Sasayama’s Weblog


2002/10/10 Thursday

「タイは、もう、日本のODAを必要としない。」とのタイ国首相の発言

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:21:25

  
2002年10月10日

10 月9日付ダゥジョーンズ紙によれば、タイ国首相Thaksin Shinawatra氏は、タイは、もう日本からのODAを必要としないので、もっと、東南アジアの恵まれない国に、其の分を向けるべきである (Japan Should Redirect ODA To Poorer Neighbors)と語った。
http://finance.lycos.com/home/news/story.asp?story=29006849参照
以下は、その仮訳である。

タイ国首相Thaksin Shinawatra氏は、水曜日、次のように述べた。

彼は、最近日本側に対し、タイ国は、これ以上の日本からのODAは、必要としないと話した。

その代わりに、日本は、東南アジアのより貧困な国に、ODAを向けるべきとも話した。

「過去において、われわれは、日本や他の国から、多くの援助を得てきた。しかし、今日、タイ国よりも、もっと貧困な多くの国が、援助を必要としていると考えるようになった。タイ国は、まだ豊かとはいえないが、自らの足で自立したいと考えている。」

Thaksin Shinawatra氏は、日タイ両国の政府高官や実業家が出席する日タイ協会の会合で、このように演説をした。

タイ首相官邸筋によれば、日本からタイへのODA総額は、この数年間では、年間5億ドルから6億ドルにのぼっている。

しかし、昨年、Thaksin氏が首相になってからは、これらのODA総額を予算計画にカウントしないように、当局に要請している。

Thaksin氏は、最近東京を訪れた際の小泉首相との会談の席で、日本によるこのような財政援助は、タイ国に隣接する、「困難に直面する」より貧しい国々に向け直すことを、小泉首相に勧めた。

Thaksin氏は、明らかに、ラオス・カンボジャ・ミャンマーの三国について、触れているのであり、タイ国に直接隣接するこれら三国は、経済発展の初期段階にあり、多くの分野で、対外援助に頼っている国である。

言いかえれば、財政援助をこれらの国に対し行うことは、「それらの国での経済的な困難により職を探し、タイ国へ不法入国する経済難民が増えることで、タイ国への負担が増すのを、間接的に軽減しうる」ことになると、Thaksin氏はいう。

しかし、一方で、Thaksin氏は、日本からの投資を歓迎し、日本のビジネスが、「タイ国の経済発展の決め手になる」ことを期待するとも言う。

タイ農業者銀行研究センターの調査によれば、日本からのFDI(海外直接投資-foreign direct investment)は、2002年3月末で、6億4千2百万ドルにもおよび、年率7.9パーセントアップとのことである。

この報告によれば、日本からのFDI(海外直接投資)は、中国・フィリピンについで、アジアでは、第三位にランク付けられている。
339
  

2002/10/07 Monday

ニューズウィーク紙と竹中大臣とのインタビュー「大銀行といえども倒産しないということはない。」

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:21:16

  
2002年10月07日

ニューズ・ウィーク紙は、竹中大臣とのインタビュー記事を最新号に掲載した。以下は、その仮訳である。

ニューズウイーク: 竹中さんの新しいポストをハイリスク・ハイリォードのポストという人がいますが、本当ですか?

竹中: もし、私たちがハイりターンを経済に求めるとするなら、政府とても、一定のリスクを負うことになるでしょうね。
私が大学教授の頃、経済用語で調整費用という言葉をよく使いました。
流動性が求められているということです。
資本・労働・技術の生産要素が、他の領域に移動すれば、摩擦が起こるでしょう。
しかし、その過程においても、われわれの経済の潜在力は、増加するでしょう。

ニューズウイーク: それらのコストは、大企業を破産に至らしめる中にも含まれるのでしょうか。

竹中: すべての市場経済において、悪い企業は、消滅する−これが基本原則であることを、私は否定しません。
しかし、政策決定者の視点から言えば、この間の調整費用を減らすということは、大切なことです。
もし、業績の上がらない会社であっても、ある理由によって存続し続けているとするなら、政府は、市場調整のスピードを高め、セーフティーネットを用意するでしょう。

ニューズウイーク: 合併で、日本の銀行は、4行のメガバンクが、残りました。
これらの大銀行は、破産するには、あまりに大きすぎますでしょうか?

竹中: 大銀行は、それなりのメリットを持っています。
規模の経済を享受することで、それら大銀行の財政基盤を強化します。
しかし、私たちは、これら大銀行が、破産するには、あまりに巨大すぎるという考えは、支持しません。
そうすることによって、優れたコーポレートガバナンス(株主主権)を危機にさらすことになり、モラルハザードを醸成するからです。

ニューズウイーク: 平均的日本人は、この国がおかれている金融状態に付いて、十分気づいているでしょうか?

