Sasayama’s Weblog


2002/09/29 Sunday

「塩川大臣の行きつ戻りつの迷走発言は、日本財務省の信頼性を損なうであろう」とのダウ・ジョーンズ紙の記事

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2002年09月29日

9月28日のダウ・ジョーンズの記事は、G7での日本の財務省が見せた失態に付いて、日本経済への世界の不信感を増幅する行為であったと、酷評している。

この記事は、”Shiokawa Seesawing May Damage Japan MOF’s Credibility “「塩川大臣の行きつ戻りつの迷走発言は、日本財務省の信頼性を損なうであろう」とのものであり、以下に、この記事を仮訳し、掲載する。

塩川大臣が、国際舞台で、不良債権問題について、公然と矛盾したことを言ったことは、日本の重要問題についての日本財政当局の信頼性を著しく損なう行為であった。

塩川大臣は、二回の記者会見をふくみ、新聞記者へ5回のブリーフィングをおこなったが、不良債権処理問題についてのオニール長官との会談について、矛盾した見解を表明した。

オニール長官との会談を終えた後、塩川氏は、報道陣からの質問を受けて、最初にこう答えた。

「日本の金融機関の不良債権問題については、オニール長官との会談では、提起されなかった。そのかわりに、われわれは、日本とアメリカの成長見込みに付いて話し合った。」

しかし、このブリーフィングの後、財務省の事務当局トップは、こう語った。

「公的資金再注入問題については、確かに語られなかったが、双方の話し合いの中では、不良債権対策についての日本の方針の説明がなされた。」

しかし、大臣と事務方との矛盾した説明は、そのときだけにとどまらなかった。

G7会合後の公式記者会見で、塩川大臣は、オニール長官との会談のわずか6時間後だったにもかかわらず。最初のステートメントを完全に覆した。

双方の話し合いに付いての質問に対し、塩川大臣は、こう答えた。

「オニール長官が、公的資金注入問題に付いてたずねたのに対し、私は、次のような見解を述べた。すなわち、もし、いくつかの金融機関が、再建の見込みのない会社に対する不良債権を処理し、其の結果として、資本比率が低くなっ場合には、公的資金は、注入されるだろう。–との見解を述べたものである。」

この塩川大臣の見解の表明で、土曜日の朝は、報道陣と財務省当局は、大騒ぎになった。

しかし、財務省当局は、塩川発言の矛盾点に付いてきかれ、公的資金再注入を否定した。

さらに、財務省当局は、塩川発言を訂正した公式のステートメントを発表した。

そして、財務省当局は、塩川大臣自身が、再度の記者会見をすると発表した。

しかし、記者会見が召集されても、塩川大臣は、自身の前のコメントが修正されたことは、事務当局から知らされていなかったといいはり、怒りを爆発させた。

塩川大臣は、財務省事務局にたいし、塩川発言を修正したコメントを発表した事務当局を非難した後、記者会見の席を飛び出した。

席を離れる際、塩川大臣は、報道陣に対し、「なんで、同じことを何度もわたくしに説明させるのか」と、ののしって、出て行った。

この、塩川大臣と財務省当局との間の「Yes-No-Yes-No」の繰り返しのジグザグは、塩川大臣の最後の記者会見で、こう締めくくられた。

「私はオニール長官との公式の会談では、不良債権問題については、実際のところ論議されなかった。むしろ、オニール氏とその話題が出たのは、G7会合での休憩中の一対一の席で、オニール氏が見解をもらされた。」

これらの出来事は、日本の財務省の信頼性に付いての疑義を投げかけるものである。

日本の経済状態の情報に付いて、世界的な不信感が増していることは、広く周知の事実となっている。

たとえば、不良債権額の見積もりに付いて、民間と政府との評価額のギャップが広がっていることなどが、世界の日本情報に付いての疑惑を深めている。

日本の多くの研究機関が、不良債権額を100兆円と見積もっているのに対し、政府見積もりでは、50兆円弱にとどまっている。

日本の財務省広報担当官が、世界の注目を集める国際舞台で、大失態を演じたことは、今後さらに、日本にたいする広範囲にわたる世界の不信感を実証することになりかねない。
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2002/09/28 Saturday

