2003/06/16 Monday
2003年06月16日
http://www.kansascity.com/mld/kansascitystar/news/opinion/6075152.htm より
上記サイトでは、カナダでのBSE発生によるアメリカ市場における影響は、一時的には、生体牛の先物市場に影響はあったものの、次の日には、市況は回復したように、目だった影響は今のところ見られないが、これは、大いにありうることだが、カナダではなくアメリカでBSEが発生したとしたなら、アメリカの消費者は、どのような反応を見せるのであろうかと、いっている。
そして、アメリカの消費者にとって、BSE発生は新たなリスクある事態であり、たとえ、消費者教育の努力がなされたとしても、消費者の不安は増大するのではなかろうかとの見方を示している。
さらに、輸出市場に与える影響は甚大で、このような事態となれば、アメリカは、直ちに、輸出市場のマーケットシェアの15パーセントを失うであろうとしている。
アメリカにおいてBSEはないとしながらも、人間の健康に関心を持つ一部のグループでは、これまでにも、ハンバーガーを中心とした脳や脊髄のような神経組織を含む製品に付いてのリスクを指摘しているところから、いざ、アメリカでのBSE発生ともなれば、そのような製品の内外のバイヤーに、その安全性を保証することはむづかしくなるとしている。
おそらく、ファストフードなどにおける神経組織の使用は、健康上の理由としてよりも、経済上の理由として、禁止されるであろうとしている。
なぜなら、この使用禁止によって、消費者の信頼を取り戻し、ミート産業のBSE対策コストを低減させうるからだとしている。
また、もう一つの手段として、牛の識別システムの導入がなされる必要があり、このトレーサビリティー・システムの導入こそ、消費者と輸出産業の信頼を回復しうる手段となりうるとしている。
このような状況にいたっては、日本やドイツがBSE発見の際に当初とったような、根拠のない安全宣言をすることはおろかなことであるとしている。
この数週間の間にアメリカにおいても、BSEが発見される可能性は、大いにあるとして、その場合は、牛肉に対する消費者信頼回復に資する追加的な措置がとられるであろうとしている。
上記サイトは、ハンバーガーの原材料であるMRM(mechanically recovered meat )(機械で死体からそぎとった肉)の危険性に付いて、アメリカは、もっと明らかにすべきとのメッセージを言外に伝えている。
349
2003/06/11 Wednesday
2003年06月11日
「ボストン・グローブ」紙より、ニコラス・G・カー のhttp://www.boston.com/dailyglobe2/159/oped/The_growing_specter_of_deflation+.shtml を仮訳
米連邦準備理事会(FRB)は、物価低落に神経質になってる。
5月6日のグリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長発言では、今後数ヶ月の間に、歓迎されざるインフレ率の低下が、わずかながらではあるがあり、それは、すでに低レベルにあるインフレの持ち直しを図りうる限度を超えるものであることを示唆した。
その二週間後、グリーンスパンは、議会で、それ以上に踏み込んだ発言をし、デフレの可能性と、広範囲での長期にわたる物価低落については、十分な吟味をする必要があると、発言した。
最近の経済データを見ると、FRBのいらつきにも無理からぬものがあることがわかる。
4月から、卸売り物価は1.9パーセント低落し、それは、1947年以来の大幅な低落であった。
また、小売物価は、0.2パーセントダウンした。
ここ12ヶ月間のコアインフレ率は、1.5パーセントであり、この40年間でもっとも低い上昇率であった。
利子率がなお低落すると見る投資家達は、政府保証債・国債に殺到し、結果、10年物国債のイールドは、1950年以来の低落となった。
物価の弱含みは、経済停滞の副産物であり、企業は、財布のヒモをかたくしている消費者に買わせようと、価格を切り下げていると、結論づけたほうがよいようだ。
しかし、事態はそれほど単純ではない。
実際問題、デフレの亡霊は、経済が力強く経済成長に余力がまだあった1990年から、しばし頻繁に、経済に忍びよっていたのである。
多くの財・サービスの価格が、ここ数年下がり続けているのである。
そして、その原因は、需要不足にあるのではなく、供給過多に、あるのだ。
世界経済における絶えざる自由化とともに、この10年間、技術革新に拍車をかけられた投資ブームが、広範にわたる工場設備の過剰と熾烈な競争をもたらしてきた。
