Sasayama’s Weblog


2007/09/28 Friday

ドーハラウンド合意を想定した日本の品目横断的経営安定対策のスキーム見直しの必要性

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 06:42:34

2007/09/28(Fri)
 
チャック・コナー米農務長官代行の2007年農業法についてのスタンス 」や「ブッシュ大統領が、ドーハラウンド決着に前向き姿勢示す」などに書いたように、ドーハラウンドの年内合意は、アメリカがWTOファルコナー提案の受け入れを決断したことで、確実なものとなった。

また、アメリカの新農務長官に予定されているコナー氏が、「ドーハラウンドの合意が見た場合には、現在下院段階を通過した2007年新農業法のスキームの見直しをする。」と言明したことで、日本の品目横断的経営安定対策のスキームの見直しを迫られる可能性も出てきた。

というのは、この品目横断的経営安定対策自体が、そもそも、アメリカの「新青の政策」と目的を同じにした、ボックス・シフティングと「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」を強く意識したスキームでスタートしているものであるからだ。

第一、この「品目横断」という名称自体、WTOコンプライアンス逃れの名称ではある。

なぜなら、WTOにおいては、品目を特定していない国内支持(品目横断的 (non-commodity specific)な助成)であれば、全ての農業生産額の5%以下の国内助成は、これをデミニミス(De Minimis)として、これまでは、WTOの削減対象から除外されていたからだ。

ちなみに、アメリカの農業生産額は、1900億ドルで、この5パーセントの100億ドルが、品目横断的国内支持であれば、デミニミスになりうるということになる。

また、生産調整を伴った「生産制限的(production-limiting )」であれば、「青の政策」該当ということで、これも、これまではWTOの削減対象から除外されていた。

ここで、「これまでは」といったのは、今回、ドーハラウンドが合意されれば、これまでの黄色の政策(AMS)の削減に加え、貿易歪曲的補助金の総量規制(全体的削減という。)ともいうべき規制が新たに加わり、『「貿易歪曲的補助金(overall trade-distorting farm support)(OTDS)=Final Bound Total AMS( 黄色の政策) +デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策 この三つの合計額」×削減率(日本の場合は、66-73%削減)』での削減の二重の網がかかるからだ。

品目横断を大義名分にした、黄色の政策をデミニミス対象スキームに衣替えすることを「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」というが、ドーハラウンドが合意されれば、これらの抜け穴が封じられることになる。

そこで、日本の品目横断的経営安定対策を改めて、ドーハラウンド合意を想定してのWTOコンプライアンスの観点から検証してみると、下記のようになるだろう。

品目横断政策には、「げた」部分(生産性条件格差の是正対策)と、「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)の二つがある。

このうち、「げた」部分については、さらに、下記の、「その1、その2」の二つに分けられ、
「げた」その1-過去の作付面積に基づく支払い。
「げた」その2-年々の生産量等に基づく支払い。
に分けられる。

農林水産省の解釈では、
「「げた」その1-過去の作付面積に基づく支払い。」は、現実の生産と関連していないので、緑の政策に該当。いわゆる「緑ゲタ」
「「げた」その2-年々の生産量等に基づく支払い。」は、黄色の政策、いわゆる「黄ゲタ」部分
としている。

また、
「「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)」については、品目横断的(non-commodity specific)であり、生産調整を伴った「生産制限的(production-limiting )である」との条件の下に、「青の政策」(というよりは、私から言わせてもらえれば、本来の青の政策(Blue Box=production-limiting )とアメリカのデミニミス抜け穴狙いの新青の政策(New Blue Box=non-commodity specific)との合体スキームと見えるが)に該当、としている。
(これらのボックス概念規定の違いについては「Trade Issues and Agreements: U.S. WTO Domestic Support Reduction Commitments and Notifications」を参照)
参考「「品目横断的経営安定対策」解説副読本

総じて、法案国会通過時(2006年6月21日)は、アメリカが『新・青の政策』(New Blue Box)該当頼みで、何とか、WTOコンプライアンス違反該当を逃れられるのではないか、との状況の下で、ボックス・シフトと「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」で、この品目横断的経営安定対策のスキームが組まれた節がある。

ちなみ、この時点では、アメリカは、すでに2004年7−8月合意のフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)で、「総支出額に上限を設け、一国内の農業生産総価値の5パーセントを上限」とするNew Blue box(新・青の政策)案を提示しており、WTOに対しては、次のような要求をかなりの実現可能性を持って要求していた。

amber box(黄色の政策)のリミット60パーセント減少
counter-cyclical payment は、blue boxにカウント
amber box(黄色の政策)とblue box(青の政策)の政策カテゴリー分類見直し

日本側も、このアメリカの新青の政策のスキームに準じていれば、日本の品目横断的経営安定対策は、WTOコンプライアンス違反を免れるのではないかと、考えていたのではなかろうか。

しかし、その後、ドーハラウンドは決裂し、アメリカの「新青の政策」は、WTOからの厳しい評価を受け、上記のような「全体的削減」のスキームが付与され、アメリカの立場は、どんどん悪くなっていった。

ところが、ボックス・シフト名人で、お手本の新・青の政策主張のアメリカ自体が、ドーハラウンド合意に大きく傾いてしまった現在では、品目横断的経営安定対策のスキーム自体が、ドーハラウンド合意後には、WTOコンプライアンス違反を問われかねないものになりつつあるということだ。

(現時点において、アメリカは、新青の政策を、ウルグアイラウンドのもとでの「品目横断的黄色の政策」(non-product-specific amber)と位置づけているようである。
ドーハラウンド合意後においては、黄色の政策と青の政策の間に位置する新青の政策として、AMS削減対象にはカウントしないが、OTDS削減対象には、カウントする、というスタンスなのだろう。
また、価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCPs)は、新青の政策に属するとの考え方のようである。
以下参照
“Again, under the DDA [Doha] proposed provisions on new blue box countercyclical payments we believe could be notified under the new blue box. Under the current Uruguay Round rules we notified them as non-product-specific amber. “)

品目横断的経営安定対策にして、このような状況なのだから、より黄色の政策的要素の強い、民主党の「戸別所得補償制度」(「農業者戸別所得補償法案」(仮称))のスキームは、ドーハラウンド合意後では、問題外のWTOコンプライアンス違反スキームとみなされそうだ。

もし、現在の農家の不満を救う品目横断的経営安定対策の見直しをするとすれば、緑ゲタ部分に限った面積要件の見直しによるしかないだろう。

すなわち、補助金の対象農家を「北海道10ヘクタール以上、都府県4ヘクタール以上の「認定農業者」(個人)」または「20ヘクタール以上の耕地を持つ集落営農組織」の要件緩和である。

このように、参議院選挙後の農政は、「ドーハラウンド合意を前提としたWTOコンプライアンスの観点からの品目横断的経営安定対策見直し」と「現在の農家の品目横断的経営安定対策スキームに対する不満の解消を狙いとした要件見直し」の二つの観点からの舵取りをせまられることになる。

参考
ドーハラウンドに関する最近の日本側のスタンスについては、下記サイトをご参照
WTO農業交渉をめぐる最近の動き 平成19年9月 農林水産省


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