「日本経済回復戦略は、依然として不透明」-ウォールストリートジャーナル記事から-

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2002年09月28日

この記事は、9月27日のウォールストリートジャーナル記事「Japan’s Strategy to Repair Economy Remains Murky」の仮訳です。

日本の財政当局首脳は、金曜日行われるG7会議において、世界第二位の経済大国の10年間にわたる経済不振を阻止する戦略に付いて、述べる予定である。

この問題は、日本の財政当局自身は、問題とは思っていないようにも見える。

先週、日銀が、日本の金融システムがあまりに不安定のあまり、その安定のために、銀行保有株式を買取るという、これまでにない第一歩を踏み出すことを声明したため、これまで、ぎりぎりで守備一貫性を保ってきたと評されていた日本の政策当局者たちは、秩序なき状態に投げこまれてしまった。

今週、日本銀行の当局者は、次のように話している。

「この金融機関保有株式購入の真の目的は、日本政府に、もっと攻撃的な政策をとらせるためのショックであり、日本銀行が、経済成長を刺激させるための第一ステップである。」

しかし、当面は、日本政府が、金融機関や経済に対して、どのような次のステップを踏むか、についてや、戦略が決まった場合、誰が、それを遂行するか、などについての、日銀の動きは、すべて未定の状態にある。

先週、政府は、経済浮揚政策パッケージの公表を10月末まで、延期した。

これは、今年に入って三度目のことで、当初は、現行の金融機関対策を容認すると予測されてきた。

さらに、日銀速水総裁と、塩川財務大臣が、G7会議でワシントンに飛んでいるにもかかわらず、国内にいる政治家たちは、政府がすでに資金投入した銀行への公的資金再注入による救済が望ましいものかどうかという重要な問題について、瀬踏みをしているような有様である。

福田官房長官は、木曜日、「この段階にいたり、私どもは、注意深く、考慮している。」と語った。

小泉首相は、つい最近まで、公的資金による金融機関の救済は、必要ないと語っていたが、「そのタイミングはデリケートな問題である」とコメントするようになった。

東京における政策の手詰まり状態は、多くの日本の会社が上半期決算を終える月曜日にいたる微妙な数日の間も、証券・債権市場を混乱させている。

9月20日、日本の投資家は、日銀と政府とのシグナルが対立していることに、あまりに困惑したため、多くは、取引を見送った。

結果、財務省は、ここで、初めて、10年物国債入札の札割れを経験した。

これら混乱の中心は、金融機関不良債権問題をどう扱うかについてであり、これは、世界経済における日本の弱点とみなされる、まさにアキレス腱である。

日本の金融機関は、1990年代初期に地価や株価が低落し始めたときに、債権や保有株の巨大な運用での損失が広がったとみられる。

公表されている数字を見てさえ、不良債権金額は、52兆円に上るとされ、非公式な評価では、その2から4倍はあると見られている。

政府の戦略では、この2年間で、不良債権の悪質な部分を処理すると提唱している。

アメリカ財務省筋やIMF、くわえて身内の日銀からの圧力で、小泉首相は、不良債権処理の計画を加速することを余儀なくされている。

しかし、アナリストたちは、真の問題解決のためには、政治的には受け入れがたいようなドラスティックなステップを踏む必要があるとしている。

これらのステップのうちには、自力でカバーできない金融機関の損失を国が吸収したり、公的資金の注入や、不良債権を市場価格以上で国が買いとることや、困窮な借り手を、清算や再編成することによって、再建を加速させるといったことを含んでいる。

