2005/09/04
欧州委員会は、低病原性鳥インフルエンザに対応した92/40/EEC司令の見直しを、先月8月28日に、採択した。
これ
http://europa.eu.int/rapid/pressReleasesAction.
do?reference=IP/05/501&format=HTML&aged=0&language=EN
が決議の内容である。
これまでの旧司令(92/40/EEC)の対策の問題点として、次の点が挙げられる。
1.処理コストが高いこと、
2.動物福祉にもとること、
3.ヒト感染鳥インフルエンザの危機が迫っていること、
これらの問題意識の元に、最近の科学的知見に基づき、低病原性鳥インフルエンザの変異を防ぐための対策を盛り込んだのが、今回の新司令だ。
新司令の目的として、次の点が挙げられる。
1.効果的サーベイランスの方法
2.コントロール措置や防止策、
3.健康上のリスク
4.経済的費用
5.社会に対するマイナスのインパクト、
新司令は、この5点を、ともに、最小にする事を目的としている。
ことに、低病原性から高病原性に変異する近年のウイルスの特色を踏まえ、ワクチン接種の鳥と、感染した鳥とのディバイドが、対策のポイントになるとしている。
この新司令は、2007年1月1日から実施することになり、旧司令(92/40/EEC)は、そのときをもって廃止される。
参照
http://europa.eu.int/comm/
food/animal/diseases/controlmeasures/avian/index_en.htm
http://www.forth.go.jp/hpro/bin/hb2141.cgi?key=20050429-0110
http://europa.eu.int/comm/food/
animal/diseases/controlmeasures/avian/
directive_avian_en.pdf
このように、鳥インフルエンザ対策について、EUがこれまでの旧司令(92/40/EC)でのStamping Out(スタンピングアウト、根絶)政策から、新司令に移行したことで、日本の防疫政策方向も、これまでの淘汰一遍やりの政策を変えなければならないようだ。
EU新司令の方向転換の背景には、次のようなものがある。
すなわち、生産サイクルの短期化と、家禽飼育の密集化によって、疫病のコントロール、バイオセキュリティーの確保がしにくくなった、ということ。
さらに、アニマル・ライツに基づいた動物福祉の観点からの大量殺処分に対する疑義が生まれてきたこと。
つまり、人間の健康的視点からは、問題ないのに、なぜ、大量の動物の殺戮が行われるのかということに対する疑念が生じてきたということである。
また、殺処分によって、国民経済的に見ても、膨大なロスと、コストが生じるということである。
それは、同時に、消費者にとってのロスでもあるからだ。
これほど、低毒性ウイルスが蔓延している状態の元では、鳥の健康面から見た場合はともかく、人間の健康を中心に、鳥インフルエンザ問題を考えて見た場合、国内的には、殺処分は、あまり効果があるとは思われないということだ。
そこで、これまでのStamping Out政策のオルタナティブとして、コントロールのオプション政策としてのワクチネーション政策への転換という方向が、生まれてきた。
要約して言えば、今回のEUの在来型のStamping Out(皆殺し)対策からの脱却は、次の考えにもとずくものと思われる。
1.鶏段階での弱毒性のままの状態では、人への影響がない。→2.鶏へのオプションとしてのワクチネーションは、人への影響がない。→3.であれば、鶏の弱毒性のままにある段階で、部分的にワクチネーションで対応したほうが、社会的にも、経済的にも、プラスである。
しかし、ここで、立ちはだかる問題は、貿易上の問題である。
現在、ワクチン接種禁止をしているのが、タイ、韓国などであり、ワクチン接種をしているのが、インドネシア、中国などであり、そのような国々のハザマの中での得失を考えているのが、日本ということになる。
おそらく、日本のワクチネーション政策転換にためらいを見せているのは、この貿易上の問題であると思われる。
これまでは、ワクチネーションによって、自然感染の鳥か、人口感染の鳥かが区別つかなくなるということで、ワクチネーション採用の国は、輸出を拒否され、不利をこうむってきた。
しかし、ワクチンが、在来型の不活化ワクチン(homologous-問題となっている株と同一の亜型をもとに製造したワクチン- とheterologous-H の型は同一であるが N の型が異なる株を用いて製造されたワクチン-)だけでなく、遺伝子組み換えワクチン(recombinant vaccines)が生まれてくるのにあわせて、よりワクチン使用をオプション政策に取り入れた、戦略的な、鳥インフルエンザ対策がとられる時代に入ってきたといえる。
8月5日にこのブログで提案した「低毒性時代の日本の鳥インフルエンザ対策についての、ひとつの提案」http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=429も、今から、結果的にみれば、このEUの新司令と同じような考え方にたっている。
日本の場合、低病原性というのは低毒ではあっても、H5なので、日本の法的な取り扱い上は、高病原性鳥インフルエンザという扱いになるところに、いろいろな問題を引き起こしているように見える。
すなわち、これほど、低毒性ウイルスが蔓延している状態においては、在来型のStamping Out(皆殺し)政策は、有効でないし、社会的・経済的損失も大きいし、低毒性の鶏の段階では、人間への影響がないにもかかわらず、ロスが大きい、ということである。
であるならば、そのオプション政策として、積極的にワクチネーション政策を取り入れたほうがいいのではないか、という問題意識である。
参考-サイト「The use of vaccination as an option for the control of Avian Influenza」http://www.thepoultrysite.com/
FeaturedArticle/FATopic.asp?AREA=HealthAndWelfare&Display=121は、上記に書いたような方向転換について、わかりやすく書かれている。
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