2009/07/06 Monday
2009年7月6日
2009年6月26日 の読売新聞の報道で、次のようなものがあった。
「中国で発見の新型インフル、変異は解析ミス
中国で発見された新型インフルエンザウイルスの増殖能力を高める変異は、遺伝子解析のミスだったことが25日わかった。
解析した中国・復旦大のグループがデータを修正した。新型ウイルスの増殖にかかわる遺伝子のある部分で、遺伝情報が1文字分だけ変化すると、人間の体内で増殖力が高まることが懸念されている。上海市の女性患者から採取した新型ウイルスを、復旦大が解析したところ、この変異があったとされていた。」
というものである。
参考「中国で発見の新型インフル、変異は解析ミス」
ところが不思議なことに、この復旦大の解析ミスについての記事は、海外報道記事や中国国内報道記事を探しても、この日本の読売新聞のこの記事以外には、見当たらないのである。
一方、2009年6月20日のこれも同じく読売新聞の記事に以下のようなものがある。
「新型インフル、人体内で急速増殖能力変異ウイルス 中国で確認
中国の患者から採取した新型インフルエンザウイルスが、人の体内で効率よく増殖する能力を獲得していたことが19日わかった。東京大医科学研究所の河岡義裕教授(ウイルス学)は「人での感染が爆発的に広がる恐れがある。動向を監視する必要がある」と、注意を呼びかけている。
河岡教授によると、この新型ウイルスは上海市の女性患者(22)から先月31日に採取された。世界中のウイルスの遺伝情報を集めたデータベースに登録されていたものを、河岡教授が分析した。新型ウイルスは、豚と鳥、人のウイルスが混ざり合ってできている。増殖にかかわる遺伝子は鳥由来で、鳥の体温(42度)で最も効率的に増える。
ところが、上海で見つかったウイルスは、この遺伝子が1文字分だけ変異して、人の体温(36度)で、効率的に増殖できるように変化していた。
マウスの実験では、ウイルスのこの部分を変化させると、増殖力が爆発的に増え、病原性が高まることが分かっている。」
参考「新型インフル、人体内で急速増殖能力」
この二つの記事につながりがあるのだろうか?
この二つの記事では、いずれも、該当するウイルス名を記していないために、よく、わからない。
そこで、これまで、上海で検出され、データベースに登録されたウイルスを「Influenza A (H1N1) (a.k.a. Swine Flu or North American H1N1) Update」でみてみると、つぎの五つがある。
��A/Shanghai/1/2009(H1N1)(変異はなかったとされている。5月23日に採取、30歳男性、復旦大學はこの名前のウイルスを登録していない。参考サイトはここ)
��A/Shanghai/37T/2009(H1N1) (変異はなかったとされている。上海第一例目輸入性甲型流感疑似病例.6月11日に登録、30歳男性)
��A/Shanghai/60T/2009(H1N1)(変異があったとされている。6月2日と6月22日に再度登録、性別不明)
��A/Shanghai/71T/2009(H1N1) (変異があったとされている。上海第五例輸入性甲型H1N1流感患者、6月11日に登録、女性)
��A/Shanghai/143T/2009(H1N1)(6月2日に登録。)
このうち、�,蓮�5月23日に採取された30歳の男性のもので、これについては、復旦大學は、関与していないものと思われる。(感染者の年齢・性別の一致からすると、�△氾佻燭�ダブっているようにもみえるのだが。)
参考
「Swine influenza (H1N1) protein structure model database」
復旦大學が登録しているのは、
2009年6月11日に登録の
A/Shanghai/37T/2009(H1N1)(「上海第一例目輸入性甲型流感疑似病例」の「オーストラリアから帰国の「30歳の男性」で、5月23日にオーストラリアから帰った患者から検出)
参考
「5月24日上海発現第一例輸入性甲型流感疑似病例 」
「上海三例甲型H1N1流感患者痊愈从我中心出院」
と
A/Shanghai/71T/2009(H1N1)(5月30日にアメリカからかえった患者より検出、上海第五例輸入性甲型流感疑似病例)
それに、
2009年6月2日と2009年6月22日に登録の
A/Shanghai/60T/2009(H1N1)(5月29日に採取されたもの)
参考
「Influenza Research Database」
となっている。
参考
「上海分离出两株甲型H1N1流感病毒」
変異は、A/Shanghai/60T/2009についてみれば、ふたつあり、サイトによれば
Site=627 Consensus=E 186 Alt=K(1) ThisSite=K
Site=701 Consensus=D 186 Alt=N(1) ThisSite=N
すなわち、
E627KとD701Nであったということであり、このどちらの変異も、ヒトへの適応性を示す変異とされている。
このうち、上記読売新聞の河岡教授についての記事の「この新型ウイルスは上海市の女性患者(22)から先月31日に採取された。」に該当するのは、�い�A/Shanghai/71T/2009(H1N1) ということになるのだが、果たしてどうなのだろう?
