Sasayama’s Weblog


2006/10/01 Sunday

小沢民主党が掲げる個別(戸別)所得補償制度は、貿易歪曲的補助金ではないのか?

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2006/10/01(Sun)
 



後日記(2009年8月)

この記事を書いてから、大分、日にち(3年近く)がたちました。
その後のWTOドーハラウンドの動向などを見ますと、この農業者戸別所得補償方式は、私が当時、見通したように、WTOコンプライアンス上、ますます、
アンバー(Amber.黄色)
となりつつあるようです。

この記事以降も、下記のようなサイトを書いてありますので、あわせてご参照ください。

このブログ記事以降に私が書いた関係ブログ記事のリンク

覚書-民主党の戸別所得補償制度とアメリカの直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)との違い
WTOとボックス・シフティング規制ルールについて
10月4日にアメリカが提出した黄色の政策(AMS)とOTDSの実績

「「意外と重要な合意への一里塚になりそうな、9月のWTO非公式閣僚会合
すでにポスト・ドーハラウンドに動き出したか?農林水産省
「ドーハラウンド合意を想定した日本の品目横断的経営安定対策のスキーム見直しの必要性」
WTOドーハラウンド−今月末までに、改訂版ファルコナー・テキスト提示の見通し」
WTO交渉で、ファルコナー交渉議長からモダリティー合意案提示
「ブラジルとカナダが、ここにきて、アメリカの農産物価格支持補助金について、イチャモン
アメリカ下院を通過した2007年農業法のポイント
「WTO農業交渉の今後の日程

韓国のFTA事情
「韓国がアメリカとのFTA締結で行う国内対策の概要

「「部分最適、全体最悪」の農政では、困ります。」
民主党さん、朝三暮四の農業者戸別所得補償制度創設では困りますよ。」
何とかしてくれ、民主党農業政策のパラノイア現象!!!!」
アメリカとのFTA締結問題を、いとも、気軽に民主党はマニフェストで言い出してしまったものですね。」
戸別所得補償制度の帰結を見るようなお話
民主党参議院議員候補者のブログの中の気になる表現
民主党さん。戸別所得補償制度創設は、マニフェストから削除した方がよろしいですよ。」

など

なお、私の農業関係ブログ記事一覧は、こちらをクリックしてごらんになってください。!

以下本文

小沢民主党が個別(戸別)所得補償制度(後記−後に正式名称は農業者戸別所得補償制度となった。)の創設なるものを掲げている。

内容は、詳しくは分からないのだが、この小沢一郎さんのサイト『私の基本政策』には、次のように書かれている。

個別(戸別)所得補償制度の創設
世界貿易機関(WTO)における貿易自由化協議と、各国との自由貿易協定(FTA)締結を促進する一方、農産物の国内生産を維持、拡大する。
そのために、基幹農産物については、わが国の生産農家の生産費と市場価格との差額を各農家に支払う「個別(戸別)所得補償制度」を創設する。

また、民主党のサイトでは、これについて、次のように書かれている。

「主要農産物を計画的に生産するすべての販売農家を対象に直接支払いを行うこととしている。また、予算規模1兆円を明示し、食料自給率を10年間で10%アップして50%にすることを約束している。具体的には、小麦は83万トンを400万トンへ、大豆は27万トンを52万トンへ、 菜種(油脂)は600トンを32万トンへと増収を図ることで、それぞれ8%、1%、1%の自給率向上を図るものである。

個別(戸別)所得補償制度とアメリカの価格変動対応型支払制度との類似性

想像したところ、アメリカの価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)に似たものを想定しているようだ。

このアメリカの価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は、2002年農業法(the 2002 Farm Bill)に基づくもので、従来あった商品金融公社(CCC)から融資するスキームのなり代わりのスキームとでも言うべきものである。