柳沢金融担当大臣の運命がどうなるかが、新しい金融機関政策をとることが難しいかどうかを計る手がかりになると、日本の専門家たちは見ている。

柳沢大臣はこれまで、日本の金融機関には、十分に資本があるので、公的資金の注入は必要ないと、いい続けてきた。

柳沢大臣の更迭がなったばあいは、政府が、不良債権問題について、より攻撃的な政策を施すであろうと、市場にみなされる。

日本のメディアは、小泉内閣改造で、柳沢大臣は、月曜日には、内閣をはじき出されるであろうとみている。

柳沢大臣は、水曜日、報道された自らの辞意を否定した。

小泉首相は、一年半前官邸に入ったのだが、その間、不良債権処理の行動加速を約束はしても、それは、以前の提案の蒸し返しにすぎなかっった。

日銀は、金融システムの状態について、来月、厳しい評価を公表することを約束すれば、政府は熱意をもってことに当たるだろう、という。

ワシントンでのG7会議で、オニール長官率いる米財務省は、日本に対し、より迅速な対案の提示をうながす可能性がある。

「もし、日本が、経済成長を回復したい意欲があり、世界経済での重要な役割を果たしたい意欲があるのなら、不良債権問題とデフレ問題の解決に努力する必要がある。」

と、今週、大統領経済諮問委員会議長のR.Glen Hubbard 氏は、述べている。

今週、IMFは、日本経済は、今年は0.5パーセントのマイナス成長をし、2003年には、1.1パーセントという中途半端な成長をするであろうとした。

IMFの主幹エコノミストであるKenneth Rogoff 氏は、こういう。

「日本は、10年間にわたる第三の景気後退から抜け出しつつあるようにみえる。
しかし、日本が基本的な問題解決に努力することを怠れば、さらに今後10年間、これまでと同じような最悪の経済休息状態に見舞われないとは、誰も保障できない。」
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2002/09/26 Thursday

「IMFの世界経済見通し」から、日本についての記述部分の抜粋

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2002年09月26日

昨日発表された、IMFの「世界経済見通し」から日本についての記述部分を抜粋しました。

「日本 : 成長の兆しは見えるのか?」

Japan: Are Growth Prospects Picking

Activity appears to have bottomed out in Japan,after the third, and most severe, recession in the last decade.
A modest rebound is projected for the remainder of this year and in 2003, although it remains subject to downside risks.
The fundamental issue in Japan, however, continues to be how to achieve more rapid underlying rates of output growth, and break the decade-long pattern of anemic performance interspersed with recession.
This cannot be achieved by macroeconomic policies alone, but requires decisive action to deal with long-standing structural impediments.
Such action is most important in the banking sector, where a vicious circle needs to be broken in which large unrecognized nonperforming loans make banks unwilling to lend,hurting financial intermediation and activity, and thereby creating new nonperforming loans to replace those being written off.
Activity appears to have stabilized in early 2002.
The revised national income accounts indicate that activity accelerated modestly over the first half of this year, underpinned by net exports, while private domestic demand remained relatively weak.
More recent indicators suggest that business investment is likely to begin to recover by late 2002,although retail sales remain sluggish.
High levels of slack remain, and deflation of about 1 percent a year persists, magnifying real debt burdens.
Wealth destruction continues, with equity prices down since the start of the year and land prices continuing to fall, putting additional pressure on bank balance sheets.
Real GDP is projected to fall by !/2 percent in 2002 (on an annual basis) before staging modest positive growth of about 1 percent in 2003.
This anticipates a gradual recovery in private domestic demand, with private consumption growing somewhat in the second half of 2002 and business investment recovering late in the year.
The contribution from net exports, however, is expected to weaken as rising domestic demand boosts imports and the appreciation of the yen erodes competitiveness.
Higher private spending is partly offset by fiscal consolidation, with government investment declining in the latter part of 2002 asspending associated with past fiscal stimulus packages wanes, while the 2003 structural fiscal deficit is projected to fall by about 1 percent of GDP, although some of this decline may be offset by tax cuts that are likely to be announced soon.
While the economy could recover more rapidly, particularly if global activity picks up more quickly than currently expected, downside risks predominate.
The recent appreciation of the yen highlights the susceptibility of the recovery to external influences, including further appreciation or weaker global recovery.
A further fall in equity prices could also affect activity by eroding confidence and dealing a further blow to the difficult financial position of the banks, already weakened by slow growth and falling asset prices.
Over the last decade, the authorities have adopted a gradualist approach to reform, rather than taking decisive action to solve long-standing structural weaknesses exposed by the bursting of the asset price bubble in the early 1990s.
This approach has come at a considerable cost to the Japanese economy in terms of activity, wealth destruction, and unemployment .
Countercyclical macroeconomic policies have been unable to ignite self-sustaining growth or avoid deflation becoming entrenched, despite stimulus measures that helped to increase net debt excluding social security to over 100 percent of GDP, and gross debt to 140 percent of GDP,and reduced short-term interest rates to zero.
In a break with the past, in 2001 the government of newly elected prime minister Koizumi presented a broad strategy to address Japan’s fundamental
economic problems.
This strategy encompassed banking reform, fiscal consolidation, and corporate restructuring and deregulation, and the government is expected to announce another economic package that will provide further details of its reform proposals in coming weeks.
Existing initiatives include recently completed special inspections of the
accuracy of classification of major bank loans to particularly weak large corporations; accelerating major banks’ disposal of the worst nonperforming
loans; encouraging a reduction of banks’equity holdings; setting procedures for formal and informal rehabilitation of distressed companies; a \30 trillion (6 percent of GDP) limit on central government bond issuance in this fiscal
year; and establishing broad goals for mediumterm fiscal consolidation.
While these are welcome steps, additional initiatives appear necessary to address the structural impediments confronting the Japanese economy and hence to significantly improve medium-term growth rospects, so as to achieve the following:

