2007/10/06 Saturday
2007/10/06(Sat)
アメリカのWTO交渉担当者Joe Glauber氏が一昨日の木曜日10月4日にWTOに提出した2001年から2005年にかけてのアメリカの黄色の政策(AMS)とOTDS(AMS+デミニミス+青の政策)、そして、緑の政策の数字がわかった。
このような数字が、公表されたのは、過去6年間の中で、初めてのことのようである。
これによると、
黄色の政策(AMS)
2002年96億ドル
2003年70億ドル
2004年116億ドル
2005年129億ドル
OTDS(AMS+デミニミス+青の政策)
2002年163億ドル
2003年102億ドル
2004年181億ドル
2005年189億ドル
緑の政策(Green Box)
2002年 583億ドル
2003年 641億ドル
2004年 674億ドル
2005年 718億ドル
上記の緑の政策のうち、2002年農業法にもとずく直接支払い
2002年 53億ドル
2003年 53億ドル
2004年 53億ドル
2005年 52億ドル
ファルコナー氏が7月17日に各国に提示した「ファルコナー・テキスト」では、
アメリカの国内農業補助金( OTDS)としては、
130億ドル、または164億ドル以下に削減すべき
と提案してある。
上記の数字について、Joe Glauber氏は、次のようにいっている。
AMSについてみると、
ウルグアイラウンドでのシーリング191億ドルを、いずれの年も下回っている。
2005年10月の最初のテーブルで提出したAMS76億ドルのキャップを上回っているのは、その後8年のうちで、7年である。
OTDSについてみると、
ファルコナーテキストでの OTDSの130億ドル、または164億ドル以下削減の線から見ると、過去8年のうち、5年が、ファルコナーテキスト提案の最高限界数字を上回っている。
参考
「U.S. releases farm program spending details to WTO」
「TRANSCRIPT OF TELE-NEWS CONFERENCE WITH USTR AMBASSADOR JOE GLAUBER, CHIEF AGRICULTURAL NEGOTIATOR REGARDING NOTIFICATION OF DOMESTIC AGRICULTURAL SUPPORT PAYMENTS TO THE WORLD TRADE ORGANIZATION.- OCTOBER 4, 2007」
「U.S. SUBMITS NOTIFICATION OF DOMESTIC AGRICULTURAL SUPPORT PAYMENTS TO WORLD TRADE ORGANIZATION」
「WTO Chairmen Issue Draft Ag, NAMA Texts Outlining Tough Concessions Needed in Doha」
「Falconer text」
「US Does Not Exceed WTO Cap」
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2007/09/28 Friday
2007/09/28(Fri)
「チャック・コナー米農務長官代行の2007年農業法についてのスタンス 」や「ブッシュ大統領が、ドーハラウンド決着に前向き姿勢示す」などに書いたように、ドーハラウンドの年内合意は、アメリカがWTOファルコナー提案の受け入れを決断したことで、確実なものとなった。
また、アメリカの新農務長官に予定されているコナー氏が、「ドーハラウンドの合意が見た場合には、現在下院段階を通過した2007年新農業法のスキームの見直しをする。」と言明したことで、日本の品目横断的経営安定対策のスキームの見直しを迫られる可能性も出てきた。
というのは、この品目横断的経営安定対策自体が、そもそも、アメリカの「新青の政策」と目的を同じにした、ボックス・シフティングと「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」を強く意識したスキームでスタートしているものであるからだ。
第一、この「品目横断」という名称自体、WTOコンプライアンス逃れの名称ではある。
なぜなら、WTOにおいては、品目を特定していない国内支持(品目横断的 (non-commodity specific)な助成)であれば、全ての農業生産額の5%以下の国内助成は、これをデミニミス(De Minimis)として、これまでは、WTOの削減対象から除外されていたからだ。
ちなみに、アメリカの農業生産額は、1900億ドルで、この5パーセントの100億ドルが、品目横断的国内支持であれば、デミニミスになりうるということになる。
また、生産調整を伴った「生産制限的(production-limiting )」であれば、「青の政策」該当ということで、これも、これまではWTOの削減対象から除外されていた。
ここで、「これまでは」といったのは、今回、ドーハラウンドが合意されれば、これまでの黄色の政策(AMS)の削減に加え、貿易歪曲的補助金の総量規制(全体的削減という。)ともいうべき規制が新たに加わり、『「貿易歪曲的補助金(overall trade-distorting farm support)(OTDS)=Final Bound Total AMS( 黄色の政策) +デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策 この三つの合計額」×削減率(日本の場合は、66-73%削減)』での削減の二重の網がかかるからだ。
品目横断を大義名分にした、黄色の政策をデミニミス対象スキームに衣替えすることを「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」というが、ドーハラウンドが合意されれば、これらの抜け穴が封じられることになる。
そこで、日本の品目横断的経営安定対策を改めて、ドーハラウンド合意を想定してのWTOコンプライアンスの観点から検証してみると、下記のようになるだろう。
品目横断政策には、「げた」部分(生産性条件格差の是正対策)と、「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)の二つがある。
このうち、「げた」部分については、さらに、下記の、「その1、その2」の二つに分けられ、
「げた」その1-過去の作付面積に基づく支払い。
「げた」その2-年々の生産量等に基づく支払い。
に分けられる。
農林水産省の解釈では、
「「げた」その1-過去の作付面積に基づく支払い。」は、現実の生産と関連していないので、緑の政策に該当。いわゆる「緑ゲタ」
「「げた」その2-年々の生産量等に基づく支払い。」は、黄色の政策、いわゆる「黄ゲタ」部分