具体的には、主要作物(小麦、トウモロコシ、コメ、大豆等)に関し、現在の価格支持融資・直接固定支払いを継続しつつ(それぞれの単価は引き上げ)、96年農業法で廃止された不足払い制度(新法では価格変動対応型支払い)を事実上再導入するというものである。

黄色の政策を青の政策と言い換えようとするアメリカの画策

ところが、この価格変動対応型支払い制度の根拠法となる2002年農業法(the 2002 Farm Bill)が、2007年に失効し、2007年農業法(the 2007 Farm Bill)に変わる予定なのだが、WTOでは、このアメリカの価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は貿易歪曲的補助金(trade-distorting subsidies)なのではないのか?と、され、その継続が、疑問視されている。

ちなみに、WTOでは、各国の国内農業政策を、貿易歪曲度に応じて、三つの色(amber−琥珀色、黄色, blue−青, green−緑)の箱に、カテゴリー分類し、amberは、もっとも、貿易歪曲度がある政策で、毎年の支出額制限に従い、 blueは、特定の生産削減プログラムを含む狭義の定義がされているが、支出額制限はなく、greenは、もっとも、貿易歪曲度がない政策で、支出額制限は、ない、との分類となっている。

参考
<農業協定における国内補助金の区分>
黄色の政策:「緑」、「青」以外の政策で、生産関連補助金や価格支持政策な
        ど貿易や生産に影響のあるもの。
青の政策  : 生産調整を伴う直接支払いのうち、特定の要件を満たすもの。
緑の政策  : 廃業・転業などの構造調整援助、試験研究、公的備蓄や災害救
        済など生産に結びつかない公的資金。生産者に対し価格支持の
        効果のない直接支払いなど。
(注)農業生産額の5%以下の補助については、少量であることから、「デミニミス」として削減対象から除外されている。

『農業交渉の現状』参照

このamber box(黄色の政策)は、更に、産品特定的な助成(commodity specific) と産品特定的でない(品目横断的)助成 (non-commodity specific)とに分けられるが、価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は、後者の産品特定的でない(品目横断的)助成(non-product specific amber)に分類されており、デミニミス(De Minimis)の範疇に入るものと、USDA自身は、解釈しているようだ。
参照「United States Department of Agriculture—2007 Farm Bill Theme Papers Risk Management May 2006
U.S. farm policy and the WTO

アメリカでは、現在は、amber box(黄色の政策)とみなされている、この価格変動対応型支払いをblue box(青の政策)に位置づけるため、その要件変更(New eligibility criteria for Blue Box subsidies )を画策していると言われている。
参考「A little blue lie: harmful subsidies need to be reduced, not redefined
Boxed In? Implications of WTO Rules and Rulings for Farm Policy
The new Blue Box: A step back for fair trade
The WTO and Competing Policy Issues」

2004年7−8月に合意されたフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)においてアメリカ側は、「総支出額に上限を設け、一国内の農業生産総価値の5パーセントを上限」とするNew Blue box(新・青の政策)案を提示した。

このNew Blue boxについての討議の経過については、『WTO Agricultural Negotiations The New Blue Box Proposal on Domestic Support and the Doha Development Round』をご参照)

ちなみに、アメリカのWTOに対する要求は、次の点にあるとれさている。
amber box(黄色の政策)のリミット60パーセント減少
counter-cyclical payment は、blue boxにカウント
amber box(黄色の政策)とblue box(青の政策)の政策カテゴリー分類見直し
参照「Understanding Farm Commodity Programs and  their Relation to the WTO

なお、アメリカの現在のamber box(黄色の政策)のリミットであるAMS(aggregate measurement of support)(助成合計量)は、191億ドルであリ、一方、価格変動対応型支払分(DCP payments)は、200億ドル(日本円換算で、2000年約束水準は、アメリカ2.3兆円、日本4兆円、EU6.7兆円)となっている。

(この図は、2001年までのamber boxの余力図であるが、この時点で、既に、Unused amber boxを示す、橙色の斜線部分が、限界に近くなっていることがわかる。)