また、同じく上記読売新聞の復旦大學の解析ミスについての記事の「上海市の女性患者から採取した新型ウイルスを、復旦大が解析したところ、この変異があったとされていた。」に該当するのも、、�い�A/Shanghai/71T/2009(H1N1) ということになるのだが、私の見方としては、A/Shanghai/60T/2009(H1N1)のほうではないかと思う。
なぜなら、こちらのほうは、いったん、6月2日に登録し、再び、6月22日に登録しなおしているからである。
こちらのほうも、どうなのだろう?
この、�い�A/Shanghai/71T/2009(H1N1) の女性は、「上海第五例輸入性甲型H1N1流感患者7日康復出院」によれば、「上海第五例輸入性甲型流感疑似病例」の患者で、年齢は「23歳」の「アメリカ某大学」にいる人で「5月28日にキャセイ航空香港経由ドラゴン航空KA870便に乗って帰国した」もので、「5月30日」というのは、自分で体温を測って、発熱を確認した日で、実際の感染確認は、5月31日のようだ。
実は、上記のデータベースにのっていないウイルスで、A/Shanghai/70T/2009
というものがある。
この記事「WHO: No Sign Of H1N1 Mutation (Yet) 」において
「We don’t currently have any details on the clinical course of the person infected with this mutated strain, nor do we know if it has been transmitted to others. 」
との記述があり、変異が否定されている。
また、この記事では、変異があったのは、このA/Shanghai/70T/2009 ではないかとしている。
しかし、このA/Shanghai/70T/2009については、「Swine influenza (H1N1) protein structure model database」にみるように、復旦大學登録のウイルスには、はいっていない。
このようなことから、下記のような疑問点が沸き起こってくる。
�.Εぅ襯垢僚票腓寮�別がわかっていないのは、2009年6月22日に登録のA/Shanghai/60T/2009(H1N1)と6月2日に登録のA/Shanghai/143T/2009(H1N1)のみである。
これを除いての女性のウイルスとは、A/Shanghai/71T/2009(H1N1)のみである。
となると、読売新聞のふたつの記事がともにただしいとすると、河岡教授が分析した女性のウイルスは、復旦大學がいったん登録して、解析ミスを認めたウイルスということになってしまうのだが、どうなのか?
��読売新聞の記事が正しいとすれば、河岡教授が変異を認めたウイルスのなまえは、どれなのか?
�I�旦大學がいったん登録して、解析ミスを認めたウイルスのなまえは、どれなのか?
いったん、6月2日に登録し、ふたたび、6月22日に登録しなおしているA/Shanghai/60T/2009(H1N1)が、それらしいのだが、果たしてどうなのだろう。
もし、これとすると、読売新聞の「上海市の女性患者から採取した新型ウイルス」との記述は、はたして正確なのであろうか?
�ぅ如璽織戞璽垢砲里辰討い覆�A/Shanghai/70T/2009は、復旦大學がいったん登録して、その後抹消したウイルスなのか?
�ゲ浪�教授が変異を認めたウイルスの名前は、A/Shanghai/71T/2009(H1N1) なのではなく、実は、今はデータベースにのっていない、A/Shanghai/70T/2009(H1N1) だった可能性はないのか?
