Sasayama’s Weblog


2008/09/15 Monday

詳報・BSEの遺伝子発症についてのアメリカ研究チームの論文

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 14:03:07

 
null9月12日に、アメリカ農務省の研究チームが、2006年にアメリカのアラバマ州で発見されたBSEメス牛についての研究成果を米科学誌「Pros in the Media」に発表した。

この論文名は「BSE Case Associated with Prion Protein Gene Mutation」というもので、研究チームは、Jürgen A. Richt氏(カンサス州立大学、National Animal Disease Center、USDA)とS. Mark Hall氏(National Veterinary Services Laboratories, Pathobiology Laboratory, Animal and Plant Health Inspection Service、USDA)である。

2006年にアラバマ州で発見されたBSE牛は、コブウシ(Bos Indicus)と在来牛(Bos Taurus)とのハイブリッドであり、歯列推定年齢は、10歳であった。

このBSE牛の認識番号は、『Animal B14842』と名づけられた。、

発見当時、この牛の脳組織は、まず、ジョージア獣医学診断研究所(the Georgia Veterinary Medical Diagnostic Laboratory)iに送られ、ここで、ELISA法によるラピッド検査を受けた後、さらに、国立獣医サービス研究所(the National Veterinary Services Laboratories)に送られ、ここでは、その他の検査を受けた。

ELISA法では、5回の検査が繰り返された。

そして、光学密度(OD=optical density)値は、脳閂部(Brain Stem)においては、2.40±0.57という高い陽性反応を示したのに対して、脳幹部(Obex)では、0.04以下という低い値を示した。

そこで、さらに、ウエスタンブロット法とIHC法による確認検査をした。

その結果、イムノ・ブロット検査においては、次のことが明らかになった。

PrPd(プリオン、 “PRion Protein Disease “の大文字・太字部分の略)の存在が確認された。 同量のモノクローナル抗体(単一の抗体産生細胞に由来するクローンから得られた抗体で、抗体分子が完全に均一であるため、単一の特異性を有する)である、P4と6H4の抗体に対して、同様の強い反応を示した。

この二つの反応は、不定型BSEの反応と同一のものであった。

また、プリオン蛋白質バンドの分子量分析においては、非グリコシル化(糖分子なし)・モノグリコシル化(糖分子 1 個)したPrPdのアイソフォーム(立体構造)が、古典的なC型BSEのそれに比して相当高い分子量で存在していた。

(注-酵素分解されたプリオン蛋白質は、定型BSEでは、グリコシル化(糖分子あり)と呼ばれる上部バンドに現れる。
非定型BSEでは、非グリコシル化(糖分子なし)と呼ばれる下部バンド、モノグリコシル化(糖分子 1 個)とよばれる中間バンドに現れるのが通常のようだ。
これらのバンドは、分子量によって決定され、分子量が高い場合は、上部バンドに現れ、分子量が低い場合には、下部バンドに現れるとされる。
したがって、グリコシル化(糖分子あり)は、分子量が高く、非グリコシル化(糖分子なし)は、分子量が低く、モノグリコシル化(糖分子 1 個)は、分子量が両者の中間ということになる。
上記では、そのいずれも、古典的なC型BSEのそれに比して、やや高いバンドに現れていたということになるのだろう。
なお、この辺のところは、「非定型スクレイピーと非定型 BSE に関する TAFS ポジションペーパー」をご参照)

同じようなことは、2004年に発見されたH型BSEにおいても、見られた。

さらに、脳障害についてみれば、BSEによると見られる明らかな脳障害は脳幹には見られなかったが、IHC検査では、明らかに、PrPdが存在していた。

脳幹におけるPrPdの分布状態は、2003年に発見のC型BSEに見られるような一率のものではなく、かつ、激しいものではなかった。

これらのことから、研究グループは、このアラバマ州のBSE牛(Animal B14842)を、H型BSEであり、不定型BSE(Atypical BSE)であると結論付けた。

この不定型BSE(Atypical BSE)の特徴は、PrPdの分子特性が、多くのH型BSEのそれと、ことなっているところにある。

さらに、この不定型BSE(Atypical BSE)には、以下の二つのタイプがある。

Lタイプ-C型BSEと比較して、非グリコル化したアイソフォーム(立体構造)の分子量がすくないタイプ(バンドが低いので、ローのLをとったもの)
Hタイプ-C型BSEと比較して、非グリコル化したアイソフォーム(立体構造)の分子量が多いタイプ(バンドが高いので、ハイのHをとったもの)

