2009/08/25 Tuesday
2009年8月25日
かねてからアメリカには、H1N1ワクチンを国民に皆接種させようとする構想があった。
これについては、わたくしの以前のブログ記事「アメリカが大規模なワクチン接種計画 」をご参照ください。
昨日のオバマ大統領へのPCASTレポート にもあるように、ワクチン不足であるにもかかわらず、この流れは止まっていないようだ。
むしろ、州単位や学校単位で、集団接種を行おうとする動きも加速してきているようだ。
アメリカでは、集団接種についてのキャンペーンも浸透してきつつあるようだが、同時に、それにつれて、集団接種の功罪論も浮上してきているようだ。
参照「Receive Free Neurological Disorder with Your Swine Flu Vaccination 」
そして、ここにきて、アメリカばかりでなく、いろいろな国に、国民皆接種なり集団接種の動きが出てきており、また、それについての功罪論も出てきているようだ。
まず、カナダであるが、アルバータ州で、学校の生徒に対して、皆接種プログラムを用意する動きがある。
しかし、これには意見がいろいろあるようで、固まったものではない。
反対意見としては、今回の新型は、季節性よりも弱い毒性をもつのだから、必要ない、などがある。
1957年の集団ワクチン接種の際のマイナスの教訓を生かせということだろう。
しかし、いついかなるときにも、集団接種の実施ができるように、ワクチンの確保はしておくということのようだ。
参照「Schools could be sites of mass vaccinations 」
ブリティッシュコロンビア州ではもっとシリアスなとらえ方をしていて、この分では、最悪、クリスマスまで学校を閉鎖しなければならないとまでいっている
しかし、そのことによる社会的なコストも考え、ここでも、ワクチン集団接種計画を樹立中であるという。
参照「Kids going back to school will cart H1N1 with them: BC medical officer 」
次にオーストラリアであるが、すでに集団接種計画は進んでいるが、国内的議論として、新型ワクチン接種において、通常二回のものを、一回に減らして、いち早く、広い範囲で集団接種を実施すべきとの議論があるようだ。
参考「Experts warn against hasty H1N1 flu vaccine 」
「No H1N1 ‘urgency’ exists and vaccine strategy ‘risky’ doctors say 」
イギリスでは、10月に一千三百万人を対象に集団接種が計画されているが、ここにきて、有識者から、集団接種に対する慎重論が政府に対して出されているようだ。
アメリカでの1976年の大失敗(1976’s debacle)を繰り返すな、というような論調で、集団接種による危険性を強調している。
参考「Swine flu vaccine linked to deadly nerve disease?」
スウェーデンは、一億四千二百万ドルの予算を設けて、9月末から10月にかけて、九百二十万人対象に集団接種をすることにした。
参考「Sweden allocates extra funds for swine flu vaccinations 」
ざっと見て、このような状況のようであるが、このような皆接種論や集団接種論が広まれば広まるほど、世界的なワクチンの不足と、各国われ先の入手傾向が強まるというわけだ。
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2009/08/25(Tue)
オバマ米大統領の科学技術諮問委員会(PCAST)が、これまでにまとめていた報告書を昨日オバマ大統領に提出した。
86ページにわたるPCASTの報告書の全文は、このサイト
「REPORT TO THE PRESIDENT ON U.S . PREPARATIONS FOR 2009-H1N1 INFLUENZA」
にある。
報告書の概要は、次のとおりである。
2009年H1N1インフルエンザウイルスは、1918−1919年のパンデミックとは、異なるもののように見える。
しかし、1976年のBenign(慇懃)なインフルエンザウイルスとは異なって、国家的脅威となりうるものである。
それ(脅威)は、今回のウイルスの致死性にあるのではなく、感染拡大性にあるからだ。
このことは、多くの人に免疫がないために、医療施設が満員になる可能性を秘めている。
そこで、PCASTとしての最大の勧告は、
�.錺�チン分配をハイリスクの人に優先的に分配すること。
��抗ウイルス薬の使用についてのガイドラインを明確にすること、
��パンデミックの進展状況を追跡している現在のシステムをアップグレードすること。
�ぅ僖鵐妊潺奪�の衝撃を緩和しうる公衆衛生情報の伝播を 強化しうるウェブ・ベースでのソーシャルネットワークや放送を含む広報活動戦略を進展させること。
�ゥ僖鵐妊潺奪�の進展に伴って、政府内中での重要決定を統合するのがホワイトハウスの誰なのかを明確にすること。
である。
特に強調すべきは、学校教育の現場におけるキャンペーンを強化することであるとしている。
報告書の目次は下記のとおり
I. Introduction and Charge
II. The U.S. Experience with Influenza Over the Last Century
III. Anticipating the Return of 2009-H1N1: Envisioning Scenarios
IV. Ensuring Adequate Data for Decision Making: Surveillance Systems
V. Responding to the Pandemic
VI. Lowering Financial and Regulatory Barriers to Effective Response
VII. Improving Communications
VIII. Planning for More Effective Future Strategies Against Influenza
参考
「President’s Council of Advisors on Science and Technology (PCAST)
releases report assessing H1N1 preparations 」
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2009/08/21 Friday
2009年8月21日
H1N1新型インフルエンザワクチンの製造が遅れているのは、何も、日本ばかりではない。
アメリカでも、10月15日までに用意できるワクチンは、四千五百万人分(一人二回接種で、用意されているのは九千万服、当初の最初の接種対象予定者数は一億六千万人)に過ぎないという。
その後は、一週間ごとに二千万服が追加に用意されるという。
そこで、今話題になっているのが「ワクチン分配の最適化」という課題。
昨日のScienceで話題とされた(「サイエンスに発表した」のではありませんね。サイエンスのサイトのなかの「Science Podcast」という音声ラジオで、この研究者Jan Medlockとのインタビューがあり、話題になったということです。お聞きになりたい方は、こちらをクリック 。また、ラジオの内容を文章で知りたい方はこちらをクリック 。そのへん、日本のマスコミも、原典を当たっていないのか、いいかげんですね。)のが、Yale and Clemson universitiesのJan Medlockさんと、Alison P. Galvani さんの「Optimizing Influenza Vaccine Distribution 」という論文。
この論文自体は、今月8月3日に発表になったものらしい。
数学者のようだ。
ワクチンの最初の分配が、5歳から19歳の子供と、30歳から39歳の大人に分配されると、最適化されるというのだが。