いったん、一つの市場から製品があふれだすと、多くの企業は、価格を維持しようとしたり、価格上昇を目指そうとは、しなくなる。
現在の状況は、19世紀の状況と驚くべき類似点を見せている。
1870年に、世界の技術革新は、長距離輸送の技術で、その結実を見せた。
蒸気機関車や通信の発達によって、鉄道・船舶は、急速な広がりをみせ、そのことは、自由貿易に門戸をひらき、大量消費を刺激した。
急速に増加した生産の帰結として、生産性は向上し、熾烈な競争激化をもたらし、それらのことは、その後の30年間にわたるデフレの下地を作ることになった。
エリック・ホブスボーンの『帝国の時代』で、その期間の歴史を見ると、世界経済が拡張し続けているにもかかわらず、価格は低落し、企業は苦しんだ。
地域外からの始めての競争にさらされた農業者は、手痛い打撃を受けた。
1867年から1894年にかけて、小麦の価格は60パーセント暴落した。
しかし、犠牲になったのは、農業者だけではなかった。
商品コストは、全般にわたって、劇的に下がった。
その時代最強の経済力を誇っていた英国では、40パーセントもの驚異的な製品価格の低落を見た。
アメリカでは、多くの製品価格が、1988年から1897年にかけて、着実に低落した。
マーケットは成長し続けていたにもかかわらず、生産の増加を吸収するには、十分ではなかったのだ。
デフレは、仕事にありついている人や、蓄積した富を持つ消費者にとっては、恩恵である。
しかし、企業の利益にとっては、破壊的でさえある。
技術革新にささえられての、生産性の急速な増加にもかかわらず、価格は、企業がコストを下げる以上に下落した。
製造業者は、自分が製品を作っている間でさえ、製品価格が下落していくのを傍観せざるを得なかった。
この現象は、現代のコンピュータの製造業者がこうむっている事態と、同じである。
デフレが、社会に与える結果には、厳しいものがあった。
経済不況がひろがり、19世紀半ばに定着した自由なビジネスチャンスへの信頼は、消えうせていった。
労働者は仕事を失い、農業者や労働者は、政府への反抗へと走った。
国は、貿易障壁を築き始めた。
歴史家のD.S.ランデスがいうように、「いくら、将来の不確かな発展に対して楽観的であっても、その不確実性と、苦痛の間隔には、かなわない。」のである。
もちろん、当時と現代とでは、違ったものがあるだろう。
われわれは、19世のわれわれの祖先が行った事よりも、世界経済の力学を理解しているし、また、われわれは、商取引をモニターしうる技術も有している。
『歴史は繰り返す』と、この際予測するのは危険であろう。
しかし、同時に、利益を上げようと努力する企業や、デフレにもてあそばれる世界経済に付いていえば、「歴史が繰り返すことなどありえない。」と予測することも、危険なことなのである。
348
2003/06/04 Wednesday
2003年06月04日
サイトhttp://news.bbc.co.uk/1/hi/business/2961318.stmでBBCのEvan Davis さんは、次のような見解を述べている。
Evan Davis さんは、デフレが怖くない理由として二つの理由を挙げている。
第一に、低利子率の元では、金融政策は無効であり、この状況の下では、物価低落が、必ずしも経済を永久に奈落の底に落とすものとはならないからだ。
経済が欲するとなれば、ヘリコプターから札束をばら撒くことで、経済を刺激することだって、中央銀行には、代替手段として持っているからだ。
だから、需要刺激というのは、必ずしも、挑戦的なものであるとは限らない。
第二に、デフレは、必ずしも、景気後退とは同義語ではない。
物価低落は、時として、需要があまりに低くして起こるのでなく、供給能力が高すぎて起こる場合もあるからである。
現在のわれわれの状況は、そのうちの後者の方であるにちがいない。
中国の世界経済への参入、製造部門でのテクノロジーの著しい進展、これらは、いずれも、総量としての世界の供給能力の上乗せにつながっている。
これらの生産能力の供給過剰は、結果として、物価低落とデフレ環境を創出している。
しかし、この場合においても、物価低落は、永久的に経済を絶望の淵に追い込むことを意味しているのではなく、市場が消費者に対して、『買いやすくなりましたよ。もっと買ってくださいね。』と語りかけている現象に過ぎないのだ。
消費者の消費意欲を刺激するには、二つの方法がある。
ひとつは、消費者ローンの金利を下げ、消費者の負債を増やすことによって、物価の上昇はそのままにして、消費者の購買を増やす方法である。
もう一つの方法は、物価低落のままにし、デフレの状態におきながら、消費者の懐を余裕の状態に置きながら、消費を増やす方法である。
どっちの方法がよりよいのだろう?
