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このサイトを、検索キーワード「H1N1」で訪れた方へ
この記事は、2007/02/13に書かれた記事であり、今回のメキシコ・カリフォルニア豚インフルエンザ問題に対応した記事ではありません。
今回のメキシコ・カリフォルニア豚インフルエンザ問題に対応した記事としては、別に
「肝心のポイントがまだわかっていないメキシコ・カリフォルニアのH1N1豚インフルエンザ問題」
を設けておりますので、そちらの記事をご参照願います。(2009/04/28記載)
2007/02/13(Tue)
これまでの考えが覆されうる研究成果が発表
これまで、 多くの学者は、新型インフルエンザウイルスであるH5N1と、これまでの季節的に流行するインフルエンザウイルスであるH1N1とは、なんらの関係もないと思っていた。
通常のインフルエンザに関するドグマでは、H(ヘマグルチニンたんぱく質)のほうが、 インフルエンザ感染において主要な働きをしていると考えられており、ワクチンの設計においては、Hが重視されている。
それは、『ウイルスについたHたんぱく質が、人細胞の表面にくっつく』とかんがえられているからだ。
ところが、本日、2007年2月13日発行の「PLoS Medicine」に発表された論文「Cross-Reactive Neuraminidase Antibodies Afford Partial Protection against H5N1 in Mice and Are Present in Unexposed Humans 」
(関係論文「Can Immunity Induced by the Human Influenza Virus N1 Neuraminidase Provide Some Protection from Avian Influenza H5N1 Viruses?」も、ご参照)によると、これらのこれまでの考えが覆されうる研究成果が発表されている。
この研究は、St. Jude Children’s Research HospitalのRichard Webby 氏らの研究によるもので、次のような仮説に基づく検証である。
1968年のインフルエンザ大流行は、なぜ、穏やかなものだったのか?
すなわち、Webby 氏らは、毎年、通常のインフルエンザ・ウイルスであるH1N1に、人々がさらされることで、部分免疫ができ、 H5N1への防御となっているのではないか、という仮説を立てている。
さらに、そこから、
「毎年、 H1N1のインフルエンザワクチンをすることで、H5N1に対しても、人間は、抵抗力を持っているのではないのか。
通常の季節的インフルエンザ・ウイルスであるH1N1についてみると、同じウイルスに対しては、何回もかかるが深刻な症状にまで陥ることはないのに対して、新しいウイルスに対しては、 それまでの部分免疫が効力を発揮するのではないか。
そこには、H5N1もH1N1も、ウイルスの表面には、N1(ノイラミニダーゼたんぱく質)という共通のたんぱく質があるということと、関係があるのではないか。
そのために、H5N1に感染した人の60パーセントは、それらの自然免疫によって、深刻な症状になることをまぬがれているのではないか。』
とも、考えられた。
1968年のインフルエンザ大流行のときに、 それまでのH3N2は、H2N2ウイルスにとってかわられ、 それから、11年後まで、H2N2ウイルスが循環してきた。
そのことは、N2部分を共有することにつながることとなり、結果、大流行が防がれてきたと見られる。
その結果、 1968年の大流行は、20世紀におけるインフルエンザ流行の中でも、もっとも、穏やかなものであった。
このことから、人が、 それ以前から、ノイラミニダーゼに曝露されてきたことが、感染を防ぐ効果を持ち、病気の発生を最小化する役割を果たしてきたとの仮説も成り立ちうる。
現在のH5N1感染者の年齢別分布を 見ると、感染者の90パーセントが、40歳まえの人であり、そのことから、40歳以上の人は、その人生において、よりおおく、 H1N1ウイルスにさらされてきたといえる。
ちなみに、WHOによれば、2003年以来のH5N1感染者144例のうち、その50パーセントが、18歳以下の人であり、90パーセントが、37歳以下の人であった。
仮説の背景
H5N1インフルエンザの蔓延は、鳥インフルエンザウイルスへの免疫性の欠如による。
この状態は、ヘマグルチニン介在の免疫に関してありうるが、鳥のH5N1ウイルスのNA(ノイラミニダーゼ)(avN1)や風土性の人間のH1N1のNA(ノイラミニダーゼ)(huN1)は、 同じ血清型に分類されうる。
そこで、研究グループは、人間のH1N1のNA(ノイラミニダーゼ)(huN1)への免疫反応は、H5N1インフルエンザ感染に対して、干渉効果(cross protection )を持っているのではないかとの仮説をたてた。
仮説の検証方法
これらの仮説検証のために、研究チームは、次のような実験をした。
まず、マウスを、半分のグループに分け、
一方のマウス群には、DNAワクチンによって、人間のH1N1のNA(ノイラミニダーゼ)(huN1)に対する免疫性を持たせ、
もう一方のマウス群に対しては、ダミーのワクチンを与えた。
