2005/12/18(Sun)
香港で開かれているWTOでは、農業関係(Annex A)では、次の事項について、合意が得られる模様。
最終のドラフト(細目合意)は、2006年4月30日までに完成の予定。
以下は、最終合意に至る前の曽俊華議長・ラミーWTO事務局長が12月18日に作成した、私的メモ「たたき台」(Draft Ministerial Text (18 December version) )によるものである。
(WTO最新情報は、こちらのサイトをご参照)
国内農業保護カット(Overall Cut)
全体では、先進国において、国内農業保護総額(国内助成)をベースに「限界値」(Thresholds)を次の三つの帯域に分割し、それぞれのバンドごとに、国内農業保護のカット率を決める。(国内農業保護総額の大きい国ほど、カット率が大きいという仕組み。階層方式適用)
第一バンド-「限界値」0から100億ドル カット率31%-70%
第二バンド-「限界値」100億ドルから600億ドル カット率53%-75%
第三バンド-「限界値」600億ドル超 カット率70%-80%
この帯域では、EUは、第一バンドに該当、アメリカと日本は、第二バンド、その他の国は、第三バンドに該当。
最低限(de minimis)ルール例外(デミニミス)
(助成額が特定産品総生産額の一定の%以下の場合に除外することができる。)
先進国 50% と80% のゾーンの間
発展途上国 カットなし
ブルーボックス(Blue box 、青の政策)
( 余剰生産を回避するため農産物の生産量制限措置、ブルーボックス支払いは、農業保護相当額(AMS)の対象とはならない。)
これについては、現在のシーリングである5パーセントを2.5パーセントに縮小する提案があったが、他方、これまでのブルーボックスに代わるシステムを、との提案や、旧ブルーボックスと、新ブルーボックスとのミックスを提案するものもあった。
農業保護相当額(AMS)
三段階の「限界値」を設ける事には、異論がなかったが、そのバンド幅については、特に、「0-12/15」(カット率37-60%)「12/15-25」(カット率60-70%)「>25」(カット率70-83%)の案も検討された。
グリーンボックス(Green Box)
(貿易に最小限の影響しか与えない国産農作物に対する支持政策)
賛否両論に分かれ、終息できなかった。
しかし、『開発調和型』のあたらしい『グリーン・ボックス』の概念を探る動きも合ったが、大勢とはなっていない。
輸出補助金撤廃
撤廃時期
具体的な最終期日(2013年)は提示されたが、現時点で、結論には至っていない。
輸出信用
信用期間について、180日以下との提案があったが、多くの問題が残っている。
国営企業の輸出について
この国営企業の定義と透明性について、更なる詰めが必要
食糧援助
WTOが、真の食糧援助の妨げにならないようにとの提案と議論があった。
特別・差別的措置
発展途上国における国営企業への差別的措置について、提案がされたが、議論は残っている。
特別・例外的状況
発展途上国への特殊事情による例外的輸出についての基準を設けるべきとの議論があった。
市場アクセスについて
高関税ほど削減率を大きくするという階層方式(Tiered Formula)について
関税引き下げについて、4つの帯域(バンド)を設ける事を検討。
そのバンドの「限界値」については一定の収束が見られた。
最高関税税率(上限関税)の概念適用については、根強い反対があった一方で、75−100パーセント適用の提案もあった。
センシティブ品目(重要品目)について
条件付きではあるが、センシティブ品目(重要品目)の数について具体的な提案を準備したが、その提案が、1パーセントから15パーセントの関税ラインにあることから、それ以上の前進は見られなかった。
センシティブ品目(重要品目)についての基本的な取り扱いについての基本的な乖離については、今後、埋めていかなければならない。
それ以上に、これらのセンシブル品目(重要品目)をどの程度まで自由化していくかについての収束がなされる必要がある。
特別・差別的措置について
発展途上国のための4バンドの設定については、異論はなかった。
また、カット率については、先進国の三分の二との意見があった。
しかし、「限界値」の高い国の異論があった。
発展途上国に最高関税税率(上限関税)の概念を適用することには、異論があった。
また、他のメンバーには、最高関税税率(上限関税)150パーセント適用との意見もあった。
センシティブ品目については、異論はなかったが、その概念について、精緻化すべしとの意見があった。
特別生産物
発展途上国の農業関税ラインのすくなくとも20%は、特別生産物扱いにすべきとの意見があった。
また、その特別生産物の概念規定や対処方針については、おおよそ、三つの方向が示された。
特別セーフガードメカニズム
この概念については、異論がなく、また、これに量的トリガーを設ける事についても異論はなかった。
しかし、価格ベースでのトリガーについては、異論があった。
またセーフガード適用の条件となる「急上昇」(surge)の概念についても、議論があった。
最後発開発途上国(least developed countries)対応
先進国や発展途上国が、最後発開発途上国に対して、関税フリーや量的割り当てフリー(無税・無枠)を適用する事について、現時点では、WTOメンバー国のすべてには、浸透していない。
しかし、2008年までに、先進国は、最後発開発途上国に対して、輸出品の97パーセントについて、無税・無枠を適用する事で、合意が出来る見通し。
綿の補助金について
富裕国は、2006年までに、綿への輸出補助金を全廃
以上
用語については『ドーハ開発アジェンダ用語集』ご参照
参考サイト
「WTO 新ラウンドについて」
「WTO 新ラウンド 最近の動きについて」
「WTOの動向について」
「W T O 新 ラ ウ ン ド の 動 向」
追記 2005/12/18深夜
最終合意閣僚宣言内容は、こちらのサイトご参照
为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/
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http://www.google.com/translate_t
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