2003/08/20 Wednesday
2003年08月20日
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20030818-00000020-mai-pol
のように長野県の田中知事が、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)について「(県として)独自のシステムを積極的に検討すべきだ」などと主張し、総務省の外郭団体「地方自治情報センター」が個人情報を一元管理する住基ネットから離脱し、県が独自に情報を管理・運用する方針を明確に示したというのだが、このシステムの問題点指摘は、むしろ、長野県というか、県市町村の庁内LANの問題が過半を占めると見るのだが。
長野県本人確認情報保護審議会 http://www.pref.nagano.jp/soumu/shichoson/jyukisys/singikai/siryou6.pdf が問題点として指摘しているのは、県市町村段階庁内LANで、住基ネット専用回線に、住基ネットと、インターネットとの混在接続使用があったことが、主な問題点として挙げられている。
市町村の現場では役所のLAN(構内情報通信網)を経由すれば住基ネットに接続できてしまう事を問題にしているわけだ。
ちなみに、専用回線に付いてであるが、専用回線とは、専用線接続leased line connection http://dictionary.rbbtoday.com/Details/term467.html のことで、別に、長野県が、独自の回線を張り巡らせることではなく、NTTなどの回線で、ユーザー側にサーバーマシンを用意させ、またドメインネームサーバー(DNS)、メールサーバー等のプログラムも、ユーザー側で立ち上げ、24時間使用可能できるというものだ。
ただし、回線部分はキャリア(電気通信事業者)の責任下にあるということが、どうも、見逃されて議論されているようだ。
その意味では、ちっとも、専用ではないのだが。
そこで、総務省の見解を http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/pdf/030710_1_5.pdfでみると、「市町村支所、出張所等のCS端末の回線を専用回線又はこれに準じるものとする。」と書いてある。
この「これに準じるもの」とは、インターネットVPN (Virtual Private Network)のことであろう。
VPN(Virtual Private Network) のメリットとしては、
* 月々の通信コストを削減
* 距離の影響を受けないネットワーク構築が可能
* 接続相手が海外であっても容易で、安価に構築可能
* 各拠点でイントラネットとインターネットの共有が可能
* SOHO環境、モバイル環境からのアクセスも容易
デメリットとしては、
* データが暗号化されているため通信路でのセキュリティは高いが、インターネット接続点でのセキュリティは確保されていない。
* 通信速度や通信帯域は必ずしも保証はなく、現状では、帯域保証が要求されるネットワークでは不向き。
などがあげられる。
つまり、通信路でのセキュリティは、専用線と変わらないが、通信路に入る前、通信路から出た後のセキュリティ対策が必要ということだ。
http://www.furukawa.co.jp/gakusei/front/it_vpn_1.html 参照。
国会の論戦でも、あたかも、この仮想専用回線が、専用回線に対して、セキュリティの面で劣るとの論議があったり、また、田中知事の発言でも、それらしきニュアンスが感じられるものがあったが、上記のように、通信路でのセキュリティは、専用線と変わらないが、その前後のLAN段階でのセキュリティに問題があることを、この際認識して、議論すべきものであろう。
そこで、長野県のめざす「独自のシステム」とは、 http://www.furukawa.co.jp/gakusei/front/it_vpn_1.html や、 http://www.pref.nagano.jp/soumu/shichoson/jyukisys/singikai/siryo8-5.pdf
で見る限り、これまで混在していた住基ネットと業務系ネットを切り離し、市町村庁内LANに接続されたパソコンから、住基ネットへのアクセスが出来ないようにする。
そのために、住基ネットにつながる基幹系ネットと、インターネットにつながる公開系の情報系ネットとを分離するというものである。