竹中: 私たちは、多くのタウンミーティングを開催してきました。
本当に、人々が情報をよく知っていて、われわれの経済社会問題に対し、健全な姿勢を保持していることに、私は驚きました。
その意味で、私は、日本人の意思と能力を信じています。

ニューズウイーク: 買い手が改革を恐れると、株の下落があるという人と、ないという人とに専門家は、別れます。
われわれは、市場の動きをどう読んだらいいんでしょうか?

竹中: 政府が何もしなくとも、または、ドラスティックに行動をとろうと、いずれにしても、政府は批判されます。
しかし、長い目で見れば、市場は、正しい答えを模索することになります。
ここで、スゥエーデンの例を見て見ましょう。
1990年代の初め、政府は、金融機関に公的資金注入をしました。
これは、正解だったのですが、株価は、低落し続けました。
その後、たった一年で、株価は、リバウンドし始めたのです。
ですから、私たちは、ここで、少し忍耐強くしなければなりません。

ニューズウイーク: 韓国は、経済危機に際し、銀行を国有化し、経営者を一新させました。
日本も、このような手段をとる必要があるのではないでしようか?

竹中: 私たちは、スゥエーデン・韓国そしてアメリカの経験に学ぶ必要があります。

ニューズウイーク: 先月、日銀は、金融機関保有株式を買い上げ、金融機関のバランスシートが改善するのを助けるとの構想を発表しました。
この方針は、いい方針でしょうか?それとも悪い方針でしょうか?

竹中: 正直言って、このニュースを聞いたとき、私は、非常に驚きました。
私は、このようなひねくった政策が出てくるとは思っていませんでした。
日銀は、この方針の提示によって、日本の金融システムが破損されているとのメッセージを政府に送ったのです。
このメッセージは、今度は、政府が決然とした行動をとる時であるということを意味しています。

ニューズウイーク: 専門家は、竹中さんは、6ヶ月で結果を見せるといっています。時間との競争ができますか?

竹中: われわれは、その進展をどのように計っていくのでしょう?
GDPによってですか?株価によってですか?
前にも述べたように、経済指標にその結果が出るには、一定の時間が必要でしょう。
その意味で、われわれは、忍耐強くなる必要があります。
われわれ政府としては、この問題を解決するに付いての並々ならぬ姿勢を、市場に示す必要があります。
私は、市場が、好反応するであろうことを期待しています。

ニューズウイーク: あなたは、主要銀行の最高経営責任者(CEO)が、不良債権一掃に努力しないで抵抗したら、どう対応しますか?

竹中: これは、抵抗ではありません。
これは、その銀行の公式の立場を示したものです。
最高経営責任者(CEO)というものは、なかなか、自分の銀行を悪い銀行とはいえないものです。
われわれは、そこで、其のシステムを変えうるようなインセンティブを用意する計画です。
われわれは、その改革へのインセンティブとして何を用意すべきかを、銀行の最高経営責任者(CEO)と、よく話し合うつもりです。
338
  

2002/10/05 Saturday

フィッチ(Fitch)の日本格付けについてのコメント

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:21:07

  
2002年10月05日

2002年10月3日、「フィッチが、日本の格付け報告作成に着手」、(Fitch Commences Japan Ratings Review )との一文が、フィッチより発表された。
以下は、その仮訳である。

フィッチは、先週、東京を訪れ、日本のソブリン格付けに付いての年次報告作成に着手した。

この東京訪問の間、財務省・日銀・金融庁、内閣府の高官との、会合が持たれた。

フィッチは、この結果を11月には、発表するであろうが、ここでは、金融部門における問題解決方針や、中期の財政再建達成への強い確約に付いての、協調的・統合的方針の欠如のゆえに、格下げにいたるであろうと警告している。

日本の長期の外貨建て・自国通貨建て格付けは、現在、AA格で、見通しは、ネガティブである。

2001年第4四半期まで、3四半期連続して縮小を見せた経済活動は、2002年上半期には、落ち着きを見せた。

しかし、このやや明るい事態は、完全に外部要因によるものであり、それは、世界経済やアジア地域経済の好調と、2001年末までの円安を強く反映してのものである。

国内需要-特に、民間部門投資においては、依然瀕死の状態であり、このことは、国内経済の弱体化の進行を強く表している。

将来的にみても、GDPについて、世界的にも弱気の展望しかない元では、成長への外部からの支えも、望み薄である。

全体的に財政効果が得られにくい元で、フィッチは、公共事業プロジェクトの抑制への努力は、認めるものであり、また、過去においては、経済立て直しの典型的な対策であった補正予算がなされないことにも注目している。