このH1N1を含むDNAワクチンは、現在流行しているA/Puerto Rico/8/34 (PR8)ウイルスの遺伝子結合によって、huN1 (PR8-huN1) を生み出すことによった。
これらの人間のH1N1のNA(ノイラミニダーゼ)(huN1)を含むDNAワクチンを打たれたマウスは、すべて、生き残った。
今度は、 このマウスに対して、鳥のH5N1ウイルスのNA(ノイラミニダーゼ)(avN1)を曝露させた。
H5N1を含むDNAワクチンは、A/Vietnam/1203/04ウイルスの遺伝子結合によって、avN1 (PR8-avN1) を生み出すことによった。
ダミーのプラセボ(偽薬)のワクチン を与えたマウスは、すべて死んだが、さきに、H1N1を含むDNAワクチンを打たれていた マウスのうち大量のウイルスを曝露されたマウス5匹は死に、少量のH5N1を曝露させたマウス5匹は、生き残った。
これらのほとんどのマウスには、人間のH1N1のNA(ノイラミニダーゼ)(huN1)に対する抗体の形成が見られた。
また、何匹かのマウスには、鳥のH5N1ウイルスのNA(ノイラミニダーゼ)(avN1)に対する抗体もみられた。
それから、それらの生き残ったマウスの血清を採取し、これを新たなマウス群に注入したうえで、鳥のH5N1ウイルスのNA(ノイラミニダーゼ)(avN1)に曝露させたところ、 そのすべてのマウスが生き残った。
人間の季節的なインフルエンザウイルスであるH1N1のNと、鳥インフルエンザウイルスのH5N1のNとは異なる。
そこで、同時に、 研究チームは、人間の38人のボランティアチームについて、その血液に、H5N1抗体や、H1N1抗体があるかどうかを検査したところ、
H1N1(A/New Caledonia/20/99 、 A ソ連型H1N1ウイルス)のNA(ノイラミニダーゼ)に対しては、38人中31人に抗体反応が見られ、
H5N1(A/Hong Kong/213/03)のNA(ノイラミニダーゼ)に対しては、8人に抗体反応が見られ、
H5N1(A/Vietnam/1203/03)のNA(ノイラミニダーゼ)に対しては、9人に、抗体反応が見られた。
このことから、研究チームでは、ワクチンに果たすNA(ノイラミニダーゼ)の働きは、 予想以上に大きいものがあると、 結論づけた。
Webby氏は『それは、 非常に弱い防御機構ではあるが、しかし、われわれは、それぞれのウイルスのノイラミニダーゼ(N)の差によらず、 全部のウイルスのNA(ノイラミニダーゼ)に対して、一定の抗体反応が見られたことに、おどろいている』と語っている。
ヘマグルチニン主体のワクチンから、ノイラミニダーゼ主体のワクチンへのシフトはあるのか?
現在の通常のインフルエンザワクチンの主体は、ヘマグルチニン(H)であり、ノイラミニダーゼ(N)への弱い反応性のために、 ノイラミニダーゼ(N)主体のワクチンの生産増強のために、通常のインフルエンザワクチンへの支障を生じかねないことは、避けなければならない、という。
現在の通常の季節的インフルエンザ対応ワクチンにおいて、どれほどのN成分があるかについては、よくわからないという。
また、ノイラミニダーゼの成分については、現在のワクチンではバッチ・バッチによって異なり、標準化がされていないという。
もし、これらの実験成果が、人間にも適用されるようになっても、、 ワクチンメーカーとしては、このノイラミニダーゼの増量化は、コストのかかることであるという。
つまり、このノイラミニダーゼ(N)の抽出をふやせばふやすほど、 今度は、ヘマグルチニン(H)の抽出を減らさざるを得ないという、二律背反が生じてしまうという。
また、 現在のH5N1感染が進んでいる国々では、年取った人々の間では、すでにH5N1の感染が進んでいるものと、Frederick Hayden博士は、 みている。
また、 Vanderbilt University のWilliam Schaffner氏は、 このことによって、毎年の季節的インフルエンザに対応したワクチン接種の重要性が高まったとしている。
さらに、通常のワクチンの大量接種のための鼻噴霧などの新しいワクチン接種の方法もかんがえだされうるとしている。
しかし、このことによって、 通例のSanofi-Aventis SAなどの季節的インフルエンザ対応ワクチンに対して、季節外の膨大な需要を生み出してしまうおそれもあるといえる。
次なる課題は、白イタチなどの動物実験
いずれにしても、今回のマウス実験の結果が、 そのまま、人間の場合にも、通用しうるとは限らない。
当面、 人間の反応によく似ているというFerrets(白イタチ)のような動物にも適用し、今回の実験成果を、これらの動物に対しても、試す必要があると、 専門家はみているようだ。
参考ニュースサイトは、下記のとおり。
「Flu exposure may help protect against H5N1」
「Are some people immune to avian flu?」
「Flu or shots may aid pandemic immunity」
「Some People May Be Immune to Bird Flu, Mouse Study Suggests」
「Study Suggests Possible Bird Flu Immunity」
为翻译对汉语, 使用这
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