2004/12/15 Wednesday
2004/12/15
米連邦準備理事会(FRB)は、14日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標水準を0.25%引き上げ、年2.25%とすることを全会一致で決定した。また、経済の成長に伴って、金利を徐々に引き上げ続ける、との方針も示した。
FRBは、6月から利上げを開始しており、利上げは今年5回目。
とのことなのだが、今回の利上げの目的については、このサイトのように、いろいろな憶測がある。
第一に、インフレ懸念がさほどないのに、なぜ、今利上げなのかということだ。
これについては、ドル安が定着すれば、インフレ懸念が拡大するので、今回の利上げは、その先制攻撃だったとする見方がある。
第二に、ドル安にむかっているにもかかわらず、アメリカの貿易赤字が、五千五百五十万ドルという記録的な数字に達しているため、政策当局は、金利水準を「中立的水準」に保とうとしたという見方もある。
これによって、インフレへの刺激なくして、適度の経済成長と、失業率の低下と、適度のスピードを確保できるとしている。
しかし、どの金利水準が「中立的水準」なのかについては、定かでない。
すなわち、いかに機敏に利上げのタイミングをつかむかはできても、利上げの終わりは、どの段階で、いつなのかについては、誰しも、分かっていないのである。
これについては、2006年末までには、4.5パーセントの金利水準に達するとの見方がある。
しかし、一方で、グリーンスパンは、それほどの引き締め策はとらないだろうとする見方もある。
そのうがった根拠として、グリーンスパン氏が、2006年初頭には、20年にわたる米連邦準備理事会議長の座を退任することになるため、彼が、1994年から1995年にかけて、極度の金融引き締め策をとって、アメリカ経済が萎縮してしまった過ちは、晩節を汚さない意味で、繰り返さないだろうという見方である。
いずれにしても、依然として、日本が、非負制約によって、金融政策の片手をもがれた状態なのに対して、アメリカは、金利水準の中立性確保によって、政策誘導の主導権を、既に取り戻しているように見える。
为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/
Translate
笹山登生HOME-オピニオン-提言-情報-発言-プロフィール-図書館-掲示板
2004/12/14 Tuesday
2004/12/14
このサイトは、アメリカの「SuicideGirls」(SG)というサイトを運営している人の下に、突然、任天堂アメリカの弁護士事務所から、「あなたのサイトは、ポルノサイトであるので、サイトの中で、任天堂の作品名「ゼルダの伝説」を記述することは、知的所有権違反に当たるので、即刻、作品名を削除しなさい。さもなくば、連邦法・州法にのっとって、訴える。」とのメールをもらった出来事を紹介している。
そこで、サイトの主は、その通り、サイトから、「ゼルダの伝説」の名を削除したのだが、実は、このサイトは、ポルノサイトほどの過激なものでなかったものだから、サイトを訪れる人々を怒らせてしまった。
そしたら、任天堂アメリカは、今度は、弁護士事務所を通さず、直接、お詫びのメールを、サイトの持ち主に送ってきた。
そこには、こう書いてあった。
「私たちは、あなたや、あなたのサイトに訪れる方々に対して、お詫びしたいと存じます。任天堂のファンのかたがたは、インターネット上で、自分で、何を見たいのかが、選択できる年の皆様であることを知っています。私たちは、それらの方々からの支持を尊重しますし、それらのかたがたの決意について、敬意を表します。先の手紙は、多くの性的サイトから、任天堂の名で、子供をひきつける行為から守るための一環として、出されたものでした。この点の努力については、私どもも自負していたものです。不幸なことに、今回は、あなたのサイトを性的なサイトとして、間違って認識してしまいました。」
という詫び状が来たという。
知的所有権を弁護士任せにしていると、とんでもない検討違いの喧嘩を消費者に売ってしまうという好例だが、日本でも、同様なケースは、起こりかねない。
著作権や知的所有権の裏側には、それを守れと叫ぶものも、それをはずせと叫ぶものも、いろいろな院外団らしきものや、隠れたる利害関係者たちが潜んでいて、一見妥当に見える論理で、時には政治家を巻き込んで、法を守れと叫んだり、この法はおかしいと叫んでいることもあるのだ。
だから、消費者は、何が消費者の味方で、何が味方でないかを、嗅ぎ分ける臭覚を持つしかないということになる。
「文化庁が敵だ。」と叫んでいても、それが、なにの意図をもったものなのか、「特定メーカーが敵だ」と叫んでいても、それは、実はライバル社の人なのではないのか、また、何故に、そういっているのかは、よくよく、確かめてかからなければならないのではないのだろうか。
業界関係者が消費者を巻き込んで、そのようなプロパガンダをしていることだって考えられるのだ。
著作権の世界も、どうも、胡散臭い世の中になってきたものである。
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言–
–プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–
