2006/04/19(Wed)
与党は18日の衆院議院運営委員会理事会で、来月1日に水俣病公式確認50年を迎えることを踏まえ「水俣病の教訓を世界に発信していく重要性を確認し、悲惨な公害を決して繰り返さない決意を表明する」などとした国会決議案を野党側に提示した。
民主党も大筋で了承する方向で、25日の衆院本会議で採択される見通し。
というのだが、このような形骸化した国会決議を繰り返しても、水俣病患者たちのためには、何の役にも立たない。
むしろ、今緊急に求められているのは、一昨年10月15日に、「水俣病関西訴訟」の最高裁上告審判決で、、「1960年1月以降、水質保全法などに基づく排水規制を怠ったのは違法」とする初判断を示してから、なお、認定基準の見直しがされていない事態の打開を図ることが、政治のつとめと考えるのだが、どうなのだろう?
敗訴したはずの環境省は、依然として、認定基準の見直しにかたくなな姿勢を崩していない。
何をもって、公式確認50年の謝罪の証にするのか?
水俣病裁判第5陣原告弁護団では5月1日の公式確認50年を前に「行政は水俣病被害者と対立する姿勢を直ちに改めるべき」とする声明を発表している。
いってみれば、水俣病についての司法の判断基準と、行政の判断基準とが、ダブルスタンダード化している間で、その間に立っておろおろばかりして、何もできない立法府が、公式確認50年に当たって、何かしなきゃということで、おためごかしの国会決議という通過儀礼で、やりすごそう、ということなのか?
参照
「やはり起こった水俣病ダブルスタンダード訴訟」
「敗訴した環境省は、水俣病認定基準を、この際、改訂すべし」
2006/04/25 追記 今、政治がなすべきこと。
今日の朝日新聞13面の「水俣病」特集よくまとまった記事であった。。
この記事の中で、一昨年9月の関西訴訟の最高裁判決で、司法救済の道が開かれ、末梢神経感覚障害の人には、これまでの行政救済にたよらずとも、司法救済の道が開かれ、以後、ダブルスタンダード訴訟が相次いでいる、というまでは、いいのだろう。
問題は、このどちらの救済措置にもあづかれない、人たち、つまり、1996年5月、村山内閣の「政府解決策」に基づき、関西訴訟原告を除く二千人以上の原告の和解対象者だ。
このときには、次のような医療手帳、保健手帳、棄却の3ランクに選別し、層別対応が行われた。
結果、医療手帳取得者は8,565人、保健手帳が1,187人、棄却1,781人となった。
うち、
医療手帳取得者は、原因企業による一時金260万円と団体加算金行政による医療費(対象者11,000人)(平成17年4月7日の水俣病対策拡充において、療養手当の支給要件緩和と給付上限額の廃止、そして、温泉療養費を支給対象として追加)
保健手帳取得者は、行政による上限内の医療費等の支給(対象者1,000人)(平成17年4月7日の水俣病対策拡充において、給付上限額の廃止と、はり・きゅう施術費及び温泉療養費について条件緩和)
その他は、棄却された。
この「その他」の方1,781人は、皮肉にも、司法救済の道が残されている。
問題は、一時金と医療手帳の取得者と、一時金も無く、医療費一部自己負担(改正前)の保健手帳取得者である。
ちなみに、行政救済の対象者に対しては、水俣病の症状に応じて補償金がAランク=1800万円、Bランク=1700万円、Cランク=1600万円が支払われている。
この方々が、これから司法救済を求めるには、この村山内閣の「政府解決策」和解条件を解消するため、手帳の返還と、このときの一時金260万円(総額22億円)を返還しなければならない。
このあたりに政治的救済の手を差し伸べることが、水俣病50年を迎えての国会決議よりも優先する、政治の勤めなのではないのだろうか。
私自身も、村山内閣に変わる前に、この村山内閣「政府解決策」のたたき台を作った人間だけに、責任は感じている。
2006/05/02 追記 胎児性水俣病の補償上の位置づけなくして、水俣病50年慰霊式の意義なし。
昨日、公式確認から50年を迎えた。熊本県水俣市の「水俣病慰霊の碑」前で、午後1時半から犠牲者慰霊式があり、胎児性水俣病患者の金子雄二さんが、慰霊式で、誓いの言葉を仲間4人と宣言したというのだが、では、この誓いの言葉に対する国の答えは、ありえたのだろうか?
中途半端なお涙頂戴のための胎児性水俣病患者の扱いでは、困るのである。
小池環境大臣は、これら胎児性水俣病患者に対して、慰霊式上で、笑みを漏らして手を振った写真が朝日新聞に掲載されていたが、それですむ話ではない。
おそらく、この慰霊式には、水俣市も、熊本県も、環境省も、絡んでいたはずである。
誓いの言葉の出番に胎児性水俣病患者の出番を許すからには、それ相当の答えを、国なり県は、覚悟と用意をしておかなければならないはずである。
1996年5月、村山内閣の「政府解決策」においては、保険手帳取得者の取得要件としては、「メチル水銀ばく露の疫学条件があり、感覚障害以外の何らかの症状をもっている」ことであり、小児や胎児性患者は、この分類に入った。
しかし、胎児性水俣病は、脳性マヒと紛らわしいために、なかなか、認定されにくく、いまだ、多くのグレーゾーン患者がいることも事実である。
2004年10月15日の最高裁第二小法廷における「水俣病関西訴訟」の上告審判決では、新しい病像論として、「不知火海沿岸の住民で、(手足の先ほど感覚異常が強く表れる)四肢末端優位の感覚障害があれば水俣病」であるとし、その根拠として、「感覚異常の原因は中枢神経(大脳皮質)の損傷」とする中枢説」を認めた判決となっている。
ということは、胎児性水俣病患者についても、「不知火海沿岸の住民で、四肢末端優位の感覚障害」をもつ該当者になりうるはずである。
つまり、「不知火海沿岸の住民」ということが、曝露条件になりうるはずである。
もっと、ジャーナリズムも、行政も、胎児性水俣病患者の存在に対して、はっきりした答えを持って、望まなければ、単なる哀れみの象徴に、彼らを利用しているだけにすぎなくなってしまう。
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