前提として、今回のH1N1パンデミックが、1957年のパンデミックよりも厳しく、1918年のパンデミックよりも、弱い、として
1人の感染者が、他人に感染をうつすのは、1.4人として
1日あたり、7290人の人々が97904人の感染者を生む、という勘定になる。
ここで、同世代間の感染のミキシングが猛烈におきるのは、学校のクラスメート間と、それらの生徒たちが家庭に帰っての、それぞれの両親との間である、と見る。
そこで、これらの感染のミキシングが起きる可能性の強い世代に、優先的にワクチン接種をしていけば、効果的となるというのが彼らの理論で、この計算によると、アメリカ全土で、この世代に必要とされるワクチンは、六千二百万服から六千三百万服ですむという。
そこで気になるのは、この数学者のモデルに対するCDCの評価だが、CDCでは、「われわれが採用しているのは、単一モデルではない。多くの前提条件を考慮しなければならない。」と一蹴しているようだ。
参考
「The CDC should rethink its H1N1 vaccination strategy, study says 」
「Study questions U.S. flu vaccine guidelines 」
「Flu Shot Targets Should Be Kids, Parents 」
「Study: Vaccinating school kids best to stop flu 」
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2009/08/20 Thursday
2009年8月20日
以前、 わたくしのブログ記事
「流行性脳脊髄膜炎ってなんだ?」
や
「「細菌性髄膜炎、日本もワクチン承認へ」という朝日新聞の記事について 」
のなかで、インフルエンザ脳症とインフルエンザ髄膜炎とを混同する人が多いので、その正確な違いをのべたことがあった。
また、その節は、実際、髄膜炎にかかったお子様をもつ主婦のかたなどからも、メールをいただき、この病気の持つ深刻さを身近に感じることとなった。
ここに来て、今度は、全国各地で、H1N1新型インフルエンザ感染に伴うインフルエンザ脳症を発症する子どもが増えてきて、報道各紙も、インフルエンザ脳症についての記事を書いているのだが、それらの記載の中には、「急性脳炎(インフルエンザ脳症)」 などとの記載もあったりして、対象の子供さんをもたれる親御さんには、誤解を与える節も、見られる。
あるいは、以下に述べるIAEとANEとの違いを無視した書き方をして、親御さんに過剰に心配を与える書き方をしている記事も散見される。
そこで、ここに、インフルエンザ脳症についての、正確な定義をしておく必要があると思う。
インフルエンザ脳症と脳炎・インフルエンザ髄膜炎とは異なる
まず、インフルエンザ脳症と脳炎(ヘルペス脳炎など)とインフルエンザ髄膜炎とは、いずれも異なるものであることを認識する必要があるものと思われる。
脳炎は、ウイルスなどの病原体が、直接、脳に炎症を起こすものであり
インフルエンザ髄膜炎は、髄膜や血管周囲の炎症を起こすものであるが
、
インフルエンザ脳症は、この上記のいずれでもなく、
血管内皮細胞が障害を起こすことによるものである。
この場合、ウイルス感染によって、血中や髄液中に、炎症性のサイトカイン、サイトカイン受容器を増加させ、このことで、血管透過性を亢進させ、血管内皮細胞が活性化させられたり、障害(アポトーシス-細胞の自滅死-が起こる)を生じさせたりすることで、血栓などが形成されやすくなるために、脳症が起こるものとされている。
近時になって、核膜孔たんぱく質〔Ran Binding Protein 2 (RANBP2)〕の変異を原因とする説もあるようだ。
参考「Infection-Triggered Familial or Recurrent Cases of Acute Necrotizing Encephalopathy Caused by Mutations in a Component of the Nuclear Pore, RANBP2 」
なお、インフルエンザ脳症に対応したワクチンはないので、お間違いないように。
(どうも、この点に混乱があるのは、おそらく、インフルエンザ髄膜炎対応のHibワクチンに、名前だけは、「インフルエンザ菌b型(Hib)対応」とついているせいなのでしょう。でも、こちらのHibのほうは、ウイルスではなく、ヘモフィラス属(Haemophilus) のバクテリアであるのでくれぐれもお間違いないように。かつてインフルエンザの原因と間違われたため、インフルエンザの名が付いたままなんですね。本当に紛らわしいです。)
インフルエンザに伴う脳症にはIAEとANEとがある
今回のH1N1新型インフルエンザに伴う脳症は、正確には、
� �Influenza-associated encephalopathy; IAE)」(インフルエンザウイルス関連脳症)
または
�◆�Influenza A virus-associated acute necrotizing encephalopathy;ANE」(急性壊死性脳症)
と呼ばれるものだ。
�,鉢△箸琉磴い任△襪�、�△蓮↓,茲蠅癲△�なり重篤な状態である。
�,�ら�△悗反陛犬靴Δ覦貘里里發里塙佑┐燭曚Δ�いいようだ。
�,涼奮�でとどめられるような早期治療が必要のようだ。
なぜ日本人に多いのか
これらのいずれも、従来は、アジアに特有に見られた病気であったが、近年、北米にも見られるようになったようだ。
アジアの中では、日本が一番多く、続いて台湾が多いようだ。
続いては、アメリカ、カナダ、ヨーロッパといったところだが、症例は少ない様だ。
なぜアジア人に多いのかは、諸説あるようだが、
�^篥岨凖�特質によるもの、
��日本人が、エフェドリン、ジクロフェナクナトリウム(Diclofenac Sodium)アスピリン(大人用バファリンなど)などを大量服用していたり、強い解熱剤〔ポンタ−ル(メフェナム酸)やボルタレン(ジクロフェナクNa)〕を子どもに処方していたこと
などがあげられている。
また、インフルエンザB型関連よりも、圧倒的にインフルエンザA型関連が多いのだが、その理由はよくわからないようだ。
患者には、A型インフルエンザ・ウイルスとヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)または、ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)(いずれもヘルペス脳炎の原因となるウイルス)とに、ともに重複感染している例があるが、その関係についても、まだ、よくわかっていないようだ。
ANEの名付け親は、日本の水口雅さん
この�△痢�Influenza A virus-associated acute necrotizing encephalopathy;ANE」(急性壊死性脳症)をなずけたのが、意外にも、日本人の水口雅さんである。
水口さんの研究グループは、1995年にJ Neurol Neurosurg Psychiatry誌において、「Acute necrotizing encephalopathy of childhood:a new syndrome presenting with multifocal, symmetric brain lesions」との論文(日本語では、「小児急性壊死性脳症」小児内科28(8): 1125-1129, 1996.)を発表している。
診断基準・症状・病理学的特徴
ANEについての診断基準については、このサイト「Final Diagnosis — Influenza associated acute necrotizing encephalopathy 」に、水口さんの診断基準も交えて、詳しく紹介されている。
特に、急性壊死性脳症(ANE)と類似症状を見せる、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)や急性出血性白質脳炎(AHLE)との見分けがキーポイントのようである。
以上の�´△魄貘里里發里箸靴討澆襪函△修両評�は
1.発熱、
2.急速な意識障害と痙攣、発作
3.咳.