ドーハラウンドの決裂が、価格変動対応型支払制度に与える影響は、深刻

ところが、この交渉の舞台となるドーハラウンドは、今年7月に決裂し、まだ再開の日程すら決まっていない。
(昨年12月に香港で行われたWTOでの農業関係(Annex A)合意(曽俊華議長・ラミーWTO事務局長が12月18日に作成した、私的メモ「たたき台」(Draft Ministerial Text (18 December version) )については、私のブログ『WTOの農業関係合意事項
WTO 新多角的貿易交渉ドーハ・ラウンドの挫折」をご参照。)

(皮肉な見方をすれば、この7月26日のドーハラウンド決裂で、もっとも、ほっとしたのは、これに先立つ一ヶ月前(2006年6月21日)に、限りなく『黄色の政策』である「品目横断的経営安定対策」の根拠法である、「農業の担い手に対する経営安定のための交付金 の交付に関する法律」が成立していた日本の農林水産省ではなかったのかとも、推察される。
いわば、駆け込み成功の瞬間でもあったのだ。)

ブルーボックス(Blue box 、青の政策)については、現在のシーリングである5パーセントを2.5パーセントに縮小する提案があったが、他方、これまでのブルーボックスに代わるシステムを、との提案や、旧ブルーボックスと、新ブルーボックスとのミックスを提案するものもあった。

その後、今年2006年3月22日に、非公式で開かれたコンサルテーション会議では、blue boxとgreen boxについての討議がされた。

ここでは、従来型のblue boxと、2004年7−8月に合意されたフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)において、アメリカ側提案のNew Blue box(新・青の政策)とは隔絶して考えるべきとしている。

前者は、生産制限を伴った貿易歪曲的国内生産支持政策とし、これ以上のamber box(黄色の政策)の貿易歪曲化を避けるための改革を台無しにするものではないとし、これをOld Blue Box(旧・青の政策)と名づけた。

後者のNew Blue boxについては、より、厳格な規律を用意すべきとの対応が話し合われた。

これについては、「TWN Info Service on WTO and Trade Issues (Mar06/16)」をご参照)

そこで、アメリカの農業団体では、WTOが決着するまで、2002年農業法の延長をUSDAに働きかけているようである。
Farm groups call for farm bill extension - with a little tweaking」参照

この価格変動対応型支払いは、2005年10月1日から始め、現在の実績は、このサイト「USDA ANNOUNCES 2006 DCP SIGN-UP BEGAN OCTOBER 1」の通りであり、2006年10月1日から、2007年6月1日までのサインアップが始まるとのことである。
参照「Johanns announces 2007 DCP sign-up begins Oct. 1
Direct and Counter-Cyclical Program 2006 Crop Year」

この価格変動対応型支払制度の根拠法たる2002年農業法が失効するのが先なのか、それとも、ドーハラウンドが決着するのが先なのか、というところなのだが、いずれにしても、この価格変動対応型支払いを「新・青の政策」(New Blue Box)にさせようとするアメリカの作戦は、頓挫しそうな雲行きではある。
参照「Doha collapse threatens US farm reform

「青の政策」たりうる条件

ちなみに、OECDの定義では、農業には「農産物の生産機能」と、「非農産物の生産機能」があるとして、後者を「NTCs」(非貿易的関心事項 Non-trade concerns)と呼んでいる。

その中間として、青の政策(ブルー・ボックス補助金、Blue Box measures)というのがあって、これは、生産制限を条件とした補助金(=所得補償)というものである。
参照「WTOの動向について

NTCsには、食糧安全保障に関係するものと、環境保護に関するものとがあるとされているが、その仕分けは、明確なものではないようだ。
参照「「非貿易的関心事項(NTCs)をめぐるWTO・FTA交渉パターンの一考察