としている。
また、
「「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)」については、品目横断的(non-commodity specific)であり、生産調整を伴った「生産制限的(production-limiting )である」との条件の下に、「青の政策」(というよりは、私から言わせてもらえれば、本来の青の政策(Blue Box=production-limiting )とアメリカのデミニミス抜け穴狙いの新青の政策(New Blue Box=non-commodity specific)との合体スキームと見えるが)に該当、としている。
(これらのボックス概念規定の違いについては「Trade Issues and Agreements: U.S. WTO Domestic Support Reduction Commitments and Notifications」を参照)
参考「「品目横断的経営安定対策」解説副読本」
総じて、法案国会通過時(2006年6月21日)は、アメリカが『新・青の政策』(New Blue Box)該当頼みで、何とか、WTOコンプライアンス違反該当を逃れられるのではないか、との状況の下で、ボックス・シフトと「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」で、この品目横断的経営安定対策のスキームが組まれた節がある。
ちなみ、この時点では、アメリカは、すでに2004年7−8月合意のフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)で、「総支出額に上限を設け、一国内の農業生産総価値の5パーセントを上限」とするNew Blue box(新・青の政策)案を提示しており、WTOに対しては、次のような要求をかなりの実現可能性を持って要求していた。
��amber box(黄色の政策)のリミット60パーセント減少
�� counter-cyclical payment は、blue boxにカウント
��amber box(黄色の政策)とblue box(青の政策)の政策カテゴリー分類見直し
日本側も、このアメリカの新青の政策のスキームに準じていれば、日本の品目横断的経営安定対策は、WTOコンプライアンス違反を免れるのではないかと、考えていたのではなかろうか。
しかし、その後、ドーハラウンドは決裂し、アメリカの「新青の政策」は、WTOからの厳しい評価を受け、上記のような「全体的削減」のスキームが付与され、アメリカの立場は、どんどん悪くなっていった。
ところが、ボックス・シフト名人で、お手本の新・青の政策主張のアメリカ自体が、ドーハラウンド合意に大きく傾いてしまった現在では、品目横断的経営安定対策のスキーム自体が、ドーハラウンド合意後には、WTOコンプライアンス違反を問われかねないものになりつつあるということだ。
(現時点において、アメリカは、新青の政策を、ウルグアイラウンドのもとでの「品目横断的黄色の政策」(non-product-specific amber)と位置づけているようである。
ドーハラウンド合意後においては、黄色の政策と青の政策の間に位置する新青の政策として、AMS削減対象にはカウントしないが、OTDS削減対象には、カウントする、というスタンスなのだろう。
また、価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は、新青の政策に属するとの考え方のようである。
以下参照
“Again, under the DDA [Doha] proposed provisions on new blue box countercyclical payments we believe could be notified under the new blue box. Under the current Uruguay Round rules we notified them as non-product-specific amber. “)
品目横断的経営安定対策にして、このような状況なのだから、より黄色の政策的要素の強い、民主党の「戸別所得補償制度」(「農業者戸別所得補償法案」(仮称))のスキームは、ドーハラウンド合意後では、問題外のWTOコンプライアンス違反スキームとみなされそうだ。
もし、現在の農家の不満を救う品目横断的経営安定対策の見直しをするとすれば、緑ゲタ部分に限った面積要件の見直しによるしかないだろう。
すなわち、補助金の対象農家を「北海道10ヘクタール以上、都府県4ヘクタール以上の「認定農業者」(個人)」または「20ヘクタール以上の耕地を持つ集落営農組織」の要件緩和である。
このように、参議院選挙後の農政は、「ドーハラウンド合意を前提としたWTOコンプライアンスの観点からの品目横断的経営安定対策見直し」と「現在の農家の品目横断的経営安定対策スキームに対する不満の解消を狙いとした要件見直し」の二つの観点からの舵取りをせまられることになる。
参考
ドーハラウンドに関する最近の日本側のスタンスについては、下記サイトをご参照
「WTO農業交渉をめぐる最近の動き 平成19年9月 農林水産省」
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2007/09/27 Thursday
2007/09/27(Thu)
前のアメリカのジョハンズ農務長官が政界進出のため辞任し、代わりに、 チャック・コナー(Chuck Conner、名前の短縮型で呼ばれており、元々は、Charles Conner)米農務長官代行氏が就任の予定であるが、今回は、the acting Secretaryとして、今後のWTOと2007年農業法に対するスタンスについて、述べた。
その記者会見で、下院を通過した2007年農業法(the House-passed Farm Bill)は、ドーハラウンドの進展を見ながら、その中に盛り込まれている貿易歪曲的補助金についての条項は、修正されるべきであると強調した。
以下の部分がその会見部分
「アメリカ以外の国が、恐るべき火に見舞われているときに、アメリカが、貿易歪曲的補助金を増やす時期ではないと思う。
そのようなことをアメリカが今すれば、アメリカは、そのような国からの格好の攻撃の的(Bull’s Eye)になりうる。
そのような方向にいくことは、アメリカは望まない。
また、直接的な支払いという形で、多くの農業生産者に対する支払いをしようとする努力についても、聞いている。
しかし、そのような多くの農民を対象とする直接支払いは、もはや、直接的支払いとはいえないし、緑の政策の範疇には、入らないものである。
これらは、貿易歪曲的な悪影響を各国に与えるものである。
それは、新農業法にとって、非常に不幸な旅立ちとなる。
