Sasayama’s Weblog


2004/10/17 Sunday

非定型BSEの位置づけ方のむづかしさ

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 07:11:00

2004/10/17
 

BSEのケースに、非定型なものがあるのではないのかという問題が国際的な広がりを見せたのは、2003年のことであった。
全米科学アカデミー会報(Proceedings of the National Academy of Sciences )において、イタリアのIstituto Zooprofilattico Sperimentale del PiemontのCristina Casalone等の研究者たちが、 “Identification of a second bovine amyloidotic spongiform encephalopathy: Molecular similarities with sporadic Creutzfeldt-Jakob disease “ と題する論文を発表し、イタリアにおける、11歳と15歳のBSE牛の発症例と、日本で8例目にBSE症例と確認された若齢牛のケースとが、類似の非定型の異常プリオンに感染していたとの報告がなされた。

2004年2月25日開催の第81回the Spongiform Encephalopathy Advisory Committee (SEAC) でも、同様な報告に基づいての討議がなされた。

非定型BSEの定義を厳格に言うと次のようなことになる。
この写真は、ウェスタンブロット法(Western blot (Bio-Rad, France)による検査結果で、12F10SAF60の抗体を使ったものである。
写真の左から、 MMとは、マジックマーカー、 その次のAtyp. BSEというのが、非定型BSE、 その次のReference 1 が、在来型BSEの一例目、 その次のReference 2 が、在来型BSEの二例目 である。

そこで、この三つを比較してみると、 一番左にある、グリコシル化(糖化)していない非定型BSEのPrPscがあり、これは、他の2者(Reference 1と2 )に比べて、 泳動(migration)が早い。
このようなPrPscをもつものを、非定型BSEとしている。

