Sasayama’s Weblog


2007/05/13 Sunday

経済財政諮問会議が書いた農業改革論

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 21:51:33

2007/05/12(Sat)
 
null今月5月9日に、経済財政諮問会議が発表した「強い農業への第一歩 ――農地の「所有」から「利用」へ――」というのだが、
中身は、
「農地について定期借地権制度を創設する。」
「高齢、相続等により農地を手放すことを希望する人が所有権を移転しやすくするため、農地を株式会社に現物出資して株式を取得する仕組み等を創設する。」
ということになっており、主体が、故意にか不明になっている。

まあ、「農地所有者にとっては、農地を手放せるスキームを用意するから、』というところまではわかるのだが、では、株式会社の構成要員は、誰なのか、が、このペーパーでは明らかになっていない。

私は、平成元年に、市民農園用への農地貸付のスキームとして、初めて不磨の大典である農地法に風穴を開けたという、当時としては、思い切った「特定農地貸付けに関する農地法等の特例に関する法律」を作ったのだが、これと同種のスキームを考えているのであろうか。

ざっと、この提言を見た感じでは、、『何のために、農地をまもるの?』って言う素朴な疑問に、この提言は答えていないってことは、言えそうだ。

ありていに言えば、今の農村地域の最大の悩みは、農業に代わる換金回路であった誘致企業が中国に撤退し、その代わりの受け皿になりうるものがなく、唯一の農村地域における有力な換金回路であった建設企業が、公共投資減で、雇用力がなくなっているっていう問題に尽きてしまう。

つまり、農家の悩みは、本来の農業の変化・変質にあるのではなく、低収益化した農業に代わりうる換金回路の変質にあるって言うわけだ。

そこらを見誤ると、いくら農業が大事にされても、農村地域に定住を試みるかたがたのためには、なんら、効力を発揮しないということになりそうだ。

どうも、その辺の農村地域の切実な要求が、経済財政諮問会議には、理解できていないようだ。

いま、農村地域に必要なのは、農業政策そのものなのではなくて、農村地域政策ってことを、これらの提言は、その原点で、忘れているような気がする。

なぜ、EUが、『LEADER』などの地域政策に重点をシフトせざるを得なかったか、ということについて、もっと、日本は、学ぶべきではなかろうか。

日本の農業政策には、これまで、『規模の経済依存症』のスキームが横行してきたように思える。

規模が大きくなれば、コストが下がる、ある意味真実だが、それは、川下に、消費者として無知で、大量のデマンドがある場合にのみ可能ということなのだろう。

むしろ、農業の場合には、規模の経済と同時に、多様な「範囲の経済」(複数の産品を一つの主体が同時に生産・販売する方が、各々の産品を単独に生産・販売したときの合計の費用よりも割安につく。多角的資源利用、ファーム・ダイバーシフィケーション)というものも、考えなくてはならないように思える。

昨年だったか、フランスで小農民たちが、EU共通農業政策の不均衡是正を求めて、ハンガーストライキをやったことがあったが、彼らの主張は、EU共通農業政策が、大規模企業農業グループのみを優遇し、持続可能な農法を採用する農民たちを冷遇しているという不満にもとずくのであった。

多様性のスキーム欠如という構図は、ヨーロッパでも、変わらないようだ。

その意味で、現在の日本の農業政策の志向する担い手農家優先政策も、今後、手痛いしっぺ返しを食らう可能性は、大いにありそうだ。

では、零細なファミリー農家と、土地集約化型農業に対して、どのようなインセンティブを与えていくのか。

今、経営の世界では、ファミリービジネスのよさが見直されているが、このあたりに、ヒントがありそうだ。

つまり、所有と経営が分離する形の中で、ファミリー農家の換金回路が発生するという仕組みだ。

農地のホルダーとしてのファミリー農家、資本と技術力、マーケティングの注入源泉としての民間の別の主体、そして、その両者をつなぐ、農地の完全民間移転化を防ぐ、バッファーとしてのボード・ディレクター的存在、というようなスキームが必要な気がしている。