• Improve banks’ financial health and profitability
through full recognition of the quality of all bank loans; recapitalize viable banks, possibly
using public funds, but subject to strong conditionality;
promote the exit of nonviable banks;
and scale down the role of government financial institutions.
Forcefully tackling the underlying problems faced by the banks is a prerequisite for the planned removal of the blanket guarantee on demand deposits next April.

• Accelerate corporate restructuring
by giving banks stronger time-bound incentives to agree realistic restructuring plans with viable firms and to carry out the rapid and complete disposal of the assets of nonviable ones.

• Increase the credibility of the medium-term fiscal consolidation
strategy
by setting a medium-term debt target and broad objectives for major budget categories, to help maintain investor confidence in an environment of high and rapidly rising debt.
Turning to the short-term macroeconomic stance, bolder monetary stimulus should be used to support the emerging recovery; given the difficult underlying fiscal position, however, consolidation should be initiated unless bold structural policies are undertaken.

Specifically,

• A more aggressive monetary stimulus is needed to support economic activity, comprising a public commitment to end deflation in no more than
12–18 months, backed by further quantitative easing.
The recent appreciation of the yen bolsters the case for further easing, as it will negatively affect activity and prices if sustained.
Although there is a possibility that aggressive quantitative easing could result in excessive yen weakness, the regional impact should likely be
manageable given the movement toward flexible exchange rates and healthier reserve and external debt positions. Regional effects would be further mitigated if quantitative easing were combined with the initiatives needed to revive Japan’s medium-term growth; and

• In the absence of appropriate restructuring initiatives, the focus of fiscal policy should move toward the initiation of gradual consolidation to stabilize the debt ratio in the medium term.
Given the unsustainable fiscal situation―net debt excluding social security is projected to rise to over 120 percent of GDP by the end of fiscal year 2002/03―it is critical that the authorities clarify their medium-term consolidation strategy.
That said, if appropriate structural policies are followed, which could engender a negative short-run impact on activity, steps should be taken to attain a neutral fiscal stance in the short term.
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2002/09/22 Sunday

東京の最後のあやまち-ウォールストリートジャーナル紙の記事-

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:19:51

  
2002年09月22日

2002年9月20日、ウォールストリートジャーナル紙は、「東京の最後のあやまち」(Tokyo’s Latest Mistake)と題した論説を発表した。
以下は、その仮訳である。

この水曜日、日銀が決定した金融機関保有株式の日銀買い上げは、絶望的な行動としか考えられないし、これは、おそらく大失敗であるだろう。

速水日銀総裁は、財務省からの圧力に抵抗することは、無責任なことであると考えたに違いない。

なぜなら、日本の金融システムは、崩壊寸前の危機状態にあるからである。

速水総裁が、このことによって、政府が構造改革を成し遂げるための時間稼ぎをしたのか、それとも、共謀して、改革を回避するようにしたのか、どちらかなのかは、そのうちわかることだ。

