2008/11/01(Sat)
先日「農林中金vs東洋経済」と題したブログ記事を書いたのだが、予想以上のアクセスをいただいた。
で、今日立ち寄ったいつもの本屋の店頭には、こんどは、「日本最大の投資銀行「農林中金」が「第二の住専」になる!」とおどろおどろしく題した週刊誌(週刊現代)が並んでいるではないか。
早速立ち読みしていると、こんな具合だ。
(麻生首相が解散を見送りを決断した背景について、ある自民党幹部は、こう明かす)
「実は、ある大手金融機関が深刻な状況にあるという情報が、麻生首相の耳に入ったのです。そこで首相は、解散を見送ってでも、金融機能強化法改正案の修正を急いだのです。」
(ある全国紙経済部記者がこう明かす。)
「世界的な金融システムが危機を迎える中、株価が急落するあおぞら銀行や新生銀行などの経営不振がささやかれています。しかし、金融当局は、もっと巨大な金融機関の経営状態に注視してきました。それが農林中金なのです。」
(全国紙経済部デスク談)
「(前略)(農林中金は)1986年の特別民間法人化、2001年の農林中央金庫法全面改正によって、事実上の投資銀行を目指してきました。ここ数年は金利の低い国内での運用を縮小し、デリバティブなど海外の金融商品にのめり込んでいきます。『日本最大の投資銀行』といってもいい。ところが、その海外投資が大きく毀損している疑いが浮上しているのです。」
(日銀幹部の話として)
「農林中金の外貨建て資産は23兆円以上あります。ドル建てが約7割、ユーロ建てが約2割、その他の通貨が約1割です。(中略)(6月末時点でBIS基準の自己資本は4兆2504億円だが)現状では、自己資本は、4兆円を割っています。期末の相場を見ないとなんともいえませんが、瞬間最大風速では、債務超過状態になっている疑いがあります。」
(これらの疑問に対して、農林中金の広報部では)
「海外の投資が多いので「紙くずばっかり買っているんじゃないか」とのおしかりもうけますが、基本的には、トリプルA格で、なおかつ、金融資産として裏づけのあるものばかりを購入しています。ですから、評価損は、6月末の時点で、商品区分別評価差額が、4329億円、損失額が49億円です。」
以上が、今日発売の週刊現代の農林中金に関する記事だ。
このなかで、自分の出身行の後輩の言をとらえて何なのだが、問題とすべきは、この農林中金広報部のノー天気な対応ぶりだ。
すなわち、いまだに、いまやバーチャルとなったトリプルA格などというものを神話化して信じていることだ。
このサイト「The Credit Rating Agencies’ Moment of Shame」(恥ずべき時を迎えた格付け会社)では、その辺のトリプルA格付けなどを生み出す格付け会社のいい加減さについて、彼らにとっては、格付けはCash-Cow(金の成る木)であったとし、リスキーな金融商品を投資家を安心させる金融商品に換えるためのゲートキーパーの役割を、これら格付け会社は果たしてきたとしている。
そして、トリプルA格付けは、ティッシュ・ペーパーのごとく(like a kleenex)、使い捨てされたという。
それらの格付けのいい加減さをいまだに知らず、信じているさまは、狐からもらった葉っぱを、いまだ、しっかり握り締めている森の仲間に似たような感じがして、いたいたしくさえおもえるのだが。
ナンピン(難平)買いまがいの投資手法まで駆使しようとしている農林中金の海外投資のずさんな見通しぶりについては、昨年の10月25日付で、すでに、私のブログ記事「はたして「グッド・タイム」なのか?農林中金の値下がりサブプライム関連投資」で、とうに指摘しておいたところだが、それから一年たっても、その危機意識がないままに、理事長以下、依然として、このようなマインドであるということ自体が、気がかりではある。
当ブログの参考ブログ記事
お知らせ: 日本からシカゴのオプション売買ができるためのマニュアル「シカゴ・オプション売買戦略マニュアル」(A4版254ページ、5,900円)をこのたび書き上げ、発刊しました。 内容・目次のご確認やお求めについては、こちらをクリックしてください。 お徳用なダウンロード版-電子書籍PDFファイル(254ページ、3,980円)ご希望の場合は、こちらをクリック してください。 |
---|