などの疑問点が、なお、残されているのだが。
読売新聞は、この諸点を明確にしないと、それらのふたつの記事の信憑性までも問われかねないことになる。
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2009/07/05 Sunday
2009/07/05(Sun)
6月28日に実施されたアルゼンチンの上下院の中間選挙でPeronist与党連合が大幅に議席を減らし、キルチネル前大統領が29日、与党正義党の党首を辞任し、フェルナンデス大統領は、内閣改造を断行した。
選挙の敗北を受けて、6月29日付で健康保健大臣は、それまでのGraciela OcañaからManzur氏へと、交代した。
アルゼンチン当局では、投票日二日前の6月26日に、H1N1感染者数を1587名、死者26人と発表したが、この数字が、選挙への影響を考慮して操作された数字との疑惑が広がっていた。
昨日発表したH1N1感染者数は、一挙に十万人以上(確定診断例では、 2,409人としてはいるが)、死者55人となった。
このことで、なおさら、選挙前の感染者数が隠蔽操作された数字であるとの疑惑が広まっている。
しかし、就任した新大臣は、この数字の操作があったことを否定している。
死者数についても、当局の発表では、55人としているが、NGOの推測では、死者は90名ちかくに上るのではないかとされている。
これらついて、全米保健機構では、アルゼンチンにおいて、H1N1のパンデミックと議会選挙とが同時に起こったことは、遺憾なことであったとしている。
参考
「Argentina Denies Manipulating Flu-Virus Figures」
「Argentina confirms 55 deaths from the A/H1N1 virus flu」
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2009/07/05(Sun)
大阪府在住の新型豚インフルエンザ患者から治療薬タミフルが効かない耐性ウイルスが見つかった問題で、大阪府立公衆衛生研究所が発見から2週間公表せずに、米医学誌への論文投稿を優先させていたことが分かったという。
論文投稿から8日後に厚生労働省から促されて初めて公表していたもので、
大阪府立公衆衛生研究所は、5月29日にタミフルの予防投与を受けていた大阪府内の女性が発症したことで、タミフル耐性を疑い、ウイルスの遺伝子を調べ、6月18日にタミフル耐性を示す遺伝子変異が確認されたが、7月2日深夜に記者会見するまで公表していなかったという。
世界保健機関(WHO)は、耐性ウイルスが見つかった時点で速やかに公表、報告するよう求めている。
というのだが、知事がパフォーマンス優先だと、部下も、こういうことになる、という証左なんでしょうかね?
なんとも、せこい功名心を、研究者たちってのは、もっているんですね。
ちなみに、その論文掲載を意図していたのは、CDCの
「Emerging Infectious Diseases」
だそうで、彼らの目論見どおり、論文が掲載されると、この検索サイトに現れるはずなのだが。
大阪府立公衆衛生研究所は、過去にも、このような「Emerging Infectious Diseases」掲載実績があるようだ。
この半月間、橋下知事、東国原さん競演のパフォーマンスに忙しかったので、怠ったということなんでしょうかね(笑)
こちらをデンマークよりも先に、早く世界的に発信していれば、橋下さんのパフォーマンス効果も果たせたのに−−ですね。
今回も、デンマークの患者と同じように、リレンザ服用で回復したということのようです。
変異は、H274Y変異(N2の274番目におけるH(ヒスチジン)からY(チロシン )への変異)ということなのでしょう。
下記サイトによれば、先日のデンマークの患者のタミフル耐性も、H274Y変異によるものとのことですが、今ひとつはっきりしていないようです。
参考
「Acquisition of H274Y Tamiflu Resistance in Pandemic H1N1 」
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2009/06/30 Tuesday
2009/06/30(Tue)
デンマークの患者から検出されたH1N1新型インフルエンザウイルスがタミフル耐性を持っていたと、デンマーク当局 National Board of Health とロッシュからの報告があった。
この患者はRelenzaの服用によって、すでに回復しているという。
ロッシュによれば、このタミフル耐性は、季節性インフルエンザウイルスとH1N1新型インフルエンザウイルスとのmutationによってできたものではないという。
ロッシュのReddy博士は、「おそらく、今回の患者は、すでに、インフルエンザウイルスにかかっていて、また、すでに予防的に少量のタミフルを服用していたのではないか」としている。
すなわち、今回のタミフル耐性は、「drug-induced resistance」(薬剤誘発性耐性)と呼ばれるものであり、一般的ではないが、まれに見られるものであるとしている。
Reddy博士によれば、この「drug-induced resistance」は、成人の0.4パーセント、子供の4パーセントに見られるものである、としている。
2008年冬のヨーロッパでの季節性インフルエンザにおいても、この「drug-induced resistance」は見られたという。