その意味で、上院の段階では、この新農業法のスキームのいくつかの点について、後退することを願っている。
WTOの交渉の場では、アメリカは、国内支持政策についてと、他の国のアメリカへの市場参入の二点について、より柔軟な態度をとろうとしている。
その意味で、下院通過の2007年農業法は、ドーハラウンドの現在の動きを反映したものではないわけで、ドーハラウンドの合意に従って、下院通過の2007年農業法は、変更を余儀なくされるであろう。
日本への牛肉輸出の制限緩和については、国際標準の元にされるものであり、簡単な問題である。
制裁決議をすることは簡単であるが、まずは、日本側に、国際標準についての理解を得ることであると思っている。」
参考
「Statement by Acting Agriculture Secretary Chuck Conner during Tele-News Conference」
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2007/09/26 Wednesday
2007/09/26(Wed)
第一次福田内閣の始動で、ようやく正常に戻った感のある内政だが、この空白の間にも、WTOでは、ドーハラウンド決着に向けて、あわただしい動きを見せている。
今後数週間のうちに、7月にファルコナーが示した案「ラミーテキスト」に対する各国の態度か固まり、10月8日から、二週間にわたっての協議が始まる。
そんな中で、ブッシュ大統領は、9月24日、ブラジル大統領との会談の中で、「ドーハラウンド決着に向けての話し合いはうまくいっている。アメリカとしては特に農業問題に関して、ブレークスルーを作るために、我々の柔軟性を示すことが出来ることをブラジル大統領にお約束する。」との発言をした。
アメリカは、先週、農産物価格支持補助金のシーリングを、年間、130億ドルから164億ドルにカットすることをファルコナーに伝えてある。
これは、9月19日に、アメリカのWTO交渉担当のJoseph Glauber氏が示したものだ。
参照「US farm subsidy concession revives mood in WTO talks」
このアメリカのシフトに対しては、EUのPeter Mandelson氏も、歓迎の意を示したという。
ファルコナー議長は、7月17日に、アメリカの国内農業補助金を、130億ドル、または164億ドル以下に削減すべきと提案していたので、これに沿った形だ。
日本は、内政の混乱で、すっかり置いてけぼりを食っているような感じだ。
参考
「World leaders express new optimism on Doha deal」
「Bush says US willing to be flexible in trade talks」
「US makes new subsidy offer in WTO talks」
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笹山登生HOME-オピニオン-提言-情報-発言-プロフィール-掲示板-ご意見
2007/09/12 Wednesday

以前にも、このブログでも取り上げたのだが、一昨年12月18日の香港でのWTOでの最終合意閣僚宣言(ドーハ作業計画閣僚宣言)のパラグラフ5(On domestic support)において、次のような、「ボックス・シフティング規制ルール」(box shifting)(amber boxからblue boxやデミニミスへのシフト)ともいうべきものが付け加えられた。
「貿易歪曲的国内支持全体の削減は、助成合計総量の最終譲許水準、デミニミス及び青の政策の削減の合計の方が全体の削減より小さくても行われる必要がある」
(The overall reduction in trade-distorting domestic support will still need to be made even if the sum of the reductions in Final Bound Total AMS, de minimis and Blue Box payments would otherwise be less than that overall reduction. )
ちょっと、わかりずらい表現だが、ありていに言うと、次のようになるだろう。
譲許(約束)水準では、黄色の政策であったものが、青色の政策に衣替えした場合、助成合計総量の最終譲許水準、デミニミス及び青の政策の削減の合計は、ボックス間でのいりくりが生じるため、実質、少なくなる。
つまり、黄色の政策から振り替えられ、水増しされたデミニミスや青の政策のカウントは、譲許ベースではなく、実行ベースでカウントされるため、譲許(約束)水準での黄色の政策の削減は果たされているが、全体では、ボックス間のやりくりによって、貿易歪曲的国内補助金の総額(全体的削減)は、減額されていない、ということにある。
これを、シーリングと実際適用との間のギャップにある、国内支持政策の水増し(the stretch of water )または、オーバーハング(Overhangまたは、Binding Overhang)といっている。
この「Water 」については「Domestic Support in Agriculture: The Struggle for Meaningful Disciplines」「「The Doha Round Agriculture Negotiations: An Overview」をご参照
このように、実際の支払いベースと譲許(約束)水準の間には、かなりの「水増し」(considerable amounts of ‘water’” between real. spending levels and their bound ceiling amounts)があるといわれている。
そのような場合でも、貿易歪曲的国内支持全体の削減(全体的削減)は、行われる必要があると、ここでいっているわけだ。
この部分の意味について、ICTSDのサイト「LAMY SETS END-JUNE DEADLINE FOR AG, NAMA MODALITIES」では、次のようにいっている。
「この宣言部分は、WTO加盟諸国が、実際の農業補助減額金額をすくなくするために、異なったカテゴリーの元で、既存の補助金を分類し直す(reclassify subsidies)ことを、困難にさせるためのものである。」
(This was an attempt to make it harder for Members to reclassify subsidies under different categories in order to minimise actual reductions.)