4.嘔吐
5.下痢
である。
病理学的特徴(pathological feature )については、このサイト「Summary of the neuropathology of ANE in the acute stage」 に、2009年3月(まだ、今回の新型インフルエンザウイルスが公表される前の時点)でのOvid Medline の10症例がまとめられいる。
罹患した子どもの共通点は?
これらの症例から、ANEに罹患した子どもたちには、三つの共通点が見られたという。
�_甬遒傍ご瓢搜誕�、アトピーを持っていた。
�⊃牲仂評�をあらわす直前に、プレドニゾロン(prednisolone) や セレスタミン(celestamine)などの免疫調節薬を服用していた。
�F鷭鬼岼米發�A型 H3 やH1 インフルエンザにかかっていた。
なにはともあれ、まずタミフルを
ANEの致死率は、28-30パーセントと高い。
治療法としては、決定的な治療とはならず、支持的(Supportive)な治療にとどまるが
1.抗ウイルス薬による治療、
2.メチルプレドニソロンパルス療法(Methylprednisolone Pulse Therapy)
3.免疫グロブリン(IgG)の大量投与
4.コルチコステロイド大量投与
などがある。
下記のCDCレポートでの例もあるが、
『一刻も早い抗ウイルス薬の投与を』
というのがキーポイントのようである。
アメリカのCDCの報告書では?
なお、アメリカのCDCでは、先月7月24日のMMWRレポート『Neurologic Complications Associated with Novel Influenza A (H1N1) Virus Infection in Children — Dallas, Texas, May 2009 』において、アメリカ国内でH1N1合併症としてインフルエンザ脳症を発症した4人の患者の分析をしている。
これは、テキサス州ダラス・カウンティ内の病院に入院した7歳から17歳までの4人の患者の症例について報告したもので、感染した者のうち、脳脊髄液にではなく、鼻咽頭検体にウイルスが検出された患者についてみてみると、そのうちの三人に、異常な脳波図が見られたという。
4人は、すべて、抗ウイルス薬(タミフルは4人全員に、アマンタジンは3人に、処方)によって、なんらの神経症状もなく、回復し、退院したという。
このことから、この報告書では、今回のH1N1新型インフルエンザ・ウイルスの感染によって、呼吸器感染症となった後、神経系の合併症を起こすことがある、といえるとしている。
そして、特に子どもにおいては、原因不明の発作や精神状態の変化を伴った、インフルエンザ状の症状があった場合には、臨床医は、患者よりの呼吸器検体を鑑別診断にまわすとともに、その検査結果を待たないで、迅速に、抗ウイルス薬の投与に当たるべきである、としている。
なお、このアメリカのCDC報告書についてのイギリスのNHS Choicesの評価がこのサイト「Brain problems from swine flu 」にある。
今回のH1N1関連インフルエンザ脳症についての、世界での公式的な報告書は、このCDCのものだけのようであるが、それにしても、日本での症例が多いのが気にかかるところだ。
参考
1..今日までの日本国内でのH1N1新型インフルエンザ関連脳症発症者一覧(随時更新)
なお、厚生労働省の発表では、8月21日現在の発症例は6例としている。
01例目 7月19日 川崎市内の小学生男子児童(7)
02例目 7月23日 栃木県芳賀郡の小学生女子児童
03例目 7月24日 大阪府岸和田市の小学2年男子児童(7)
04例目 8月04日 大阪府豊中市の幼稚園の男児(5)
05例目 8月11日 茨城県の男児(4)
06例目 8月14日 宮崎市内の中学2年男子生徒(14)
07例目 8月19日 川崎市の男児(6)
08例目?8月20日 沖縄・与那国島の男性(47)
09例目 8月22日 千葉県市原市の小2女児(7)
10例目?8月24日 沖縄・本島(南部保健所管内在住)の男子小学生(8)
11例目 8月27日 岩手県一戸町の女子中学生(12)
12例目 8月31日 愛知県春日井市の小学生男児(9)
13例目 8月31日 静岡県焼津市の男児(4)
14例目 9月01日 栃木県太田原市(県北健康福祉センター管内)男子小学生
15例目 9月01日 奈良市の小学2年生男児(7)
16例目 9月02日 静岡県静岡市清水区の男児(6)
17例目 9月08日 神奈川県横浜市の小学5年生の男児(11)
18例目 9月14日 神奈川県平塚市の女児(5)
19例目 9月19日 滋賀県守山市の小学1年男児(7)−22日死亡
20例目 9月24日 和歌山市の男子中学生(12)
21例目 9月25日 京都市西京区の女児(6)
22例目 9月25日 京都市北区の男児(2)
23例目 9月25日 北海道江別市の女児(9)
24例目 9月25日 岩手県花巻市の女子児童(10)
25例目 9月29日 栃木県宇都宮市の女子小学生
26例目 10月01日 大阪府高槻市の男児(5)
27例目 10月06日 横浜市青葉区の男児(10)
28例目 10月09日 横浜市磯子区の女児(4)
29例目 10月09日 新潟市の男子小学生(8)
30例目 10月13日 東京都の男児(4)-死亡
31例目 10月14日 愛知県清須市の男子高校生(16)-死亡
32例目 10月14日 兵庫県西宮市の小学2年の女子児童(8)-死亡
33例目 10月22日 東京都の男児(3)-死亡
34例目 10月28日 福島県県北地方の男児
35例目 11月04日 新潟県新潟市の幼児3人
38例目 11月08日 埼玉県深谷市の男児(3)-死亡
39例目 11月13日 三重県伊賀市の女児(生後9ヶ月)-死亡
40例目 11月18日 栃木県の男性(60歳代)-死亡
41例目 11月25日 鹿児島県の女性(30歳代)-死亡
42例目 11月25日 栃木県の小学2年生女子(8)-死亡
2.James J. Sejvar博士との質疑応答
「Q&A with CDC Neuroepidemiologist James J. Sejvar, MD」のビデオ より
概訳
質問
H1N1の合併症に急性または遅発性の神経性合併症は見られますか?