たとえば、2008年1月のノルウェーの患者から検出のH1N1ウイルスは、タミフルに対し高耐性率 75% (12/16)( higher rates of resistance )を示したという例がある。
また、ロッシュによれば、今回のタミフル耐性は、弧発的なケースで、現在出回っているウイルスすべてがタミフル耐性を持っていることを意味するものではない、としている。
なお、今回のH1N1新型インフルエンザウイルスの薬剤耐性については、今年の5月6日にCDCから発表があり、アダマンタン(アマンタジン、リマンタジン)耐性はあるが、タミフル耐性とzanamivir耐性はないと、発表されていた。
(参考 「Influenza and Antiviral Drugs」)
参考
「Denmark - Dane with novel H1N1 found resistant to Tamiflu 」
「Roche Says Tamiflu Works In Swine Flu Despite Denmark」
「Roche Sees First Case of Tamiflu-Resistant Swine Flu」
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2009/06/29 Monday
2009/06/29(Mon)
いよいよ南半球でのH1N1の感染拡大が懸念されているが、その中でも注目なのが、アルゼンチンでのH1N1による死亡者の拡大だ。
最新時点で、1587人の感染、26人の死亡ということで、特に、死亡率の高さに注目が集まっている。
死亡者は、CONURBANO BONAERENSEとよばれるブェノスアイレス周辺地域のスラム地区に集中しているのも特徴のようだ。
参考
「ブェノスアイレスでの地区別感染者数一覧」
これらのスラム地区には、移動医療車を出して、治療に当たっているようだ。
また、ブェノスアイレス近郊の農場では、人から豚へのインフルエンザ感染があったの報道がある。
これはthe National Agricultural Health and Quality ServiceのJorge Amaya氏が, Mitre ラジオでつたえたものだが、真偽のほどは、まだ、定かではないようだ
参照
「Human-to-swine A/H1N1 virus contagion in Argentine hog farm」
「Swine flu detected at Argentina pig farm」
これらの公式発表の感染者や死者の数よりも、実態の数字は相当大きいのではないかと、専門家は見ているようだ。
現にブェノスアイレスの病院は、押し寄せる感染疑い者たちで、崩壊寸前であると、この記事「As Country Votes, Argentina on Verge of Declaring Swine Flu “Emergency” 」では伝えている。
これらのことで、アルゼンチンに隣接する南米諸国にも警戒心が広がっている。
ブラジル(感染者数627名で、初の死亡者1名)では、アルゼンチンへの渡航制限を勧告した。
また、ブラジルでは、H1N1変異(mutation)が見つかったようである。
これはA/Sao Paulo/1454/H1N1というウイルスで、E627K変異はなかったものの、二つのセグメントでの変異があったようである。
ひとつはセグメント4のHA(GQ247724)
そして、
セグメント7のMP(M1とM2)(GQ250156)
の変異のようだ。
シーケンスは、このサイト
「Influenza A virus (A/Sao Paulo/1454/2009(H1N1))segment 4 hemagglutin (HA) gene, complete cds」
や
このサイト
「A/São Paulo/H1N1 - mutation on Hemaglutinina 」
に詳述されている。
参考
「New H1N1 virus mutation found, what it means」
チリもひどいようだ。
5186名の感染者というのだが、当初、この数字をみて、季節性とごっちゃになっての数字なのかな?と思ったのだが、そうではないようだ。
毎日のように、千人単位でどんどん感染者が膨らんでいるようだ。
死亡者は、7名となっている。
その他ベネヅェラ感染者180名、コスタリカ210名、ペルー145名、キューバ46名、エクアドル84名、ウルグアイ36名、パラグァイ25、スリナム13名などとなっている。
オセアニアでは、オーストラリア3280名、ニュージーランド507などとなっている。
どうも、季節性インフルエンザとH1N1新型インフルエンザとの境が、統計面でも対策面でも、どう区別されているのか、よくわからないのだが、ともかくも現時点では、予想を上回る南半球でのH1N1の猖獗ぶりではある。
参考
「As Country Votes, Argentina on Verge of Declaring Swine Flu “Emergency” 」
「South America bears winter brunt of H1N1 pandemic」
「Argentina reinforces hospitals as flu deaths rise」
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2009/06/27 Saturday