というのだが、この論の結論は、欧州中央銀行の利子率を下げるべしとの結論になっていて、物価低落は永遠だが、利子率の低下は永遠でないという、非負制約という流動性の罠におちいってしまった日本の痛い失政に付いては、触れられていない。
347
2003/06/02 Monday
2003年06月02日
http://news.ft.com/servlet/ContentServer?pagename=FT.com/StoryFT/FullStory&c=StoryFT&cid=1051390429175 の概訳
好況の時代は、その国の政策は、地理的な要因に左右されることは少ないが、不況期には、その国の地理的な要因に大きく制限されることが多い。
デフレの問題とは、煎じ詰めれば、その国が、ネットで債権国なのか債務国なのかによる。
債権国であれば、インフレに反対、デフレに賛成、債務国であれば、インフレに賛成、デフレに反対、となる。
その意味では、債務国アメリカが、債権国日本に対して、もっとインフレになれと望むのは、望んでも無理な話である。
本来、債権者はデフレに、債務者はインフレに賛成なのだから、あなたが債権国であったのなら、あなたがインフレに賛成するのは、七面鳥がクリスマスに賛成すのと同じことである。
そんな観点から見ると、世界で、もっともデフレがおこりそうなのは、日本、スイス、イタリア、ドイツであって、もっともデフレがおこりそうでないのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスである。
しかし、今後、ネット債権国となるかネット債務国になるかを決めるのは、その国の人口の老齢化度と、富裕度である。
その意味で、将来デフレの懸念がある国は、自国通貨の意識的な切り下げで、デフレを輸出しようと試みる。
346
2003年06月02日
本来、時間軸効果というのは、たとえば、新たな金融緩和の枠組みを採用した際に、その枠組みを「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する」ことを宣言し、約束(コミットメント)することによって、単にオーバーナイトの金利のみならず、より長めの金利も低下する効果のことをいうものですが、日銀によるデフレ対策においても、日銀総裁が、「デフレは、必ず終焉する。」とコミットメントすることによって、コミットメント効果を果たすべしという論議があります。
そして、その観点から、「日銀総裁の踏み込み方が少ないじゃないか」という向きもありますが、これは、ちょっと行き過ぎた考えかたなのではないでしょうか。
各国のデフレ見通しを見ても、ここ一ヶ月、急速にシリアスなものに変わってきているように思えます。
それまでは、デフレのDの字を出すことさえはばかってきたのが、ドイツをはじめとする各国がすでに擬似デフレの状況にあることを急速に認識し始めています。
ここにきて、デフレ先進国の日本が、コミットメント効果という、いわばテクニカルでトリッキーな手法によったとしても、その効果は限られるでしょう。
いみじくも、日銀総裁自身、講演http://www.boj.or.jp/press/03/ko0306a.htm
で、「バブル崩壊後、持続的成長径路への復帰期待が何度も裏切られて来た中で、日本銀行が単にアナウンスメントをするだけで人々にそれを信じてもらうことが出来、すべての歯車が良い方向に回転する、というほどうまい話があるとは思われません。」といっています。
本来、デフレ克服のコミットメント効果をなしうるのは、金融政策ではなく、財政政策なのです。
財政政策による超長期的大構想の提示しか、効果的なものはないでしょう。
むしろ、日本が今やるべきことは、デフレと共存しながらも克服しうる、複雑な処方箋の確立なのではないかと思います。
345
2003/05/27 Tuesday
2003年05月27日
http://www.pkarchive.org/column/052403.html の仮訳です。
先進各国でデフレの兆候にあるのは、日本についでドイツだが、アメリカは、まだ差し迫った危機状態にはない。
本質的な危機はデフレにあるのではなく、流動性の罠という名の「どろ沼」に閉じこまれてしまうことにある。
デフレは、むしろ、遅行指標であるからだ。
物価の下落に対して政策的に対処することは、むしろ簡単だ。
問題は、流動性の罠にとらわれてしまうことだ。
金利をいくら下げても、完全雇用到達に至らない。
そして、金融政策は、その有効性を失っていく。
いったん流動性の罠にとらわれると、厭なことばかり起きてくる。
物価の下落で、人々は、更なる物価の下落を期待して消費を手控えはじめる。
