての基準を設けるべきとの議論があった。
市場アクセスについて
高関税ほど削減率を大きくするという階層方式(Tiered Formula)について
関税引き下げについて、4つの帯域(バンド)を設ける事を検討。
そのバンドの「限界値」については一定の収束が見られた。
最高関税税率(上限関税)の概念適用については、根強い反対があった一方で、75−100パーセント適用の提案もあった。
センシティブ品目(重要品目)について
条件付きではあるが、センシティブ品目(重要品目)の数について具体的な提案を準備したが、その提案が、1パーセントから15パーセントの関税ラインにあることから、それ以上の前進は見られなかった。
センシティブ品目(重要品目)についての基本的な取り扱いについての基本的な乖離については、今後、埋めていかなければならない。
それ以上に、これらのセンシブル品目(重要品目)をどの程度まで自由化していくかについての収束がなされる必要がある。
特別・差別的措置について
発展途上国のための4バンドの設定については、異論はなかった。
また、カット率については、先進国の三分の二との意見があった。
しかし、「限界値」の高い国の異論があった。
発展途上国に最高関税税率(上限関税)の概念を適用することには、異論があった。
また、他のメンバーには、最高関税税率(上限関税)150パーセント適用との意見もあった。
センシティブ品目については、異論はなかったが、その概念について、精緻化すべしとの意見があった。
特別生産物
発展途上国の農業関税ラインのすくなくとも20%は、特別生産物扱いにすべきとの意見があった。
また、その特別生産物の概念規定や対処方針については、おおよそ、三つの方向が示された。
特別セーフガードメカニズム
この概念については、異論がなく、また、これに量的トリガーを設ける事についても異論はなかった。
しかし、価格ベースでのトリガーについては、異論があった。
またセーフガード適用の条件となる「急上昇」(surge)の概念についても、議論があった。
最後発開発途上国(least developed countries)対応
先進国や発展途上国が、最後発開発途上国に対して、関税フリーや量的割り当てフリー(無税・無枠)を適用する事について、現時点では、WTOメンバー国のすべてには、浸透していない。
しかし、2008年までに、先進国は、最後発開発途上国に対して、輸出品の97パーセントについて、無税・無枠を適用する事で、合意が出来る見通し。
綿の補助金について
富裕国は、2006年までに、綿への輸出補助金を全廃
以上
用語については『ドーハ開発アジェンダ用語集』ご参照
参考サイト
「WTO 新ラウンドについて」
「WTO 新ラウンド 最近の動きについて」
「WTOの動向について」
「W T O 新 ラ ウ ン ド の 動 向」
追記 2005/12/18深夜
最終合意閣僚宣言内容は、こちらのサイトご参照
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