これらの検査のほか、次のようないろいろな検査が試みられた。

.魯ぅ屮螢奪鼻Εぅ爛離屮蹈奪噺〆此
▲▲薀丱渊のH型BSE牛についてのイムノヒストケミカリー検査(抗体は、PrPd特有の単クローン抗体であるF99/97.6.1使用) 
8電掬C型BSE牛についてのイムノヒストケミカリー検査(抗体は、同じくF99/97.6.1使用) 
ぐ篥岨匕〆
PrnpのDNA塩基配列検査を、牛、羊、シカ類(Cervid)について、行った。
DNA塩基配列は、二つのポジションにおいて、異型接合があった。
すなわち、ひとつは、コドン78における同義置換(配列は変わらない)多型(Q78Q)であり、もうひとつは、コドン211における非同義置換(配列が変わる)多型(E211K)である。

このうち、E211K変異(塩基配列211番目におけるE-アスパラギン酸-からK-リシン-への変異)が、研究チームで注目された。

なぜなら、E-アスパラギン酸-からK-リシン-への変異は、人間のPrnp(プリオン蛋白遺伝子)においても塩基配列200番目に、E200K変異として見られるからである。

しかも、このE200K変異は、人間のCJD症状に、見られていたからである。

そこで、牛以外の他の牛、羊、シカ類(Cervid)についても、そのヌクレオチド配列とアミノ酸塩基配列を見ると、次のようであった。

ヌクレオチド配列
( Y = C またはT; R = A-アラニン- またはG-グリシン-; K = G-グリシン- または T-スレオニン-; W = A-アラニン- または T-スレオニン-)
.▲薀丱渊のBSE牛(Animal B14842)=AY335912
⇒咫AJ567986
ヘラジカ(Elk)=AF016227
だ犠錣平祐(HsapM13899)
vCJDに罹患した人間(HsapPRNPvar )

アミノ酸塩基配列
.▲薀丱渊のBSE牛(Animal B14842)=AY335912
⇒咫AJ567986
ヘラジカ(Elk)=AF016227
だ犠錣平祐(HsapM13899)
vCJDに罹患した人間(HsapPRNPvar)

これらの検査から、研究チームは、次のような議論を重ねた。

Prnp遺伝子でのH型BSE牛に見るE211K変異と、人間のCJD罹患者に見るE200K変異とは、いずれも、TSEと関連している。

△海譴蕕諒儖曚蓮非定型BSE牛のうち、C型BSE牛には、見られなかった。

しかし、この発見によっても、BSEがどこから出たものであるのか、その起源は、わからないままにある。

そこで、研究チームは、次のような仮説を立てた。

仮説
イギリスのBSEは、家畜牛のBSEの遺伝子から得たものである。

仮説
人間のBSE(TSE)であるCJD(人間のTSE-伝達性海綿状脳症-としては、このクロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)のほか、クル、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病、致死性家族性不眠症(fatal familial insomnia)などがある)は、それが、孤発性であろうと、遺伝性であろうと、伝染性であろうと、すべて、それは、家畜にも存在する。

仮説
BSEはインド亜大陸から発生した。

しかし、これらの仮説を立証するためには、より多くのデータが必要であると、研究チームは言っている。

特に、仮説については、1970年代後半から1980年代の初期にかけて、インドからイギリスへ、大量の哺乳類のたんぱく質が肉や骨の形で輸入されたことは、周目の見るところで、これらの肉や骨が、動物の飼料を経て、遺伝子由来のBSEとなった仮説はすてきれないという。

(注−この「BSEインド起源説」は、別名「2005年理論」ともいわれるもので、2005年9月にイギリスのケント大学のColchester 両氏が、Lancet(2005 Sep 3-9;366(9488):856-61)に発表した論文「The origin of bovine spongiform encephalopathy: the human prion disease hypothesis.」から由来する。
これによると、インドの牛の糞で汚染された飼料や、ガンジス川ての人間の糞で汚染された飼料がイギリスへ、哺乳類のたんぱく質などに混じって輸入され、BSEの起源になった,などの仮説を立てている。)