しかし、それでもなお、大枠での政府債務が、今年の年末までに、GDPの150パーセントを超すことになり、財政動態は、劇的なものではないにしろ、マイナスの方向へのままである。

実行可能な減税に付いての議論が進行している中で、フィッチは、2003年には、財政的にやや楽になるものと予測はしているものの、それ以上に心配なのは、中期構想の下での、財政再建の遅れである。

2010年以降、最初の財政余剰を達成しようという財務省の目標は、GDPに占める政府債務比率が引き続き上昇し続けることを阻止するに、十分のものではない。

フィッチが見るに、昨年、金融部門強化への取り組みの進展は、期待はずれのものであった。

この間において、金融機関は、驚くべき金額の不良債権に対する引き当てをおこなったものの、フィッチの見るに、金融機関の資産内容を決定的に決める規模で、金融セクターが抱える不良債権(NPL)問題解決を図るには、不十分なものであった。

一方で、金融機関の、過剰供給圧力やデフレ圧力に貢献すると見られる会社への融資開拓は、きわめて不十分であり、新規貸し出しを渋り、そのことで、新規投資機会を抑制している。

金融機関の資本比率を押し上げ、金融機関のバランスシートから金融機関保有の不良債権を一掃するためには、政府からの干渉なくして、民間部門の負債問題は、解決しそうもない。

ここで、フィッチは、RCCに対して、昨年の法改正後以上の強い役割を果たすことを希望する。

先週、日銀が、日銀独自の不良債権評価の発表をふくめての急進的な政策行動を発表したり、金融庁首脳の人事異動の後、金融機関問題解決に付いて、いくつかの方針変更のはっきりした兆候がみられる。

このことは、結果的に、公的資金注入への動きを加速させ、其のことは、企業の再編成を伴うものであることを条件とするならば、たとえ、目先では、それによって、政府部門の負債を増やすことにはなるが、歓迎すべきことである。

しかしながら、そのような計画は、ごく初期の段階にあり、これに付いての激しい議論が、その構想に付いて行われる可能性がある。

そこに多くの考慮すべき妥協点があるにせよ、緊急性をもって断固として行うことが、この際、求められる。

さらに、デフレの進行でリストラが加速することによる衝撃を、当面相殺しうるマクロ経済学的手法のうち、取りうる手法に付いて、政策協調を図ることが重要となる。

フィッチは、金融市場において不安を醸成するような、更なる非協調的な政策が発表されることについて、関心を持って見守る。
337
  

2002/09/29 Sunday

「塩川大臣の行きつ戻りつの迷走発言は、日本財務省の信頼性を損なうであろう」とのダウ・ジョーンズ紙の記事

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:20:46

  
2002年09月29日

9月28日のダウ・ジョーンズの記事は、G7での日本の財務省が見せた失態に付いて、日本経済への世界の不信感を増幅する行為であったと、酷評している。

この記事は、”Shiokawa Seesawing May Damage Japan MOF’s Credibility “「塩川大臣の行きつ戻りつの迷走発言は、日本財務省の信頼性を損なうであろう」とのものであり、以下に、この記事を仮訳し、掲載する。

塩川大臣が、国際舞台で、不良債権問題について、公然と矛盾したことを言ったことは、日本の重要問題についての日本財政当局の信頼性を著しく損なう行為であった。

塩川大臣は、二回の記者会見をふくみ、新聞記者へ5回のブリーフィングをおこなったが、不良債権処理問題についてのオニール長官との会談について、矛盾した見解を表明した。

オニール長官との会談を終えた後、塩川氏は、報道陣からの質問を受けて、最初にこう答えた。

「日本の金融機関の不良債権問題については、オニール長官との会談では、提起されなかった。そのかわりに、われわれは、日本とアメリカの成長見込みに付いて話し合った。」

しかし、このブリーフィングの後、財務省の事務当局トップは、こう語った。

「公的資金再注入問題については、確かに語られなかったが、双方の話し合いの中では、不良債権対策についての日本の方針の説明がなされた。」

しかし、大臣と事務方との矛盾した説明は、そのときだけにとどまらなかった。

G7会合後の公式記者会見で、塩川大臣は、オニール長官との会談のわずか6時間後だったにもかかわらず。最初のステートメントを完全に覆した。

双方の話し合いに付いての質問に対し、塩川大臣は、こう答えた。

「オニール長官が、公的資金注入問題に付いてたずねたのに対し、私は、次のような見解を述べた。すなわち、もし、いくつかの金融機関が、再建の見込みのない会社に対する不良債権を処理し、其の結果として、資本比率が低くなっ場合には、公的資金は、注入されるだろう。–との見解を述べたものである。」

