2007/02/04(Sun)
イギリスで、七面鳥がH5N1鳥インフルエンザ感染となった。
このことで、日本のデパート筋からアクセスがあるので不思議に思っていたのだが、どうやら、今回の七面鳥の感染農場が、世界的に、七面鳥の輸出で有名な Bernard Matthews社の農場(イギリス東部の Lowestoft 近くに所在)で発生したからのようだ。
参照
「H5N1 Confirmed in England」
Bernard Matthews社は、ニュージーランド、ドイツ、フランス、ハンガリーなど、世界に七面鳥を輸出している最大手のようだ。
参照「Bernard Matthews」
会社独自の、非GMのオーガニック飼料による肥育で、信頼を集めているようである。
ちなみに、これがBernard Matthews社のサイトだが、この中で「Bootiful Family Food」とあるのは、初代の社長が、1980年に、自ら、はじめてテレビ・コマーシャル出演をしたときに、ノーフォーク訛りがひどくて、それが、逆に話題になったことを逆利用してのもののようだ。
そのときの実際のコマーシャル映像は、このサイトで見ることができる。
しかし、今回、このBernard Matthews社は、鳥インフルエンザ発生の報告をするに際して、発生からDefra(イギリス環境・食料・農村地域省)への通知が、48時間以上たって行われたことに対して、非難が集まっているようだ。
現地の模様を伝えるビデオは、こちら
Bernard Matthews社で、最初に55羽の七面鳥が死んだのが、先週の火曜日で、翌日には、さらに186羽が死んだ。
木曜日になって、急激に死亡が増え、860羽に上った。
Bernard Matthews社は、この時点で、Defraに通知をしたという。
その後、獣医が訪れ検査をしたが、その獣医によると、水曜日には、報告すべきものであったという。
木曜日の遅くに検査結果がわかり、隔離措置がとられた。
社長のBernard Matthews氏は、農場に隣接する居宅にいたが、会見を拒否したという。
その翌日には、1500羽が死んだ。
そして、金曜日に、加工工場はストップしたという。
この工場の従業員は、ポルトガルからの移住労働者で、千人以上おり、多くは、近辺のBecclesという町からバスで通っているという。
その辺の心配も、近所の住民にはあるようだ。
この会社、いろいろ、話題の多い会社のようで、二年前に、テレビ・シェフが、七面鳥に含まれる脂肪の多さを指摘し、学校給食から七面鳥を取り除くようになったところ、Bernard Matthews社は、脂肪分の少ない七面鳥を開発し、逆に売り上げを伸ばしたこともあるようだ。
しかし、今回の鳥インフルエンザ発生時の広報体制のまずさは、今後、尾を引くのではないかと、このサイト「The firm: Bad publicity strikes Bernard Matthews … again. 」では警告している。
参照「Bernard Matthews took 48 hours to report turkey deaths」
つまり、このときのBernard Matthews社の広報体制は、決して、社長の言うような『Bootiful』とはいえない代物だったということなのだろう。
一部日本の報道では、「イギリスでH5N1型のウイルスが鳥から検出されるのはこれが初めてで、イギリス当局は飼育場の残りの七面鳥を処分すると共に、飼育場一帯で家きん類の移動を禁止することにしています。」としているが、イギリスでは、過去に3回、H5N1感染に見舞われている。
第一回が、1991年で、このときのウイルスは、A/Turkey/England/50-92/91 であった。
第二回は、2005年10月で、これは、台湾からイギリスのペットバード業者に送られてきたオウムが、鳥インフルエンザに感染していたものだ。
これについては、私のブログ『ペットバードの鳥インフルエンザ感染・媒介・拡大の可能性について』や『イギリスでも、鳥インフルエンザ感染ー台湾から輸入のペット・バードから感染の疑いー』をご参照。
これは、中国の福州港から、台湾へ輸送されたペットバードのようだ。
第三回は、2006年4月で、スコットランド東海岸FifeのCellardyke村で発見された白鳥の死骸に、H5N1型鳥インフルエンザ感染が確認されたものだ。
参照「H5N1 avian flu confirmed in dead wild bird in Scotland」