166
2004/12/12 Sunday
2004/12/12
自民党の亀井静香元政調会長は11日午後、都内で講演し、小泉純一郎首相や武部勤幹事長が郵政民営化に絡み衆院解散に言及していることについて「解散風を吹かせれば羊がおとなしくなると思っているのだろうが、羊もそんなにばかじゃない」と述べ、首相らのけん制を強く批判した。
その上で「永田町に牙を持った羊がどれだけいるか分からないが、入れ歯でもいい。わたしは死力を尽くして一生懸命(政権批判を)やっている最中だ」と強調した。
というのだが、
次のサイト
http://www.geoffcooper.co.uk/jokes/falseteeth.htm
は、入れ歯のジョーク
「西洋には歯の妖精というものがいると信じられていて、子どもが抜けた歯を枕の下に置いて寝ると、夜中に妖精がこっそりとその歯をもらいに来て、お礼としてお金を置いていくという言い伝えがある。
あるとき、4歳の女の子を、お昼時に、老人ホームに連れていったところ、テーブルの上に、入れ歯が、コップの中に、水につけておかれているのを、女の子が、まじまじと見つめている。
「これはなに?」と質問攻めに会うかと、身構えていたところ、女の子は、振り返って、こうささやいただけだった。
「歯の妖精は、(入れ歯を本物の歯と間違ってお金を置いていくようなことは)、決してしないでしょうね。」」
日本にも歯の妖精がいるとしたら、噛み付いた後の入れ歯の牙を枕の下においておけば、ひょっとして、まちがって、政権が転がり込んでくるかも知れませんね。
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言–
–プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–
164
2004/12/10 Friday
2004/12/22
クリスマスが来ると、アメリカBSE発生一年目を迎えるが、
サイトhttp://seattlepi.nwsource.com/local/aplocal_story.asp?category=6420&slug=Mad%20Cow%20Food%20Safetyでは、この一年間、初のBSE発生で、アメリカの消費者の食の安全は、どう確保されたのか、そして、されなかったのかを、検証している。
the Center of Science in the Public InterestのCaroline Smith DeWaalさんによると、確かに、BSE発生直後はアメリカの消費者も、関心は深かったが、だんだん、それは薄れ、結果としては、消費者よりも、ミートパッカーの声のほうが強かったという。
行政の対応も、発生直後にとられた対策を除いては、見るべき進捗はなかったとしている。
ダウナー牛の食のルート規制は、もっとも、インパクトのあるものではあったが、それよりも、危険部位の混入禁止のほうが、重要であった。
牛のBSE検査の拡大や、新サーベイランスプログラムの稼動もあったが、飼料規制の強化については、不十分であったとしている。
皮肉にも、米国の消費者にとって、食の安全のためにもっとも効果があり、米国政府を動かしたのは、ほかならぬ、日本を始めとした、米国産牛肉輸入国からの、米国政府に対する輸出牛肉の安全要求であったとしている。
牛の個体識別制度の本格稼動は、2006年初頭までかかる見通しであるという。
これらの対策がすべてなされたとしても、アメリカの消費者にとって心配なのは、単にBSE問題にとどまらず、食の安全を脅かす、そのほかの問題-大腸菌、リステリア菌など-が、予想以上に大きい問題なのではないかと、指摘している。
アメリカの疾病管理予防センターによると、アメリカで、毎年、食を原因としての病気の死亡者数は、五千人、七千五百万人が病気となり、そのうちの入院患者数が、三十二万五千人であるとしている。
このことから見ても、これら総合した食にかかわる病気の対策が必要とされるとしている。
「政府は、ミートパッカーの声よりも、アメリカの家族の声を聞け」と、the Government Accountability ProjectのGreg Watchmanさんは、いう。
特に、クリークストーン社等が、外国からの要請に応え、自主的な全頭検査をしようとしたのに対して、USDAは、ミートパッカー団体の「コストがかかる」「科学的根拠がない」などの意見のみ、受け入れ、これら自主検査の動きを拒否してしまったことは、USDA自体が、アメリカの消費者を守る使命にかけていたことを示すものであったと、消費者団体は言っている。
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言–
–プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–
170
2004/12/10
今年一年のBSE問題を振り返ると、なんといっても、昨年クリスマスのアメリカのBSE発生とその後のアメリカからの日本向け牛肉再輸出要求に対応した日本の食品安全委員会の対応振りが特記される。
私自身も、この8月には、食品安全委員会での意見陳述の機会も与えられた。
しかし、そもそも日本のBSEが何によって発生したのかについての原因究明は一向に進んでいない。