つまり、WTOコンプライアンス違反を逃れるために、アメリカを始めとして、各国が、これまでの黄色の政策を、青の政策に、さらには、緑の政策にと、これまでの国内農業保護的補助金を、衣替えして、偽装することによって、実質的な、国内農業保護のための補助金の減額を避けようとする試みに対して、それらのボックス間のシフトを牽制するための条項としてこれらの一行が加えられたのだ。
たとえば、このサイト「Analysis of recentproposals in WTOagricultural negotiations」では、アメリカのボックスシフティングの実態について、11ページの「Table 3. UNITED STATES and EUROPEAN UNION: The outcome of the Doha Round at the end of the implementation period」で説明している。
アメリカのボックスシフティングの実態
| . |
ドーハラウンド・シーリング(A) |
2001年2月届出(B) |
実際の変更要求額(A-B) |
| AMS (黄色の政策) |
76億ドル |
144億ドル |
-68億ドル |
| デミニミス |
97億ドル |
70億ドル |
27億ドル |
| 青の政策 |
48億ドル |
0億ドル |
48億ドル |
| 緑の政策 |
507億ドル |
507億ドル |
0億ドル |
| 合計 |
728億ドル |
721億ドル |
7億ドル |
| TDS |
221億ドル |
214億ドル |
7億ドル |
| (TDS=AMS(黄色) +デミニミス+ 青の政策) |
. |
. |
. |
| Overall cut |
54% |
. |
. |
つまり、黄色の政策で-68億ドル削減しても、デミニミスで27億ドル増加、青の政策で48億ドル増加しているので、実質的なTDS(AMS(黄色) +デミニミス+ 青の政策) 削減は、逆に7億ドル増加となってしまっている。
2005年10月時点でのアメリカのWaterなしの提案内容は次のとおりである。
OTDS = AMS(黄色の政策) +青の政策+デミニミス
= 76億ドル(AMS削減-60%) + 48億ドル(生産価値の2,5% ) + 20億ドル(作物保険の平均支出)
= 144億ドル
今回のラミー提案では、�―�成合計総量の最終譲許水準の削減(Final Bound Total AMS)(FBTA)�∨念從超陛�国内支持全体の削減(Overall Trade-Distorting Domestic Support)(OTDS)は、下記のように提案されている。
��Final Bound Total AMS(助成合計総量の最終譲許水準)(黄色の政策)(黄色の削減)
1.AMSが400億ドル以上は、70%削減
2.AMSが150億ドル以上は、60%削減
3.AMSが150億ドル以下は、45%削減
��Overall Trade-Distorting Domestic Support(OTDS)(貿易歪曲的国内支持全体の削減)(全体的削減)
注−OTDS=Final Bound Total AMS( 黄色の政策) +デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策 この三つの合計額
1.AMSが600億ドル以上は、75-85%削減
2.AMSが100億ドル以上は、66-73%削減
3.AMSが100億ドル以下は、50-60%削減
そこで、日本においても、民主党を中心にして、「これまでの日本の黄色の既存削減枠を、主張する「戸別所得補償制度」(「農業者戸別所得補償法案(仮称)」)の原資に使おう」、といわれる向きもあるようだが、それらの方々は、この「ボックス・シフティング規制ルール」を、どう解釈されているのだろうか。
日本のFinal Bound Total AMSは、3兆9729億円である。
ラミー提案やファルコナー交渉議長モダリティー合意案に従えば、日本の削減率は、�_�色の政策の削減�∩澗療�削減とも、the middle tier該当ということで、削減率60-70%あたりとなる。
日本の「デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策」の金額については、公表されていないようなので、ここでは、「全体的削減」については触れずに、「黄色の削減」についてのみ、見てみよう。
日本の「黄色の削減率」は、ラミー提案では、削減率60-70%、ファルコナー提案では、削減率60%である。
そこで、仮に黄色の削減率7割であれば、削減後は
3兆9729億円×30パーセント=1兆2千億円程度(Final Bound Total AMS” ( Amber Box))となる。
しかし、すでに、日本は、2002年時点で、約束(譲許)水準の18%まで削減しているので、余分に削減している部分は、
30パーセント−18パーセント=1兆2千億円-7151億円=4800億円程度 ということになる。
どうも、民主党さんのご主張は、この部分については、今後、あらたに黄色の政策としてつかえる、というもののようだ。
これを上記の「ボックス・シフティング規制ルール」に照らし合わせてみれば、次のようになるだろう。
7151億円は、「黄色の政策から黄色の政策へのボックスシフティング」
4800億円は、黄色の政策から、いったん、ニュートラルになったものが、ゾンビ的に、再び黄色の政策として先祖帰りで復活した「ゾンビ的ボックス・シフティング」
ということになる。
しかし、上記の民主党さんのご見解のような「黄色の政策から、再び、黄色の政策へ」( “amber to amber”)のゾンビ的な解釈は、はたして、WTOの趣旨からいって、なじまないものと、私は思うのだが、どんなものであろうか。
たとえ、WTOルール上できるとしても、米政策に関する黄色の政策のみとはいえ、いったん削減した黄色の政策を、再び、ゾンビのごとく、黄色の政策のために復活させるということは、モラルハザード上は、できないものと思われ、譲許と実行の間のWaterについての国際的批判も厳しくなっているところから、それを強行すれば、他のWTO加盟国からの指弾を受けるのは、確実であろう。
また、現在、政府が行おうとしている品目横断政策のスキームの一部分である「「げた」その2-年々の生産量等に基づく支払い。」の部分は、黄色の政策にカウントされるのだから、上記の4800億円の余力は、さらに減ってしまうことになる。
さらに、ファルコナーの考えをしめした、このサイト「AITIC : Documents: Background Notes」にも書かれているように、アメリカの反対にもかかわらず、1995-2000年ベースでの黄色の政策と青の政策とを結合させたCapである「個別産品毎の黄の政策の上限規制」(Commodity-Specific AMS Cap))も適用される流れから、コメ農家救済を主軸としたスキームは、この点からもCombined Capとしての制限を受けうる、現在の流れにあると見たほうがいい。
「TWN Info Service on WTO and Trade Issues (May07/01)」もご参照
このように虎視眈々と、抜け道ねらいをされているWTOだが、このサイト「Introducing.. The Great Tradomino! 」では、一見公正に見える貿易交渉には、5つのトリックがあるとされている。
トリックその1 ボックスのトリック
アメリカとEUが、もっとも、このボックストリックを使っている。
彼らは、黄色から青色へ、青色から緑色へ、と、ボックスをシフトさせている。
トリックその2 隠された貿易障壁のトリック
自国の標準にあわないとすることで、容易に貿易障壁が作れる。
トリックその3 貿易交渉団が消されるトリック
その発展途上国への援助を見返りに、容易に、貿易交渉団は、消去される。
トリックその4 重要品目(Sensitive Products )というトリック
重要品目と主張することで、例外が認められる
トリックその5 おとりのトリック
工業製品をおとりに使う。
参考1.