しかし、このときのウイルスは、鳥フル・ウイルスのデータベースには、登録されていないようだ。
今回のイギリスでのH5N1鳥インフルエンザ発生に伴って、農水省は2月4日付けでイギリスからの鳥や鶏肉などの輸入を停止した。
これらの影響については、以前、2006年5月13日時点で、私のブログ
『欧州の鳥インフルエンザ拡大による原種鶏・種鶏の輸入停止で、日本の養鶏業はどうなる?』にまとめておいたのだが、基本的には、そのときの事情と変わらないようだ。
すなわち、平成17年におけるイギリスからの肉用鶏初生ひなの用途別、国別検疫状況を見てみると、
原種鶏 雄 58,566羽 雌 128,012羽
種鶏 雄 12,312羽 雌 79,304羽
合計 雄 70,878羽 雌 207,316羽
という状況だ。
最新時の統計については、『農林水産省動物検疫所』のサイトの中の『初生ひな(鶏)国別輸入状況』をクリックして、ご覧ください。
肉用鶏の原種鶏がイギリスからのみということである。
もっとも、イギリスのAviagen Ltdから原種鶏を輸入している株式会社日本チャンキーなどでは、Aviagen Ltdが、イギリス以外の5ヶ国(米国・ブラジル・オーストラリア・ニュージーランド・南アフリカ)からも原種鶏を供給できる体制を確立 しているところから、米国とオーストラリアからの代替輸入が可能のようだ。
卵用鶏については、原種鶏についてはドイツとアメリカがほとんどなので影響はないが、種鶏の一部がイギリスからの輸入となっているようだ。
コマーシャル鶏については、卵用鶏・肉用鶏とも、影響はないようだ。
日本のブロイラー生産事情などについては、このサイト「養鶏における生産システムと、疾病の防除対策」の31ページ以降あたりをご参照
イギリスのその他の育種会社としては、次のものがあるようだ。
ブロイラー
Cobb Breeding Company Ltd.(イギリス)
Ross Breeders Limited (スコットランド)(企業グループ BC Partners Ltd. - Aviagen Group Ltd. - Ross Breeders - Arbor Acres - Nicholas )
ブロイラー種鶏育種会社のシェア
Aviagen (Ross Chickens生産、イギリス) 49%
Cobb Vantress (Cobb Chickens生産、イギリス) 31%(うちTyson Foods6%)
Groupe Grimaud La Corbiere (Hubbard Chickens生産、フランス) 10%、
Nutreco/Hybrobreeders (Hybro Chickens生産、オランダ) 3%
と、寡占化が進んでいる。
いずれにしても、この問題は、養鶏業界にとっては、まさに、前門のトラ・後門の狼で、国内の鳥インフルエンザに匹敵する問題と、今後、なりそうな気配である。
最後になるが、このサイト『Circulation of H5N1 and H7N3 in England 』では、今回のイギリスで発見されたH5N1と、昨年イギリスで、発見されたH7N3とは、関係あるのではないかとしている。
すなわち、今回のエジプトで発見されたH5N1には、M230Iの変異において、イギリスの昨年のH7N3における変異と一致しているとしている。
エジプトのH5N1においては、このM230Iの変異は、人間と野鳥の、二つのケースにおいて見られた。
人間のケースにおいては、M230Iの変異は、アジアの変異と一致しており、そのほかの二つの変異-一つは、HA のV223I 、もうひとつは、NA のM29I -も、Shantouの鴨の変異と一致していた。
ところが、エジプトにおける野鳥より採取のH5N1ウイルスにおいては、M230Iの変異は、昨年のイギリスのH7N3での変異と一致していたということだ。
そこで、この昨年のH7N3が、ヨーロッパ圏内において、循環していたのではないかと、思われるということだ。
問題は、 H7のほうが、H5よりも、ヒトに感染しやすいということだ。
受容体ドメインにおけるM230I 変異に加えて、人間のケースにおいては、エジプトにおいては、V223I, S227Nの変異、トルコにおいては、S227N変異、イラクにおいては、N186S, Q196R変異、アゼルバイジャンにおいては、N186K変異が見られるということも、これらの変異が、ヒトへの感染を容易にしているのではないかと、見られているようだ。
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