Sasayama’s Weblog


2009/07/11 Saturday

懸念される新型・季節性・両H1インフルエンザ・ウイルスにおけるタミフル耐性変異の同時的・加速的進行

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 19:23:34

2009年7月10日

本日GenBankに登録された日本の札幌の患者から6月15日に採取されたウイルス(A/Sapporo/1/2009)のシーケンスが、4月にニュージャージーで採取されたベルギーからきた22歳の女性患者からのウイルス(A/New Jersey/1/2009A)のシーケンスと一致したという。

この日本のA/Sapporo/1/2009の宿主は、ハワイからきた20歳の男性である。

さらに、この札幌のウイルス(A/Sapporo/1/2009)のシーケンスは、6月11日に香港の空港で採取されたサンフランシスコから来た16歳の女性の旅行者のウイルス(A/HongKong/2369/2009)のシーケンスとの比較では、香港のウイルスの持つタミフル耐性変異H274Yを除いては、一致したという。

これらのことから言えるのは、この三人は、4月から6月の間に、アメリカで感染しながらも、検出されず、海外に出て初めて、検疫によって、初めて、感染が確認されたということである。

この三人に引き続いて、昨日になって、スペインのカタロニアで検出されたA/Catalonia/387/2009も、そして、スウェーデンのVastra Gotlandsで検出されたA/Stockholm/37/2009も、そのシーケンスは、上記の三人のシーケンス(香港については、タミフル耐性変異H274Yを除いた部分において)と、一致したという。

この二人は、いずれも6月に感染したもので、このうち、スウェーデンの患者は、アメリカから来た2歳の男の子であるという。

これまで、タミフル耐性変異H274Yが見られたのは、日本の大阪の患者からのものであり、デンマークの患者からのウイルスについては、タミフル耐性変異があるとされながら、そのシーケンスは、まだ、明らかにされていない。

日本の大阪の患者から採取のウイルスのシーケンスは、上記のA/Sapporo/1/2009、A/New Jersey/1/2009、そして、タミフル耐性変異H274Yを除いたA/HongKong/2369/2009のシーケンスとは、異なるものであったという。

上記の香港のウイルスから発見されたタミフル耐性変異を持つウイルスの宿主の女性は、タミフルを服用していず、さらには、他の抗ウイルス薬も飲まずに回復した程度の穏やかな症状を持ったものであったという。

これらのことから、このケースの場合は、ランダム変異(random mutation )の誘発と再集合によるH274Y変異なのではないかと、推測する向きもあるようだ。

ただ、この、ランダム変異・再集合をしめす証拠はまだ見つかっていないようだ。

では、なぜ、タミフル耐性変異H274Yをもったウイルスがアメリカで現れないのか、ということについてだが、それは、あまりに多くの感染者数や感染疑い者数の増加によって、アメリカ当局CDCでは、すでに、5月14日の段階で、これまでの疑い例の99%を最終的に新型インフルエンザの感染者と確認、疑い例を含めた方が米国の感染実態をより正確に反映できると判断し、その厳格な区別を放棄してしまったため、アメリカでは、事実上、サーベイランス機能が作用していない状態であるため、と見られている。

これらから懸念されるのは、タミフル耐性変異H274Yを持ったウイルスが、この香港のウイルスの宿主の女性のように、穏やかな症状のまま、アメリカではウイルスが循環しているにもかかわらず、これらの症例について、もはや、検査も報告もされていない事態になっているのではないか、ということだ、

このことから、これまで発見されたタミフル耐性H274Y変異をもったウイルスの伝播以上に、実際には、アメリカ国内においては、すでに、季節性・新型を問わずに、広がっているのではないのか、との推測をする向きもある。

ちなみに、季節性インフルエンザウイルスであるA/Brisbane/59/2007(H1N1)ウイルスは、すでに、その100パーセントにタミフル耐性H274Y変異を持っているという。

これらの変異は、タミフルを服用していない患者から採取のウイルス(NA遺伝子の系統樹上では、クレード1とクレード2C)または、タミフルを多用していない国の患者からのウイルスにも見られているという。

さらに、これらのクレード1とクレード2Cが分岐してのサブ・クレード間において、ジャンプし、遺伝子ヒッチハイキング(対立遺伝子に連鎖し、中立な遺伝子が動く)や再集合を繰り返しているものと思われるという。

これに加えて、H1N1新型インフルエンザウイルスのパンデミックによって、タミフルの多用が世界的に増すことで、H274Y変異は、H1N1季節性インフルエンザウイルス(A/Brisbane/59/2007)においても、また、H1N1新型インフルエンザウイルスにおいても、加速していくものと見込まれている。

参考
Widespread Evolutionarily Fit Tamiflu Resistant Pandemic H1N1

備考
A/HongKong/2369/2009のシーケンス

“MNPNQKIITIGSVCMTIGMANLILQIGNIISIWISHSIQLGNQNQIETC
NQSVITYENNTWVNQTYVNISNTNFAAGQSVVSVKLAGNSSLCPV
SGWAIYSKDNSIRIGSKGDVFVIREPFISCSPLECRTFFLTQGALLND
KHSNGTIKDRSPYRTLMSCPIGEVPSPYNSRFESVAWSASACHDG
INWLTIGISGPDNGAVAVLKYNGIITDTIKSWRNNILRTQESECACVN
GSCFTVMTDGPSDGQASYKIFRIEKGKIVKSVEMNAPNYYYEECSC
YPDSSEITCVCRDNWHGSNRPWVSFNQNLEYQIGYICSGIFGDNPR
PNDKTGSCGPVSSNGANGVKGFSFKYGNGVWIGRTKSISSRNGFE
MIWDPNGWTGTDNNFSIKQDIVGINEWSGYSGSFVQHPELTGLDCI
RPCFWVELIRGRPKENTIWTSGSSISFCGVNSDTVGWSWPDGAELP
FTIDK”

参照「Influenza A virus (A/Hong Kong/2369/2009(H1N1)) segment 6 neuraminidase (NA) gene, complete cds
Tamiflu Resistant Pandemic H1N1 Surveillance Failures in US

 

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