デフレは、収入の低下をも意味する。
そのことは、将来の収入増加を当てにしての、ローンによる、住宅の購入を手控えさせる。
このように、デフレは、人々の消費や借入への意欲を、ともに失わせる。
こうして、悪循環が始まる。
デフレは失業を増加させ、生産設備の遊休化を招く。
そして、これらは、更なる物価と賃金の低落をドライブし、更なるデフレを加速させる。
10年前までは、このようなデフレの恐怖は、単なる理論上の恐怖として退けられてきた。
しかし、日本では、この理論的に恐れられた恐怖が、現在、現実で進行中である。
5年前、IMFレポートで、私(クルーグマン)や他の学者が、この日本の現象は、他の国のどこでも起こりうる事態であると指摘した。
「その他の国々においては、現在ドイツを除いては、まだデフレの恐れはないではないか。」と問う向きもあるが、それは愚問である。
そして、何よりも、日本が、現在の状態を脱するには、相当の時間がかかるということを、今胸に刻んでほしい。
日本がデフレに陥ってきたこれまでのここ10年の経緯を見ると、まさに、今、日本以外の国々が直面している状態と、極似していることに気づく。
現在のわれわれが直面している状況は、かつての日本と同じく、急激な景気下降なのではなく、失業率の低下を阻止するには不十分で、生産設備稼働率の低下を防ぐにも不十分な、緩慢にして、長期化する経済の伸び悩みなのだ。
日本が現在立ち至っている事態を反面教師にして、われわれが今やるべきことはなになのか?
連邦政府のエコノミストたちが、出した結論は二つあった。
第一は、日本の政策当局者が、より攻撃的でデフレにたちむかっていたとしたら、日本のデフレは防げたであろうということである。
しかし、現実は、デフレ克服には、あまりに遅すぎる対応であった。
第二は、1990年代の前半に、日本の政策当局者やエコノミストたちの予測にもとづいて打ち出した、比較的慎重な政策が意味を成したという意味では、、日本は愚かではなかったといえる。
しかし、肝心の、その予測が間違っていた。
そして、その予測がもしかして、間違っているかもしれないという場合を想定しての、担保となりうる政策措置をとらないでしまった。
連邦政府は、今こそ、この日本のとった誤りを、深く胸に刻むべきときである。
特に、それは金利政策に付いてである。
なるほど、早めに金利引下げの措置を取ることは、当座の景気刺激策にはなるだろう。
しかし、それが、1.25パーセントのラインを切ったとき、連邦政府は、もはや、それ以上の金利引下げの余地を、そこで失うことになる。
そして、経済は、そこから弱含みのまま推移していくのである。
それでも、連邦政府は、なお、「インフレターゲットの声明」など、苦肉の策を用意するかも知れない。
しかし、その時点で、内外に助けを呼ぶ事態に入ってしまっているのである。しかし、
あぁ、助けは来ない。
欧州中央銀行は、これまで、金利引下げに、意欲的でなかった。
それは、欧州が体質的にもつ、経済的、制度的、心理的な受動性に起因するものであるが、この中央銀行の不動性は、ドイツが日本の歩んだデフレへの階段をなぜ上り始めているかに付いての理由でもある。
結論的にいえば、日本が陥っているデフレの泥沼に世界が陥るという様は、かなり恐ろしい絵をみるおもいである。
連邦政府の政策当局者のそれについての危機意識は、誠に鈍い。
多くのアナリストたちは、われわれがすでに流動性の罠にとらわれているとも、思っていない。
ましてや、連邦政府には、それ以上の楽観論がある。
しかし、いく人かのアナリストたちは、日本が陥っているデフレのどろ沼は、われわれのためのものでもあり、われわれも同様にとらわれる可能性のある罠であるということに付いての危機意識を抱いている。
だから、たとえ今は、デフレでないにしても、それにとらわれたら、逆転するには、かなり困難な事態になるということだ。
344
2002/11/23 Saturday
2002年11月23日
2002年11月21日、フィッチは、日本の国債を格下げしました。
以下は、その発表に際しての、フィッチのコメントを仮訳したものです。
フィッチは、今日、日本の長期現地通貨建て格付けを、これまでの「AA格」から「AA-格」に格下げした。
長期外貨建て格付けに付いては、従来どおり「AA格」とし、短期外貨格付けは、「F1+格」とした。
日本のソブリン格付けは、これまでどおり「ネガティブ」である。
今回の格下げは、日本の経済動向が引き続き弱含みであり、民間部門の不良債権処理の進捗がいらだたしいほど遅く、デフレ収束の見通しがほとんど立たない中で、日本の財政状況が、いっそうの悪化の一途をたどっていることを反映したものである。
