Sasayama’s Weblog


2009/09/11 Friday

アメリカのタミフル耐性ウイルスのヒト→ヒト感染事例の詳報

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 21:49:54

2009年9月11日
 
今日、アメリカのCDCは、「ノースカロライナ州での夏休みキャンプ中に、二人の女性キャンパーの間で、タミフル耐性ウイルスのヒト→ヒト感染(H2H、human to human transmission)があった。」と発表した。

この私のブログでは、これまでに、タミフル耐性ウイルスの世界での事例を、
タミフル耐性ウイルスの世界的な広がりが、H1N1感染死者数を増しているのではないかとの、ニーマン博士の見方
新型インフルエンザ・ウイルスの、どの変異が、今後、懸念されているのか?」
懸念される新型・季節性・両H1インフルエンザ・ウイルスにおけるタミフル耐性変異の同時的・加速的進行
タミフル耐性をもつH1N1新型インフルエンザ・ウイルスがデンマークで発見
などの記事で紹介してきた。

これまでに、世界で、タミフル耐性ウイルスが発見されたのは、はっきりしているものだけでも、20ケースあり、その国別内訳は次のとおりである。

アメリカ 9ケース、
日本 3ケース
香港 3ケース
以下1ケースづつで、
デンマーク
カナダ
タイ
中国
シンガポール
となっている。

なお、これ以外にも、タミフル耐性ウイルスは、確認されているようであるし、一方、ロッシュでは、13ケースにタミフル耐性があったとしている。

今回の事例は、それらとは、いくつかの点で異なる。

つまり、これまでの事例は、孤発的、かつ、変異がH274Yのみの事例であった。

しかし、今回のこのノースカロライナの事例では、キャンプという閉鎖された環境の下で、感染前に、予防的なタミフル投与をしていたにもかかわらず、おなじキャビンにいた二人の女性が、タミフル耐性を持つウイルスに感染し、発症したという事例である。

以下、詳細の今回のケースを見てみよう。

ノースカロライナで行われたキャンプは、1セッション4週間ずつ、2セッション行われ、1セッションと2セッションの間には、合間を取った。

第一セッションは、6月14日から7月10日まで
週末は休みとし、
第二セッションは、7月13日から

それぞれのセッションの参加者は、
第一セッション キャンパー650人、スタッフ350人
第二セッション キャンパー350人、スタッフ300人
であった。

インフルエンザ状の症状は、6月18日に始まり、最後は7月22日に見られた。

これらの症状を示したものは、症状が見られてから7日間、そしてよくなるまで隔離された。

61人の病気をもつキャンパーと4人の病気を持つスタッフ以外の参加者すべてに対して、タミフルか、ザナミビル (Zanamivir)の投与が行われた。

また、6月16日には、医療スタッフが、病気の兄弟を持つ人や、病気の人と同じキャビンにいた人を対象に、そのすべてに、予防的なタミフル、ザナミビル (Zanamivir)の一斉投与が行われた。

二セッションを通して、トータルで、418人のキャンパーと、189人のスタッフが、タミフル75mg、ザナミビル (Zanamivir)5mgを二回分、の投与を受けた。

医療スタッフは、このプログラムを7月24日まで続けた。

ヾ擬A

患者Aには、6月26日から7月5日にかけて、予防的なタミフル投与(1日75mg)がされていた。

7月5日以降に患者Cと濃厚接触
セッション1に入ってからも、同様の量のタミフル投与

7月8日に、咳、頭痛、発熱

7月9日に、寒気、頭痛悪化、軟便(loose stool)
この症状後も、タミフル投与量は同じ

7月10日に、第一セッションが終了したので、いったん家に帰る。家での家族は3人。

7月12日に、第二セッションに出席のため、キャンプに戻る。
このとき、熱はなくなったが、咳はある。
迅速検査でA型感染と判明
この日より、タミフル投与を75mgを一日二回と、倍にする。
帰宅時に接触した家族にザナミビル (Zanamivir)投与を薦めるが、副作用を懸念し、拒否される。
この日より、患者Aは、7月16日まで、他のキャンパーと隔離される。

7月14日、患者Aの咽頭綿棒ウイルス採取

7月22日、確定検査でHN1陽性と判明

8月19日、rPT-PCR検査で、患者Aウイルスに二つの変異があることを確認。
ひとつは、H274Yで、タミフル耐性があることを示す。
もうひとつの変異は、I223Vであるが、この変異がどのような働きをもたらすかは不明であり、また、この変異は、ヒトには、見られず、鳥に見られるものである。
ちなみに、中国の汕頭で、グースに発見されたH5N1ウイルス(A/goose/Shantou/2086/2006 )に、これと同様の変異が見られている。
参考「H5N1 Receptor Binding Domain Changes in Shantou China

患者B

患者Aと同じキャビンにいた。

7月7日 タミフル75mg投与、この日に感染者Cに濃厚接触

7月10日 キャンプを離れ、帰宅

7月11日、 帰宅した自宅で発症、発熱38.8度、咽頭炎、咳、しかし、日常生活はそのまま続け、ショッピングや映画などに時間を費やす。

7月12日、第二セッション参加のため、キャンプに戻る。熱、頭痛、咳、不調、筋肉痛の症状
迅速検査の結果、A型感染と判明。タミフル投与を中止し、ザナミビル (Zanamivir)を1日二回、5mgずつ投与

7月14日、咽頭粘液綿棒採取、この時点では、熱は収まっていた。

7月17日、症状はなくなっている。家にも感染者は出ない。

7月20日、ウイルス感染確定

8月14日、rPT-PCR検査で、ウイルスに二つの変異(H274YとI223V)があることを確認

以上であるが、この事例は、予防的にタミフル投与をしていても、ウイルスのタミフル耐性変異によって、感染阻止ができなかったという事例である。

ただ、この変異が、どの時点で生じたのかについては、よくわからない。

CDCでは、この事例から学ぶとすれば、タミフル投与を継続、または、増量しても、症状が治まらない場合には、タミフル以外の療法に切り替えるべきであるとしている。

ただ、今回のHN1は、もともとアマンタジン耐性を持っている上に、ザナミビル (Zanamivir)については、7歳以下の幼児に対しては、処方が許可されていないため、代替治療の幅は狭くなりうる、としている。

参考
MMWR September 11, 2009 / Vol. 58 / No. 35-Oseltamivir-Resistant 2009 Pandemic Influenza A (H1N1) Virus Infection in Two Summer Campers Receiving Prophylaxis — North Carolina, 2009

 

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