その一方で、なし崩し的BSE規制の緩和が進んでいるといったのが、今の日本の現状なのではなかろうか。
いや、原因究明が進んでいないというのは、間違いで、少なくとも、これまで日本で発生したBSEを三つのコホートに分けられうるとするならば、そのひとつについては、肉骨粉が原因であるというよりは、代用乳が原因であるというということは、専門家の誰しも、感じていることであるに違いない。
私は、ここで、改めて、日本は、代用乳や血漿蛋白とBSEとの関係に絞って、原因究明を進めるべきときであると思う。
このサイト「Milk substitute consumed by 3 BSE cows had Dutch fat.」 は、BSEと代用乳との関係に絞った研究状況の一覧である。
この中に、次のような記述がある。
「日本の農林水産省は、動物性脂肪が、全農の子会社によって、日本へ輸入されたと、考えている。最初の三頭のBSE牛については、オランダから輸入された動物性脂肪が含まれていると考えられ、このオランダ製の動物性脂肪は、1997年以来、21頭のBSE感染を引き起こしたことが確認されいる。この三頭のBSE牛に与えられた代用乳は、全農の子会社の(株)科学飼料研究所で作られたものである。」
Officials of the Ministry of Agriculture, Forestry and Fisheries said the animal fat is believed to have been imported to Japan by a subsidiary of the National Federation of Agricultural Co-operative Associations (ZEN-NOH). A milk substitute consumed by all three cows in Japan diagnosed with mad cow disease contained an animal fat produced in the Netherlands, where 21 cases of infection have been confirmed since 1997 (2). The milk substitute given to the three cows was produced at Scientific Feed Laboratory Co., another subsidiary of ZEN-NOH.
この問題について、日本の農林水産省は、オランダへの調査団を派遣したが、その結果では、以下のサイトに見られるように、交差汚染についての確証は、得られなかった。
参考
「第6次輸入肉骨粉等の海外調査報告について」
A model to assess the risk of the introduction into
Japan of the bovine spongiform encephalopathy
agent through imported animals, meat and meatand-
bone meal
しかし、サイト「Note on suspicion of a milk replacement as possible source of BSE, Denmark
」にあるように、ドイツのNordmilch EGで製造されたSundkalvやRod KalvoやGron Kalvoという名の血漿蛋白・代用乳のトレースは、必要であろう。
これらは、1996年から1997年にかけて、デンマークやオランダやEU諸国を経て、全世界に出回ったものと見られている。
これらは、危険部位を取り除かれていない血漿蛋白と交じり合った可能性が強く、しかも、用途としては、単に子牛だけでなく、豚にも使われていた可能性が強い。
そもそもの日本のBSE対策は、決して、原因究明なくして完結しうるものではない。
新たな年においての、いっそうの関係者の努力を望むものである。
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言– –プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–
161
2004/12/05 Sunday
2004/12/05
どうも、橋本さんの「事実だろう。」との表現は、なんかで見た表現だとは思っていたのだが、いまだに思い出せないままにいる。
このアニメサイトがわかりやすいのだが、ドイツのホロコーストで、これまでの見方を修正する動きがある。
ホロコースト修正主義というものだが、http://www.ety.com/tell/books/jglife/jgtoc.htm
に詳しい。
上記サイトのアニメでは、大量殺戮の割には、それに相当する皆殺しの死体が見つかっていない問題で、それは灰になったとしている。
それについて、「灰の存在はポーランド政府の調査で明らかになっている。
IHR(歴史見直し研究所)は「死体も灰もない」と言っているが、それは矛盾した発言だ。
反・ホロコースト否定を目的とする「ニツコー・プロジェクト」(The Nizkor Project)の英文サイトを日本語訳したサイトによれば、見直し論者であるマーク・ウェーバー&アンドリュー・アレン(Weber, Mark
