2003年06月02日
本来、時間軸効果というのは、たとえば、新たな金融緩和の枠組みを採用した際に、その枠組みを「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率が安定的にゼロ%以上となるまで継続する」ことを宣言し、約束(コミットメント)することによって、単にオーバーナイトの金利のみならず、より長めの金利も低下する効果のことをいうものですが、日銀によるデフレ対策においても、日銀総裁が、「デフレは、必ず終焉する。」とコミットメントすることによって、コミットメント効果を果たすべしという論議があります。
そして、その観点から、「日銀総裁の踏み込み方が少ないじゃないか」という向きもありますが、これは、ちょっと行き過ぎた考えかたなのではないでしょうか。
各国のデフレ見通しを見ても、ここ一ヶ月、急速にシリアスなものに変わってきているように思えます。
それまでは、デフレのDの字を出すことさえはばかってきたのが、ドイツをはじめとする各国がすでに擬似デフレの状況にあることを急速に認識し始めています。
ここにきて、デフレ先進国の日本が、コミットメント効果という、いわばテクニカルでトリッキーな手法によったとしても、その効果は限られるでしょう。
いみじくも、日銀総裁自身、講演http://www.boj.or.jp/press/03/ko0306a.htm
で、「バブル崩壊後、持続的成長径路への復帰期待が何度も裏切られて来た中で、日本銀行が単にアナウンスメントをするだけで人々にそれを信じてもらうことが出来、すべての歯車が良い方向に回転する、というほどうまい話があるとは思われません。」といっています。
本来、デフレ克服のコミットメント効果をなしうるのは、金融政策ではなく、財政政策なのです。
財政政策による超長期的大構想の提示しか、効果的なものはないでしょう。
むしろ、日本が今やるべきことは、デフレと共存しながらも克服しうる、複雑な処方箋の確立なのではないかと思います。
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