上記にいう青の政策とは、「ドーハ宣言(the Doha Ministerial Declaration.)」パラグラフ13.14.15に規定されているもので、次のようなものである。

青の政策(Blue Box)

13.加盟国は、農業改革の促進における青の政策の役割を認識している。この観点において、農業協定第6条第5項(ウルグアイラウンドでのURUGUAY ROUND AGREEMENT Agreement on Agriculture (AOA)規定のArticle 6.5)は、加盟国が次の措置を使用することができるよう再検討される

・生産制限計画による直接支払であって、次のいずれかに該当するもの。
−更新されない一定の面積及び生産に基づいて行われる支払
−更新されない基準となる生産水準の85%以下の生産について行われる支払
−更新されない一定の頭数について行われる家畜に係る支払
又は、
・生産が求められない直接支払であり、かつ
−更新されない一定の面積及び生産に基づいて行われる支払、又は
−更新されない一定の頭数について行われる家畜に係る支払であり、かつ
−更新されない基準となる生産水準の85%以下の生産について行われる支払

14.更なる基準とともに、上記の基準が、今後交渉される。そのようないかなる基準も、以下の理解の下、青の政策の支払がAMSの措置よりも貿易歪曲性が低いことを確保するものとする。
・新たな基準は、いずれも、WTOに関する権利義務のバランスが考慮されることが必要。
・今後合意される新たな基準は、いずれも、現在進行中の改革を阻害するような悪影響を与えない。

15.青の政策は、過去の期間における加盟国の農業総生産額の5%を超えないものとする。この過去の期間は、交渉において確立される。この上限は、現在青の政策を使用している又は今後新たに青の政策を使用するいかなる国にも実施期間の当初から適用される。加盟国が例外的に大きな割合の貿易歪曲的支持を青の政策として保持している場合は、今後合意される基礎に基づき、完全に不均衡な削減を求められないよう、何らかの柔軟性が供与される。
注-上記日本語訳は、『ドーハ作業計画 2004年8月1日一般理事会決定』による。

個別(戸別)所得補償制度は、限りなく『黄色の政策』

ところで、この小沢一郎民主党さんがおっしゃる個別(戸別)所得補償制度の創設が、WTO違反に当たるものなのかどうか(WTO Compliance Subsidy Programであるかどうか。 )なのだが、この制度の詳細が分からないのでなんともいえないのだが、ひとえに、上記の青の政策の条件を満たしているかどうかに、かかっている。

もし、「農業の多面的機能」のためのインセンティブであれば、NTCsと、みなされるかも知れないし、ブルー・ボックス補助金的性格を強調するのであるのなら、基幹作物の国内農家の生産制限目標を明確にしうるものでなくてはならないだろう。

更に、品目横断的 (non-commodity specific)な助成であるかどうかも、重要なポイントになる。

品目を特定していない国内支持であれば、全ての農業生産額の5%以下の国内助成は、WTOの削減対象から除外される。

これをデミニミス(De Minimis)というが、これが、抜け穴(De Minimis loophole)になっているとの指摘もある。

アメリカは、このデミニミス(De Minimis)にカウントされ、黄色の政策からの計算除外をされるものとして、

1998年から2001年にかけての市場損失支援支払い 
∈酳保険金
counter–cyclical payments(注-このcounter–cyclical paymentsについては、De Minimis loopholeカウントに入れるか、それとも、2004年7−8月に合意されたフレームワークでアメリカが提案した「新・青の政策」(New Blue Box)のカウントに入れるか、ドーハ・ラウンドでの決着次第の「両面待ち」といったほうがいいのかも知れない。)

を想定しているものとされる。

これについては、
このサイト「Questions & Answers-US Farm Bill」の5ページにある『What is the “de minimis” loophole?』
Boxed In? Implications of WTO Rules and Rulings for Farm Policy」をご参照。

