Sasayama’s Weblog


2007/07/02 Monday

エコツーリズム推進法は, 出来たけど。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 13:10:21

2007/07/02(Mon)
 
null混乱の会期末の参議院で、エコツーリズム推進法が、全会一致、なんらの質疑もなく、委員長提案で可決したのは、まづは、ご同慶の至りといったところなのだろうが、なんとも、いまだに、引っかかるのが、この法律の中で、市町村長が指定できるという「特定自然観光資源」たるものの中身だ。

既に自然公園法などで保護されている対象以外の特定自然観光資源なるものを、条例の制定なくして、公示のみで、市町村長が指定できるというものだ。

この「特定自然観光資源」たるものの概念は、ローカルルールでの判断にゆだねられており、その妥当性を検証しうるスキームが用意されていない。

地元の市町村が組織した協議会が策定する全体構想を、県段階をすっ飛ばして、環境大臣が認定する際に、その妥当性を、間接的に検証する機会があるだけだ。

しかも、この「特定自然観光資源」に指定された区域に立ち入った者に対しては、三十万円以下の罰金が待っている。

いわば、罰則適用となる行為の対象範囲は市町村の恣意性に任せながら、罰則規定は、条例でなく、エコツーリズム推進法規制によっているということだ。

「法の精神」から言えば、どこか、尋常でないものを感じるスキームではある。

また、この三十万円以下罰金というのも、条例における他の罰金規定とのバランスからみて、過重に過ぎる。

ちなみに、条例における罰則の制限については、地方自治法第14条第3項に規定されているが、刑罰規定を設ける場合には、法益侵害の程度、他の法令等において同種ないし類似の違反行為に対して科している刑罰の程度、社会一般の法感情等を考慮して、罪刑の均衡を失することのないようにしなければならないとしている。

つまり、この自然観光資源への侵害については、法益侵害の程度の判断は、ローカルルールによって異なるのだから、自然観光資源の指定を、ローカルルールでの恣意性に任せている以上、罰則の程度を、ローカルルールを考慮しないユニバーサル基準で適用していること自体については、、首をかしげたくなるものがある。

本来、この種の規制は、「横だし条例」によって、処理すべきものとおもわれ、エコツーリズム推進法は、自治体の横だし条例を可能とする大枠のフレームワークの規定にとどめるべきであると思われる。

(参考  「横だし条例」とは、条例で制定しようとする条例の目的は法令と同一であるが、その対象及び事項が異なる場合は、法令が規制の範囲外としている事項について規制する条例であり、その規制事務が地方公共団体の事務である限り、原則として条例制定は可能である。)

あるいは、下記記載の鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律のように、都道府県段階で、既存の法律による保護のない自然観光資源について、客観的判断に基づき、県内でのバランスを重んじ、特例区域を設ける、というのが普通であろう。

いわば、このスキームからいくと、同類の自然観光資源であっても、「特定自然観光資源」として指定された区域では、犬公方的にきつい罰則が適用され、「特定自然観光資源」として指定されない区域では、無罪という事態が生じる可能性がある。

このように、たとえば、同じ県内においても, 二つの自治体にまたがった景観ゾーンなどにおいては、同じ生態系ゾーンにおいて、罰則適用について、一物二価の状態が、出現することになる。

その意味で、一体化したゾーンにおいて, 慣行化した暗黙の入山規定があるなかで行われている、「地域資源を使いながら守る」という地方の実態に合った法体系とは, とても、いえない。

すなわち、地方においては、この法律のいう、「特定自然観光資源」なるものは、「使う」と「守る」というマルチの用途を持ったものなのであり、そのマルチ性があるがために、結果的には、持続的な保存が、古来、巧みに、機能してきているということなのである。

ちなみに、この法律において、市町村が作成した地域ごとの全体構想は、主務大臣の認定を申請することができるが、この主務大臣とは、環境大臣、国土交通大臣、農林水産大臣、文部科学大臣であって、総務大臣は、入っていない。

全体構想策定の段階で県段階をすっ飛ばしているのだから、ということなのだろう。

これらの問題を含め、私は、かねてから、このエコツーリズム推進法についての問題点を、「コモンズ的視点を欠いたエコ・ツーリズムでいいのか?」などで、指摘してきたが、こうして, 議員立法といえども、法律が成立してみると、改めて、このエコツーリズム推進法の問題点について、早急な見直しの必要性を感じるのである。

参考

ローカルな判断による特例の例

鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律

(特定鳥獣に係る特例)

第十四条  都道府県知事は、特定鳥獣が狩猟鳥獣である場合において、当該特定鳥獣に係る特定鳥獣保護管理計画の達成を図るため特に必要があると認めるときは、第三十四条第一項の規定により指定した休猟区の全部又は一部について、当該特定鳥獣に関し、捕獲等をすることができる区域を指定することができる。

第八十三条  次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
二の二  第十四条第一項の規定により指定された区域においてその区域に係る特定鳥獣以外の狩猟鳥獣の捕獲等をし、又は同条第二項の規定により延長された期間においてその延長の期間に係る特定鳥獣以外の狩猟鳥獣の捕獲等をした者


为翻译对汉语, 使用这
http://translate.livedoor.com/chinese/

Translate
http://www.google.com/translate_t

笹山登生HOME-オピニオン-提言-情報-発言-プロフィール-掲示板-ご意見


Google











No Comments

No comments yet.

RSS feed for comments on this post. | TrackBack URI

Sorry, the comment form is closed at this time.