後者の可能性は、ありうることだ。

日銀は持ち株を2070億ドルといっているが、他にいわせれば、その額は、3260億ドルにも上るとみられている。

どっちであるにしろ、そのシェアは、銀行資本のかなりの部分を占める。

昨日(9月19日)の日経平均は、9669円で終えた。

これは、1980年代のピークの4分の1に過ぎない。

2週間前に19年ぶりで最安値をつけた日経平均が、この速水総裁の一言で、6.5パーセントも上昇したことになる。

しかし、この株価の回復は十分ではない。

今年の2月上旬、日経平均が9420円をつけたとき、日本経済は、危機モードに入った。

この時は、カラ売りの規制と年金基金の資金運用動員で、政府は、何とか、年度末の株価を11000円にまで取り戻した。

このあたりから、もはや、カラ売り規制や半官資金の動員では、なんともしがたい状態に陥ってきた。

いまや、日本の銀行取付を回避する手段は、公的資金しかない。

しかし、そのほかの直接的な金融機関救済措置は、まるで評判がよくない。

だから、日銀に対して、公開市場操作によって、国債を売り、金をひねり出して株を買えとの圧力がかかるのである。

これは、日銀法上の特認を要する、経済における日銀本来の役割としては、邪道なものである。

この事態は、日本株式会社の失敗を取り繕うため、何年もの間、秘密の裏金を工面してきたことのとどのつまりである。

日銀は、いまや、最後の貸し手ではなく、最後の手段の「でっち上げ屋」となってしまった。

自らの貸借対照表上に取得株式を乗せるという危険を冒すことで、日銀は、次のようなサインを送っている。

すなわち、日本の国家は、どんなことがあっても、大銀行の破綻を止めるということについて、暗黙の保障を与えているのである。

この意味するところは、大銀行は、外国人保有の新生銀行を除いては、大企業破綻を阻止する保障を与え続けられるということである。

全般的に貸し出しが減少してくるにつれ、銀行担当者は、有望貸出先であっても、新規貸し出しをのばそうとしなくなることで、貸し渋り現象が見られるようになった。

しかし、彼らは、大きく、問題の多い会社にたいしては、リスクがないということで、貸し支えをしている。

むしろ、破綻寸前の銀行を国有化することのほうが、日本株式会社がタイタニック号のように沈むがままにさせておくことより、いい案だろう。

しかし、いま最も現実的な案は、銀行が、自らの不良債権を市場価格で政府に売ることであろう。

銀行の不良債権は、これからも、増嵩し続けるであろうし、たとえ、銀行の利益を投じ償却したとしても、失敗を招くであろう。

速水総裁が、どこまで突っ込むのか、今のところわからない。

彼は、必要ならばいつでも、日銀が証券市場に介入するであろうことを示唆することで、さらに、経済のモラルハサードの領域に踏み込んでいる。

日銀が買取った株式が数年の間保有されることによって、日銀の資金運用が突出している中での市場の価格決定は、阻害されるであろう。

結局は、これらの株式取得は、経営に変化をもたらしうる状態になるまで、日を延ばし、日銀への損失が最小になるよう、政府が、会社に対し、支援を申し出ることを、示唆しているのではないか。

日本の偉大なる経済は、この10年間、足踏みすることで、終わってしまった。

それは、日本のリーダーが、困難で評判の悪い決定を下さなかったからである。

金融財政システムの崩壊寸前で、日銀の下した、最後の政治的責任回避は、避けられない最後の審判の日を、ただ、日延ばしにするに過ぎない。
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Fitchが、高まる日本の政策への先行き不安について、懸念を表明。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:19:29

   
2002年9月22日

下記は、2002年9月20日に、Fitchが発表した、「Fitch Express Concern Over Rising Policy Uncertainty in Japan 」の仮訳である。