and Andrew Allen)の論文「トレブリンカ」(Treblinka)は、1946年にポーランドの委員会がトレブリンカ絶滅収容所から、20フィート以上もの深さの人間を焼いた灰を発見した、とリポートしている」
というのだが、
「灰はあるのは事実なのだが、それが、何万人分のものが確認されているかといえば、そうではない。」
ということで、
「灰があるのは事実なのだろう?」
しかし、
「『灰があった → 殺人があった』という論理は成り立たない。」
と反論し、ここで、裁判は逆転するのである。
もしかして、橋本さんは、このホロコースト修正主義の動きをウォッチされているのでは? などと思ってしまう。
確かに、事実には、いろいろある。
隠れもない事実 obvious fact 可能性のある事実 potential facts 確証のない事実 unprovable fact 確認された事実 ascertained facts 確立した事実 established truth 証明できない事実facts not susceptible of proof
などなどである。
事実とは、かくも神秘なものである。
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言– –プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–160
2004/12/04 Saturday
2004/12/04
米田雅子さんという方が、「建設帰農の進め」という本を出して、、公共事業縮減に悩む地方の建設業が、新しいパラダイムにもとずく農業に進出することを、各地の事例を交えながら、奨励している。
おりしも、農林水産省も、農業への株式会社進出を、借地を条件に、認める方針に転化した。
確かに、逆転の発想には違いないのだが、その心の一方で、「これはいつか来た道の逆戻りじゃないのか」という疑念も、頭を掠める。
もともと、地方にある中小の土建屋さんのルーツをたどると、戦前の救農土木にたどり着く。
すなわち、農業も地方の土建屋さんも、「これ、もと同根」なのである。
それが、いつの間にか、農村社会に階層構造を生み、片方は、地方で、ベンツを乗り回すような格になりあがってしまっていたのである。
そして、今回の公共事業不況で、彼らは、農の世界に、従業員もふくめ、再び、舞い戻ってきたというわけだ。
この現象をみて、農の世界は、これでは、いつまでたっても、日本経済のバッファーセクター以上のものにしかなれないのかという、挫折感も、あるだろう。
一方で、求心力を失った日本の農村再生の新たな経済的核ともなりうるとの期待感も、一方であるだろう。
曰く言い難し(いわくいいがたし)、なのである。
建設帰農を、真の農村再生の力とするには、もうひとつ掘り下げた議論が必要な気がするのは、私だけであろうか。
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言– –プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–
159
2004/12/02 Thursday
2004/12/02
ワシントンポストのサイトの記事では、日本の財務省が、円高是正為替介入を匂わせても、市場が反応しない理由を次の通り挙げている。
アメリカは、口先だけは、「強いドルを目指す。」等と、スノー長官はいっているが、ブッシュ政権の本音は、かねてから、アメリカ国内製造業者の意図を受けての「弱いドル」重視政策であり、日本との協調介入の気などさらさらない。
必然、日本は、ヨーロッパ中央銀行との協調為替介入があるとの意思を示すのだが、市場は、ユーロでの為替介入は、2000年以来ないということを知っている。
おまけに、ポンド圏での景気回復は目覚しいものがある。
だから、日本がいかにヨーロッパ中央銀行との協調介入があるといても、市場は、お手並み拝見と、日本の介入の出かたを待つだけである。
以上がもワシントンポスト紙の観測だ。
日本は、今年の3月以来、介入をストップしたままである。
これまでの溝口前財務官時代の野放図な為替介入によって、巨額の為替介入を続けたあげく、残ったのは、膨大な外国為替資金証券と、それに見合いの米国債であった。
そのことへの反省もある。
今回の円高は、当分続くと覚悟したほうがよさそうだ。
日本の為替介入については、以下のサイトもご参照。
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=85
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=33
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言– –プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–
158
2004/12/02
財務省は1日、既に発行した国債の利払い費が金利上昇によって増大するリスクを抑制するため、金利スワップ取引を2005年度下期から実施すると発表した。08年度に大量の国債償還が予定されていることから、スワップ導入で将来的な利払い費の軽減を狙う。初年度は2000億〜3000億円程度の取引を予定している。
というものなのだが、どんなこと?