答え
これまでのところ、H1N1においては、神経上の病気や事象は見られていない。
しかしながら、進行中のサーベイランスにおいては、これらの潜在的な合併症のアセスを行っている。
季節性インフルエンザの場合には、珍しいケースではあるが、特に子供たちの中に、IAE(インフルエンザウイルス関連脳症)が報告されている。
この脳症の基礎的なメカニズムについては、まだ、よくわかっていない。
IAE(インフルエンザウイルス関連脳症)は、インフルエンザ状の症状を示した後、2-3日から一週間の間に、神経的な兆候を現す。
症状としては、熱、神経状態の変化が一般的であり、また、発作がしばしば報告されている。
限局性神経症状としては、不全麻痺、運動障害、脳神経痙攣、失語症などが進展する。
脳髄液細胞増加の欠如やたんぱく質レベルの正常で穏やかな上昇を伴っておるため、脳脊髄膜炎は一般的には、目立たない。
IAEは、しばしばインフルエンザA型感染に見られ、特に、H3N2型ウイルス感染に見られるが、インフルエンザB型に見られることも報告されている。
H1N1についても、同様の症例と関連しているかどうかについては、わからない。
ANE(急性壊死性脳炎)は、これまで、季節性インフルエンザについて、述べられてきた。
ANEは、劇症で単相の経過をたどることに特徴がある。
すなわち、神経映像からは、特に視床や脳幹における多発性脳壊死障害が見られる。
そのほかの神経的症状としては、急性炎症性脱髄性多発ニューロバチー(AIDP),急性撒種性脳脊髄炎(ADEM)、横断脊髄炎(TM)、上腕動脈神経炎、などが季節性インフルエンザ関連では見られるが、症例は、少数である。
原文
6. Are there immediate or delayed neurologic complications of H1N1 flu?
To date, no neurologic illnesses or events have been seen in the H1N1 cases. Ongoing surveillance is being conducted to assess these potential complications, however.
In the setting of seasonal influenza, rare cases of influenza-associated encephalopathy (IAE) have been reported, particularly among children. The underlying mechanism of the encephalopathy is not well understood. IAE is characterized by the occurrence of neurologic symptoms within a few days to a week following initial influenza-like illness; fever and altered mental status are common, and seizures are frequently reported. Focal neurologic signs, including paresis, movement disorders, cranial nerve palsies, and aphasia, may develop. CSF is generally unremarkable, with absence of pleocytosis and normal or mildly elevated protein levels.
IAE has been more frequently reported with influenza A, especially with A (H3N2) virus infection, but has been reported with influenza B. We do not know if the H1N1 strain might be associated with similar cases. Acute necrotizing encephalopathy (ANE), a particularly severe manifestation of para-infectious encephalopathy, has been described with seasonal influenza. ANE is characterized by a fulminant and monophasic course; multifocal necrotizing brain lesions predominant in the thalami and brainstem are seen on neuroimaging.
Case reports of other neurologic features, including acute demyelinating inflammatory neuropathy (AIDP), acute disseminated encephalomyelitis (ADEM) and transverse myelitis ™, as well as brachial neuritis have also been reported in the setting of seasonal influenza, although such reports are few.
Whether these neurologic features might be observed in the setting of H1N1 influenza infection is not known.