この問題点を見る限り、昨年5月検索ページ内のクロスサイトスクリプティング脆弱性を指摘され、昨年7月、その脆弱性を是正した財団法人 地方自治情報センターのセキュリティホールの問題も、上記仮想専用回線の問題も、長野県の主たる問題ではなく、あくまで、県内LAN構築の問題が、当面最大の課題というわけだ。
問題は、この完全デュアルシステム構築に伴い、県内LAN構築に当たって、仮想専用回線を拒否した上での専用回線使用による費用負担の問題と、このシステムによって、おっしゃる基幹系ネットの範囲の拡大を今後どこまで、果たせるかという、いわゆるシステムの拡張性の問題であろう。
こうして、見てくると、庁内LANの問題で、全体システムを否定するには、ちょっと論理に無理があるような気がする。
さて、ここにきて、今回のBlaster問題発生で、これまでにも、桜井よし子さんなどを中心としてあった、OSがウインドウズであることなどへの批判が、一層つよまる気配である。
ちなみに、長野県本人確認情報保護審議会の審議医委員には、前述の桜井さんのほか、リナックスプローブ(株)のかたも、入っておられる。
しかし、このようなシステムの詳細にわたる批判を展開する以前に、日本の人権問題が、住所地と密接な関係を持ってきたという、人権問題と住基ネットの関係という大きな問題に付いて、政治は、まづコンセンサスを求めるべきものではないのだろうか。
その大きな問題を回避し、間接話法として、システムの細部の欠陥があげつらわれている今日の論調は、生産的でない。
そして、そのような迂回した反対論のために、本来もっと電子政府実現のために拡張性をもつべきシステムが、日々、縮小していき、コストパフォーマンスも、日々劣化していく、という国民的損失に、住基ネットは、さい悩まされ続けているのである。
付記-2003年8月19日、長野県本人確認情報保護審議会が、新たな住基ネット安全対策を提言した。
http://www.nagano-np.co.jp/cgi-bin/kijihyouji.cgi?ida=200308&idb=167
http://www.pref.nagano.jp/soumu/shichoson/jyukisys/singikai/dai9.htm 参照
内容は次のとおり4段階で対応するというもの。。
第一段階ではインターネットと接続している自治体はインターネットと分離し、分離するまでフロッピーディスクなどでデータを送る「媒体交換方式」にする。
第二段階として、他県からはなおも不正アクセスされる危険性に対応し、独自の県域ネットワーク網を構築。
いったん県センターに集約し、地方自治情報センターが採用している監視システム(IDP)を導入することで市町村のデータを守る。
第三段階では希望する中小自治体が共同センターを設け、サーバー類の集中管理とIDPを導入することで市町村側の安全対策を強化するとともに、現場担当者の負担を軽減する。
県内では上伊那情報センターのケースがモデルになるという。
第四段階として地方自治情報センターに送っている住基ネットのデータを県が独自に管理、運用するシステムを検討。
国主導の現行の住基ネットとは一線を画す方向だ。
というものだが、情報の分散化によって、集中データベースの悪用を避けるという趣旨には、貢献できるが、暗号化しない形での、フロッピーベースへの回帰などによって、かえって、県内段階でのセキュリティ確保は、後退することも懸念される。
つまりは、あまりに、中央段階でのセキュリティ確保を意識し、優先したがために、内なる敵となりうる、県市町村段階でのセキュリティ対策は、なお、危うくなる形となっている。
上記に見たように、まさに、住基ネットにおいては、セキュリティの「敵は、我にあり」なのである。
359
2003/08/17 Sunday
2003年08月17日
日本の図書館でも、一部には、図書館内でのネット利用を試行錯誤しているところがある。
たとえば、富山県福野町図書館http://www.town.fukuno.toyama.jp/toshokan/ や、栃木県上三川町図書館 http://www.dango.ne.jp/kmnlib/ などだ。
アメリカでは、公共図書館の94.5パーセントがインターネット端末の解放を行っている。
サイト http://www.peoplesnetwork.gov.uk/content/glance.asp は、イギリスにおける『ピープルズ・ネットワーク』というプロジェクトで、国内の4000を超す公立図書館をすべてインターネットに接続し、ネットアクセスおよび学習のセンターにするというものだ。