昨年12月18日の香港でのWTOでの最終合意閣僚宣言では、
「青の政策部分と、デミニミス部分の合計が、全体のAMSの削減額よりも、多くなることはできない」
として、これらのグレーゾーンへの国内政策の駆け込みシフトを牽制している。
参考「ドーハ作業計画 閣僚宣言案(仮訳)」

この観点からすると、現在、農林水産省が平成19年産から導入しようとしている経営所得安定対策の「品目横断的経営安定対策」についても、きわめて、グレーゾーンに近い領域(あるいは、アメリカと同じく、「新・青の政策」(New Blue Box)ドーハラウンド決着を見越しての両面待ちか?)への駆け込みシフト策といえる。

ちなみに、農林水産省の須賀田菊仁氏の国会(平成17年4月21日衆議院農林水産委員会)での説明によれば、品目横断政策のWTOコンプライアンス上での位置づけを下記のように考えているものと見られる。

「品目横断政策を、「げた」部分と、「ならし」部分の二つに分け、さらに、「げた」部分について、その1、その2の二つに分ける。

 屬欧拭徂分-生産性条件格差の是正対策

「げた」その1-過去の作付面積に基づく支払い。
WTO規約では、現実の生産と関連していないので、緑の政策に該当。いわゆる「緑ゲタ」部分

「げた」その2-年々の生産量等に基づく支払い。
WTO規約では、黄色の政策、いわゆる「黄ゲタ」部分

◆屬覆蕕掘徂分-販売収入の変動緩和対策
WTO規約上は、条件をどうするかによって、青の政策に該当。
例えば、生産調整を義務づけるということであれば、この生産制限計画に基づく支払いとして青の政策性が出てくる。」
というものである。

いってみれば、農林水産省さんは、「げた」その2については、現在、黄色だが、アメリカ提案の『新・青の政策』(New Blue Box)該当頼み、「ならし」部分については、『旧・青の政策』(Old Blue Box)に該当させるように生産制限条件をつける。 というような考え方にあるように見える。

いかにも、三色団子のトリッキーな発想に基づくスキームなのだが、今回のドーハラウンドの決裂で、いずれも、そのWTOコンプライアンス如何が問われそうな気配のスキームではある。

なお、上記の農林水産省の『「げた」その1は、緑の政策であり、「げた」その2は、黄色の政策である。』との見解については、「過去の作付面積に基づく支払いと各年の生産量・品質に基づく支払いが別個のものであれば、一方は緑、他方は黄色とできる。
しかし、過去の作付面積に基づく支払いに各年の生産量・品質をリンクするのであれば、全体が黄色の政策となってしまう。」との意見がある。
参照「食料・農業・農村基本計画の問題点(1)―“緑”ではない“品目横断的政策”―」

一方、小沢一郎さんのご著書『小沢主義』では、農林水産省が志向する大規模農家を対象にした「直接支払い」でなく、全販売農家対象にした「不足払い」を、とのみかかれている。

では、この『不足払い』(deficiency payment )が、WTOでは、どう位置づけられているかなのだが、これは、PSE(the Producer Subsidy Estimate)(生産者支持推定量)では、どう位置づけられているかの問題でもある。

PSE(当初は、the Producer Subsidy Equivalentであったが、後にOECDは、Producer Support Estimateと改名)(生産者支持推定量、生産者に直接的に与えられる補助金であり、これに消費者を通じて与えられる補助金 CSE(Consumer Support Estimate)などを合わせて、TSE(Total SupportEstimate)と呼ぶ。)の定義を、OECDでは、以下のAからHにいたる支払いの合計であるとしている。

