2009年5月21日
今回の新型インフルエンザには、老人層に患者が少ないことから、老人層には、何らかの免疫体があるのではないかとの憶測が、以前からあった。
私のこのブログ記事
「1968年のH3N2の香港カゼ・パンデミックが、その当時の人間に、H1N1抗体を与えている、との見方」
などでもこれについての諸説を紹介してきた。
ここにきて、昨日のCDCのプレス・ブリーフィングで、CDCのインフルエンザ部副部長のダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士が、 WebMDのDaniel DeNoon氏などの質問に答える形で、次のような説を展開し、話題になっている。
参考
「Press Briefing Transcripts
CDC Telebriefing on Investigation of Human Cases of H1N1 Flu」
オーディオでの記者会見の模様はこちらをクリック(MP3ファイル)
まず、WebMDのDaniel DeNoon氏は、次のような質問をした。
「WHOの戦略アドバイザリー・グループ゜が、過日、老人層には、H1N1に対する交叉免疫があるために、血清中に中和抗体の形成をしめしているとの報告書が出たが、私どもは、そのことが既成の事実であるかどうか、わかりません。
それが本当かどうかについてコメントしいただ:ませんか?」
(注-ここでいうWHO戦略アドバイザリー・グループの報告書とは下記のことを言っています。
「Recommendations of the Strategic Advisory Group of Experts (SAGE) on Influenza A (H1N1) vaccines」
PDF版は、こちら)
これに対してダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士は、次のようにこたえた。
「おそらく、その情報は、今日の午後か明日にMMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report )からでるレポートに基づくものなのでしょう。
現時点でコメントするとすれば、われわれが、これまで得た、血清学上の研究や患者からの血液からいえることは、1957年以前に今回のH1N1と同じようなウイルスに曝露されていたということ、そして、そのことが、今回のH1N1ウイルスに対して、ある人に対して免疫反応をもたらしている 、ということはいえます。」
これに対して、同じような質問としてHelen Branswell氏からつぎのような質問
「今回の新型H1N1に対して抗体は、防御性があるのですか?」
ダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士
「もちろん、それは、難しい問題だと思います。
抗体の防御効果については、より進んだ研究が必要な感じはします。
しかし、現在の検査から判断する限り、反応性への証拠はあり、それらのことからわれわれが推論するとすれば、一定レベルの防御効果は、あるといえますが、断定するまでにはいたっていません。」
さらにHelen Branswell氏から補足質問
「博士はただいま、感染率などの数字を示されましたが、不思議におもうのは、これは、遺伝子組換えによる 抗原シフト(antigenic shift)なのですか?それとも、抗原連続変異(抗原ドリフト)(antigenic drift)によるものなのですか?」
ダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士
「これまで見る限り、今回の新型インフルエンザウイルスに対して、人口の一定割合は、免疫がない状態です。
過去のH1N1が季節性インフルエンザウイルスとして循環してきたもので、今回の新型H1N1は、それとことなったサブタイブではないと見ていますが、以前のH1N1と今回のH1N1との間の距離があまりにあったがために、今回のH1N1には、潜在的なインパクトがあったのではないか、と、思われます。
今回の感染が、シフトかドリフトかについては、議論中です。」
次の一旦ワクチンの話に質疑の話題が跳んだと、再び、老齢者免疫説について
Betsy McKay氏から質問
「1957年以前のH1N1への曝露についてですが、この1957年以前のH1N1が今回のパンデミックと関係しているのでしょうか?