しかし、日本の国富、余剰預金、日本人の生来持つ勤勉な資質による資本の豊富さ、そして、公債調達コストの低さなどから見れば、日本政府の信用価値は、漸進的に回復の余地があり、中期的に見ても、財政危機の危険は少ないと見られる。
それにもかかわらず、持続的な経済成長をはかり、デフレを収束させ、究極には、政府債務の安定化をはかるための基盤を確立するための、協調した行動がとられていないなかでは、日本のソブリン格付けは、格下げ圧力をまぬがれないままに推移するろう。
日銀による、引き続いてのゼロ金利と、最近の量的金融緩和の抱き合わせ政策によっては、民間部門への銀行の信用創造の復活や、物価下落阻止にむけ、拍車をかけることはできない。
さらに、財政安定のためには、ある一定の時期より増税となるであろうということが、世間的に徐々に認識されてくるにつれ、これ以上の金融緩和により、経済刺激策をとっても、その有効性には限界が出始めている。
マクロ経済政策の政策選択の幅が狭まるにつれ、政府が、これまで以上に、企業や金融機関の再編加速のために、より直接的かつ強引に関与せざるを得ないという、重荷を背負わされることになる。
このようなアプローチには、多くの危険を有するであろうし、銀行をささえる施策や、再編の進捗に伴い発生する目先のデフレへの影響を相殺するための施策を、すべて包含しうる、積極的な政策協調を必要とするものである。
これら政策の実施がこれ以上遅れると、中期的には、確実に悪い事態を迎えてしまう。
小泉政権が、改革のペースを早め、公共事業拡大による呼び水的景気刺激策への依存をやめようとしていることは、フィッチもみとめている。
343
2002/11/14 Thursday
2002年11月14日
以下は、11月14日付けTimesの記事「Japan poised to nationalise bank」(日本は銀行国有化のかまえ)の仮訳である。
少なくとも、日本のビッグ4の銀行のうち、一つは、来月、強制的に国有化される可能性がある。
それによる株式移動は、数十億ポンドに上るであろう。
この国有化は、おそらく、今年の年末までに、もっとも今負債のある30社のうちの、ひとつの象徴的な破産があることで、急がされることであろう。
これらのことは、昨日、日本の最有力の団体であり、そのメンバーには、大銀行をも含む団体である経団連の奥田会長(世界第二位の自動車会社のトヨタ会長)によって、明確に予言された。
奥田氏は、これらの物議をかもす動きは、10月30日からの厳しい会計基準の導入からもたらされものであろうと、述べた。
奥田氏は、大規模の銀行破たん見込みは、薄らいだと見ており、昨日発表のGDPの予想以上の手堅い数値によっても確信できる日本経済の再生を、損なうことなくして、政府は結果に対応することができるであろうとの自信を示した。
奥田氏は、政府の金融危機への不測自体対応計画にも緊密にかかわっているが、奥田氏は、小泉首相が、銀行システムの抜本改革を強くサポートしている、とも述べた。
先月発表の改革プランの元で、日本の銀行は、支払不能に陥り借り手を苦しめている不良債権の処理について、過去にも増してのいっそうの厳しい対策を示さなければならない。
日本の金融システムにおける不良債権総額は、少なくとも、50兆円はあると、一般に見られている。
もし、これらの新しい不良債権処理対策による損失が銀行の自己資本比率をBIS基準以下に下げることになると、政府は新たな公的資金注入をはかり、経営権を持たなければならない。
このプロセスは、結局は、強制的な国有化につながり、現在の株主を一掃するか、今の株主の力を大幅に弱めるか、させる。
奥田氏は、日本のビッグ4の銀行は、すべて、改革プロセスを生き延びるであろうというが、その生き延び方が、民有化によるのか国有化によるのかに付いては、疑問である。
奥田氏は、不吉な付け加え方をされていわく、「4銀行の内、2銀行はきわめてしっかりしているが、残りの二行は、もろい。」といった。
奥田氏は、明確にその両者のグループに属する銀行名をあげなかったものの、アナリストのあいだでは、しっかりした銀行が、東京三菱と三井住友であり、もろい銀行は、UFJホールディングスと総資産量世界最大のみずほであることについては、暗黙の了解がある。
早ければ来月に銀行危機が訪れるのでは?との問いに対して、奥田氏は、新しい信用評価制度の厳しさで、1-2の大手借り手が急速に破綻においこまれるであろうし、このことが、貸し手である銀行を脅かすであろうと述べた。
342
2002/10/31 Thursday
2002年10月31日