2002年9月20日、格付け会社であるFitchは、高まる日本の政策への先行き不安が、日本政府への信頼性をそこねており、また、このことは、今後の日本のソブリン格付けについても、よい前兆とはならないと、表明した。

日銀が発表した今回のかなり異例な金融機関保有株式買い上げ計画に続いて、不良債権処理問題解決についての日本政府の意図の不明確さが、金融市場において、不安と混乱を招いている。

Fitchは、この点に付いて次のように考える。

すなわち、今回の10年物国債の競争入札の札割れ問題を引き起こしたのは、政府の不良債権処理能力についての投資家の懸念の増大によるものというよりは、むしろ、まさに上記に述べた不良債権処理問題解決についての日本政府の意図の不明確さこそ、主な原因であるということである。

そのような状況にもかかわらず、企業と政府部門のバランスシートの悪化と、政府債務の異常な上昇によって、経済成長面での環境が確実に悪化している中で、より強くより統合された方針の下でのリーダーシップが欠如しているということが,何よりの心配の元である。

Fitchの長期外貨建て、自国通貨建て、いずれの日本のソブリン格付けも、AA格であり、展望は、ネガティブのままである。

そこで、われわれとしては、来週、東京に赴き、日本のソブリン格付けを行うため、政策展望に付いての詳細な調査解明を行う予定である。
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2002/09/21 Saturday

スタンダード・アンド・プアーズ(Standard & Poor’s)の日本ソブリン格付け見通し

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:18:42

  
2002年09月21日

スタンダード・アンド・プアーズ(Standard & Poor’s)のアジア・ソブリン格付けチームのリーダーである小川氏は、日本ソブリン格付け見通しについて、次のように語った。(この記事を試訳したものです。)

「今回(2002年9月20日)の10年物国債競争入札の札割れ問題(注-1989年以来初めて、予定額に応札額が達しない札割れが発生)は、政府の資金調達計画の遂行を妨げるものではない。

しかし、この事態は、日本の経済政策の方向性についての不確実性を、投資家に対し強調したという、マイナスの効果があった。

日本は、適正な公共支出をおこない、また、経済を再活性化させるために、企業・金融部門の改革に、さらに努力する必要がある。

しかし、財務省と日銀そして金融庁の間での政策の行き違いによって、投資家の政策への信頼を揺るがす袋小路に陥っているのが現状だ。」

Standard & Poor’sの日本のソブリン格付けは、G-7先進諸国の中では、もっとも低いものである。

今年4月15日に行ったStandard & Poor’sの日本ソブリン格付けは、これまでの格付けより1ノッチ引き下げた上で、経済展望をネガティブとした。

このことは、今後も格下げの可能性のあることを示唆したものだ。

小川氏はさらに、こうもいう。

「経済政策の方向性についての不確実性の一部は、今週はじめ日銀が表明した、金融機関保有株式買取声明から生じている。

しかし、この買取量、価格、そして中央銀行の通貨プログラムの詳細は明らかでない。

この金融機関保有株式買取政策の透明性の確保や買取についての詳細規則がないと、このプログラムは、たんなる株価維持計画に終わり、金融機関の再投資や改革に資するには、あまりにお粗末な代用品になりかねない。」

Standard & Poor’sの格付けは、構造改革や金融統合が遅れるであろうことを織り込むが、もし、デフレ圧力がこのまま続けば、格下げは避けられないであろう。

この点について、小川氏は、こういう。

「われわれは、10月に発表されるであろう政府のデフレ政策パッケージを、綿密に検証するであろう。」

として、小川氏は、こう、締めくくった。

「その上で、スタンダード・アンド・プアーズの日本へのソブリン格付けは行われるであろう。」

(この記事の後、9月20日、S&Pは、日本のソブリン格付けを「外貨建て、自国通貨建ていずれも据え置きとし、アウトルックはネガティブとした。
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2002/09/11 Wednesday