http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20020805207.html も参照
各図書館には計3万台の端末が設置され、電子メール、ブラウザー、オフィス・アプリケーション、デジタル画像、ビデオ会議といった豊富なデジタル機能を提供する。
また、その大部分が2Mbpsの回線でインターネットに接続されるという。
しかし、問題もある。
アメリカで問題になっているのは、有害情報に対してフィルタリングをかけるかどうかの論争や訴訟が展開http://www.avcc.or.jp/library/sa01fil/003.html されていたり、http://www.avcc.or.jp/library/sa01fil/001.html にあるように、インターネット端末が図書館にもたらす光と影を指摘する声も、関係者にある。
いずれにしても、図書館は情報を探索する場であるとすれば、それがデジタルであろうとアナログであろうと、その機会を図書館が場として提供するのは、当然のことだ。
図書館のネットカフェ化が日本に来る体制を、国を挙げて組むべき時である。358
2003/08/10 Sunday
2003年08月10日
例のユニマットによる西表島の開発に対して、先月、西表島の環境破壊を憂慮する個人は、居住地・国籍を問わず、西表リゾート開発等差止訴訟の原告になることが出来るとした、請求がなされた。 http://www.geocities.co.jp/NatureLand/2032/page017.html参照
これによれば、原告の中には、西表島の住民でない、216名が参加しているという。
さらに、その中には、外国居住の外国人2名が含まれているという。
これまでにも、各種環境権訴訟において、人格権の侵害をもって環境権侵害に代えるという訴訟がいくつもあったが、いずれも、敗訴に終わっている。
これには、いろいろの理由があるが、人格権という幅広い概念の中には、地元住民の生活権というものも入っているし、いわば、そこで、環境を飯の種にしている写真屋さんなどの反射利益は主張できるにしても、ただ、よそから来て景色を眺める人の利益を、他の利益と比較衡量することはむつかしいという理由が主なようである。
このユニマットの経営者さんのように、西表島のある竹富町に住所を移しているかたの有している人格権-生活権-との比較衡量に耐えるかどうかということがポイントとなりそうだ。
しかし、今日的な動きとして、環境財が、地球公共財としてとらえられることが多くなった今日、地理的制約を設けない人格権の侵害という概念も構築できそうな気はしているが、果たして、旧態依然たる司法の場ではどうだろうか。
よそ者の利益とは、いわば非使用価値である。
地理的制約を設けない人格権の内容としては、良好な景観・環境財への、地元以外の人のアクセス権が主であろうが、私のオピニオン「憲法論議に環境権を明確に位置づけるために 」 http://www.sasayama.or.jp/opinion/S_21.htmでも述べているように、現状では、入浜権などについてみれば、妨害排除請求権はもつものの、漁業権や付近の住民の生活権(人格権)に劣後するものとの解釈が一般的のようである。
今後の司法の動向に注目していきたい。
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2003/08/07 Thursday
2003年08月07日
http://www.producer.com/articles/20030731/news/20030731news16.html によれば、カナダのBSE対策の初期に、日本からの調査依頼に対して、冷淡な態度をとったことが、カナダの牛肉の安全性に対する日本の疑念を増幅させ、ひいては、アメリカを始めとしたカナダからの牛肉輸入解禁を遅らせているのではないのかとの、カナダ牛肉輸出連合からの非難に対して、カナダ食品検査機関 (CFIA)が、そんなことはないと、反論するなど、両者、泥仕合を展開していることをつたえている。
非難をしているのは、カナダ牛肉輸出連合のTed Haney氏で、氏は、7月中旬に下院議会の農業委員会で、「カナダは、日本の問題の取り扱いに失敗した。」と述べた。
さらに氏は、「本来、政府、CFIA,業界は、アメリカに対して、アメリカがカナダ牛肉の輸入解禁をするための、懸命な説得活動を行うべきであった。」とも述べた。
これに対して、CFIAのRichard Fadden氏は、こう反論する。