そして、今回の若い世代への感染は、どのくらい広がるのでしょうか?」
ダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士
「後者の質問から答えれば、罹患者の18パーセントは10歳から18歳の若い世代です。
11パーセントは、5歳から9歳の子供です。
大多数の入院している人の年齢幅は、37パーセントが、19歳から49歳の間です。
しかし、なかには、50歳か、それ以上の年齢の人も13パーセント程度、いることはいます。
しかし、学生の感染増加率は、それら老年の感染実数を上回っています。
第一の質問に戻れば、H1N1は、当初、1918年に現れて、その後、毎年の季節性インフルエンザシーズンに現れ、その間に当初のウイルスはドリフトし、1957年にその姿を現しました。
そして、そのH1N1は、H2N2と入れ替わりました。
この1957年の時点がまさに、 それまでの過去のH1N1が、終焉を迎えた時点というわけです。」
ここで、さらに他の質問がはいったあと、Mike Stobbe氏から質問
「CDCが 一定の年齢層に今回のH1N1に免疫があることを認めたとことはわかりました。
その年齢層とは、50歳以上ということでしょうか?」
ダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士
「先ほども申し上げましたが、今日の午後か明日にでるMMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report )に、私よりも、その点について、雄弁に語られていますので、そちらをご参照願います。」
Richard Knox氏の質問
「二点について質問します。
一点は、免疫を持つ人口が少ないことと、ウイルスのアタック率が、家庭もコミュニティも学校も、通常の季節性インフルエンザの場合は、変わらないということとの関係がよくわからないのですが。
二点目は、低い免疫率がアタック率を高めているのか? 」
ダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士
「アタック率は、感染の一部のことであり、感染の症状の進展は、ウイルスを受けたホスト次第ということになります。
今年の12月段階て゜の季節性インフルエンザがシビアになるものとの予測はありえます」
Richard Knox氏
「イリノイ州やウィスコンシン州が、他のカリフォルニア州やニューヨーク州などとくらべて、飛びぬけて感染がひどいのですが、その理由はなになのでしょう?」
ダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士
「その点は、私どもも調査中です。
それらの州の人々が曝露されている、なんらかのファクターかイベントがあるのだと思います。
それは、必ずしも、その土地特有な温度や湿度や地理的条件が反映したものとは限らないものと推測しています。」
つぎにDonald McNeil氏が質問
「血清検査について、もっと詳しく教えてください。」
ダニエル・ジャーニガン(Daniel Jernigan)博士
「これについても明日のMMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report )を見てください、このことについても雄弁にかいてありますから。
ただ、言えることは、血清検査によって、その血液の人が、過去にどのようなウイルスに曝露されたがわかる、ということです。」
以上だが、肝心のMMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report )
http://www.cdc.gov/mmwr/weekcvol.html
の記事だが、まだ、 現時点では、リリースされていないようだ 。
追記2009/05/22
上記でいっているMMWR(Morbidity and Mortality Weekly Report )の報告書がようやく発表されました。
内容は下記のとおりです。
CDCでは、 今回の新型インフルエンザウイルスH1N1に対応するワクチンの製造が数ヶ月かかる見通しであるところから、現在の季節性インフルエンザ用ワクチンで代用しうるウイルスなのかを検証するために、これまでのワクチン研究で集めてきた保存血清見本を 使って、今回の新しいH1N1に対して、交差反応抗体のレベルを検証することにした。
その方法は、まず、予防接種した年度に応じて、大人と子供のコホートにわけて、検証した、
��2005年から2006年にかけての予防接種において、その予防接種の前後の比較
��2006年から2007年にかけての予防接種において、その予防接種の前後の比較
��2007年から2008年にかけての予防接種において、その予防接種の前後の比較
��2008年から2009年にかけての予防接種において、その予防接種の前後の比較
この結果わかったことは、
�〇匐,離灰曄璽箸砲�いては、ワクチン接種前は、今回の新しいH1N1に対しては、なんら、交差反応抗体は、見られなかった。
ワクチン接種前においては、生ワクチン、不活化ワクチンとも、今回の新しいH1N1に対しては、なんら、交差反応抗体は、見られなかった。
��大人のコホートにおいては、18歳から64歳の間の年齢層において、その6パーセントから9パーセントについて、ワクチン接種前に、交差反応抗体が検出された。
60歳以上の年齢層については、その33パーセントについて、交差反応抗体が検出された。
季節性インフルエンザ・ワクチンにおいては、今回の新しいH1N1に対しては、
18歳から64歳の年齢層においては、2倍の交差反応抗体が検出されたのに対して、
60歳以上の年齢層においては、それが、20倍から90倍の交差反応抗体が検出された。
これらのデータから見るに、最近の2005年から2006年の季節性インフルエンザ・ワクチンの接種では、今回の新しいH1N1に対しては、防御抗体を獲得できそうもないように見られた。
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