この塩川大臣の見解の表明で、土曜日の朝は、報道陣と財務省当局は、大騒ぎになった。

しかし、財務省当局は、塩川発言の矛盾点に付いてきかれ、公的資金再注入を否定した。

さらに、財務省当局は、塩川発言を訂正した公式のステートメントを発表した。

そして、財務省当局は、塩川大臣自身が、再度の記者会見をすると発表した。

しかし、記者会見が召集されても、塩川大臣は、自身の前のコメントが修正されたことは、事務当局から知らされていなかったといいはり、怒りを爆発させた。

塩川大臣は、財務省事務局にたいし、塩川発言を修正したコメントを発表した事務当局を非難した後、記者会見の席を飛び出した。

席を離れる際、塩川大臣は、報道陣に対し、「なんで、同じことを何度もわたくしに説明させるのか」と、ののしって、出て行った。

この、塩川大臣と財務省当局との間の「Yes-No-Yes-No」の繰り返しのジグザグは、塩川大臣の最後の記者会見で、こう締めくくられた。

「私はオニール長官との公式の会談では、不良債権問題については、実際のところ論議されなかった。むしろ、オニール氏とその話題が出たのは、G7会合での休憩中の一対一の席で、オニール氏が見解をもらされた。」

これらの出来事は、日本の財務省の信頼性に付いての疑義を投げかけるものである。

日本の経済状態の情報に付いて、世界的な不信感が増していることは、広く周知の事実となっている。

たとえば、不良債権額の見積もりに付いて、民間と政府との評価額のギャップが広がっていることなどが、世界の日本情報に付いての疑惑を深めている。

日本の多くの研究機関が、不良債権額を100兆円と見積もっているのに対し、政府見積もりでは、50兆円弱にとどまっている。

日本の財務省広報担当官が、世界の注目を集める国際舞台で、大失態を演じたことは、今後さらに、日本にたいする広範囲にわたる世界の不信感を実証することになりかねない。
336
  

2002/09/28 Saturday

「日本経済回復戦略は、依然として不透明」-ウォールストリートジャーナル記事から-

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:20:31

   
2002年09月28日

この記事は、9月27日のウォールストリートジャーナル記事「Japan’s Strategy to Repair Economy Remains Murky」の仮訳です。

日本の財政当局首脳は、金曜日行われるG7会議において、世界第二位の経済大国の10年間にわたる経済不振を阻止する戦略に付いて、述べる予定である。

この問題は、日本の財政当局自身は、問題とは思っていないようにも見える。

先週、日銀が、日本の金融システムがあまりに不安定のあまり、その安定のために、銀行保有株式を買取るという、これまでにない第一歩を踏み出すことを声明したため、これまで、ぎりぎりで守備一貫性を保ってきたと評されていた日本の政策当局者たちは、秩序なき状態に投げこまれてしまった。

今週、日本銀行の当局者は、次のように話している。

「この金融機関保有株式購入の真の目的は、日本政府に、もっと攻撃的な政策をとらせるためのショックであり、日本銀行が、経済成長を刺激させるための第一ステップである。」

しかし、当面は、日本政府が、金融機関や経済に対して、どのような次のステップを踏むか、についてや、戦略が決まった場合、誰が、それを遂行するか、などについての、日銀の動きは、すべて未定の状態にある。

先週、政府は、経済浮揚政策パッケージの公表を10月末まで、延期した。

これは、今年に入って三度目のことで、当初は、現行の金融機関対策を容認すると予測されてきた。

さらに、日銀速水総裁と、塩川財務大臣が、G7会議でワシントンに飛んでいるにもかかわらず、国内にいる政治家たちは、政府がすでに資金投入した銀行への公的資金再注入による救済が望ましいものかどうかという重要な問題について、瀬踏みをしているような有様である。

福田官房長官は、木曜日、「この段階にいたり、私どもは、注意深く、考慮している。」と語った。

小泉首相は、つい最近まで、公的資金による金融機関の救済は、必要ないと語っていたが、「そのタイミングはデリケートな問題である」とコメントするようになった。

東京における政策の手詰まり状態は、多くの日本の会社が上半期決算を終える月曜日にいたる微妙な数日の間も、証券・債権市場を混乱させている。

9月20日、日本の投資家は、日銀と政府とのシグナルが対立していることに、あまりに困惑したため、多くは、取引を見送った。

結果、財務省は、ここで、初めて、10年物国債入札の札割れを経験した。

これら混乱の中心は、金融機関不良債権問題をどう扱うかについてであり、これは、世界経済における日本の弱点とみなされる、まさにアキレス腱である。

日本の金融機関は、1990年代初期に地価や株価が低落し始めたときに、債権や保有株の巨大な運用での損失が広がったとみられる。

公表されている数字を見てさえ、不良債権金額は、52兆円に上るとされ、非公式な評価では、その2から4倍はあると見られている。

政府の戦略では、この2年間で、不良債権の悪質な部分を処理すると提唱している。

アメリカ財務省筋やIMF、くわえて身内の日銀からの圧力で、小泉首相は、不良債権処理の計画を加速することを余儀なくされている。

しかし、アナリストたちは、真の問題解決のためには、政治的には受け入れがたいようなドラスティックなステップを踏む必要があるとしている。

これらのステップのうちには、自力でカバーできない金融機関の損失を国が吸収したり、公的資金の注入や、不良債権を市場価格以上で国が買いとることや、困窮な借り手を、清算や再編成することによって、再建を加速させるといったことを含んでいる。