2009/06/27(Sat)
アメリカが、六億服のワクチン接種計画を持っているという。
これは、H1N1豚インフルエンザ免疫化キャンペーンとして行われるもので、六億服というのは、空前の規模であるという。
ちなみに、通常の季節性インフルエンザワクチンの服数は、一億一千五百万服であるという。
アメリカの人口は314,659,000人である。
以前からミシガン大学のMonto博士などが提唱している「鳥インフルエンザ・ワクチン皆接種構想(universal vaccination plan)」に近い構想のようだ
参照「「鳥インフルエンザ・ワクチン皆接種構想」の再浮上」
現在、詰めて解決すべき問題点(to be worked out)としては、それを接種するに十分な医療従事者の数があるかどうか、とか、季節性インフルエンザワクチンと同時に、豚インフルエンザワクチンを接種した場合のワクチンの副作用はあるかどうか、などについてであり、その見極めが行われているという。
アトランタでおこなわれた全米ワクチン諮問委員会でのアメリカ疾病管理予防センターの報告では、このキャンペーンによって、季節性ワクチン接種の必要性を一億一千五百万服減らすことができ、毎年の幼児用ワクチン接種数を一億五千万服へらすことができるという。
このキャンペーンをいつから行うかについては、明らかにされていず、また、すべてのアメリカ人が接種されるものかについても不明であるが、ワクチン生産と治験の速さしだいではあるが、9月には、六千万服分は、用意できるという。
また、木曜日にアメリカ連邦保健局が発表したところによると、H1N1に罹患したアメリカ人は、百万人にのぼっていると見られ、それらの感染者が、マイルドな感染拡大と、比較的早期の治癒を繰り返している状態であるという。
また当初4月にメキシコで発見されたウイルスは、いまだ、変異を見せてはいないという。
いっぽう、6月19日にCDCから発表された報告書によれば、26人の医療従事者から採取したサンプル調査によれば、その半分が、仕事中に感染したものであるところから、これら医療従事者への感染防護対策がより必要であるとしている。
今回の国民皆接種構想には、多くの問題点もあるようだ。
そのひとつは、1976年の失敗を繰り返すのではないのか?という点についての懸念だ。
1976年、豚インフルエンザを警戒し、四千万人のアメリカ人にワクチン接種をしたのだか、実際には、豚インフルエンザは、発生せず、そのかわりに、少なくとも500人が、ギランバレー症候群(Guillain-Barré Syndrome (GBS))といわれる、ワクチン接種による麻痺状態をもたらした。
これがどのようにして生じたのか、いまだ、わかっていないようだ。
なお、ギランバレー症候群とインフルエンザ・ワクチン接種との関係について、このCDCのQ&A「Seasonal Flu and Guillain-Barré Syndrome (GBS)」では、1976年のインフルエンザワクチン接種によってギランバレー症候群をおこしたことについての研究は、100万人接種したうちの一人Sam Goldstein氏についてのみである、としている。
Sam Goldstein氏は、14歳のときにギランバレー症候群から回復した後、1976年のワクチン接種後に、ふたたびギランバレー症候群となり、ワクチン接種の一ヶ月後、死亡したものである。
参考
「U.S. Considers Massive Swine Flu Vaccination Program」
「Massive Swine Flu Vaccination Campaign Being Discussed」
「Swine flu shot campaign could involve 600M doses」
「The case of Sam Goldstein and the swine flu vaccine」
「日本におけるワクチン接種後のギランバレー症候群発生例」
「Universal Influenza Vaccination: Issues for Consideration」
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2009/06/19 Friday
2009/06/19(Fri)
以前のブログ記事「今回のH1N1は、この夏、南半球でも、北半球でも大流行するとのニーマン博士の見解」で、PB蛋白のE627K変異が、低温でのウイルスの複写効率を増加させるとのニーマン博士の説を紹介したが、今回の上海で発見のH1N1新型ウイルス A/Shanghai/71T/2009(2009年5月31日に採取)についても、E627K変異がみられたという。
そして、この再集合は、ヒト→ヒト間で生じたものではないと見られている。
参照
一方最近ブラジルで発見されたA/Sao Paulo/1454/2009には、E627K変異は、見られなかったという。
かねて、ニーマン博士は、今後6月から12月までのH1N1対策には、両面戦略がとられるべきであるとして
ひとつは、北半球では、E627K変異がおこっていないH1N1が、北半球での暑い夏の間も、感染拡大を続けるであろう事への対策
もうひとつは、南半球では、E627K変異がおこったH1N1が、南半球での寒い冬の間、感染拡大を続けるであろう事への対策
であるとしている。
この説が一部、実証されているということなのだろうか?