「Ted Haney氏は、物事の一部だけ話しているのであり、われわれは、日本側と常に接触している。そして、そこには、何の問題もない。」という。
これに対して、Ted Haney氏は、「問題は、日本からの再三の技術調査団のカナダ派遣要請に対して、カナダ側は、その要請を無視したばかりでなく、冷たくあしらった。」という。
しかし、CFIAは、「そのときにはすでにアメリカからの派遣人員も到着していたし、それ以外の国の調査団をもホストするには忙しすぎた。」と弁明する。
実際、日本側は、6月上旬にも技術者派遣の要請をカナダ側にしたが実現しなかったばかりでなく、その後の国際専門家チームのメンバーにも、日本は含まれなかった。
その後、遅ればせながら、日本の技術チームがカナダにきたり、また、カナダのCFIA主任獣医Brian Evans氏が日本を訪問したり、カナダのJean Chr醇Ptien 首相と日本の小泉総理との電話会談があったり、日本の農林水産大臣が、オタワを訪問したりという両国間の行き来はあった。
Ted Haney氏は、「日本がカナダの牛肉の安全性に対して、態度をかたくなにし始め、原産国証明の必要性をカナダ・アメリカ両国につきつける最初の3.5週間の間、カナダは、なんら日本との調整に関与しなかった。そして、その間、日本は、二回も、カナダへの技術チーム派遣をカナダ側に要請したが、その二回ともカナダ側から断られた。」という。
Ted Haney氏が言うに、日本は、蚊帳の外に置かされ続けたために、政治的な抵抗を,この時期、示し始めたのだという。
それゆえ、日本は、「もし、アメリカの牛肉にカナダの牛肉が混入していることが証明できない限り、9月1日からは、日本での800万ドルに及ぶアメリカの牛肉市場は、なくなるものと思われる。」との言明に踏み切ったのである。
Ted Haney氏は、「カナダが、あまりにも、アメリカのご機嫌取りに走り、アメリカ市場のみが、カナダの輸出牛肉の鍵を握っていると、ここ何十年も思い込んでいることに、日本は、不満をつのらせている。」のだという。
Ted Haney氏は、さらにこうも言う。「もし、われわれが、情報を共有し、協同行動をとり、隣国の友人とともにことにあたり、解決策を得、輸出解禁にいたれば、まるで、親がもにくっついていくコガモのように、だれしも、それに同調していっただろうに。」
これに対して、CFIAのRichard Fadden氏は、こう反論する。
「カナダが何をしようとしまいと、それで日本側の態度が変わったとは思えない。ちなみに、この1.2.3週間の間で、日本の態度に変わった点が、なんかありましたっけ?何もなかったじゃないですか。」
カナダ農業連合もまた、カナダBSE発生の初期段階で、その対策にあたり日本を含めなかったことを批判する書簡を、オタワに対し提出することを、このたび決めた。
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2003/07/21 Monday
2003年07月21日
http://www.canoe.ca/CNEWS/Canada/2003/07/20/141192-cp.html の仮訳
農業エコノミストの見解によれば、当初は数日か、長くて数週間で終わると思われたカナダのBSE危機は、このままで行くと、さらに長引くことになり、カナダの多くの畜産農家は、破産に追い込まれるであろうとしている。
カナダの政治家の間には、アメリカや他の国が早期に禁輸措置を解くであろうとの楽観論を述べる向きもあるが、 Lethbridge大学教授のKurt Klein 氏によれば、問題解決には多くの難題があり、そんなことはありえないとする。
このような悲観論は、農家の間にも広がりつつある。
Manitoba畜産生産組合の専務であるKeith Robertsonによれば、「農家は、当初の2-3週間は、禁輸措置は必ず解かれるものだとの確信を持っていた。しかし、それから9週間もたった今では、万策尽き果てたという状態だ。」と、述べている。
5月下旬に禁輸措置がとられた後、カナダの政治家は、アメリカに対して、禁輸措置を解くよう、激しくロビー活動で働きかけた。
しかし、アメリカは、日本からの「カナダへの禁輸措置を解けば、日本はアメリカからの牛肉輸入の禁輸措置に踏み切る。」との圧力で、アメリカ側の態度は硬直してしまった。
Keith Robertson氏は「アメリカにとって、日本の牛肉市場は、財政的にも大切なものであり、カナダへの禁輸措置解禁で、これらの日本市場が危うくなるようなことは避けたいとの思惑がある。」という。