3.「Influenza A virus-associated acute necrotizing encephalopathy in the United States 」
4.「インフルエンザ脳症 」
5.「インフルエンザ脳症ガイドライン 」
6.「H1N1 Can Cause Neurologic Complications in Children 」
7.「Influenza on the brain 」
8.「医療の確保、検疫、学校・保育施設等の臨時休業の要請等に関する運用指針(改定版)」 平成21年6月19日厚生労働省発表
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2009/08/19 Wednesday
2009/08/19(Wed)
抗原原罪(original antigenic sin) という聞きなれない用語だが、要は、こういうことだ。
この秋のH1N1インフルエンザ・ウイルスの到来にそなえて、従来の�ゝ╂畧�インフルエンザ用のワクチン注射と、今回の��H1N1新型インフルエンザ用のワクチンの両方を、前者�,鮑能蕕肪躰佑掘�後者�△鮓紊肪躰佑靴疹豺隋↓,鉢△箸剖δ未離┘團函璽�( epitope、抗体が認識する抗原の一部分)に対する抗体は迅速に産生されるが、�△砲和減澆垢襪��,砲和減澆靴覆ぅ┘團函璽廚紡个垢觜蛎里蓮∋裟犬気譴觜蛎里領未�著しく低くなるということである。
この現象があるということは半世紀前からわかっていたが、その仕組みは、まだ、よくわかっていないらしい。
このCIDRAP(Center for Infectious Disease Research & Policy )のサイト「‘Original antigenic sin’: A threat to H1N1 vaccine effectiveness?」 では、そのへんを次のように述べている。
最初に三種の季節性インフルエンザ・ワクチンを接種し、二週間後にH1N1新型インフルエンザ・ワクチンを接種した場合、多くの抗体については、季節性インフルエンザ対応三種混合ワクチンにふくまれるH1N1ウイルスのA/Brisbane/59/2007のコンポーネントとH1N1新型インフルエンザ・ウイルス(A/California/04/09と思われる。)のコンポーネントは、マッチする。
問題は、この両者にマッチしないコンポーネント部分だ。
ここに、抗原原罪(original antigenic sin)現象が生じるかどうか、つまり、この例でいけば、H1N1新型インフルエンザ・ウイルスにしかないコンポーネントについて、抗体ができにくい抗原原罪現象がおきれば、今回のH1N1新型インフルエンザ・ワクチン接種の効果は、著しく減じられてしまうのだ。
この点について、最近、the Journal of Immunologyに発表されたアトランタのEmory University Vaccine Centerのマウスによる研究「Original Antigenic Sin Responses to Influenza Viruses 」によれば、次のとおりの実験をしたとのことである。
すなわち、第一グループのマウスには、��PR8 と ��FM1 という二種類の1930年代から1940年代にかけてヒトにみられたH1N1ウイルスを、この順序で、不活性ワクチンを連続接種したマウスに感染させ、第二グループのマウスには、ふたつのウイルスのDNAから生成したワクチンを接種し、第三グループのマウスには、生のウイルスを感染させ、いずれも、その間隔を一ヶ月とした。
これらの実験でわかったことは、�△旅蛎里蓮↓,茲蠅眈�なかったということと、生ウイルスを感染させたものほど、抗原原罪現象は大きかったということ、などということだった。
また、第一回目の感染が、第二回目の感染を、抗体反応において、だませるかどうかは、両者のコンポーネント間の近接性(Distance)に依存していると、されている。
つまり、今回のH1N1新型インフルエンザウイルスのコンポーネントと、季節性インフルエンザワクチンに使われているA/Brisbane/59/2007のコンポーネントのあいだのDistanceが広ければ広いほど、抗原原罪現象は、おきにくいというわけだ。
そして、専門家の間では、たとえ、抗原原罪現象がおきたとしても、後に接種するH1N1新型インフルエンザワクチンの接種量を 多くすれば、抗原原罪現象を避けることができるという。
ただ、不活化ワクチンを使うか、生ワクチンを使うかによっても、抗原原罪現象は、左右されるという。
この点については、季節性ワクチンに生を使えば、新型インフルエンザワクチンにも、生ワクチンを使うほうが、抗原原罪現象を避けうるとしている。
また、季節性ワクチンと新型インフルエンザワクチンとの接種において、同時がいいのか、それともずらしたほうがいいのか、についてだが、確たる根拠はないが、おおむね二週間間隔というのが、相場のようだ。
これらの抗原原罪現象は、プレ・パンデミック・ワクチンについても、懸念されうる現象であり、今後とも、議論を呼びそうなテーマだ。
注−この抗原原罪は、1979年に、Lancetにおいて「Assessment of inactivated influenza-A vaccine after three outbreaks of influenza A at Christ’s Hospital . Lancet,i:33–35, 1979.」との論文上で仮説を提示したHoskins, T. W氏に由来して、「ホスキンス効果」または「ホスキンス仮説」(Hoskins’s Hypothesis )といわれもする。
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2009/08/17 Monday
2009/08/17(Mon)
現在、夏の暑い間も感染拡大を続けているH1N1新型インフルエンザウイルスだが、今後、このウイルスの二種類の変異が、秋以降の第二波の社会に与える深刻度を左右するものと見られている。
すなわち、懸念される二種類の変異とは、
�.織潺侫訛兩�をもたらしうるウイルスの変異
N2における
H274Y変異(Rikenのナンバーリングでは、H222Yとなる。)
NIとN2における
N294S変異
��低温での感染を促進し、感染によるヒトへの劇症性をもたらしうるウイルスの変異
PB2における
E627K変異
D701N変異
S714R変異
PBにおける
L13P変異
PAにおける
K615R変異
である。
このうち、�,里Δ舛梁緝重�な変異は、H274Y変異であり、�△里Δ舛梁緝重�な変異は、E627K変異である。
すなわち
H274Y変異
は
N2シーケンスの271番から280番において
変異前シーケンス
PNYH YEECSCY
変異後シーケンス
PNYY YEECSCY
となっており、
E627K変異
は
PB2シーケンスの625番から635 番にかけて
変異前シーケンス
PPE QSRMQFSS
変異後シーケンス
PPK QSRMQFSS
となっている。(以上は、A/Shanghai/71T/2009(H1N1)を例としている。)
現在の状況をみてみると、�´△瞭鵑弔亮鑪爐諒儖曚里Δ繊�懸念されているのは、�,諒儖曚任△蝓↓△諒儖曚砲弔い討蓮�特に、冬のインフルエンザ・シーズンを迎えている南半球を見てみると、懸念された�△諒儖曚蓮�A/Shanghai/71T/2009 をのぞいては、起こっていないようだ。
したがって、今後、懸念されるのは、�,�H274Y変異ということだが、これについては、私のブログ記事『タミフル耐性ウイルスの世界的な広がりが、H1N1感染死者数を増しているのではないかとの、ニーマン博士の見方 』
でもかいたとおり、予想以上の変異の広がりが見えるようだ。
�△諒儖曚郎8紊△襪�どうかわからないが、今のところは、ないとして、現在流行中のH1N1インフルエンザウイルスが、当初懸念された南半球での変異がみられずに、秋に北半球に、第二波として帰ってきたとしても、今回の沖縄の死亡例にも見られるように、合併症を持った患者にとっては、�,諒儖曚里△襪覆靴砲茲辰董�大きな影響をこうむることになる、という予測がされうる。
さらに、すでにわたくしの5月6日のブログ記事『今回の新型インフルエンザにはもうひとつの影の主役がいるのでは?との見方 』で懸念していたことではあるが、季節性インフルエンザウイルスであるA香港(H3N2)型に、現在の北半球における季節的なインフルエンザ対応三種混合ワクチン(2009-10北半球3価不活化インフルエンザワクチンの成分は、A型としては、H1N1の、A/Brisbane/59/2007; H3N2の、A/Brisbane/10/2007;B型としては、B/Victoria系のB/Brisbane/60/2008 の三種 )に対応し得ない変異がすでに生じているかどうかも、懸念の一部としては、ありうる。
参考
.