IMFケーラー専務理事の東京での記者会見の内容

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:18:23

  
2002年09月11日

9月10日のロイター記事によれば、IMFケーラー専務理事(Horst Koehler)の東京での記者会見要旨は、次のとおり。

「日銀は、デフレ克服のために、常に、金融緩和の方途を模索する必要がある。」

「われわれは、(日本政府に)、新しいプログラムをセットアップするようなアドバイスは、(もはや)しない。われわれが、(日本政府に)アドバイスするのは、中立予算である。」

「われわれの規定する政策遂行段階を着実に履行することが、大きなインパクトを与えるであろうことを、私は、確信している。」

「もし、この方向で、政策が実行されるのであれば、株価は確実に上がるであろう。」

「株価を人為的に押し上げる政策を実行することは、日本経済に横たわる問題を解決するためには、適切な対応ではない。」

「私は、公的資金を不良債権処理と、金融機関再編促進に使うことについては、賛成である。」

「しかし、納税者の貴重な金は、改革を実行する具体的な計画とタイムテーブルの元にのみ、使われるべきであると考える。」

「今回の減税問題については、長期的に見て、日本の財政改革プログラムを損なうものとなるのではないかと、懸念している。」

「短期的には、減税は、企業活動を活発化する側面はあるものの、短期的に行われるすべての措置は、長期での税制改革と調和したものでなければならない。」

「IMF検査では、日本の金融政策や債権管理の透明性確保の点では、他の先進諸国に比べるとうまくいっていることを示している。」

なお、IMFによる再検査は、10月に行われ、2003年初頭に、検査結果が発表される予定。
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2002/09/08 Sunday

コメに含まれるカドミウムの新基準値問題を論議する基本的な視点

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:18:00

  
2002年09月08日

2001年3月、食品中のカドミウムの国際許容基準などを協議する、WHOとFAOの合同の補助機関であるコーデックス委員会(The Codex Alimentarius Commission)の食品添加物・汚染物質部会(CCFAC)は、食品中のカドミウム許容基準を0.2ppm以下にするとの基準値提案について、日本などからのすべての利用可能な科学的データにもとづき、新基準値を審議することで合意した。。(原文は、このうちの169参照)

2002年3月、食品添加物・汚染物質部会は、米の中の基準値は精米に限定すべきとの日本側の主張をとりいれ、基準値については、加盟国にコメントをもとめ、次回会合での決定にゆだねた。(原文は、このうちの141.143参照)

これらの国際的な動きをうけ、厚生労働省は、7月10日薬事食品衛生審議会・食品規格毒性合同部会において、米に含まれるカドミウムの新安全基準を、現行の1ppm(精米換算では、0.9ppm)から、0.4ppmに強化することを軸に検討に入った。

ここで、コメの中に含まれるカドミウム新基準値問題を考える上での、基本的な視点について、メモしておきたい。(ここも参照)

1.カドミウムの人体への蓄積度は、腎臓への蓄積度によって、測定されうる。

2.カドミウムへの人体への蓄積は、主に、食品、飲み物、喫煙によって蓄積されるが、このうち、飲み物による蓄積は、微小である。

3.カドミウムの人体蓄積の過程は、土−作物−動物−人間−土−作物−人間という、サイクルに基づく。

4.カドミウムが豊富な土は、Ultisol(赤黄色ポドゾル性土(赤黄色土))で、豊富でない土は、Vertisol(グルムソル(熱帯黒色土))である。

5.カドミウムの一日あたり摂取量の高い国は、日本・韓国で、低い国は、ドイツ・スェーデン・中国・台湾であり、中間は、クロアチア・フィンランド・スペインである。

6.人体へのカドミウム蓄積量が一番少ないのは、ポーランドで、一番多いのは、日本である。

7.カドミウムをもっとも多く含む食物はコメで、そのほか、小麦・にんじん・じゃがいもなどが多い。

8.米食をする国は、カドミウム蓄積量が多く、米食をしない国は、カドミウム蓄積量が少ない。

9.日本人のカドミウム蓄積量が、近時減少してきたのは、米の消費減少と輸入食品摂取の増加によるものである。

10.以上のことから、カドミウム国際基準値の検討にあたっては、米食国における、コメの一日あたりの摂取量や吸収率などから、曝露歴を総合的に考慮し、判断すべきである。
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