2002年10月05日
2002年10月3日、「フィッチが、日本の格付け報告作成に着手」、(Fitch Commences Japan Ratings Review )との一文が、フィッチより発表された。
以下は、その仮訳である。
フィッチは、先週、東京を訪れ、日本のソブリン格付けに付いての年次報告作成に着手した。
この東京訪問の間、財務省・日銀・金融庁、内閣府の高官との、会合が持たれた。
フィッチは、この結果を11月には、発表するであろうが、ここでは、金融部門における問題解決方針や、中期の財政再建達成への強い確約に付いての、協調的・統合的方針の欠如のゆえに、格下げにいたるであろうと警告している。
日本の長期の外貨建て・自国通貨建て格付けは、現在、AA格で、見通しは、ネガティブである。
2001年第4四半期まで、3四半期連続して縮小を見せた経済活動は、2002年上半期には、落ち着きを見せた。
しかし、このやや明るい事態は、完全に外部要因によるものであり、それは、世界経済やアジア地域経済の好調と、2001年末までの円安を強く反映してのものである。
国内需要-特に、民間部門投資においては、依然瀕死の状態であり、このことは、国内経済の弱体化の進行を強く表している。
将来的にみても、GDPについて、世界的にも弱気の展望しかない元では、成長への外部からの支えも、望み薄である。
全体的に財政効果が得られにくい元で、フィッチは、公共事業プロジェクトの抑制への努力は、認めるものであり、また、過去においては、経済立て直しの典型的な対策であった補正予算がなされないことにも注目している。
しかし、それでもなお、大枠での政府債務が、今年の年末までに、GDPの150パーセントを超すことになり、財政動態は、劇的なものではないにしろ、マイナスの方向へのままである。
実行可能な減税に付いての議論が進行している中で、フィッチは、2003年には、財政的にやや楽になるものと予測はしているものの、それ以上に心配なのは、中期構想の下での、財政再建の遅れである。
2010年以降、最初の財政余剰を達成しようという財務省の目標は、GDPに占める政府債務比率が引き続き上昇し続けることを阻止するに、十分のものではない。
フィッチが見るに、昨年、金融部門強化への取り組みの進展は、期待はずれのものであった。
この間において、金融機関は、驚くべき金額の不良債権に対する引き当てをおこなったものの、フィッチの見るに、金融機関の資産内容を決定的に決める規模で、金融セクターが抱える不良債権(NPL)問題解決を図るには、不十分なものであった。
一方で、金融機関の、過剰供給圧力やデフレ圧力に貢献すると見られる会社への融資開拓は、きわめて不十分であり、新規貸し出しを渋り、そのことで、新規投資機会を抑制している。
金融機関の資本比率を押し上げ、金融機関のバランスシートから金融機関保有の不良債権を一掃するためには、政府からの干渉なくして、民間部門の負債問題は、解決しそうもない。
ここで、フィッチは、RCCに対して、昨年の法改正後以上の強い役割を果たすことを希望する。
先週、日銀が、日銀独自の不良債権評価の発表をふくめての急進的な政策行動を発表したり、金融庁首脳の人事異動の後、金融機関問題解決に付いて、いくつかの方針変更のはっきりした兆候がみられる。
このことは、結果的に、公的資金注入への動きを加速させ、其のことは、企業の再編成を伴うものであることを条件とするならば、たとえ、目先では、それによって、政府部門の負債を増やすことにはなるが、歓迎すべきことである。
しかしながら、そのような計画は、ごく初期の段階にあり、これに付いての激しい議論が、その構想に付いて行われる可能性がある。
そこに多くの考慮すべき妥協点があるにせよ、緊急性をもって断固として行うことが、この際、求められる。
さらに、デフレの進行でリストラが加速することによる衝撃を、当面相殺しうるマクロ経済学的手法のうち、取りうる手法に付いて、政策協調を図ることが重要となる。
フィッチは、金融市場において不安を醸成するような、更なる非協調的な政策が発表されることについて、関心を持って見守る。
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