2007/12/25(Tue)
今日の朝日新聞は、JAバンク(農協)の員外利用率が、限度を超えて、違法運用されているとの記事、なにか、このところ、農林中金のサブプライム運用での評価損増加の問題とも、ダブって、そろそろ、農協も、当初の設立の趣旨であるライファイゼン原則に回帰すべきときなのかな、ともおもう。
本来は、弱者のための信用機関が、すでに、強者のための補強信用機関に成り下がっているのではないのか、ということへの疑念でもある。
ライファイゼンの考え方は、イギリスの協同組合原則であるロッジディール原則を始祖として、それが、南ドイツに伝わり、派生した原則であり、「一人は万人のために、万人は一人のために」を旨とする。
今も使われているライファイゼン銀行のシンボル「Giebelkreuz」(農家の切り妻壁にある紋章を象徴したもの。)は、経済危機との戦いと、農家を最前線とした防衛線の構築という意味で、ライファイゼン自身が、シンボル・マークとして選んだものであるといわれている。
参考「Raiffeisen - Philosophie 」
これが、日本の農協原則の母体となり、設立後の農村恐慌時において、社会的役割を発揮することになった。
しかし、戦後の日本の農協は、高度成長のもとでの土地代金の受け皿機関化で、その当初の社会的存在意義は、大きく後退してきた。
今、必要な社会的意義を見つけるとすれば、疲弊した農村地域での新規参入者たちへの起業資金の供給者としての役割、または、環境と農業とを整合化させるための資金供給機関などが挙げられるだろう。
つまり、農村地域において、換金回路の多様化を目的としたダイバーシフィケーション(兼業の多様化)の後押しをしうる資金供給機関としての社会的役割の確保である。
言葉を換えていえば、地方の内発的発展を後押ししうる社会的機能の発揮ともいえる。
それにしても、これらの新スキームで、運用面で、参考になるのは、インドのマイクロ・クレジットの考え方であり、また、ヨーロッパのLEADERスキームの元でのSME( Small and Medium-sized Enterprises )の考え方である。
また、排出権取引と絡めた環境ファンドとの連携も、新スキームの課題になるであろう。
農協段階では、員外利用者への補強機関と成り下がり、上部の農林中金段階では、巨大なヘッジファンドまがいになり下がった日本の農業協同組合に、いま、新しいスキームを吹き込まなければ、未来は拓けないのではなかろうか?
ライファイゼンが、経済危機との戦いのシンボルとして選んだ「Giebelkreuz」が、日本では、他の経済部門からのしわ寄せを助長するために、塩を送るだけの機関と成り下がり、他国の経済と円安に裨益し便乗し資金運用するだけの、「うなだれたGiebelkreuz」しか掲げられない日本の農業協同組合ほど、惨めなものはないだろう。
参考1.日本の農業協同組合の歴史
山梨学院大学堀越芳昭先生のミニ書庫
参考2.EUのLEADERプログラムによる事業例
アグリビジネス・商業
・地元農産物の販売促進(例:販路拡大、流通システム整備)
・農業特産物の生産
・地場産品の付加価値向上(例:農産物加工業、手工芸品の生産振興)
・地場産品を紹介するための情報技術の活用
・デジタル通信
・人材育成、職業訓練、技術研修
・地元企業の改革促進、競争力強化
・企業誘致の促進
・公共/民間サービス分野における新しい取り組み
・特定のテーマでの分野横断的協力
観光業
・旅行者用の新しい宿泊施設の整備
・自炊宿泊施設として活用するための古い農舎の修復
・共同販売、地元の余暇活動、レクリエーション施設
・地元住民と旅行者の交流活動
・当該地域の観光の質を高めるプロジェクト
・全天候型施設への投資など、季節変化への対応
・品質システムの導入など、持続可能な観光業の発展に資するプロジェクト
「欧州連合(EU) の農村振興政策―LEADER 事業―」(国立国会図書館、調査及び立法考査局行政法務課 西川 明子 著)より
参考3.欧州連合(EU)の農村開発政策
参考4.「半定住人口による自然居住地域支援の可能性に関する調査 海外における地域資源保全及び保全施策実態調査 報告書」(農林水産省農村振興局 事業計画課)
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