このE627K変異は、第二波のウイルスにおけるヒトへの感染性と劇症性を付与するものとニーマン博士は見込んでいるようだ。
参考 A/Shanghai/71T/2009のシーケンス
「Flu Trackers」より
601-610
qqmrdvlgtf
611-620
dtvqiikllp
621-630
faaappkqsr
この621-630の部分がA/Shanghai/71T/2009 では
faaappeqsr
となっている。
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2009/06/13 Saturday
2009年6月12日
昨日のネイチャーのオンライン版(2009/06/11)に発表されたレター「Origins and evolutionary genomics of the 2009 swine-origin H1N1 influenza A epidemic」が、早速話題になっているようだ。
このレターは、エジンバラ大学のAndrew Rambaut氏をはじめとした13人からなる研究グループの研究で、今回のH1N1新型インフルエンザウイルスのOriginを解析したものだ。
まず、下記の図を見ていただくと

縦軸の
緑が鳥インフルエンザウイルス
赤が豚インフルエンザウイルス
青がヒト・インフルエンザウイルス
横軸が年代をあらわしていて
左が1979年以前
右が2009年4月
となっている。
つまり、今回のメキシコ・北米のインフルエンザウイルスが発見されるに至るまでの鳥・豚・ヒトインフルエンザ・ウイルスの系統樹的にみた経緯を示しているのだが、
今回のH1N1新型インフルエンザ・ウイルスについては、2009年5月3日の私のブログ記事「新型インフルエンザについてのコロンビア大学などの予備的分析結果について」述べたように、
��PB2
北米の豚インフルエンザに近い
��PB1
北米の豚インフルエンザに近い
��PA
北米の豚インフルエンザに近い
��HA
北米の豚インフルエンザであるA(H1N1)とA(H3N2)に近い
��NP
北米の豚インフルエンザに近い
��NA
ヨーロッパ/アジアのインフルエンザウイルスに近い。
1992年からみつかっているインフルエンザAウイルスに、最も近い。
��MP(M2M1)
ヨーロッパ/アジアのインフルエンザウイルスに近い。
��NS (NEPNS1)
北米の豚インフルエンザに近い
とされている。
そこで、この研究では、その鳥・豚・ヒトのそれぞれのホストを持つウイルスについて、時代的に、かつ、地理的(北米・ユーラシア(ヨーロッパ・アジア)にも、さかのぼって、そのOriginを、分子時計(Molecular clock)の技術を使って、30のH1N1新型インフルエンザ・ウイルスについて、検証しようとしたものである。
(注-分子時計(Molecular clock)の技術とは、祖先を同じくする二種の生物の遺伝子を比較し、それがどの程度違っているかを調べ、それによって、どのくらい昔にその生物が進化上分岐したのかを調べるもの)
同時に、こんかいのH1N1新型インフルエンザウイルスの二つ、アジアの豚インフルエンザウイルスの15、ヒト、鳥、豚のインフルエンザウイルスの796について、そのシーケンスについての比較をした。
まず、北米においては、クラシカルなH1N1豚インフルエンザが、少なくとも80年間は、循環していたとしている。
1998年に、このクラシカルなH1N1と北米の鳥インフルエンザウイルスと、ヒト・インフルエンザ・ウイルスであるH3N2 (A/Sydney/5/97-like)が再集合して、再集合ウイルスであるH3N2が生まれたとしている。
この再集合ウイルスであるH3N2がさらにH1N1 や H1N2との再集合によって、2005年以来、孤発的なヒト・インフルエンザ感染をしていった、と見ている。
その結果、H1N1豚インフルエンザ・ウイルスのヒトへの感染は、2007年以来、確認されるようになってきたとしている。
一方、ユーラシアにおいては、H1N1鳥インフルエンザウイルスが、豚において「‘avian-like’ swine H1N1」となり、これがはじめて発見されたのが、1979年、ベルギー(A/swine/Belgium/1979 (H1N1))において、としている。
これが、次第にクラシカルなH1N1となり、さらに、「A/Port Chalmers/1/1973-like」のようなヒトH3N2インフルエンザ・ウイルスと再集合したとしている。