この図 は、過去にバンデミックとなったインフルエンザ(1889-92.1915-19.1957-63.1968-70)の第二波の到来がどのようで、死亡率の分布がどのようであったことを示した興味深い図です。
ピンクのバーが、通常の季節性インフルエンザで、ブルーのバーが、パンデミック時の波です。
B(1915-1919)においては、最初の夏の波は穏やかなものであったのが、次の冬の二回にわたる波においては、シビアなものとなっています。
C(1957-1963)においては、最初の5年間で、3冬に波がきています。
D(1968-1970)は、イギリスの例ですが、ここにおいては、最初の波は穏やかなものであったが、次の冬における第二波は、シビアなものであったといいます。
「The Signature Features of Influenza Pandemics — Implications for Policy 」より
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2009/08/15 Saturday
2009/08/15(Sat)
本日発表された日本の沖縄県の死亡者のH1N1ウイルスのシーケンスの詳細がわかっていないので、なんともいえない段階なのだが、今年の6月末に、デンマークで、第一号のタミフル耐性を持ったH1N1ウイルスが発見されて以来、世界では、確実に、タミフル耐性を持ったウイルスの発見が増えてきている。
すなわち、これまで発見されたタミフル耐性を持ったH1N1ウイルスは下記のとおりであり、そのほとんどが、H274Y変異を持ったものであった。
�.妊鵐沺璽�
A/Denmark/528/2009 6月29日
��日本・大阪
A/Osaka/180/2009 6月18日
�C羚顱�香港←サンフランシスコ
A/Hong Kong/2369/2009 6月11日
�ぅ疋潺縫�共和国
A/Santo Domingo/572N/2009 7月6日
�ゥ�ナダ・サスカッチャン
7月7日
�γ羚顱�浙江
A/Zhejiang/DTID-ZJU01/2009 7月8日
��日本・札幌←ハワイ
A/Sapporo/1/2009 7月10日
�┘好撻ぅ鵝Ε�タロニア
A/Catalonia/387/2009
��スウェーデン・バストラゴッタランド
A/Stockholm/37/2009
��日本・山口
A/Yamaguchi/22/2009 7月21日
��カナダ・ケベック州
7月22日
��日本・徳島
(A/Tokushima/1/2009 ?) 7月28日
��日本・岩手
A/Iwate/1/2009 ? 7月30日
��ブラジル
A/Sao Paulo/2233/2009
��アメリカ・テキサス-メキシコ 国境
A/Mexico/4646/2009 8月7日
�哀織�
(A/Thailand/104/2009 ?)
�吋轡鵐�ポール←ハワイ
A/Singapore/57/2009 8月14日
�加羚顱Ω估�
A/Hunan/SWL3/2009
�鈎羚顱�香港
8月15日 21人からタミフル耐性ウイルス検出
�乾▲瓮螢�・ワシントンHenderson County (←Buncombe County,Florida)2例
A/Washington/28/2009、A/Washington/29/2009 8月21日
21.日本・滋賀
A/Shiga/3/2009 ? 8月28日
22.アメリカ・ノースカロライナ
8月28日
以降
9月9日
Israel
9月12日
Alberta,
9月14日
Australia,
これらのケースの多くは、予防的治療の段階では、いずれも穏やかな症状を示しているものが多く、劇症を呈し始めて、初めて、その患者にタミフル耐性があることがわかるケースがほとんどであったという。
したがって、ニーマン博士は、この表面的に現れたタミフル耐性の数以上に、タミフル耐性の報告の遅れも影響し、想定される以上の裾野の広いタミフル耐性ウイルスの広がりがあるのではないかと推測している。
そして、その裾野の広がりの大きさが、タミフルを処方しても、すでに合併症を引き起こし、死に至っているケースが多いのではないのかと、推測している。
今日の沖縄の新型インフルエンザ死亡例がそうではないことを祈るばかりではあるのだが。
参考
「H1N1 : Rising Death Toll Linked to Tamiflu Resistant Pandemic H1N1?」
「Influenza Research Database 」
recombinomics.com
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2009/07/26 Sunday
アメリカの総合保険組織が今回発表した見通しでは、今後24ヶ月以内に、アメリカ人口の40パーセントが、H1N1新型インフルエンザに感染するであろうとしている。
この見通しの基礎となっているのは、およそ七万人の死者を出した1957年のデータであるとのことである。
このときは、1918年から1919年にかけてのスペイン風邪ほどのものではなかった。
また、この見通しとして、一億二千万人がH1N1新型インフルエンザに感染し、ワクチン・キャンペーンが成功しなかった場合には、死者の数は、数十万人に上るとしている。
この感染度は、通常の季節性インフルエンザの二倍になるという。
しかし、もし、インフルエンザワクチンがタイミングよく手当てされていれば、そのようなことにはならず、ひとえに、ワクチンの手当ての如何が、その感染拡大の帰趨を決めるものだとしている。
CDCは、検査が順調にパスすれば、この10月には、一億六千万服のワクチンの手当てが可能であるとしている。
ワクチンの検査はまだ始まってはいないが、、8月には、千人のボランティアによって、アメリカ八箇所で始まるとされている。
一方、アメリカ医学協会の調べによれば、毎年、通常のインフルエンザによって、およそ三万六千人が、死亡しているという。
WHOによれば、この24ヶ月以内に、二億人が感染するであろうとしている。
そのことから、WHOでは、学校閉鎖を各国に要請しているという。
現在、もはや、実際の感染者数の把握は困難となっており、いったん医者にいって軽い風邪の症状のために自宅に帰されたり、医者に行かずに自宅で一般用医薬品(OTC)の服用によって治癒するケースが多いと見られている。
そのようなことから、CDCでは、4月以来のアメリカでの新型インフルエンザ感染者数は、すでに百万人以上になっていると見ている。
参考
「Swine Flu Might Infect 40% Of The US Population In The Next 24 Months 」
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2009/07/14 Tuesday
2009/07/14(Tue)
新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)に対する免疫を持つ可能性があるのは、スペイン風邪が流行した1918年以前に生まれた90歳以上に限られることが、河岡義裕・東京大学教授らの研究で分かった。
60代以上に免疫があると予想した米疾病対策センターと違い、ほとんどの年代が感染する危険性があると指摘しており、13日付英科学誌ネイチャー電子版に掲載された。
本文は、、このサイト
「In vitro and in vivo characterization of new swine-origin H1N1 influenza viruses 」
で読むことができる。
再び、A/WSN/33(H1N1)(1933年に人から分離されたH1N1インフルエンザウイルス)の亡霊が呼び戻された形だ。
分析の対象となったウイルス名は、下記の通り
A/California/04/09 (CA04)
A/Wisconsin/WSLH049/09 (WSLH049)
A/Wisconsin/WSLH34939/09 (WSLH34939)
A/Netherlands/603/09 (Net603)
A/Osaka/164/09 (Osaka164).