柳沢金融担当大臣の運命がどうなるかが、新しい金融機関政策をとることが難しいかどうかを計る手がかりになると、日本の専門家たちは見ている。

柳沢大臣はこれまで、日本の金融機関には、十分に資本があるので、公的資金の注入は必要ないと、いい続けてきた。

柳沢大臣の更迭がなったばあいは、政府が、不良債権問題について、より攻撃的な政策を施すであろうと、市場にみなされる。

日本のメディアは、小泉内閣改造で、柳沢大臣は、月曜日には、内閣をはじき出されるであろうとみている。

柳沢大臣は、水曜日、報道された自らの辞意を否定した。

小泉首相は、一年半前官邸に入ったのだが、その間、不良債権処理の行動加速を約束はしても、それは、以前の提案の蒸し返しにすぎなかっった。

日銀は、金融システムの状態について、来月、厳しい評価を公表することを約束すれば、政府は熱意をもってことに当たるだろう、という。

ワシントンでのG7会議で、オニール長官率いる米財務省は、日本に対し、より迅速な対案の提示をうながす可能性がある。

「もし、日本が、経済成長を回復したい意欲があり、世界経済での重要な役割を果たしたい意欲があるのなら、不良債権問題とデフレ問題の解決に努力する必要がある。」

と、今週、大統領経済諮問委員会議長のR.Glen Hubbard 氏は、述べている。

今週、IMFは、日本経済は、今年は0.5パーセントのマイナス成長をし、2003年には、1.1パーセントという中途半端な成長をするであろうとした。

IMFの主幹エコノミストであるKenneth Rogoff 氏は、こういう。

「日本は、10年間にわたる第三の景気後退から抜け出しつつあるようにみえる。
しかし、日本が基本的な問題解決に努力することを怠れば、さらに今後10年間、これまでと同じような最悪の経済休息状態に見舞われないとは、誰も保障できない。」
335
 