2002年5月20日の発言「 法令等に規定された利率の硬直性を排すべし。 」((URL http://www.sasayama.or.jp/diary/2002may20.htm参照 ) で、「法定利率の硬直性を悪用(善用かな?)すれば、収めるべき税金より多く税金を納めれば、市中運用よりはるかに高い還付加算金(公定歩合+4%を加算。ただし、上限年7.3%)をいただける。」という話をした。
昨日決着した銀行の税効果会計による繰り延べ税金資産問題でも、同じようなことが言える。
ネットの繰り延べ税金資産は、繰り延べ税金資産と繰り延べ税金負債との差額である。
で、繰り延べ税金資産にカウントされるのは、整理損や貸付金の否認分などが主である。
繰り延べ税金負債にカウントされるのは、未収還付事業税である。
この未収還付事業税が、負債整理の決着が付けば、還付加算金つきで返ってくる。
この利率が、公定歩合+4%という高利の運用利回り?というわけだ。
で、この還付加算金は、どこに計上されるかと言えば、特別利益として計上される。
未収還付事業税がバランス上に滞留しているのは、5年間もあるのだから、皮肉ではないが、相当な高利運用ということになるね。
有税償却すれば、自己資本は増えるし、高利の還付加算金はつくし、と、なんとも理不尽な話ではある。
何しろ、銀行が、法定利率の硬直性の恩恵を、一方では、公定歩合の150倍近く高い14.6パーセントもの遅延利息で受け、他方では、公定歩合+4%の高利の還付加算金で恩恵を受けているんだから、皮肉な話ではある。
こ
の法定利率の硬直性も同時に廃止しないと、何のためのインセンティブだか、わからなくなってしまうんではないのかな?
341
2002/10/30 Wednesday
2002年10月30日
毎日新聞10月25日付け記事「BSE全頭検査を見直せ」(小島正美(生活家庭部)さんの記事)
(URL http://www.mainichi.co.jp/eye/kishanome/200210/25.html 参照)
に付いて、下記のとおりの意見を送付しました。
本日の「BSE検査体制を見直せ」(小島正美(生活家庭部)氏署名記事)を拝見させていただきました。
文中、若干気になる点がありましたので、失礼をも省みず、指摘させていただきます。
文中「英国では生後30ヶ月以上の牛は食用を禁止し」ていること、また「昨年欧州諸国で(中略)このうち、もっとも若い牛でさえ生後42ヶ月だった。」の点です。
おっしゃるように昨年に限定しての話であれば、この点については正しいのですが、今年に入ってから、この点につきましては、新しい事実が続出し、専門家の間では、これまでの「生後30ヶ月以上の牛の食用禁止」のルール(Over Thirty Month Scheme (OTMS))を見直す動きにあります。
どうして、そのような事態になったのかといいますと、二つの理由があります。
第一は、BARB(Born After the Real Ban )問題というものです。
すなわち、1996年8月1日の肉骨粉等牛由来飼料全面使用禁止後も、BSEの牛がでているのは、何を原因にしてのことかが、科学的に証明されていないということです。
SSCは、昨年11月29日の会合で、BARB(Born After the Real Ban )問題についての報告「The six BARB BSE cases in the UK since 1 August 1996 」を発表しました。
それによりますと、SSCは、これまでの原因とされてきたもの以外に、母子感染や牧草汚染の可能性を含めた、新たな汚染の原因があるのではないのか、もし、このBARBの牛が55頭以上でてきた場合には、これまでのスキームをみなおさなければならない、との見解をのべています。
第二は、今年2月、北アイルランドで、生後31カ月の牛が、BSEの発症をし、ウェールズでは生後29カ月の牛がBSEの発症をしました。
この二つの事実で、英国の公式筋では、生後30カ月未満の牛について、BSE検査の必要性如何について、検討をはじめました。
そして、2003年の初頭までに、このルールを見直すことにしました。、http://www.foodstandards.gov.uk/news/newsarchive/72117参照。
以上のように、BARB(Born After the Real Ban )問題について、科学的な結論がられていない状況のもとで、新たな30ヶ月前後の牛のBSE発症となり、Over Thirty Month Scheme (OTMS)ルールの見直しという状況になっていることを、ご理解いただきたく、あつかましくも筆を取りました。
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