A/Kawasaki/UTK-4/09 (H1N1)
A/Kawasaki/UTK-23/08 (H1N1).
A/duck/Alberta/35/76; H1N1
A/swine/Hokkaido/2/
A/Victoria/3/75 (H3N2)
A/WSN/33 (H1N1
なお、上記のウイルスのうち、A/California/04/09 (CA04)については、4月28日に東京大学医科学研究所ウイルス感染分野ならびに感染症国際研究センターが米国疾病予防管理センター(CDC)より分与を受けたもので、5月1日に日本に到着したものである。
また、
A/Kawasaki/UTK-4/09 (KUTK—4)A/Kawasaki/UTK-23/08 (H1N1)は、タミフル耐性のある患者からのウイルス、
A/Victoria/3/75 (H3N2)は、季節性インフルエンザウイルス
A/Wisconsin/WSLH049/09 と A/Netherlands/603/09 (H1N1)とA/Osaka/164/09 (H1N1)は、非劇症型症状の感染者から採取されたもの
A/Wisconsin/WSLH34939/09 は、病院の患者から採取されたもの、
A/duck/Alberta/35/76 H1N1は、「Characterization of the Reconstructed 1918 Spanish Influenza Pandemic Virus」
http://www.eclips.consult.com/eclips/article/Medicine/S0084-3873(08)70357-2
でも使われた鳥インフルエンザウイルス
A/swine/Hokkaido/2/は、北海道大学大学院獣医学研究科微生物学教室取得のクラシックな豚インフルエンザウイルス
A/WSN/33 (H1N1)は、スペイン風邪から合成のウイルス
ということだ。
ちなみに、今回の河岡教授の研究と対照的な結果を出したCDCの「1957年以前生まれ人間免疫説」研究で分析に使用した新型インフルエンザウイルスも、河岡教授が使用したウイルスとおなじ、A/California/04/2009 であった。
今回マスコミが注目している「新型インフルエンザに対する免疫を持つ可能性があるのは、スペイン風邪が流行した1918年以前に生まれた90歳以上に限られる」の部分についてだが、ここの点は、CDCが以前に発表した「1957年以前生まれ人間免疫説」と対立する点である。
分析の対象は、河岡グループもCDCももおなじ
A/California/04/09
である。
CDCのほうは、これまでのワクチン研究で集めてきた保存血清見本を 使って、今回の新しいH1N1に対して、交差反応抗体のレベルをコホート別に検証したものである。
参考
「詳説-1957年以前生まれ人間には、新型インフルエンザに対する免疫をもつとの説 」
河岡教授のほうは 、
1999年に老人ホーム入居者及び職員から集めた血清(ドナーグループ1)
と
2009年4月に病院の入院患者と職員から集めた血清(ドナーグループ2)
について、
KUTK-4(A/Kawasaki/UTK-4/09 (H1N1)(普通の季節性インフルエンザウイルス)
と
CA04(A/California/04/09 )(今回の新型インフルエンザウイルスで、感染拡大の初期にメキシコからカリフォルニアへわたったと思われるもの)
に対する抗体価を検証したところ、
ドナーグループ1は、CA04(A/California/04/09 )に対し、高い抗体価を示した人が多かったのに対して、
ドナーグループ2は、KUTK-4(A/Kawasaki/UTK-4/09 (H1N1)に対し、高い抗体価を示した人が多かったということ
また、ドナーグループ2は、CA04(A/California/04/09 )に対しては、高い抗体値を示したのは、1918年以前生まれが2人と,1977年,1978年生まれが各1人いた、ということだ。
その図が、このサイト
の4ページの「Figure 3 | Neutralization activities in human sera against viru」にかいてある。
ただ、疑問に思うのは、ドナーグループ2(2009年4月に病院の入院患者と職員から集めた血清)が、すでに、どの程度、新型インフルエンザウイルスに曝露されているのか、それとも、全然、新型インフルエンザウイルスには曝露されていなかったのかがよくわからない。
(論文には、”collected in April and May of 2009″と書いてある。
もし、この時点だとすると、新型はすでに4月には、国内に進入しているとの説もあるので、曝露の機会があったのかどうかについての検証が必要な気がする。)
それと関連するのだが、CA04(A/California/04/09 )に対して、高い抗体値を示した人が、1918年以前生まれの2人だけでなく、1977年,1978年生まれ各1人いたということは、これらの人は、過去にいかなるウイルスに曝露されていたんだろうか?、という素朴な疑問もわいてくる。
参考
「Swine flu is worse than seasonal flu, research suggests 」
「詳説-1957年以前生まれ人間には、新型インフルエンザに対する免疫をもつとの説 」
「Serum Cross-Reactive Antibody Response to a Novel Influenza A (H1N1) Virus After Vaccination with Seasonal Influenza Vaccine 」
http://www.nature.com/news/specials/swineflu/index.html
2009/07/11 Saturday
2009年7月10日
本日GenBankに登録された日本の札幌の患者から6月15日に採取されたウイルス(A/Sapporo/1/2009)のシーケンスが、4月にニュージャージーで採取されたベルギーからきた22歳の女性患者からのウイルス(A/New Jersey/1/2009A)のシーケンスと一致したという。