2002/09/26 Thursday

「IMFの世界経済見通し」から、日本についての記述部分の抜粋

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:20:14

   
2002年09月26日

昨日発表された、IMFの「世界経済見通し」から日本についての記述部分を抜粋しました。

「日本 : 成長の兆しは見えるのか?」

Japan: Are Growth Prospects Picking

Activity appears to have bottomed out in Japan,after the third, and most severe, recession in the last decade.
A modest rebound is projected for the remainder of this year and in 2003, although it remains subject to downside risks.
The fundamental issue in Japan, however, continues to be how to achieve more rapid underlying rates of output growth, and break the decade-long pattern of anemic performance interspersed with recession.
This cannot be achieved by macroeconomic policies alone, but requires decisive action to deal with long-standing structural impediments.
Such action is most important in the banking sector, where a vicious circle needs to be broken in which large unrecognized nonperforming loans make banks unwilling to lend,hurting financial intermediation and activity, and thereby creating new nonperforming loans to replace those being written off.
Activity appears to have stabilized in early 2002.
The revised national income accounts indicate that activity accelerated modestly over the first half of this year, underpinned by net exports, while private domestic demand remained relatively weak.
More recent indicators suggest that business investment is likely to begin to recover by late 2002,although retail sales remain sluggish.
High levels of slack remain, and deflation of about 1 percent a year persists, magnifying real debt burdens.
Wealth destruction continues, with equity prices down since the start of the year and land prices continuing to fall, putting additional pressure on bank balance sheets.
Real GDP is projected to fall by !/2 percent in 2002 (on an annual basis) before staging modest positive growth of about 1 percent in 2003.
This anticipates a gradual recovery in private domestic demand, with private consumption growing somewhat in the second half of 2002 and business investment recovering late in the year.
The contribution from net exports, however, is expected to weaken as rising domestic demand boosts imports and the appreciation of the yen erodes competitiveness.
Higher private spending is partly offset by fiscal consolidation, with government investment declining in the latter part of 2002 asspending associated with past fiscal stimulus packages wanes, while the 2003 structural fiscal deficit is projected to fall by about 1 percent of GDP, although some of this decline may be offset by tax cuts that are likely to be announced soon.
While the economy could recover more rapidly, particularly if global activity picks up more quickly than currently expected, downside risks predominate.
The recent appreciation of the yen highlights the susceptibility of the recovery to external influences, including further appreciation or weaker global recovery.
A further fall in equity prices could also affect activity by eroding confidence and dealing a further blow to the difficult financial position of the banks, already weakened by slow growth and falling asset prices.
Over the last decade, the authorities have adopted a gradualist approach to reform, rather than taking decisive action to solve long-standing structural weaknesses exposed by the bursting of the asset price bubble in the early 1990s.
This approach has come at a considerable cost to the Japanese economy in terms of activity, wealth destruction, and unemployment .
Countercyclical macroeconomic policies have been unable to ignite self-sustaining growth or avoid deflation becoming entrenched, despite stimulus measures that helped to increase net debt excluding social security to over 100 percent of GDP, and gross debt to 140 percent of GDP,and reduced short-term interest rates to zero.
In a break with the past, in 2001 the government of newly elected prime minister Koizumi presented a broad strategy to address Japan’s fundamental
economic problems.
This strategy encompassed banking reform, fiscal consolidation, and corporate restructuring and deregulation, and the government is expected to announce another economic package that will provide further details of its reform proposals in coming weeks.
Existing initiatives include recently completed special inspections of the
accuracy of classification of major bank loans to particularly weak large corporations; accelerating major banks’ disposal of the worst nonperforming
loans; encouraging a reduction of banks’equity holdings; setting procedures for formal and informal rehabilitation of distressed companies; a \30 trillion (6 percent of GDP) limit on central government bond issuance in this fiscal
year; and establishing broad goals for mediumterm fiscal consolidation.
While these are welcome steps, additional initiatives appear necessary to address the structural impediments confronting the Japanese economy and hence to significantly improve medium-term growth rospects, so as to achieve the following:

• Improve banks’ financial health and profitability
through full recognition of the quality of all bank loans; recapitalize viable banks, possibly
using public funds, but subject to strong conditionality;
promote the exit of nonviable banks;
and scale down the role of government financial institutions.
Forcefully tackling the underlying problems faced by the banks is a prerequisite for the planned removal of the blanket guarantee on demand deposits next April.

• Accelerate corporate restructuring
by giving banks stronger time-bound incentives to agree realistic restructuring plans with viable firms and to carry out the rapid and complete disposal of the assets of nonviable ones.

• Increase the credibility of the medium-term fiscal consolidation
strategy
by setting a medium-term debt target and broad objectives for major budget categories, to help maintain investor confidence in an environment of high and rapidly rising debt.
Turning to the short-term macroeconomic stance, bolder monetary stimulus should be used to support the emerging recovery; given the difficult underlying fiscal position, however, consolidation should be initiated unless bold structural policies are undertaken.

Specifically,

• A more aggressive monetary stimulus is needed to support economic activity, comprising a public commitment to end deflation in no more than
12–18 months, backed by further quantitative easing.
The recent appreciation of the yen bolsters the case for further easing, as it will negatively affect activity and prices if sustained.
Although there is a possibility that aggressive quantitative easing could result in excessive yen weakness, the regional impact should likely be
manageable given the movement toward flexible exchange rates and healthier reserve and external debt positions. Regional effects would be further mitigated if quantitative easing were combined with the initiatives needed to revive Japan’s medium-term growth; and

• In the absence of appropriate restructuring initiatives, the focus of fiscal policy should move toward the initiation of gradual consolidation to stabilize the debt ratio in the medium term.
Given the unsustainable fiscal situation―net debt excluding social security is projected to rise to over 120 percent of GDP by the end of fiscal year 2002/03―it is critical that the authorities clarify their medium-term consolidation strategy.
That said, if appropriate structural policies are followed, which could engender a negative short-run impact on activity, steps should be taken to attain a neutral fiscal stance in the short term.
334
  

2002/09/22 Sunday

東京の最後のあやまち-ウォールストリートジャーナル紙の記事-

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:19:51

  
2002年09月22日

2002年9月20日、ウォールストリートジャーナル紙は、「東京の最後のあやまち」(Tokyo’s Latest Mistake)と題した論説を発表した。
以下は、その仮訳である。

この水曜日、日銀が決定した金融機関保有株式の日銀買い上げは、絶望的な行動としか考えられないし、これは、おそらく大失敗であるだろう。

速水日銀総裁は、財務省からの圧力に抵抗することは、無責任なことであると考えたに違いない。

なぜなら、日本の金融システムは、崩壊寸前の危機状態にあるからである。

速水総裁が、このことによって、政府が構造改革を成し遂げるための時間稼ぎをしたのか、それとも、共謀して、改革を回避するようにしたのか、どちらかなのかは、そのうちわかることだ。