A.市場価格支持
例−\源哉鸚限的なもので、アメリカのミルク・砂糖プログラム、∪源裟限的なもので、EU・カナダのミルクプログラム
B.生産ベースでの支払い
例-\源哉鸚限的なもので、ノルウェイの不足払いプログラム、∪源裟限的なもので、日本の米減反プログラム、アメリカ・カナダの収穫保険プログラム
C.畜産飼養頭数面積による支払い
例−|楼茵ζ数限定的なもので、限られた頭数・面積での支払い、地域・頭数非限定的なもので、EUの補償支払い
D.歴史的政府給付に基づく支払い
例-〆酳、畜産頭数、生産についての歴史的な支払いで、メキシコでのPROCAMPO、⇔鮖謀な支持プログラムで、アメリカでの生産融通性縮小プログラム。
E.投入用途に基づく支払い
例-_鎚囘投入量の用途に基づく支払いで、投入補助金、利子減免、農家サービスに基づく支払いで、エクステンションサービス、害虫・病気のコントロールのための支払い、8把蠹蠧量の使用に基づく支払いで、資本補助金、利子補給、減税。
F.投入制限に基づく支払い
例-_鎚囘蠧量の用途に基づく支払いで、制限に基づく支払いで、化学肥料・殺虫剤使用の制限。固定投入量の制限に基づくもので、アメリカのCRP。0賚△療蠧制限に基づくもので、有機農業。
G.全体の農業所得に基づく支払い
例-’晴箸僚蠧誠綵爐亡陲鼎もので、所得減税があり、カナダのNISA。⊇祥茲虜把禺入に基づくもの。
H.様々な支払い
々餡隼拱Гき⊇犢餡隼拱Г

Measuring Agricultural Policies」の3ページ「Classification of policy measures included in the OECD Producer Support Estimate」による。
その他の国の支持政策の色分けについては、「Domestic Support and the WTO: Comparison of Support Among OECD Countries」の10ページの表『Table 2 – Mapping domestic subsidies from OECD PSE data into WTO “colors” by OECD label for five countries』をご参照

上記でいくと、小沢さんの言われる非生産制限的不足払い支払いと同種のものは、ノルウェイの不足払いプログラムのみとなる。(注-ノルウェイの農産物支持政策については、『Regional Impacts of EU Membership on Norwegian Agriculture』をご参照)

この小沢民主党の構想では、全部の販売農家を対象にして、基幹作物に品目を特定した価格補填を意図しての所得補償制度の創設をうたう一方で、増産をやむなくさせる食料自給率100パーセントをうたっているようなので、この限りでは、青の政策とは、程遠い、『黄色の政策」であるような感じは受ける。

総じて、政府の『経営所得安定対策』スキームよりも、『黄色い政策』度は、高いように見受けられる。

まあ、いってみれば、政府案が三色団子的であるとすれば、民主党案は、生産制限的でない、「総ならし」政策であり、きわめて、黄色一色のキビ団子的であるといえる。

(追記-このブログを書いた後だったが、10月2日の衆議院の施政方針演説に対する質疑において、民主党の松本剛明政策調査会長が、「この個別(戸別)所得補償制度は、WTOでも、緑の政策として認められる。」と発言していたが、いくらなんでも、それはないような気がしている。)

すなわち、この種の政策の提示は、いまや、国内基幹作物農家にとっては、両刃の刃となりうるものなのである。

政策提示する政党も、これらのデカップリング政策の二面性というものをよく熟知して、政策提示しないと、アメをしゃぶらせるつもりで、図らずも、毒をもってしまうことにもなりかねない。