「香港閣僚宣言のパラグラフ5」は、下記のとおりである。
2006年5月24日の「Committee on Agriculture, Special Session」における「Chair’s Reference Paper」もご参照
5.国内支持については、助成合計総量の最終譲許水準の削減及び貿易歪曲的国内支持全体の削減について、3階層に分け、高い階層ほど大きく削減する。
いずれの削減の場合も、認められた支持が最も高い水準の加盟国が最上位階層に入り、2番目と3番目に高い水準の加盟国2カ国が中位階層に入り、その他すべての加盟国(すべての途上国を含む。)が最下位階層に入る。
また、中位及び最下位階層に属し助成合計総量の最終譲許水準が相対的に高い先進国は、助成合計量削減の追加的努力を行う。
我々は、また、助成合計総量の最終譲許水準の削減、貿易歪曲的国内支持全体の削減並びに産品特定的及び産品非特定的双方のデミニミスの削減について、いくらかの意見の収斂があったことに留意する。
貿易歪曲的国内支持を効果的に削減するための規律は、この枠組みと整合的な形で策定する。
貿易歪曲的国内支持全体の削減は、助成合計総量の最終譲許水準、デミニミス及び青の政策の削減の合計の方が全体の削減より小さくても行われる必要がある。
助成合計量の約束を行っていない開発途上国は、デミニミス及び貿易歪曲的国内支持全体の削減を免除される。
緑の政策の基準は、特に、開発途上国による最小限の貿易歪曲以下の政策が緑の政策に効果的に含まれることを確保すること等を目的として、2004年8月1日の枠組み合意パラグラフ16に沿って再検討される。
Paragraph 5 of the Hong Kong Ministerial Declaration states, inter alia, that:
“On domestic support, there will be three bands for reductions in Final Bound Total AMS and in the overall cut in trade-distorting domestic support, with higher linear cuts in higher bands. In both cases, the Member with the highest level of permitted support will be in the top band, the two Members with the second and third highest levels of support will be in the middle band and all other Members, including all developing country Members, will be in the bottom band. In addition, developed country Members in the lower bands with high relative levels of Final Bound Total AMS will make an additional effort in AMS reduction. We also note that there has been some convergence concerning the reductions in Final Bound Total AMS, the overall cut in trade-distorting domestic support and in both product-specific and non product-specific de minimis limits. Disciplines will be developed to achieve effective cuts in trade-distorting domestic support consistent with the Framework. The overall reduction in trade-distorting domestic support will still need to be made even if the sum of the reductions in Final Bound Total AMS, de minimis and Blue Box payments would otherwise be less than that overall reduction.
Developing country Members with no AMS commitments will be exempt from reductions in de minimis and the overall cut in trade-distorting domestic support. Green Box criteria will be reviewed in line with paragraph 16 of the Framework, inter alia, to ensure that programmes of developing country Members that cause not more than minimal trade-distortion are effectively covered.
参考2「USDA FARM BILL PROPOSAL AND THE DOHA ROUND」
参考3「South short-changed in agriculture by US, EC sleight of hand?」
参考4「PRODUCT SPECIFIC CAPSON DOMESTIC SUPPORT」
参考5.「ドーハ開発アジェンダの動向」
参考6.「WTO AGREEMENT ON AGRICULTURE THE BLUE BOX」
参考7.「The US overall agricultural trade distorting domestic
support (OTDS) for 2006 put in perspective from 2001」
参考8.「The Doha Round Agriculture Negotiations:An Overview」
参考9.「Domestic Support in Agriculture: The Struggle for Meaningful Disciplines」
参考10.「Whose Development Round Is It?」
参考11「Analysis of recentproposals in WTOagricultural negotiations」
参考12.「WTO農業交渉の現状と今後の展望」
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2007/09/04 Tuesday
2007/09/04(Tue)