ってことだが、金利スワップというのは、元本関係なく、利子分について、固定金利から、変動金利へ、あるいは、変動金利から、固定金利へ、と、利払いを軽減させるために、スワップ先が、利子分を交換して、つなぐことだ。
この場合は、国債の金利の支払いだから、国が、国債保有者に対して、約定利率で支払うのを、将来の利払い増加に対処して、平準化するためのものだろう。
国は、スワップ契約先に対して、固定金利を支払って、LIBOR(ライボー) 6ヶ月もの変動金利で、金利を受け取り、その分を国債利払いに当てる。
LIBORと国債利回りの差をTEDスプレッドというが、この差は、長期的には、安定しているので、変動金利と固定金利との差は、長期的には、均衡するので、スワップ契約先も国も、ヘッジで損することはないようだ。
–HOME—オピニオン—提言—情報・解説—発言– –プロフィール—-著書—行動—図書館—-掲示板–
157
2004/11/28 Sunday
2004/11/28
東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会議のためにビエンチャンを訪れている町村信孝外相は28日、記者団に対し、中国への政府開発援助(ODA)について「ASEANの中にも、タイのようにODAから卒業している国もある。中国だから特別に供与するということにはならない」と述べ、見直しに積極的な考えを示した。
また、小泉純一郎首相も、28日夜、ラオスの首都ビエンチャン市内のホテルで同行記者団と懇談し、中国への政府開発援助(ODA)について「中国は目覚ましい経済発展を遂げている。もう卒業の時期を迎えているのではないか」と述べ、対中国ODA打ち切りの可能性に言及した。
一方、中国の李肇星外相は27日、「中国国民は自国の力、知恵、決意、自信だけに頼る必要がある」と述べ、自力で国家を発展させることができる、との認識を示した。
というのだが。
この町村発言は、2002年10月9日にタクシン首相が、「タイは日本のODAに関心を持っていない」と発言したことに対する、間接的な意趣返しのようなものであろう。
この発言については、たまたま、私のサイトで、仮訳を起こしていたので、念のため、もう一度、そのタクシン首相の意図を確認してみよう。
タクシン首相は、このとき、こうも言っているのである。
「過去において、われわれは、日本や他の国から、多くの援助を得てきた。しかし、今日、タイ国よりも、もっと貧困な多くの国が、援助を必要としていると考えるようになった。タイ国は、まだ豊かとはいえないが、自らの足で自立したいと考えている。」
このときのタクシン首相の表面的意図は、タイに隣接するラオス・カンボジャ・ミャンマーの三国に財政援助を行うことによって、「それらの国での経済的な困難により職を探し、タイ国へ不法入国する経済難民が増えることで、タイ国への負担が増すのを、間接的に軽減しうる」ことにあるとしている。
しかし、そのこと以上に、このタクシン首相の考えの根底には、この発言の一ヵ月半前の2002年8月28日に、ルック・イースト20周年の記念式典で、前マレーシア首相のマハティールさんが、「ルックイースト-日本に学べ-」政策の見直し発言の中で、痛烈な日本批判をしていたことが、ベースにあると見られている。
1992年10月14日、香港で「日本もし、なかりせば」との演説をしたマハティールさんが、10年後にして、それとはまったく反対の意味の演説を、このとき、行ったのである。
この席で、マレーシアの前マハティール首相はこういっている。
「ルックイースト政策の導入後、20年以上が経過したが、発展途上国の中では、もっとも急速な経済成長を見たものの、同時に、われわれのモデルとしてきた日本や韓国において、幾多の困難な問題が発生しており、明らかに、ルックイースト政策の見直しを迫られているのも事実である。
もちろん、今でも、日本や韓国の経済発展の基本理念である政府部門と民間部門との協調による発展の手法についての確信は持ち続けている。
しかし、ルッキングイースト政策は、単に、これらの国の手法を真似するだけなのではなく、これら、日本や韓国がとってきた間違った政策段階の側面についても、学ばなければならないのである。」
すなわち、タイ・マレーシアは、これまでの、「日本に学べ」政策を見直し、自らの力で立つことを模索しようとしていたのである。
http://domino.kln.gov.my/kln/statemen.nsf/018b6d6fcb9d69
dbc8256b3500168b88/16d9211f8d5eeb0848256c2f00091388?OpenDocument 参照
あたかも、ODAをひとつの寄せ餌にして、東南アジア諸国の気を引こうとする時代は、とうに終わったのに、中国に対しても、まだ、それをひとつの外交上の駆け引きの材料にしようとの意図を、小泉・町村発言には感じる。
日本は、もはや、東南アジア諸国の学びの対象とはなっていないし、また、ODAも、外交上で威力を発揮する小道具とは、もはや、なっていないのである。
为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/
Translate
笹山登生HOME-オピニオン-提言-情報-発言-プロフィール-図書館-掲示板