Sasayama’s Weblog


2008/01/13 Sunday

「人間の上気道が、鳥インフルエンザ感染の場所」という正月以来話題の論文

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 19:49:41

2008/01/13(Sun)
 
null正月以来、鳥フル学界を騒がせているのが、「Nature Biotechnology」の2008年1月6号に発表されたマサチュセッツ工科大学(MIT)のSasisekharan氏やAarthi Chandrasekaran氏など8人の学者による「Glycan topology determines human adaptation of avian H5N1 virus hemagglutinin」という論文。

内容は、ざっと下記の通り。

鳥インフルエンザA型ウイルスの血球凝集素(HA)の特性が、鳥類の2-3糖鎖(グリカン)から、人間の2−6糖鎖(グリカン)へと、糖鎖パターン認識レセプターが、アルファ2−3(alpha2-3)からアルファ2−6(alpha2-6)へ切り替わることが、鳥インフルエンザの人への感染と関係しているのではないか、という研究のようである。

これまでの研究では、遺伝子が、これら切り替えの役割を果たしているとしてきたが、今回の研究者達は、これでは、いかに、ウイルスが人への感染に発展するかを説明できないとの問題意識を持った。

そこで、研究者達は、人間への鳥インフルエンザウイルスの感染においては、糖鎖(グリカン)の特定の形や糖鎖(グリカン)のある場所が、このウイルスの2−6糖鎖(グリカン)レセプターへのバインディング能力に関係しているのではないか、との問題意識を持った。

研究者達は、構造上の特徴的な場所を明らかにすることに成功したが、H5N1の2-3糖鎖(グリカン)から、人間の2−6糖鎖へのリンクについては、特定のバインディングがあることは、特定出来なかったという。

この場所は、人間の呼吸器の上気道( upper respiratory tract )にあるとしている。

null上気道における2−6糖鎖(グリカン)は、二つの形をしているという。

一つは、短い円錐状の形をしており、もう一つは、長い傘状の形をしているという。

前者の短い円錐状の形のものは、後者の長い傘状の形のものよりも、数が非常に少ないという。

人間に適応したインフルエンザ・ウイルスは、長い傘状の形の糖鎖(グリカン)にくっつくという。

また、H5N1ウイルスは、主に、短い円錐状の形の糖鎖(グリカン)にくっつくとされ、この短い円錐状の形の糖鎖(グリカン)は、下気道に発見されるという。

人間に適応したH1N1とH3N2ウイルスの血球凝集素(HA)タンパク質は、2−6糖鎖へのバインドがみられたが、H5N1ウイルスの血球凝集素(HA)タンパク質は、2−6糖鎖へのバインドは見られなかった。

このことは、なぜH5N1が、未だに、人間への感染の足がかりを得ていないかを証明するものとなりうるとしている。

これらのことから、H5N1が人間に適応するためには、上気道における長い傘状の形の糖鎖(グリカン)にとりつくことが条件になるという。

今回のこれら研究は、今後の効果的サーベイランスの戦略や、H5N1やインフルエンザA型ウイルスの潜在的な治療介入方法に大きな役割を果たすものと期待されているようだ。

付記 2008/01/14 Nimanさんは、今回のマサチューセッツ工科大学の研究をどうみているのか?

今回のマサチューセッツ工科大学の上記研究における「人間への鳥インフルエンザウイルスの感染においては、糖鎖(グリカン)の特定の形や糖鎖(グリカン)のある場所が、このウイルスの2−6糖鎖(グリカン)レセプターへのバインディング能力に関係している」との研究結果を、recombinomics.comのHenry Nimanさんは、どう思っているのか、気になるところであるが、このようなご見解のようである。

Nimanさんは、かねてから、H5N1の「受容体結合ドメイン」(receptor-binding domain )(RBD)での変異が、ヘマグルチニンをヒト受容体に結合し易くし、人への感染の容易さを決定づけているとしてきた。

このreceptor-binding siteは、HAによって異なり、たとえば、H3ベースでは、amino acids position の 98, 134-138, 153, 155,183, 190, 194, 195、224-229 などとされおり、この receptor binding domain における遺伝子のシーケンスが、人への感染性を決めるものとされてきた。

近時の世界のH5N1の例でいえば、H5ベースでのポジション配列番号で、トルコの227(S227N-注 227において、S-セリン-からN-アスパラギン-に変異したということを表している。以下同様)、イラクの186(N186S)と196(Q196R)、アゼルバイジャンの186(N186R)、エジプトの223(V223I)と230(M230I)での変異が見られている。

Nimanさんは、今回のマサチューセッツ工科大学の研究結果が出ても、このことには、かわりはないとの見解を持っているようだ。

つまり、今回の分析の対象となった変化は、ホストの側の受容器における変化ではなく、H5N1のRBD変化に分析の重点が置かれているということだ。

これまでの分析と今回のマサチューセッツ工科大学の分析との大きな違いは、前者の分析は、「受容体結合ドメイン」(receptor-binding domain )(RBD)が、比較的に高い集中レンジの元にあり、従って、中間のRBD変化を見極めることは難しかったが、後者の分析は、いろいろな「受容体結合ドメイン」の間における中間の差違と関連したRBD変化を見極めることが出来る、としている。

その意味では、後者の分析は、RBD変化の発展過程を見極めるのに適した分析ともいえ、このような中間段階のRBD変化が、結果的には、パンデミックを引き起こしうる大きなクラスターの形成につながってくるものとみられ、この中間的な段階でのRBD変化の見極めが出来ることは、結果的に、大きなパンデミックを防ぐ予防的な措置をとることにつながる、としているようだ。

前者の分析に基づいた場合、ともすれば、ネガティブなデータのみに基づく対策がとられがちなために、そのことは、世界の健康にとって障害を来すものなりかねない、としている。

後者の分析結果は、バインディングのレベルが中間の段階にある過程で、RBD変化を識別しうることに資するとしている。

そして、RBD変化の数量化をすることが、この分析によって可能になるとしている。

RBD変化については、「宮崎県清武町の鳥インフルエンザ問題」をご参照

以上


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