後者の可能性は、ありうることだ。

日銀は持ち株を2070億ドルといっているが、他にいわせれば、その額は、3260億ドルにも上るとみられている。

どっちであるにしろ、そのシェアは、銀行資本のかなりの部分を占める。

昨日(9月19日)の日経平均は、9669円で終えた。

これは、1980年代のピークの4分の1に過ぎない。

2週間前に19年ぶりで最安値をつけた日経平均が、この速水総裁の一言で、6.5パーセントも上昇したことになる。

しかし、この株価の回復は十分ではない。

今年の2月上旬、日経平均が9420円をつけたとき、日本経済は、危機モードに入った。

この時は、カラ売りの規制と年金基金の資金運用動員で、政府は、何とか、年度末の株価を11000円にまで取り戻した。

このあたりから、もはや、カラ売り規制や半官資金の動員では、なんともしがたい状態に陥ってきた。

いまや、日本の銀行取付を回避する手段は、公的資金しかない。

しかし、そのほかの直接的な金融機関救済措置は、まるで評判がよくない。

だから、日銀に対して、公開市場操作によって、国債を売り、金をひねり出して株を買えとの圧力がかかるのである。

これは、日銀法上の特認を要する、経済における日銀本来の役割としては、邪道なものである。

この事態は、日本株式会社の失敗を取り繕うため、何年もの間、秘密の裏金を工面してきたことのとどのつまりである。

日銀は、いまや、最後の貸し手ではなく、最後の手段の「でっち上げ屋」となってしまった。

自らの貸借対照表上に取得株式を乗せるという危険を冒すことで、日銀は、次のようなサインを送っている。

すなわち、日本の国家は、どんなことがあっても、大銀行の破綻を止めるということについて、暗黙の保障を与えているのである。

この意味するところは、大銀行は、外国人保有の新生銀行を除いては、大企業破綻を阻止する保障を与え続けられるということである。

全般的に貸し出しが減少してくるにつれ、銀行担当者は、有望貸出先であっても、新規貸し出しをのばそうとしなくなることで、貸し渋り現象が見られるようになった。

しかし、彼らは、大きく、問題の多い会社にたいしては、リスクがないということで、貸し支えをしている。

むしろ、破綻寸前の銀行を国有化することのほうが、日本株式会社がタイタニック号のように沈むがままにさせておくことより、いい案だろう。

しかし、いま最も現実的な案は、銀行が、自らの不良債権を市場価格で政府に売ることであろう。

銀行の不良債権は、これからも、増嵩し続けるであろうし、たとえ、銀行の利益を投じ償却したとしても、失敗を招くであろう。

速水総裁が、どこまで突っ込むのか、今のところわからない。

彼は、必要ならばいつでも、日銀が証券市場に介入するであろうことを示唆することで、さらに、経済のモラルハサードの領域に踏み込んでいる。

日銀が買取った株式が数年の間保有されることによって、日銀の資金運用が突出している中での市場の価格決定は、阻害されるであろう。

結局は、これらの株式取得は、経営に変化をもたらしうる状態になるまで、日を延ばし、日銀への損失が最小になるよう、政府が、会社に対し、支援を申し出ることを、示唆しているのではないか。

日本の偉大なる経済は、この10年間、足踏みすることで、終わってしまった。

それは、日本のリーダーが、困難で評判の悪い決定を下さなかったからである。

金融財政システムの崩壊寸前で、日銀の下した、最後の政治的責任回避は、避けられない最後の審判の日を、ただ、日延ばしにするに過ぎない。
333
  

Fitchが、高まる日本の政策への先行き不安について、懸念を表明。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:19:29

   
2002年9月22日

下記は、2002年9月20日に、Fitchが発表した、「Fitch Express Concern Over Rising Policy Uncertainty in Japan 」の仮訳である。

2002年9月20日、格付け会社であるFitchは、高まる日本の政策への先行き不安が、日本政府への信頼性をそこねており、また、このことは、今後の日本のソブリン格付けについても、よい前兆とはならないと、表明した。

日銀が発表した今回のかなり異例な金融機関保有株式買い上げ計画に続いて、不良債権処理問題解決についての日本政府の意図の不明確さが、金融市場において、不安と混乱を招いている。

Fitchは、この点に付いて次のように考える。

すなわち、今回の10年物国債の競争入札の札割れ問題を引き起こしたのは、政府の不良債権処理能力についての投資家の懸念の増大によるものというよりは、むしろ、まさに上記に述べた不良債権処理問題解決についての日本政府の意図の不明確さこそ、主な原因であるということである。