もう一つの禁輸解禁を妨げる要因として、多くの国は、最初のBSE発生後、7年間を経て、その後も発生しないのでないと、禁輸解禁には踏み切れないという考えを持っていることにある。
そのことは、カナダ自身が使っているガイドラインにも、ある。
カナダ食品検査機構のClaude Lavigne氏によれば、「現在完全にBSEフリーといえるのは、7カ国にすぎない。」という。
カナダは、オーストリア、ギリシャ同様、一つのBSE発生ケースのある国とされている。
カナダは世界の国々、特にアメリカ・日本両国に対して、カナダの牛肉の安全性を確保するために完璧な手段をとることを保障しようとしている。
1990年代に日本に客員教授でいたKlein氏によれば、「日本は、これまで、外国からの食料輸入に付いて、慎重な態度をとりつづけてきた。だから、このBSE 問題のようなものが発生すれば、それをいい口実にして、禁輸措置をつづけがちである。それに加え、カナダ側にとっても、日本にBSEが発生してからの1- 2年間というもの、日本からの牛肉輸入に乗り気でなかった。」という。
日本のBSE発生時、カナダは、日本からの生体牛の禁輸はしたが、20キログラム以下のカットビーフの禁輸措置はとらなかった。
カナダの農家は、カナダの農家が野垂れ死にする前に、これら国際間の紛争を解決するよう希望している。
BSE発生前、カナダは、毎週7万頭の牛をと畜していたが、BSE発生後には、その半分の4万頭にまでおちこんでしまっている。
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2003/07/13 Sunday
2003年07月13日
http://www.upi.com/view.cfm?StoryID=20030708-044102-7940r
によると、アメリカの牛肉がBSEフリーであるかどうかを立証するには、あまりにもスクリーニングの数が少なすぎると United Press International は報じている。
最近のカナダのBSE報告では、アメリカでのBSEの可能性について言及されたが、この可能性をアメリカ側が否定するためには、BSE簡易検査(Rapid Test)の早急な実施によるしか方法がないとしている。
このBSE簡易検査によれば、2-3時間で結果が出てくるので、何百万頭の牛のスクリーニングが可能となり、結果、アメリカの牛肉の安全性も、確保されうるとしている。
現在のimmunohistochemistry testは、結果が出るまでに8日を要する。
昨年、USDAが実施したスクリーニング数は、三千万頭のと畜数のうち、わずかに、二万頭に過ぎなかった。
これは、BSE発生如何を突き止めるには、ありに少なすぎるスクリーニング数であると、識者は指摘している。
USDAがBSE簡易検査の採用をためらっているのは、一頭でも、BSE陽性または擬似陽性の牛が発見された場合の、あまりの財政的負担の大きさにあるとしている。
ある獣医は、「もし、五百万頭の牛を検査したなら、必ずBSEの牛は出てくるだろう。だから、USDAは、BSE簡易検査の採用をためらっているのだ。」と断言する。
また、この識者は「ダウナー牛についても、健全な牛と同様のスクリーニング検査をすべきである。」と、主張している。
現在、アメリカには、昨年、二十万頭のダウナー牛がいるが、そのうち、スクリーニング検査にかけられたのは、わずか、二万頭に過ぎなかった。
病気の牛についても、スクリーニング検査される数は、ヨーロッパに比し、著しく少ない。
カナダとアメリカとの間には、ここ数年、百五十万頭の生体牛が両国を行き来し、百二十万メートルトンの牛肉が、カナダからアメリカに入ってきている。
カナダでのBSE発生を契機に、もし、このアメリカ・カナダ両国で簡易検査採用を決めたならば、その効果は絶大だろう。
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2003/07/01 Tuesday
2003年07月01日
http://www.taipeitimes.com/News/biz/archives/2003/07/01/2003057620
によれば、格付け会社スタンダード&プアー社は、7月1日、「もし、日本のデフレが終息せず、また、金融機関の不良債権が一掃されなければ、この2年以内に、日本のソブリン格付けは、格下げになるだろう。」と述べた。
物価の下落、大量の不良債権、政府債務の増嵩などによって、日本のソブリン格付けは、この2年以内に格下げされるのではないかと、おびやかされ続けている。