民主党の前ネクスト農林水産大臣であられた山田正彦議員のブログでは、
「政府が今回手当てする担い手対策の品目横断的支払いのうち、「ならし」と呼んでいる部分は、政府自らも認めているようにWTOのルールに反する部分といえる。それでいて小沢ビジョンに対する批判は当たらない。」
とされており、
また、このたび、新ネクスト農林水産大臣となられた篠原孝議員のブログ発言では、
「これまで、農産物の価格を補填する役割だった補助金を、農家の所得を補償する制度(直接所得補償)へと転換するという点は、政府案と民主党案も盛り込んでいます。ただ、政府案は大規模農家(耕地面積が本州内は4ha以上、北海道で10ha以上)の農家にしか補償しないのに対し、民主党案はすべての販売農家を対象としています。民主党案は、補償の対象とする作物を食料自給率の向上に資する米・小麦・大豆・菜種などとし、例えば消費者の要望の強い国産小麦を増産して自給率を向上しようと計画していますが、政府案では小麦の生産量をほぼ現状維持と計画するなど、自給率向上に対する姿勢に欠けています。」
と、書かれている。
(注−上記の山田正彦さんのご発言にある農林水産省見解は、ちょっと違うようで、「「げた」部分のうち、年々の生産量等に基づく支払いは、黄色い政策であり、「ならし」の部分は、生産制限的条件であれば、青の政策と認められうる。」との見解を、農林水産省はもっているのではなかろうか。」)

本来は、政府の経営所得安定対策の「品目横断的経営安定対策」における『黄色い政策』度を、WTOコンプライアンスの観点から検証し、批判し、是正を促すべき民主党が、政府・与党案よりも、より『黄色い政策』度の高い『個別(戸別)所得補償制度』案を持って対抗するという構図には、そのまま、現在の民主党の政策立案能力の限界をも、感じさせるものがある。

また、政府の経営所得安定対策の「品目横断的経営安定対策」にしても、「げた」部分の「年々の生産量等に基づく支払い。』については、農林水産省自ら、『黄色い政策』と、認めているわけだし、ドーハラウンドが決着していない段階での、アメリカ提案の「新・青の政策」(New Blue Box)」への駆け込み的スキーム提示だったわけなのだから、2006年3月22日に、非公式で開かれたコンサルテーション会議での論議で、従来型のblue boxと、2004年7−8月に合意されたフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)において、アメリカ側提案のNew Blue box(新・青の政策)とは隔絶して考えるべきとの考えが示されたところから、今後、この見解にしたがって、ドーハラウンドの決着推移を見て、WTOコンプライアンスの観点から、改めて、「農業の担い手に対する経営安定のための交付金の交付に関する法律」の見直しが必要なものと思われる。

(注-この点について、平成18年4月20日の衆議院農林水産委員会で、岡本充功委員の質問に対して、外務省大臣官房審議官(経済局担当)木寺昌人氏は、次のように答弁している。

「本日委員の御質問の、品目横断的経営安定対策の支払いに関連してでございますが、WTO交渉の結果新たに導入されます国内支持のルールに基づく緑、青、黄色のそれぞれいずれに該当するかという点につきましては、委員御指摘のとおり、WTO農業協定上黄色の政策に該当するのではないかと思われる部分がありますが、今後の交渉の結果を踏まえて検討する必要があると考えております。
 しかしながら、我が国は、これまでの農政改革によりまして総合AMSを二〇〇二年には約束水準の一八%にまで削減してきております。その他のAMS主要国のアメリカ、これは七五%、EUは六四%、これらと比較しても大幅に削減してきております。したがいまして、我が国として使用いたしますAMSを今回の交渉の結果として決まる約束レベルの範囲内とすることは十分に可能であり、このために我が国が交渉上不利になることはないと考えております。
 いずれにいたしましても、外務省といたしましては、関係省庁と協力をして、政府一体となって我が国の主張がドーハ・ラウンドの成果に最大限反映されるよう努めてまいる所存でございます。」

更に、平成18年4月5日の衆議院農林水産委員会で、井出道雄政府参考人も、この点について、次のように、発言している。

「新たに導入いたします品目横断的経営安定対策、これを持続的、安定的に運用していくためには、現行のWTO農業協定におきまして削減対象とされておりません緑の政策に該当するものにする必要があると考えております。
 しかしながら、欧米諸国で実施されております直接支払いのように、緑の政策に該当する過去の生産実績に基づく支払いのみの制度とした場合には、捨てづくりをする場合でも支払いを受けられるなどのモラルハザードを招く可能性もございます。
 また、我が国におきましては、まだまだ小規模、零細な農業構造の中で、規模拡大等による生産性の向上を図る必要があることに加えまして、品質の面でも、消費者、実需者のニーズに生産者サイドが十分に対応し切れておらず、需要に応じた生産の確保を図る必要があるというようなこともございまして、WTO農業協定上は削減対象の黄色の政策ではありますけれども、毎年の生産量、品質に基づく支払いを緑の政策とあわせて講ずることが必要だと考えておりまして、今回の制度の仕組みを構築したものでございます。」