この日本のA/Sapporo/1/2009の宿主は、ハワイからきた20歳の男性 である。
さらに、この札幌のウイルス(A/Sapporo/1/2009)のシーケンスは、6月11日に香港の空港で採取されたサンフランシスコから来た16歳の女性の旅行者のウイルス(A/HongKong/2369/2009)のシーケンスとの比較では、香港のウイルスの持つタミフル耐性変異H274Yを除いては、一致したという。
これらのことから言えるのは、この三人は、4月から6月の間に、アメリカで感染しながらも、検出されず、海外に出て初めて、検疫によって、初めて、感染が確認されたということである。
この三人に引き続いて、昨日になって、スペインのカタロニアで検出されたA/Catalonia/387/2009も、そして、スウェーデンのVastra Gotlandsで検出されたA/Stockholm/37/2009も、そのシーケンスは、上記の三人のシーケンス(香港については、タミフル耐性変異H274Yを除いた部分において)と、一致したという。
この二人は、いずれも6月に感染したもので、このうち、スウェーデンの患者は、アメリカから来た2歳の男の子であるという。
これまで、タミフル耐性変異H274Yが見られたのは、日本の大阪の患者からのものであり、デンマークの患者からのウイルスについては、タミフル耐性変異があるとされながら、そのシーケンスは、まだ、明らかにされていない。
日本の大阪の患者から採取のウイルスのシーケンスは、上記のA/Sapporo/1/2009、A/New Jersey/1/2009、そして、タミフル耐性変異H274Yを除いたA/HongKong/2369/2009のシーケンスとは、異なるものであったという。
上記の香港のウイルスから発見されたタミフル耐性変異を持つウイルスの宿主の女性は、タミフルを服用していず、さらには、他の抗ウイルス薬も飲まずに回復した程度の穏やかな症状を持ったものであったという。
これらのことから、このケースの場合は、ランダム変異(random mutation )の誘発と再集合によるH274Y変異なのではないかと、推測する向きもあるようだ。
ただ、この、ランダム変異・再集合をしめす証拠はまだ見つかっていないようだ。
では、なぜ、タミフル耐性変異H274Yをもったウイルスがアメリカで現れないのか、ということについてだが、それは、あまりに多くの感染者数や感染疑い者数の増加によって、アメリカ当局CDCでは、すでに、5月14日の段階で、これまでの疑い例の99%を最終的に新型インフルエンザの感染者と確認、疑い例を含めた方が米国の感染実態をより正確に反映できると判断し、その厳格な区別を放棄してしまったため、アメリカでは、事実上、サーベイランス機能が作用していない状態であるため、と見られている。
これらから懸念されるのは、タミフル耐性変異H274Yを持ったウイルスが、この香港のウイルスの宿主の女性のように、穏やかな症状のまま、アメリカではウイルスが循環しているにもかかわらず、これらの症例について、もはや、検査も報告もされていない事態になっているのではないか、ということだ、
このことから、これまで発見されたタミフル耐性H274Y変異をもったウイルスの伝播以上に、実際には、アメリカ国内においては、すでに、季節性・新型を問わずに、広がっているのではないのか、との推測をする向きもある。
ちなみに、季節性インフルエンザウイルスであるA/Brisbane/59/2007(H1N1)ウイルスは、すでに、その100パーセントにタミフル耐性H274Y変異を持っているという。
これらの変異は、タミフルを服用していない患者から採取のウイルス(NA遺伝子の系統樹上では、クレード1とクレード2C)または、タミフルを多用していない国の患者からのウイルスにも見られているという。
さらに、これらのクレード1とクレード2Cが分岐してのサブ・クレード間において、ジャンプし、遺伝子ヒッチハイキング(対立遺伝子に連鎖し、中立な遺伝子が動く)や再集合を繰り返しているものと思われるという。
これに加えて、H1N1新型インフルエンザウイルスのパンデミックによって、タミフルの多用が世界的に増すことで、H274Y変異は、H1N1季節性インフルエンザウイルス(A/Brisbane/59/2007)においても、また、H1N1新型インフルエンザウイルスにおいても、加速していくものと見込まれている。
参考
「Widespread Evolutionarily Fit Tamiflu Resistant Pandemic H1N1 」
備考
A/HongKong/2369/2009のシーケンス
“MNPNQKIITIGSVCMTIGMANLILQIGNIISIWISHSIQLGNQNQIETC
NQSVITYENNTWVNQTYVNISNTNFAAGQSVVSVKLAGNSSLCPV
SGWAIYSKDNSIRIGSKGDVFVIREPFISCSPLECRTFFLTQGALLND
KHSNGTIKDRSPYRTLMSCPIGEVPSPYNSRFESVAWSASACHDG
INWLTIGISGPDNGAVAVLKYNGIITDTIKSWRNNILRTQESECACVN
GSCFTVMTDGPSDGQASYKIFRIEKGKIVKSVEMNAPNYYYEECSC
YPDSSEITCVCRDNWHGSNRPWVSFNQNLEYQIGYICSGIFGDNPR
PNDKTGSCGPVSSNGANGVKGFSFKYGNGVWIGRTKSISSRNGFE
MIWDPNGWTGTDNNFSIKQDIVGINEWSGYSGSFVQHPELTGLDCI
RPCFWVELIRGRPKENTIWTSGSSISFCGVNSDTVGWSWPDGAELP
FTIDK”
参照「Influenza A virus (A/Hong Kong/2369/2009(H1N1)) segment 6 neuraminidase (NA) gene, complete cds 」
「Tamiflu Resistant Pandemic H1N1 Surveillance Failures in US 」
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