同時に、日本の経済立て直しへの取り組みが進展していることは、現在の格付け維持への支えとなりえるし、また、日本経済の新たなる展望にもつながる。
格付け会社は、日本の長期格付けは、G7諸国の中でもっとも低いAA-であり、短期自国通貨建て格付けは、A1+で、アウトルックは、ネガティブのままであると、断言している。
スタンダード&プアー社のアナリストである小川氏は、「短期的に見れば、日本がデフレ克服と金融機関の不良債権一掃、そして、財政赤字の改善と政府債務負担の軽減という緊急課題を処理することは、大変困難なことである。」と述べた。
さらに、「もし、デフレが終息しなければ、金融機関の不良債権問題と、政府債務問題は、さらに悪化し、そのことは、日本のソブリン格付けをさらに格下げさせるであろう。」と、小川氏は、述べた。353
2003/06/30 Monday
2003年06月30日
政治家の公約が守られるかどうかを、政治家自らが自己宣言することをマニフェストといっているようだが、今ひとつ、わかりにくいってのが難ですね。
この際、産業廃棄物の世界におけるマニフェスト制度を、政治の世界に置き換えてみたほうが、わかりやすいのではないんでしょうかね。
http://www.aizawashohten.com/bussiness/manifest.html 参照
いわば、「政治家の公約垂れ流し」をいかに、垂れ流さないで、終着点-政策実現-に落ち着かせるかという観点で、なぞらえてみると、次のようになる。
まず、産業廃棄物の世界では、排出事業者が事業者名、廃棄物の量、処分方法、収集運搬業者名、処分業者名などを記載することになっている。
これを政治家の公約の世界に当てはめると、次のようになる。
排出事業者名は、政治家の候補者名である。
廃棄物の量は、公約の数値化である。
処分方法は、政策実現までのスキームの提示である。
収集運搬業者名は、必要な法規制の改正または、議員立法のガイドラインの提示である。
処分業者名は、政策実現のための担当省庁と所属課名の提示である。
そして、この各段階の受け渡し確認に当たる、コミットメント事項を明確にしなければならない。
なお、廃棄物の世界での罰則事項-不交付 虚偽記載・登録、未記載(記載漏れ)確認義務違反 保管義務違反(紙マニフェストの場合)措置命令違反など-をどう織り込むかだが、これなくしてのマニフェストの乱発は、単なる形を変えたポピュリズムへの迎合に終わる可能性大である。
ちなみに、罰則事項を、政治の世界になぞらえてみれば、
不交付-政策実現に動かなかった。
虚偽記載・登録-公約の数値化に疑義があった。
確認義務違反-政策実現のフィージビりティ検証にかけている。
といったところでしょうか。
352
2003/06/24 Tuesday
2003年06月24日
http://www.iht.com/articles/100440.html
では、その副題として、「早期デフレ対策の機会を失った(日本)」と、書いてある。
この中で、資産デフレに悩む「ときざね しずま」さんというかたの例を挙げて、彼は、デフレの犠牲者であるとしている。
この中で、福井日銀総裁の言葉として、「私どもは、デフレ戦線の最前線に立ってはいるが、日銀が有する最大の武器である金利の変動という武器を失ってしまっている。」と、述べている。
IMFのアン・クルーガー氏は、「日本の教訓から学ぶとすれば、早期のデフレ対策が何よりも必要ということだ。いったんデフレが住み着くと、これを排除するのは、かなりむづかしくなる。」といっている。
さらに、グリーンスパン氏は、今月「デフレの意味するところは、現在の物価水準に起こっている事象にあるのではなく、将来の価格予測を市場がどう判断するかにかかっている。」と、言った。
こうして、日本の企業は、日々細りゆく自らの資産価値の上に座りながら、日々たかまりゆく、その資産購入の負債の重圧に、あえいでいる。と、この記事は述べている。
アメリカFRBのロジャー・ファーガソン氏は、「今思えば、日本の1990年代の金利引下げは、遅すぎた。」と、回想しているという。
「日銀は、これ以上の金利引下げが出来ない代わりに、経済成長に火をつけようと、躍起になって、流動性資金を市場に供給し続け、巨額の国債購入もやっているが、日本の経済成長の兆しはいまだ見えない。」と、このサイトは、締めくくっている。
351
2003/06/21 Saturday
2003年06月21日