農協(JA)は、株式会社の農地取得に反対しているが、では、なぜ、農協(JA)自身が、農地の取得・営農事業ができる経営母体になれるように、農協法改正を主張しようとしないのか。

つまり、上記のボード・ディレクター的存在としての農協、所有は、ファミリー農家、経営は、民間、というトロイカ方式による、スキームの提言を農協自身がなぜしないのか、ということだ。

このようなスキームを構築しつつ、農協法第10条(事業)の改正も、視野に入れるべきときだとおもう。

農地が、完全に民間移転にならずに、ファミリー農家の農地返還権(買戻し特約登記)確保のもとに、協同組合組織の下にとどまり、農協が、ボード・ディレクター的存在として、所有と経営のガバナンスをコントロールできる結節点にある、というようなスキームを、農協(JA)自ら提案すべきときにきているとおもう。

ちょっと、古い記事だが、このサイト「シリーズ 農協のあり方を探る-6」の対談は、われわれに、いろいろな示唆を与えてくれる。
この中から、抜粋すると、次のような箇所がある。

「農協は営農事業ができないという法解釈はもともとおかしいのですよ。日本で最初に農協法をつくった時の農水省の担当課長・小倉武一さんは、農協は実行組合を持って生産活動ができるようにするという構想を終始抱いていました。GHQの反対や、その後の農地法の制約から結局は実現しなかったのですが。」

ここでのJA山形おきたま(不祥事も近年あったようで、ちょっと、このごろ元気がないようなのですが。)は、「農協本体では営農事業ができないため、65%出資(農協出資型法人、ほかに、アグリジビネス投資育成株式会社も出資)の別会社(農業生産法人「有限会社アグリサポートおきたま」)をつくって農業経営に乗り出し、既存の農業生産法人や大規模農家などを補完する有限会社」ということだが、ここで、なにもかもJAで仕切るのではなくて、JAは、ボード・ディレクター的存在に徹して、ここをプラットホームにして、コラボレート的に、民間の技術なりマーケティングチャンネルの参入を図るほうが、効率的なような感じがする。

この法人は、有限会社だが、法人同士の連携を行う場合、現在の農協法では、このスキームがないため、中小企業等協同組合法にもとづく事業協同組合を使っている場合が多いようだ。

この辺の農協法の改正も必要なのではなかろうか。

今回の参議院選挙では、せっかく、農協中央会ご出身の山田俊男さんが出られているのだから、この辺のビジョンをしっかり提示してもラわなけれれば困る。

今、政治が、農村地域に対してすべきことは、政治が農家や農業団体に対して、政治的裨益を求めないことだ。

俄仕立てで『あぜ道で車座集会』なんて、何にもならないことは、政治家はしなくていいのだ。

総合的な地域バランスの元で、農村地域は、今、真の自立をはかろとしているのだから。

参考-農地法と農業協同組合法との関係

1.農地法における農業生産法人には、農業協同組合法第72条の8規定の農事組合法人を含む。
2農業協同組合についての、農地法第7条の「所有制限の例外」となる小作地は、
(1)農業協同組合がその組合員の行う耕作又は養畜の事業に必要な施設の用に供している小作地
(2)農業協同組合法第10条第2項に規定する事業(組合員の委託を受けて行う農業の経営の事業)を行う農業協同組合がその所有者(法人を除く。)から委託を受けて、農業協同組合法第10条第2項に規定する事業に供している小作地
(3)信託事業を行う農業協同組合(農地保有合理化法人としての農協を含む)が所有する小作地で信託事業に係る信託財産であるもの
3.農業協同組合法第10条第3項の信託(組合員の委託により、不動産を貸付けの方法により運用又は売り渡すことを目的とする信託)の引受けにより所有権を取得する場合には、農業委員会の許可を受けなくていい。
4.農業協同組合が、農業協同組合法第10条第2項に規定する事業を行うため、農地又は採草放牧地の所有者から委託を受ける時、農業生産法人以外の法人が、所有権、地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を取得する場合には、農業委員会の許可を得ることができる。

なお、ファミリービジネス再評価の動きについては、下記サイトご参照
http://workingknowledge.hbs.edu/item/2469.html
http://hbswk.hbs.edu/item/2536.html


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