現在の農業共済制度(農業災害補償制度)は、日本のGHQ占領下で、私の父が、事務次官時代に、アメリカの制度を雛形にしながらも、アメリカの農業保険制度とは異なる、農家の掛け金の6割強を国が負担するという、保険制度とは異なるスキームの日本型の災害補償制度を、あえてうちだし、導入したものだが、今回の遠藤農林水産大臣辞任にまでいたる原因の下地になる風土は、何にあるのだろうか。
農業共済が、政治に弱い理由は、その基幹的人件費が、農業共済事業事務費負担金によって支えられているところに原因があるものと思われる。
すなわち、農業共済組合及び連合会の事務費については、農業災害補償法に基づく農業共済事業事務費負担金によって、農業共済組合及び連合会における基幹的経費(人件費、旅費、庁費、委員手当等)が支えられているということにある。
この農業共済事業事務費負担金は、平成18年度で、464億円に上っている。
三位一体改革においても、この農業共済事業事務費負担金についての今後の取り扱いが議論されているが、国庫補助負担金を廃止し、国が実施すべきとする意見もあって、その残存化については、強い政治力がはたらいているのが現状のようである。
政治の介入を促しやすい同種のものとしては、そのほかにも、協同農業普及事業交付金, 農業委員会交付金,などがある。
戦後のGHQ占領下で作られたこれらの農業制度は、いずれも制度疲労を起こしており、農業共済制度についても、これを機会に、抜本的な見直しが必要な感じがしている。
なぜなら、制度発足当時の産業構造に占める農業の位置づけと、今日の位置づけとでは、全く異なったものとなっているのに、いったん出来た制度にのっかった人・物・資源は、過剰装備のもとにある、といった典型が、農業共済制度であるからだ。
もともと、なぜ、日本の農業保険が、保険のスキームではなくて、補償のスキームになったかだが、当時の日本列島の農業地帯においては、冷害常襲地帯があって、これらの地帯の農業者にとっては、事故率からいって、保険のスキームが成り立たないという事情から発しているとされている。
しかし、昭和36年から38年頃にかけて、強制加入の掛け金掛け捨てに対する不満が全国的に広まり、その慰撫のために、末端共済組合にも、共済金の一部留保を認める制度改正があり、不満の解消を見たのだが、今回の置賜農業共済組合の例では、この救済スキームが裏目に出た格好になったのは、何とも皮肉な話ではある。
さらに裏話的にいえば、この農業災害補償法国会提出の昭和23年には、平野農林大臣のGHQによる罷免騒動があったというのも、これまた、なにかの因縁なのだろうか。
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2007/08/29 Wednesday
2007/08/29(Wed)
第二次安倍内閣での深夜の記者会見で、遠藤武彦農林水産大臣の記者会見を聞いて、耳を疑った。
念のため、農林水産省のホームページでの当日の記者会見から、その部分を、以下に再現しよう。
「Q: 農水大臣ここまで2代続けて非常に異例な形で交代されたと思うんですけれども、そのポストに就かれたことについて、特別の感想、考えがもしお有りならお話していただきたい。
A: 前任者の様々な問題については私も関知しませんし、コメントをするようなつもりもありません。
一番最後まで残ったポストを私に割り振られたわけですから、「参ったな」と実は思いました。「ここだけは来ない方が良かったな」と思っているくらいでありまして。」
これにとどまらず、8月28日の所属する派閥の会合の席においても、「農水だけは嫌だった。本当に嫌だった。ここだけは行きたくないと思っていた」といったという。
まあ、テレのつもりか、冗談なのかはさておき、この言葉は、本来大臣が口にすべきではない言葉ではある。
つまり、今回の参議院選挙・政権与党大敗の原因の一部が農業問題であって、いわば、ボクシングで、ダウンを食らった後の農林水産大臣のなすべきことは、何よりも、ファイティングポーズをとることが先決であるのに、この言葉を発すること自体、すでに、やる気をなくしていると見なされるからである。
ましてや、ドーハラウンドの再開は、もう、目前に迫っているし、また、民主党の戸別所得補償に代わりうる対案も、農林水産省としては、即刻、示さなければならない時期なのに、大臣がこのような言葉を発すること自体、すでに、職務放棄をしたと見なされても、仕方のないことなのではなかろうか。
考えてみれば、もし、やる気のある農林水産大臣であれば、今のこの時期ほど、これほど、胸のわくわくするチャンスは、ないのではなかろうか。
つまり、農政の価値転換なりパラダイムシフトの好機がこれほど凝縮して現れる時期は、あまりないのではなかろうか。
という意味においてである。
農政のパラダイムシフトとは、農業生産対策から農業・農村地域対策への農政のシフトであり、また、新規就農者なり新たな担い手の概念を、農地法の見直しによって、農村地域に創出しうる、大きなチャンスでもあるからである。
これは、一人農林水産省のみでなし得ることではなく、経済産業省や総務省と連携しての、特区の概念をより広くするなどして、適用しうるチャンスでもあるからだ。
結果として、農林水産省の省益は、良い意味で、拡大しうるだろう。
つまりは、WTOという外圧と、民主党という内圧を、巧みに利用して、新しいパラダイム作りのチャンスにするという、したたかな戦略展開の開始の時期でもあるからだ。
農業を実際やられている方が大臣になるというのは、いいようでも悪いようでもあるわけで、農業を知りすぎている方が、このように農林水産大臣になられると、この点のパラダイムシフトの軌跡が、よく見えてこないのかもしれない。
その意味で、上記の遠藤農林水産大臣の大臣就任記者会見での冒頭の言葉は、自らの慣れにもとずく発言に過ぎず、今こそ新しい価値パラダイムの転換を求める農業者なり、今後の新規就農の担い手候補者に対し、幻滅と冒涜を与え、自らの力の限界を、図らずも、全国の農業者に対して、示してしまう言葉になってしまったのではなかろうか。
「やる気なき農林水産大臣であれば、即刻去れ!!」
あえて、私は、そういいたい。
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2007/08/06 Monday
2007/08/06(Mon)
このAFPの記事「Rural Japan deserts conservative party, farm reform left in doubt」は、日本語記事「農村部での自民大敗、農業政策の行方は?」にもなっていて、下記の括弧書きのようなことが書いてある。
この中で、大阪大学社会経済研究所の小野善康教授がいみじくもコメントしているように、「現在の国会の状態では、最悪のシナリオにたどり着く可能性がある」というのが、識者の見るところなのだろう。
ここに、中村健一さんのコラムから、もっとも、現在の日本の農政のカオスの状態を表した言葉を引用しよう。
つまり、「部分最適(局所最適)、全体最悪」の農政(「ポピュリズム農政」とでもいった方がいいのだろうか?)が、戸別所得補償の実現によって、生まれてしまう、という認識である。