http://www.iht.com/articles/100252.html のヘラルドトリビューン紙記事は、Ken Belson氏が書いたニューヨークタイムズhttp://www.nytimes.com/2003/06/21/business/worldbusiness/21YEN.html?ex=1056772800&en=381e42dfce5479bf&ei=5062&partner=GOOGLEよりの転載記事である。
概要は、次のとおり。
ここ10年間というもの、日本の投資家は、国債市場に聞かれる不協和音に悩んでいる。
信じられないほど低いイールドのもとで、投資家達は、「1995年に日銀が公定歩合を0.5パーセントにしたときから、日本の債券市場は、バブルの中にある」といわれることに対して、長い間、疑いを持っていた。
間歇的に、利子率は上がり、そのたびごとに投資家や、低いイールドを期待する政策当事者達を、不安に陥れてきた。
しかし、いくたびかの間歇的利子率高騰の後も、債券価格は持ち直した。
今週、10年もの国債利回りが0.73パーセントに高騰したとき、投資家達は、これまでとは別の意味での恐怖にとらわれた。
債券価格は、金曜日には持ち直したものの、近時のこのような国債暴落騒動は、日本のデフレや、日本経済や、日本の膨れ上がった政府債務に付いての、一連の疑義を呼び覚ました。
近時の債券価格の暴落がどのような憂慮を生み出したかを理解するために、債券市場の近時の動きの背後にある論拠 に付いて、考えてみよう。
端的にいえば、投資家達は、世界で最大の債権市場が出し続けている兆候は何を意味するのかに付いて、まったく困惑しているということである。
これまで長く続いた投資家達の仮定というのは、日本のデフレには、終わりが見えないゆえ、日銀は、金利をいつまでも、ゼロ近くに保つだろうという仮定であった。
しかし、イラク戦争が終わりを見せたときから、最近、世界経済が好転しているという兆しの元に、株価は支えられ、日経平均は、4月下旬以来の高値を見せた。
そんななかで、投資家達の一部は、債券から株への乗り換えをしたと、言われている。
一方では、りそな問題が、市場を悩ませ、公的資金が注入された。
この政府の措置に対しては、一方で、果敢な政府の産業対応に歓迎する意見もあるが、他方では、りそなに限らず、他の銀行に潜在的にかかる公的資金コストに付いて、憂慮する声もある。
そのような中で、債券イールドは、よりおおくの債券購入を刺激するまで下がるという人もいる。
投資家達が、イールドが0.5パーセント以下に下がるのを許容することは、日本が次の10年間においても、経済不安に襲われるであろうということを、投資家達が信じているということを示している。
確かに、ありそうなことではあるが、あるアナリストに言わせれば、それは、非常に疑わしい見方であるという。
「債券は、基本的には、50のベイシス・ポイント(基点)における、悪い値をとったものである。」と、エコノミストのリチャード・ジェラム氏は、言う。
「政府が新債を発行しようとしているときに、イールドが、低いなんてことは、考えられないことだ。」とも、彼はいう。
奇妙なことに、ある政府関係者は、債券利回りが上がることに付いて、喜んでいる節がある。
2004年3月には、日本の政府債務が国内総生産の140パーセントもの額に達すると見込まれている。
ある政治家は、金利の長期にわたる低下は、一国のバランスシートに生じた欠損を無視していいことを許容するものだといった。
歳出削減と規制緩和の遅れをもたらすような、雇用対策プロジェクトのために国債発行をし続けることに喜びを見出しているような人々に対して、懐疑論者たちは、狙いを定めたようだ。
すでに、国家予算の五分の一が、国債償還と国債利払いに、消えている。
竹中平蔵氏は、金曜日、「債券イールドの高騰は、日本が財政赤字に取り組む必要性があるということについて、市場が送ったシグナルである。」と述べた。
福井日銀総裁も、同様の警告を発した。
それは、一部には、中央銀行が、巨額な国債を有しているが故であり、さらには、債券市場が整然として緩慢なる低落を続ける代わりに、突然の崩壊を招くことによって何兆円も失うゆえである。
そのような多くの懸念にもかかわらず、多くの投資家にとって、国債は、唯一安全な逃避所である。
株式市場は、最近の株高の活気にもかかわらず、不安定である。
そこでは、誰しも、政府が債務不履行の可能性があるとは、思っていない。
ドイツ銀行のマーシャル・ジッター氏は、次のように言う。
「それは、われわれも、この何年か理解してきたこととおんなじことだ。国債以外の他のどこに、元をかけようというのかね。」
ニューヨークタイムズより
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