Sasayama’s Weblog


2009/08/27 Thursday

民主党さん、朝三暮四の農業者戸別所得補償制度創設では困りますよ。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 07:25:25

2009/08/26(Wed)
 
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「民主党の小沢一郎代表代行は25日午後、同党が衆院選マニフェスト(政権公約)で掲げる米国との自由貿易協定(FTA)の推進方針について「どのような状況になっても生産者が再生産できる(戸別所得補償)制度をつくると言ってるんだから、何の心配もない」と強調、「農家や生産者はわれわれの主張をきちんと理解し、支持してくれると思う」と述べた。」
というのだが、この論理だと、「アメリカとのFTA交渉にともかく入ってしまい、そこで、農産物交渉で、どのような結果になったとしても、戸別所得補償でしのげる」という論理になってしまう。

いったい、FTAが先なの?戸別所得補償が先なの? っていう素朴な疑問を抱いてしまうのは私だけであろうか。

お隣の韓国では、FTAで影響を受ける農家に対する相当な援助をおこなっているが、財政状態を考え、これ以上の援助は不可能だとしている。

当初、韓国は、アメリカとのFTA締結に当たっての国内農業者の打撃対策として、20兆ウォンの対策費を2008年から実施することを想定していた。

そのうち、12.1兆ウォンは、既存の119兆ウォンの既存農業予算からまかなうとしていた。
参考
Gov’t measures to protect agriculture sector from KORUS FTA
U.S.-Korean Food Fight

なお、韓国のFTAがらみでの農家対策費の詳細については、私の別のブログ記事「韓国がアメリカとのFTA締結で行う国内対策の概要」をご参照。

以上の小沢さんの発言から感じられるのは、、もともと、この戸別所得補償の話は、農家にとっての、朝三暮四の話(中国、宋の狙公が、飼っている猿にトチの実を与えるのに、朝に三つ、暮れに四つやると言うと猿が少ないと怒ったため、朝に四つ、暮れに三つやると言うと、たいそう喜んだという)なんではなかったんだろうか、ということである。

大体、このような話は、FTA交渉に入った後の農家に妥協を迫る際のアメの話なんであって、これから、アメリカとのFTA交渉に入る前に、セーフティーネットとして提示する話ではないんではないでしょうかね。

先にもらったアメほど、後になって怖いものはないんだから。


参考1.
私のブログの関連記事

小沢民主党が掲げる個別(戸別)所得補償制度は、貿易歪曲的補助金ではないのか?」
覚書-民主党の戸別所得補償制度とアメリカの直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)との違い
WTOとボックス・シフティング規制ルールについて
「ドーハラウンド合意を想定した日本の品目横断的経営安定対策のスキーム見直しの必要性」
韓国のFTA事情
WTOドーハラウンド−今月末までに、改訂版ファルコナー・テキスト提示の見通し」
「ブラジルとカナダが、ここにきて、アメリカの農産物価格支持補助金について、イチャモン
10月4日にアメリカが提出した黄色の政策(AMS)とOTDSの実績
「「部分最適、全体最悪」の農政では、困ります。」
アメリカ下院を通過した2007年農業法のポイント
WTO交渉で、ファルコナー交渉議長からモダリティー合意案提示

参考2.
2003年に締結した日本とメキシコとのFTA協定の中身(農畜産物市場開放部分)

約300の品目で関税撤廃、低率・無関税の輸入枠を設ける

豚肉、鶏肉、牛肉、オレンジ果汁・生果の五品目では関税率割当を適用、発効後5年後に再協議

重要品目であるコメ、小麦、主要乳製品、砂糖、温州ミカン、リンゴ、パイナップルは例外

 FTA、「直接支払いで農業を護る」?、欧米は重要部門の関税撤廃には応じない」より

 

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