以下
中村健一さんのコラムより引用
「残念なことには政治が全体を見据えないで優先度の分からない各論だけが先行している感じである。
日本は従来、環境に恵まれていて国や、企業、個人が自分の領域でベストを尽くせば、全体最適につながる結果が出せる状況にあった。
今やそうはいかなくなってきている。個別最悪が個別最適を上回っている現状下では全体最適はありえない。
こういった個別最適と全体最適が違うときにこそ強いリーダシップが必要となる。
グローバル化での変化の激しい時代には変化すべき領域・変化してはいけない領域を決めながら、いまこそ国家としてどういう国にしたいのか、どちらの方向に進むのか強いリーダシップのもとでの国家戦略、全体最適像が先ず示されるべきだと考える。
次に各論の一つ一つに全力をつくしながら全体の見通しをもって進むことが重要である。
この全体最適像の中には国内問題だけでなくグローバル化時代での世界の中の日本という視点からの国家戦略が決められるべきである。 」
参考
「農村部での自民大敗、農業政策の行方は?」より
「7月29日に行われた参院選で民主党の勝利を受け、専門家の間では、行き詰まりを見せている世界貿易機関(World Trade Organization、WTO)での合意がより難しくなるのではとの見方が浮上している。
政府は小規模農家ではなく大企業ばかりを見ているのではないかとの懸念から今回の参院選で農村部の票が野党に流れたことで、政府が進めてきた農産物市場の自由化の行方もやや不透明になった。
選挙運動中、民主党の小沢一郎(Ichiro Ozawa)代表は農村部を遊説、農家が農業に安心して取り組める「戸別所得補償制度」の創設をアピールした。
日本は関税と数量割当を導入し、事実上、コメ市場を閉ざしている。
民主党は欧州連合(EU)で実施されている制度に似た、市場開放を行いつつ農家に補助金を給付する制度の導入を訴えている。
大阪大学社会経済研究所の小野善康(Yoshiyasu Ono)教授は「現在の国会の状態では、最悪のシナリオにたどり着く可能性がある」と指摘する。
国会が分裂した現状では、「政府は野党の政策を中途半端に盛り込み、補助金をばら撒く一方で、割当てと関税を何とか維持しようとする可能性がある。その結果、財政不足と貿易保護政策に行きつく」と語る。
安倍政権のもと政府はオーストラリアと自由貿易協定に関する交渉を開始し、米国とも交渉を始めることを検討しているが、これが合意に至れば日本の農家にとって大打撃となる恐れがある。
慶応大学の添谷芳秀(Yoshihide Soeya)教授は「農村部での大敗により、安倍首相を引きつぐ自民党の首相は、現在の農業改革政策を見直さざるを得なくなるかもしれない」と指摘した。」
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2007/08/05 Sunday
2007/08/05(Sun)
アメリカの下院本会議で、7月27日に、2007年農業法が成立したが、ここにきて、ブッシュ大統領が、この成立した新しい農業法に対して、拒否権を発動する構えを見せている。
この辺の経緯については、ちょっとややこしいものがあるので、下記に、そのポイントのみ記載する。
現在の2002年農業法は、2007年9月30日に、失効する。
今回、下院で、231対191の賛成多数で可決された法案名は”Farm, Nutrition, and Bioenergy Act of 2007″(H.R. 2419)(the Farm Bill Extension Act of 2007)というものである。
これまでの2002年農業法の名前は”The Farm Security and Rural Investment Act of 2002(FSRIA)”(「2002 年農業保障・農村振興法)というものであった。
新しい2007年農業法は、直訳すれば、「農場・栄養摂取・バイオエネルギー法」ということになり、名前からみても、今回は、農業のほか、食とバイオエネルギーに力点を置いたものとなっている。
すなわち、これまでの農場の体力強化のための施策を残しながら、それに加えて、果樹野菜生産に対するインセンティブ、生態系保存、栄養摂取、再生可能エネルギーに対するインセンティブなどを含んだものとなっている。
新しい2007年農業法のポイントは、次の通りである
01.野菜・果樹生産に対して、優先順位をもって、16億ドル以上の投資をする。
また、新しい部門として、園芸や有機農業があり、さらに、栄養摂取の研究や、外注管理、貿易振興プログラムなどが含まれる。
02.現行のCOOL制度を補完する野菜、果樹、肉などについての原産国表示の強制的実施
03.学生の課外活動において健康で栄養のあるスナックを提供するためのスナックプログラムの拡張や、学校に新鮮な野菜や果実を提供するためのDODプログラムの実施が含まれる。
04.フード・スタンプ計画の充実と、これへの融資機能の付与
05.農村コミュニティに対する、経済開発やネットアクセス環境の整備を含んだ農村共同体投資の拡大
06.旧来ベースの価格保護と、新しい市場志向型の収入補填支払いの選択ができるシステムの用意
07.年間の修正純所得が百万ドルを超える農場主への支払い制限強化と、多数の事業体を作ることによりマルチのプログラム支払いを受けるという抜け穴を防ぐための措置
08.生態系保護プログラムや環境の質を高めるためのプログラムへの投資の拡大
09.再生エネルギー確保のための投資
10.地域間の不公平をなくすための商品間の利率と目標価格のリバランス
11.競争力のある補助金プログラムとするために、重複投資を排除し投資効率をはかるため、USDAに、国家農業研究計画機構を作る。
12.森林資源の保護と維持
上記施策の所用予算額は、下記の通りである。
1.1900億ドル−フードスタンプ、学校給食、その他、食密・栄養摂取のための各種プログラム
2.420億ドル−農産物/農家のための価格支持やその他の国家支持農産物への助成
価格支持については、旧農業法に基づく支払いを続ける。また、現行のノンリコース(無保証)のマーケティングローンプログラムの継続、支払い制限なしのローンプログラムの継続
2012年までの5年間は、作物補助金420億ドルとし、2012年に新々農業法の改革に引き継ぐとしている。
ちなみに、最近5年間でのこれら作物価格支持金額は、700億ドルに及んでいる。
参照「Wasted money」
3.290億ドル−研究開発費助成、市場開発交付金、害虫駆除プログラム、エネルギー供給・農村開発プログラム
4.250億ドル−生態系保全、その他の環境ファンド
5.160億ドル−果樹・野菜部門振興、原産国表示・COOL制度関係、
6.二億二千五百万ドル−マーケット・アクセス・プログラムの年間増加金額
7.二億一千五百万ドル−作物研究費
8.二千五百万ドル−食物安全研究費
以上、新農業法にかかる予算額総計2860億ドル
参考「Round 2: Farm bill debate now moves to Senate」
なお、ブッシュ大統領が、この新2007年農業法に対して、拒否権を発動しようとしている理由は、次の点にあるとされる。
