2003年10月23日
今回茨城で発見されたBSEは、国立感染症研究所によってプリオン遺伝子に変異は認められないと判断されたにもかかわらず、やれ、これと同種のBSEが、イタリア、フランスで発表されたなどと、ことさら「新型BSE」であることを強調する日本発の学者情報が飛び交っているのは、どうしたことだろう。
大体、外電記事を見ても、フランス発の新型BSE情報などはないのに、http://www.japantoday.com/e/?content=news&cat=1&id=275522
や
http://www.japantoday.com/e/?content=news&cat=8&id=276617 や
http://www.asahi.com/english/nation/TKY200310080164.html
http://www.hpj.com/dtnnewstable.cfm?type=story&sid=10173
のように、日本の学者が、学界情報として、イタリア、フランス新型BSE発生説を、強調しているのである。
ここには、肉骨粉直接投与説のみに固執する、日本の学者の頑迷さが見え隠れする。
このサイトでも、かねてから言っているように、この問題は、BARB(Born After the Real Ban )問題といわれるものであり、別に、異型のプリオンだからといった問題ではない、BSE一般の問題なのである。
だから、BARB問題に真正面に向き合うためには、肉骨粉直接投与による単独原因説を否定してかからねば解けないパズルなのである。
1996年8月1日の肉骨粉等牛由来飼料全面使用禁止後も、BSEの牛がでているのは、何を原因にしてのことかが、科学的に証明されていないということを、学者自身が認めなければ解けないパズルなのだ。
それには、牧草感染説、スクレイピー感染説、母子感染説、広大な規模での交差汚染説などを含めた、原因の総合的な見直しが必要な段階に入っているということだ。(参考-The Horn Committee A Report on the Review of the Origin of BSE)
ちなみに、
http://www.cidrap.umn.edu/cidrap/content/fs/food-disease/news/oct1603bse.html
での、ミネソタ大学 Will Hueston氏の見解によれば、
今回の日本の若齢牛BSE発生は、多くの人々が認識している以上に、多くの発生があることを意味しているという。
なぜなら、この牛は、発症にいたるまでに、BSE発生原因物質に対して、かなり大規模の曝露歴があったとみなさなければならないからである。
若齢牛BSE発生はまれな例であり、このことは、この牛が、相当大量のBSE発生原因物質に曝露されていたとみなさなければならない。
Hueston氏のいうに、曝露の度合いが大きければ大きいほど、発症までの潜伏期間は短くなるという。
Hueston氏は、1990年代にBSE発症原因物質は、静かに日本に蓄積され、その間に、多様な交差汚染が進んでいったと見るべきであるとしている。
そこで、核心的な疑問となるのは、BSE発症原因物質の曝露の度合いであるという。
すなわち、どの程度の数の牛が、どの程度の期間にわたって、いかなるBSE発症原因物質に曝露されていたか、ということであるという。
また、Hueston氏は、今回の日本の若齢牛BSEが、これまでのものとはちがうタイプの異常プリオンを持っていたとの日本の農林水産省の見解に対して、「ある病理学者と話したところでは、この異型プリオンの発見は、単に、BSE初期のケースであることを示すのみであるとの考えであった」という。
すなわち、BSE初期の無発症状態の下でのプリオンは、発症状態でのプリオンのタイプとは異なるということであるという。
このように、今回の日本の若齢牛BSE発生問題は、単なる「新しいタイブのプリオンによるBSE発生」として、とらえてしまっては、問題の本質を、いたずらにぼかしてしまうことになる。
今必要なのは、Will Hueston氏が指摘するように、BSE発症原因物質への曝露量が多く、曝露歴が長かったことで、BSE潜伏期間が短くなったという仮説にたって、「どの程度の数の牛が、どの程度の期間にわたって、いかなるBSE発症原因物質に曝露されていたか」を、検証する時期にさしかかっているということであろう。
その意味では、2003年10月8日の朝日新聞の社説での「パニックになる必要はない」との趣旨の一連の記事内容は、フェイル・セーフの観点 からいえば、物事の本質を見誤った認識といえる。
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