また、平成17年03月31日の参議院農林水産委員会において、政府参考人須賀田菊仁氏は、次のように発言している。

「品目横断的経営安定対策の中に支払方法の一つに生産量と品質に応じた支払というのが検討課題になっているわけでございます。
 一方で、このWTOの国内支持の要件を見ておりますと、まず削減対象外の緑の政策、これは生産と関連しないデカップリング支払、あるいは明確な環境保全政策に基づく支払、まあ環境支払、こういうものがある。それから、上限は設定されますけれども、青の政策としては生産制限計画に基づく支払というのがございます。
 率直に考えますと、生産量や品質に応じた支払は生産に関連をしておりますので、削減対象である黄色の政策というふうに換言できるのではないかと思いますけれども、今後更にいろいろな要件を課していくうちに、環境支払だとか、あるいは生産制限支払だとか、そういうものへの該当性が考えられるかどうか、更に詰めていきまして、できる限り国際規律適合性を持たせるようにしたいというふうに思っております。」)

検証すべきは、WTOコンプライアンス

先週、シカゴ外交問題評議会農業タスクフォース(the Agriculture Task Force The Chicago Council on Global Affairs)が、2007年農業法による現行農業・食料・農村政策の根本的改変を要請する報告書「Modernizing America’s Food and Farm Policy:Vision for a New Direction」を発表し、その中で、2002年農業法で導入された、この価格変動対応型支払い制度の全廃を提言した。

そして、これらのプログラムは、貿易を歪曲せず、WTOルールに合致する新たなプログラムに置き換えられねばならない、とし、さらに、2007年農業法は、貿易歪曲的補助金の廃止で浮いた金を、特定のタイプの生産あるいは市場条件に関連しない直接支払に振り向けるべきだとの提言をした。
参照「Adopt new farm support plan, cut costs: report」

このほか、先月9月21日にアメリカ下院で行われた2007年農業法に関する公聴会では、作物価格の低下補償ではなく、天災・災害などによる所得減少を補償するスキームを盛り込んだmulti-tiered revenue-based programなるものを提唱するthe National Corn Growers Association (NCGA) からの提案も、あったようだ。
参照「The Devil’s in the Details: Why a Revenue-based Farm Program is No Panacea
House Hearing on Farm Bill Draws Different Ideas

このシカゴ外交問題評議会の指摘と提言は、そのまま、小沢民主党の個別(戸別)所得補償制度への批判と改変への提言につながりうるものなのかも知れない。

必要なのは、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立

もし、民主党がアメリカの農業政策を参考にしうるとすれば、WTOの流れから逸脱しかねない、このような旧態依然とした所得補償政策によるのではなく、同じアメリカの民主党のケリーが、一昨年の大統領選挙でしめした「ルーラル・アメリカ強化プラン」によるべきなのではなかろうか。
参考「ケリー米大統領候補の「ルーラル・アメリカ強化プラン」には、日本のわれわれをも、奮い立たす何物かがある
ブッシュ大統領が、農業部門補助の大幅カットを明言

つまり、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立ということになる。

「グローバルマーケットの支配に、風前のともし火と化している、日本の家族農業の再興こそ、真のルーラル日本の地力ある地域経済の復権につながるという考え方」にもとづくトータルな政策の提示こそ、今の疲弊した農村に必要な政策であると思う。

追記-「農業者戸別所得補償法案(仮称)」という名称になったようだ。

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