そのような状況にもかかわらず、企業と政府部門のバランスシートの悪化と、政府債務の異常な上昇によって、経済成長面での環境が確実に悪化している中で、より強くより統合された方針の下でのリーダーシップが欠如しているということが,何よりの心配の元である。

Fitchの長期外貨建て、自国通貨建て、いずれの日本のソブリン格付けも、AA格であり、展望は、ネガティブのままである。

そこで、われわれとしては、来週、東京に赴き、日本のソブリン格付けを行うため、政策展望に付いての詳細な調査解明を行う予定である。
332
  

2002/09/21 Saturday

スタンダード・アンド・プアーズ(Standard & Poor’s)の日本ソブリン格付け見通し

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:18:42

  
2002年09月21日

スタンダード・アンド・プアーズ(Standard & Poor’s)のアジア・ソブリン格付けチームのリーダーである小川氏は、日本ソブリン格付け見通しについて、次のように語った。(この記事を試訳したものです。)

「今回(2002年9月20日)の10年物国債競争入札の札割れ問題(注-1989年以来初めて、予定額に応札額が達しない札割れが発生)は、政府の資金調達計画の遂行を妨げるものではない。

しかし、この事態は、日本の経済政策の方向性についての不確実性を、投資家に対し強調したという、マイナスの効果があった。

日本は、適正な公共支出をおこない、また、経済を再活性化させるために、企業・金融部門の改革に、さらに努力する必要がある。

しかし、財務省と日銀そして金融庁の間での政策の行き違いによって、投資家の政策への信頼を揺るがす袋小路に陥っているのが現状だ。」

Standard & Poor’sの日本のソブリン格付けは、G-7先進諸国の中では、もっとも低いものである。

今年4月15日に行ったStandard & Poor’sの日本ソブリン格付けは、これまでの格付けより1ノッチ引き下げた上で、経済展望をネガティブとした。

このことは、今後も格下げの可能性のあることを示唆したものだ。

小川氏はさらに、こうもいう。

「経済政策の方向性についての不確実性の一部は、今週はじめ日銀が表明した、金融機関保有株式買取声明から生じている。

しかし、この買取量、価格、そして中央銀行の通貨プログラムの詳細は明らかでない。

この金融機関保有株式買取政策の透明性の確保や買取についての詳細規則がないと、このプログラムは、たんなる株価維持計画に終わり、金融機関の再投資や改革に資するには、あまりにお粗末な代用品になりかねない。」

Standard & Poor’sの格付けは、構造改革や金融統合が遅れるであろうことを織り込むが、もし、デフレ圧力がこのまま続けば、格下げは避けられないであろう。

この点について、小川氏は、こういう。

「われわれは、10月に発表されるであろう政府のデフレ政策パッケージを、綿密に検証するであろう。」

として、小川氏は、こう、締めくくった。

「その上で、スタンダード・アンド・プアーズの日本へのソブリン格付けは行われるであろう。」

(この記事の後、9月20日、S&Pは、日本のソブリン格付けを「外貨建て、自国通貨建ていずれも据え置きとし、アウトルックはネガティブとした。
331
  

2002/09/11 Wednesday

IMFケーラー専務理事の東京での記者会見の内容

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 11:18:23

  
2002年09月11日

9月10日のロイター記事によれば、IMFケーラー専務理事(Horst Koehler)の東京での記者会見要旨は、次のとおり。

「日銀は、デフレ克服のために、常に、金融緩和の方途を模索する必要がある。」

「われわれは、(日本政府に)、新しいプログラムをセットアップするようなアドバイスは、(もはや)しない。われわれが、(日本政府に)アドバイスするのは、中立予算である。」

「われわれの規定する政策遂行段階を着実に履行することが、大きなインパクトを与えるであろうことを、私は、確信している。」

「もし、この方向で、政策が実行されるのであれば、株価は確実に上がるであろう。」

「株価を人為的に押し上げる政策を実行することは、日本経済に横たわる問題を解決するためには、適切な対応ではない。」

「私は、公的資金を不良債権処理と、金融機関再編促進に使うことについては、賛成である。」

「しかし、納税者の貴重な金は、改革を実行する具体的な計画とタイムテーブルの元にのみ、使われるべきであると考える。」

「今回の減税問題については、長期的に見て、日本の財政改革プログラムを損なうものとなるのではないかと、懸念している。」

「短期的には、減税は、企業活動を活発化する側面はあるものの、短期的に行われるすべての措置は、長期での税制改革と調和したものでなければならない。」

「IMF検査では、日本の金融政策や債権管理の透明性確保の点では、他の先進諸国に比べるとうまくいっていることを示している。」

なお、IMFによる再検査は、10月に行われ、2003年初頭に、検査結果が発表される予定。
330