ただ、このユーラシアのウイルスが、北米においても、循環していたという証拠はなんらないことが、奇妙であるとしている。
アジアにおいては、クラシカルな豚インフルエンザ・ウイルスは、他の型のウイルスとともに、循環しており、その中には、ヒトH3N2や、ユーラシアの鳥H1N1や、北米の上記の鳥・豚・ヒト三種再集合ウイルスであるH3N2もあったと見ている。
そこで、このユーラシアのウイルスと北米のウイルスとの接点として、研究グループは、いくつかの仮説を立てている。
すなわち、
今回のH1N1新型インフルエンザウイルスのアウトブレークまでの間、約10年間、北米の豚や七面鳥の間で、静かなる循環をしていたのではないのか?
それらがみつからなかったのは、豚のウイルスについてのサーベイランスのサンプル欠如によるものだったのではないのか?
三種再集合ウイルスのうち
鳥 ウイルス(PB2と PA), ヒトH3N2 ウイルス(PB1) 、クラシカルな豚インフルエンザウイルス (HA, NP 、NS)であるとして、ここに、香港が絡んでくるのではないのか?
すなわち、1990年代の香港でのサーベイランスでの豚インフルエンザでは、これらは、H1N1 と H1N2との混合であり、それは、クラシカルなものであったという。
また、そこでは、上記で見た、三種再集合ウイルスの存在もユーラシアの鳥インフルエンザ・ウイルスの存在も確認されたという。
2009年に香港で発見されたSw/HK/78/2003は、三種再集合ウイルスとユーラシアの鳥インフルエンザ・ウイルスとの再集合ウイルスであったとされる。
また、今回のH1N1新型インフルエンザウイルスのシスター系として、2004年発見のSw/HK/915/04(H1N2)が位置づけられるという。
しかし、地理的にみて、この香港のSw/HK/915/04と今回のH1N1新型インフルエンザウイルスとを関係付けるには、地理的に距離がありすぎるとみている。
そのようなことから、ユーラシアから北米への豚の生体輸入が絡んでいるのではないのか、という仮説も立てられうるとしている。
そこで、サンプルの欠如があったとの仮説の元に8つのセグメントについて再検証してみると、最短で9.2 年(PB1からみて)前から最長で17.2 年(NAからみて)前の間に、今回のH1N1新型インフルエンザ・ウイルスにもっとも近い祖先がいたものと、推定できたという。
その共通の祖先ウイルスは、すくなくとも、昨年の8月から、今年の1月までは存在していたという。
そして、早ければ昨年の8月以降、遅くとも今年の1月以降に、今回のH1N1新型インフルエンザウイルスは、分岐したとしている。
この研究グループでは、これまでのサンプルの欠如が、今回の対処を遅らせたとの認識から、これまでおろそかにされてきた豚ウイルスのサーベイランスの充実と、豚産業従事者のモニターが必要としている。
鳥インフルエンザのみでなく、豚インフルエンザのモニターも必要であるとのことなのだろう。
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2009/06/12 Friday
2009/06/12(Fri)
EDT時間で6月11日12時pm(日本時間12日午前1時) にWHOは、H1N1インフルエンザ警戒段階をフェイズ6に引き上げた。
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下記は、その声明発表時のチャン事務局長のコメント
今回のフェイズ6引き上げは、世界が、21世紀における最初のインフルエンザ・パンデミックの初期段階に移行しつつある、ということを意味している。
この場合、パンデミックは、地理的な意味であり、重篤性を意味したものではない。
重篤性についての世界的な評価としては、パンデミックは、より穏やかなものであるが、一国としての事態は、これとは異なる。
世界的なレベル評価は、一国のレベル評価とは、非常に異なる。
なぜなら、世界的なレベル評価では、特定の国における全住民の脆弱性や、衛生システム回復力なども、考慮に入れるからである。
世界レベルと一国レベルとでの重篤性評価の対比は、しばしば、大衆に混乱を生むことになる。
政府は、パンデミックへの公衆衛生上の対応を、その国の感染発生の進展にあわせ、調整しなければならない。
ある国においては、感染発生声明に対して、過剰反応を押されるであろうし、ある国においては、そのインフルエンザがマイルドだった場合、「なにが問題なの?」と問うことになる。