1.アメリカの農業者に対して、ファンドを提供する、海外に拠点を置く非農業ビジネスへの課税(外資系企業の海外送金に対する課税強化)を含んでいること。
2.これから10年間にわたって、当初の歳出予定よりも大きい三百六十億ドルの支出を余儀なくされること。
(ジョハンズ農務長官は、記者会見の中で、2005年には、30億ドルの支出があったとしている。
このままでは、70億ドルの増税が必要であるとしている。)
3.年間の修正純所得が百万ドルを超える農場主への支払い制限強化の百万ドル水準が、あまりに高すぎ、WTO違反との、格好の集中攻撃の的(painting a bull’s eye:上記のマークをご参照)となりうること。
(ジョハンズ農務長官は、記者会見の中で、この百万ドルを超える農場主の対象者数は、七千人に過ぎないといっている。
そして、少なくとも、二十万ドルを超える農場主を対象にしなければならないとしている。
これによって、15億ドルの節減ができるとしている。
一方、Pelosi議長は、二十五万ドルを超える農場主を対象とする案を提示した。
たとえ、二十万ドルを超える農場主を対象としても、その数は、支払いを受ける対象者九十万人のうち、たった三万八千人に過ぎないとしている。)
4.2002年農業法に含まれていた貿易歪曲的補助金スキームの温存によって、WTOルールに従わない場合には、アメリカ農民は、農産物輸出において、780億ドルの損失を被ること。
なお、ブラジルは、2007年農業法の下院通過に先立って、先月7月11日に、アメリカの農産物価格支持補助金について、WTO違反であるとの立場から、WTOに対して、WTO提訴のためのコンサルテーションの手続きを、第一段階として、開始している。
また、 7月17日に、WTOドーハ・ラウンド農業交渉のファルコナー議長は、アメリカの貿易歪曲的とみなされる国内農業補助金を、米国主張のレベル以下の、130億ドル、または164億ドル以下に削減すべきと提案している。
(注−ファルコナー議長提案では、アメリカの貿易歪曲的補助金(overall trade-distorting farm support (OTDS)) を、130億ドルから164億ドル以下にすることを提案している。
この水準は、アメリカが、テーブルで公式なシーリング数字にあげている225億ドルよりも低い水準であり、さらには、アメリカが非公式にあげている数字である170億ドルよりも低い数字である。
ブラジル、インドは、100ドルから110ドル以下にとの要求をしているが、これは、アメリカが非公式にあげている170億ドルよりもさらに低い水準である。
どうも、G-20 は、最近の農産物価格の上昇によって、最近アメリカが実際に払っているのは少ない 110億ドル程度の金額であると見ているようで、ファルコナー議長提案の下限は、110億ドルに下がりうるものとG-20 は見ているようだ。
参考「DOHA: DRAFT AG TEXT MEETS LUKEWARM RESPONSE, NAMA LIKELY TO BE CHILLIER」
「WTO needs a little push to get past stalling」)
今回の貿易歪曲的補助金(overall trade-distorting farm support (OTDS)) の継続スキームをも含んだ2007年農業法の下院通過は、ドーハラウンドの今後の帰結について、さらに、不透明な見通しを与えることになった。
アメリカ共和党上院議員のCharles Grassley氏は、新農業法から、貿易歪曲的補助金を取り除くことを望んでいるが、その除去する時期は、ドーハラウンドが妥結した時でよく、ブッシュ大統領が拒否権によって、WTOに対しての一方的な武装解除(disarmament )をはかる必要はないとしている。
「Grassley views farm bill veto threat two ways」参照
ドーハラウンドは、9月から再開されるが、ここで、早期にファルコナー議長提案が、各国に認知されれば、アメリカの2007年農業法が成案となる前に、一定の貿易歪曲的補助金(overall trade-distorting farm support (OTDS))への歯止めをかけることになるが、その逆になると、ドーハラウンドそのものの瓦解につながり兼ねないものとなるのだろう。
このへんの微妙な事情については
「PROSPECTS FOR DOHA ACCORD DIM, AS WTO HEADS INTO SUMMER RECESS」をご参照
参考
「TRANSCRIPT OF REMARKS BY AGRICULTURE SECRETARY MIKE JOHANNS REGARDING THE FARM BILL AND NEEDED REFORMS THE NATIONAL PRESS CLUB」
「同上のジョハンズ農務長官のビデオ」
「Bush threatens to veto new version of Farm Bill」
「Ag Committee: “House Passes Historic Farm Bill」
「H.R. 2419: Farm, Nutrition, and Bioenergy Act of 2007」
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2007/08/03 Friday
2007/08/03(Fri)
農地をある人に譲渡なり売買しようと思っても、その「ある人」の経営面積が50アール以下であると、これまでは、農業委員会は、その譲渡なり売買を認めることができなかった。
これを、「農地法第3条2項5号の下限面積」制限(俗に、5反歩制限)という。
しかし、50アールというのは、かなりの面積で、これをたとえば、10アールに緩和してもらえないか、という要望は、多かった。
特に、新規就農者など新たな担い手による遊休農地の解消のためには、この5反歩制限は、大きなネックになっていた。
そこで、構造改革特区において、平成15年から、全国52特区において、試行的に、下限面積を10アール以上の地域の実情に応じた面積に緩和してみたところ、弊害がなかったところから、農地法施行規則の改正(第三条の四 および、附則(平成一七年八月一九日農林水産省令第九三号)第二条 )を行い、平成17年9月1日以降は、都道府県知事が農地法第3条第2項第5号に規定する「別段の面積」(10アール以上〜50アール未満で下限面積の設定)を公示することで、下限面積を10アール以上の地域の実情に応じた面積に緩和できるようになった。
たとえば、山梨県の場合は、このサイトのようになっている。
しかし、これらの別段の面積適用の市町村は、各県内ごくわずかに過ぎず、ましてや、最下限の10アール以上適用市町村などというものは、ほんの一握りに過ぎない。
まず、農政改革でやるべきことは、この辺の大幅な規制緩和なのではなかろうか。
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