また、今回のアメリカアラバマ州のBSE牛についてみれば、次の疑問が成り立ちうる。

,修諒儖杆紊Prnp K211対立遺伝子は、その牛の親の片方から受け継いだものなのか、それとも、このアラバマ牛の代であらたに変異したものなのか。
△△蠅修Δ發覆い海箸任呂△襪、体細胞突然変異で起こった変異なのか
このアラバマ牛のほかに、いまだに発見されていない牛群が存在しているのか

このの疑問を裏付けうるものとして、近年、2歳のメス牛で、同様のE211K変異を持つ牛が発見されているという。

では、もし、これらの群が存在するとして、その存在確率は、どれほどのものであるか、であるが、研究チームが新たに開発した、K211変異検査方法で、5つの牛肉加工工場での6062の死骸と、42品種からなる2170の牛を検査し、試算したところによると、E211K変異の確率は、二千分の一であることがわかったという。

そこで、研究チームでは、これらのE211K変異診断専用検査方法によって、牛の生育段階での生体検査をすることによって、選別飼育や、淘汰飼育が可能となり、未然に、遺伝子由来によるBSE牛の撲滅をすることができるとしている。

なお、研究チームでは、この検査方法についての特許を獲得しているといわれる。

この遺伝子変異によるBSE発症説は、なぜ、BSEの発症までの潜伏期間が長いか?のなぞにも迫りうるものだとされている。

一方で、これによって、これまでの肉骨粉原因説の一環が崩れることによって、肉骨粉飼料禁止一辺倒による清浄化によっても、今後、BSEは、孤発的にも発症しうることになり、さらに、牛の母子感染の可能性が有力になってくるなど、これまでのBSE対策の抜本的な見直しを迫りうる環境ともなりうる。

さらに、今年の5月には、カナダで、牛のためのBSEワクチンが開発されたなど、これまでのBSE対策に対する考え方についても、アグレッシブな対策へと、大きく修正を迫られるような雲行きになってきたようである。

下記は、私のブログ記事における上記記事に関連するこれまでの記事である。

疑問の残る今朝の朝日新聞の非定型BSE牛の記事の視点
BSEとBASEについての新たな研究
「BSEは、プリオンが原因ではない」とのイェール大学の研究
輸血感染で死亡前にvCJDとわかったケースについてのコリンジ博士等の研究
ロンドンで開かれた非定型BSEに関する会議の模様
「「異常型プリオンタンパク質(PrP)の果たしている役割は、TSEの副次的なマーカーとしての役割」とのイギリス研究グループの論文
「「羊がBSEに母子感染する」という、ショッキングなイギリスの実験結果
プリオン仮説以外の仮説を検証する必要はないのか?」
非定型BSEの位置づけ方のむづかしさ
「「輸血にリンクし発生した第二のvCJD死者が、PRNPのコドン129の異型遺伝子を持っていたことは、リスクの恐れのある人口が、より大きくなったことを意味する。」との記事
「「プリオン蛋白遺伝子(PRNP)のコドン129に異型遺伝子をもつ患者における輸血後の未発症vCJD」とのLancet論文の仮訳」
「「日本の若齢BSEのケースについて、ただいま日米間論争中」という報道
「「新型BSE」を強調する日本の学者の怪
いよいよ、日本のBSEにも、BARB問題到来。」
全頭検査廃止の大義名分となりつつある「若齢牛のBSE検出限界論」の「検証限界」」

参考
ハイブリッド・イムノブロット分析の結果

1から5までが6Hモノクローナル抗体反応
6から7までがプロティン・ウェイト・マーカー
8から12までが、P4モノクローナル抗体反応

6Hモノクローナル抗体反応
01=羊のスクレイピーコントロール 2mg 
02=2003年にアメリカで発見された古典的BSE 2mg
03=2004年にアメリカで発見されたH型BSE 2mg
04=今回のアラバマのH型BSE(Animal B14842)1 mg
05 =今回のアラバマのH型BSE(Animal B14842)2.5 mg

06=プロティン・ウェイト・マーカー
07=プロティン・ウェイト・マーカー

P4モノクローナル抗体反応
08=今回のアラバマのH型BSE(Animal B14842)2.5 mg
09=今回のアラバマのH型BSE(Animal B14842)1 mg
10=2004年にアメリカで発見されたH型BSE 2mg
11=2003年にアメリカで発見された古典的BSE 2mg
12=羊のスクレイピーコントロール 2mg 

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参考
「Are Mad Cow Disease and Creutzfeldt-Jakob Disease Identical?」

 

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