今一度いわねばならぬのは、過剰反応と(もう大丈夫との)安心感とは、WHOとしては、おなじく、おおきな心配のもとなのである。
水曜日での8カ国会議では、コミュニティでの感染が、サーベイランス・システムでとらえた程度より広いものであるとの結論へたどり着けるような、明らかな状況にはなかった。
総じてみれば、今回のウイルスは、各国に広がり、その広がりはストップすることはできないということについて、われわれは、確信を持った。
南半球からの情報は、以前のパンデミックと符合するものがある。
新型インフルエンザH1N1が、これまで、季節性インフルエンザを完全に締め出している(クラウディングアウトしている。)ということをみてきた。
そして、このことは、前のパンデミックの非常に典型的な特徴であった。
WHOは、旅行制限は、勧告しないし、国境閉鎖も勧告しない。
人・もの・サービスの移動についての制限であってはならない。
これは、よって立つ重要な勧告である。
季節性インフルエンザとH1N1インフルエンザのワクチン生産についてであるが、
南半球はすでに冬に入っている。
南半球では、季節性インフルエンザのワクチン注射については、方針に従って、すでに、完了している。
北半球の季節性インフルエンザのワクチンの製造について、メーカーはすでに生産体制に入っている。
メーカーによって多少のずれがあるが、おおむね、この二週間以内に、これらの季節性インフルエンザワクチンの製造は完了する。
今回のH1N1については、すでに、シード・ワクチンをメーカーは、受け取っているので、季節性インフルエンザワクチン製造が完了次第、新H1N1用ワクチン製造に移行するよう、WHOは、勧告している。
以上
参考
「チャン事務局長のコメント全文」
「Highlights of comments on flu by WHO chief Chan」
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2009/06/11 Thursday
2009/06/11(Thu)
今回のH1N1のPB2のポジション627がEであることについて、いろいろ、論議が交わされているようだ。
例によって、ニーマン博士(Henry L Niman)のご説なのだが、通常の季節性インフルエンザのPB2のポジション627はK(lysine)であるのに対して、今回のH1N1のPB2のポジション627がE(glutamic acid)であるとして
このポジション627がEであるということは、温度が高ければ高いほど、replication(RNA複製効率)が早いとしている。
これに対して、ポジション627がKである場合には、温度が低ければ低いほど、replication(RNA複製効率)が早いとしている。
今回のH1N1が、南半球を回って、北半球に戻ってくるまでの間に、E627Kへの変異(ポジション627でのEからKへの変異)があった場合には、第二波のウイルスの毒性に影響があるとしている。
したがって、今後6月から12月までのH1N1対策には、両面作戦がとられるべきであるとしている。
ひとつは、北半球では、E627K変異がおこっていないH1N1が、北半球での暑い夏の間も、感染拡大を続けるであろう事への対策
もうひとつは、南半球では、E627K変異がおこったH1N1が、南半球での寒い冬の間、感染拡大を続けるであろう事への対策
であるとしている。
まあ、ニーマン博士特有の、やや、とってつけたような解釈がちょっと気になるのだが、一応の見解として紹介しておく。
このE627K変異は、例のサイトカイン・ストーム誘導を起こす変異とされているものだ。
参考
「Swine H1N1 Summer Spread Raises Pandemic Concerns」
「Recombinomics: Swine H1N1 Outpaces Seasonal Flu In the United States」
「Antigenic and Genetic Characteristics of Swine-Origin 2009 A(H1N1) Influenza Viruses Circulating in Humans」
「Swine flu: genetics of the novel virus」
「Swine flu: fast track publishing and marketing」
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