http://www.jarvm.com/articles/Vol2Iss1/DEBOSSCHERE.htm参照

これまで、非定型BSEとされるBSE牛が発見されたのは、日本(2003/10/07 月齢23ヶ月)イタリア(2003/10/12と 2003/10/22 11才と15才)、フランス(2004/01/17 Loire-Atlantique (2例), Cotes-d ‘Armor (1例), Creuse (1例), Loire (1例) Jura (1例) 計6件 8才から15才)、オランダ(2001/09/01 13才7ヶ月 )、ベルギー(2004/01/ 月齢64ヶ月)、デンマーク(2004/04/20 月齢88ヶ月)、ポーランド(2002/08/14 12才)である。
これらすべてが、同じプリオン類型を持つものではなく、類似性があるのは、日本とイタリアの例、そして、フランスとベルギーの例、などであるとされる。
これら非定型といわれるBSE牛の月齢を見ると、日本の23ヶ月は例外として、あとは、いずれも、年をとった牛である。
私は、今の段階で、ことさら、非定型BSEがあることを強調することは、次のいくつかの点で、問題があると思っている。
その第一は、ことさら、BSE分類に仕切りを設けることで、かえって、BSEの原因究明を遅らせてしまうのではないのかということである。
ことに、日本の場合、日本の8例目の若齢牛のケースを、異例のケースとしてしまうことによる原因究明のマイナスがあるのではないかということについての懸念である。
すなわち、いたずらに、BSEに境界線を引くことになって、原因究明なり安全対策にループホールを作ることにつながるというのが、私の懸念である。
もし、今回のBSE全頭検査廃止の線引きについて、8例目の若齢牛を非定型BSE牛としていたならば、検査除外のアシキリは、当初アメリカが主張したような月齢30ヶ月ラインにまで後退していたであろう。
その第二は、非定型BSEのプリオン類型が、日本の例とイタリアの例とで、類似していることから、性急に、イタリア肉骨粉の日本への輸入を、日本のBSE発生の原因と決めつけかねないことについての懸念である。
しかし、もう一方で、この非定型BSEの存在を、次のような仮説を持って見る動きもある。
すなわち、この非定型BSE( Bse ‘ ‘atypical ‘ ‘ Cases またはatypical histopathologic, immunohistochemical, or biochemical phenotypes)をBASE(Bovine Amyloidotic Spongiform Encephalopathy 牛アミロイド型海綿状脳症)ととらえ、CJDとの対応において、BSEとvCJDとの関連性、BASEとsCJD(弧発性CJD sporadicCJD )との関連性、をそれぞれ追及していこうというという研究の方向である。
この考え方の根底には、BSEは、実は、種を超えて牛、人間、羊、ヤギ、鹿、猫、その他300種類の動物にあるTSE(Transmissible Spongiform Encephalopathies)のうちの一部の問題であって、BSEとTSEとは、つながっているのではないかという想定がある。
また、「CJDの弧発性(sCJD)に対応するものが、弧発性BSEという形で、実はあるのではないのか?」という仮説も、そこにある。
フランスなどでは、羊の一般的なTSEであるスクレーピー(Scrapie)にも、非定型なもの(atypical TSE)が発見されているところから、アメリカのヘラジカ(Elk)も含めて、非定型のBSEと牛以外の非定型TSEとの接点を探る動きもある。
これは、Separate TSEという仮説にもつなかり、これまでのイギリスのBSE肉骨粉主因説に、大きく変更を迫りうる仮説にもなりうる。
これについては、http://www.mnbeef.org/BSE/background_on_the_research_into_.htmhttp://www.sulm.ch/PDF/pipette_1_04/BSE.pdf を参照。
これらの仮説は、vCJDとの関連で言えば、弧発性CJDも、実は、人畜一体の病気ではないかとの懸念もでてくるわけで、その意味では、今のvCJDの原因の解明にもつながる仮説であるともいえる。
非定型BSEについては、以下のサイトもご参照
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news_i/20040221so12.htm
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/10/h1006-2.html
http://www.ncnp.go.jp/nin/guide/r7/topics.htm
「非定型的」BSE なぞだらけの8頭目感染牛 全頭検査が発見決め手(解説)
海外伝染病発生状況(2004年1月
http://www.forth.go.jp/hpro/bin/hb2141.cgi?key=20041002-0010
http://www.sulm.ch/PDF/pipette_1_04/BSE.pdf
http://131.104.74.73/archives/fsnet/2003/10-2003/fsnet_oct_23.htm#atypical
http://www.prwatch.org/forum/archive/index.php/t-3231.html
Background on the Research into an Atypical BSE Strain
食品安全情報

http://www.jarvm.com/articles/Vol2Iss1/DEBOSSCHERE.htm
http://www.vegsource.com/talk/madcow/messages/93147.html
http://www.vegsource.com/talk/madcow/messages/93147.html

http://www.organicconsumers.org/madcow/review7101.cfm
http://www.dfvf.dk/Default.asp?ID=8147&M=News&PID=89507&NewsID=792
Atypical cases of BSE
BSE - FRANCE: DISTINCT MOLECULAR PHENOTYPES
BSE, ATYPICAL CASE - ITALY: OIE
BSE - JAPAN (04): ATYPICAL
http://www.prwatch.org/forum/showthread.php?t=4762
http://home.hetnet.nl/~mad.cow/
http://www.jarvm.com/articles/Vol2Iss1/DEBOSSCHERE.htm
http://www.dfvf.dk/Default.asp?ID=8147&M=News&PID=89507&NewsID=792
http://www.rense.com/general57/nfe.htm
Second case of mad cow disease discovered in Poland, more expected
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/highlight/02112901.htm
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/bse/news/04021701.htm http://brain.hastypastry.net/forums/archive/index.php/t-31100.html
http://www.pubmedcentral.nih.gov/articlerender.fcgi?artid=365745
http://www.southwestmeat.org/sma/Feb2404.pdf
http://www.organicconsumers.org/madcow/strain1704.cfm
http://www.newscientist.com/hottopics/bse/bse.jsp?id=ns99994689

Pet Food and Mad Cow Disease???
http://www.bseinfo.org/dsp/dsp_locationContent.cfm?locationId=1266
http://www.ncc.org.uk/risk/BSE_risk.pdf

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