2002年11月23日
2002年11月21日、フィッチは、日本の国債を格下げしました。
以下は、その発表に際しての、フィッチのコメントを仮訳したものです。
フィッチは、今日、日本の長期現地通貨建て格付けを、これまでの「AA格」から「AA-格」に格下げした。
長期外貨建て格付けに付いては、従来どおり「AA格」とし、短期外貨格付けは、「F1+格」とした。
日本のソブリン格付けは、これまでどおり「ネガティブ」である。
今回の格下げは、日本の経済動向が引き続き弱含みであり、民間部門の不良債権処理の進捗がいらだたしいほど遅く、デフレ収束の見通しがほとんど立たない中で、日本の財政状況が、いっそうの悪化の一途をたどっていることを反映したものである。
しかし、日本の国富、余剰預金、日本人の生来持つ勤勉な資質による資本の豊富さ、そして、公債調達コストの低さなどから見れば、日本政府の信用価値は、漸進的に回復の余地があり、中期的に見ても、財政危機の危険は少ないと見られる。
それにもかかわらず、持続的な経済成長をはかり、デフレを収束させ、究極には、政府債務の安定化をはかるための基盤を確立するための、協調した行動がとられていないなかでは、日本のソブリン格付けは、格下げ圧力をまぬがれないままに推移するろう。
日銀による、引き続いてのゼロ金利と、最近の量的金融緩和の抱き合わせ政策によっては、民間部門への銀行の信用創造の復活や、物価下落阻止にむけ、拍車をかけることはできない。
さらに、財政安定のためには、ある一定の時期より増税となるであろうということが、世間的に徐々に認識されてくるにつれ、これ以上の金融緩和により、経済刺激策をとっても、その有効性には限界が出始めている。
マクロ経済政策の政策選択の幅が狭まるにつれ、政府が、これまで以上に、企業や金融機関の再編加速のために、より直接的かつ強引に関与せざるを得ないという、重荷を背負わされることになる。
このようなアプローチには、多くの危険を有するであろうし、銀行をささえる施策や、再編の進捗に伴い発生する目先のデフレへの影響を相殺するための施策を、すべて包含しうる、積極的な政策協調を必要とするものである。
これら政策の実施がこれ以上遅れると、中期的には、確実に悪い事態を迎えてしまう。
小泉政権が、改革のペースを早め、公共事業拡大による呼び水的景気刺激策への依存をやめようとしていることは、フィッチもみとめている。
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