Sasayama’s Weblog


2009/12/10 Thursday

赤松農相「秋田を戸別所得補償から外す」トンデモ勘違い発言のソースは?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 08:21:11

2009/12/10(Thu)
 
一昨日から、物議を醸している赤松農林水産大臣の「秋田を戸別所得補償から外す」トンデモ勘違い発言ですが、どうも、この失言・勘違いの情報ソースは、大潟村の涌井氏の情報にのみよった、非常にバイアスのかかった情報に赤松さんがふりまわされた悲しい結果なんでしょうね。

涌井氏のブログ(12月6日号)などを見ると、赤松発言と軌を一にしているのを見ても、わかりますね。

佐竹秋田県知事も
「農相と11月26日に大潟村で会った時は、連携してやりましょうと話した。その後、何らかの情報の間違いがあったのではないか」
「そのようなことを話した記憶はない。聞き間違いや情報の流れのミスによるのでは」
「農相は間違った情報を基に話していると思う。見守るしかない」
と、その可能性を暗ににじませていますね。
(さすが殿様ですなあ。大人の対応です。)

しかも、官僚非依存なもんだから、それらの発言が、経緯をよく知っている官僚の修正を経ないで、モロに記者会見で出てしまった。

しかし、一時は、農林水産省から秋田県庁に出向した幹部職員は、それこそ、大潟村減反問題担当のごとく、本省との連絡に駆けずり回っていたものなのだが。

今は、知らぬ存ぜぬを決め込むつもりなんでしょうかね?

「大臣、御裸ですよ」といってくれる人がいない。

自爆ってのは、このことでしょうね。

それとも、巧妙に形をかえた官僚の抵抗っていう感じもしますが。

まさに、縁なき衆生は度し難し—、という感じです。

それにしても、涌井さんのブログ記事には、身勝手な論理がちりばめられていますね。

「大潟村は稲作専業農家の村であり、兼業収入が無く農業による収入が全てであり、その収入で生計を立てている。
専業農家であるが故に、生活が維持できない減反面積では減反に参加しようとしてもできないのだ。」

(ふんふん、だから過去に減反破りをした。という理由づけでしょうかね。でも、秋田県の専業農家は、あなただけではなかったのです。そして、それらの他の専業農家は、ちゃんと減反順守してたんです。)

「今までも、大潟村に対してはペナルティとして、秋田県から50%もの減反面積が配分されている。稲作専業農家の大潟村が、50%もの減反面積でどのようにして生活をしていけというのか。普通でもコスト高の農業経費が2倍の経費増になる。」

(ここからは、減反破りをした結果としての論理となっていますね。
「減反破りをした結果、ペナルティが課せられたため、コスト増により、生活できなくなっている。」という論理ですね。
ここは、自己責任の範囲と思うんですけど。)

「しかし、赤松大臣は、これからの農政は、ペナルティは課さないと約束された。
赤松大臣の発言により、大潟村の農家の多くは新しい農業政策に参加する方向性を決めた。」

(「ペナルティを課せられなければ、やっていけるので、大潟村のヤミ米派は、減反遵守に切り替えて、戸別所得補償対象の要件を整えて、新しい農業政策に参加する方向性を決めた」という論理ですね。
では、過去の減反破りをした責任というのは、それで免罪されると勘違いされているんでしょうかね。)

この論理では、ペナルティという言葉が、パラメーター(中間項)になっていて、過去の減反破りを正当化する小道具につかわれてしまっていますね。

赤松さんは、ペナルティの解除を言うと同時に、過去の減反破りは、コンプライアンス違反であった、と、しっかり言わなかったから、このような論理のすり替えを涌井さんに許してしまうことになっているのです。

そして、秋田県内の、これまで減反遵守をしてきたおおくの農家の怒りを、いまや、赤松さんは、買っているのです。

ましてや、本来は減反破りの被害者である秋田県なり秋田県内一般農家を加害者呼ばわりするのは、筋違いもいいところですね。

明らかに大臣失格です。

ご参考
赤松農相が大潟村に謝罪というが、おかしくね?」

追記 ここがポイント『秋田県にだけ、なんで、農水省幹部が訪れたの?」

つまり、12月8日、急遽、食糧部長などを秋田県だけに派遣したのは、赤松大臣の謝った認識と指示のもとにおこなわれたのかどうか?ということが、ポイントになりますね。

これについて、12月10日の山田副大臣の記者会見では、こんなやり取りがかわされています。

まあ、当人たちはいろいろ苦しい弁解をしていますが、これらのやり取りから透けて見えてきていることは、赤松大臣がバイアスのかかった情報をまともに受けて、その『うわさ』程度の情報を元に、総合食料局食糧部長を秋田県だけに急遽ブラフのために行かせた、というのが、どうも真実のようですね。

政務三役会議なんて、なにやってんでしょうね。

ゲーペーウー(GPU)ごっこでもやってるのでしょうかね(www)

以下の会見の様子(山田:荒川部長、言っていないよな?→荒川:今、副大臣がおっしゃったとおりでございます。)だと、荒川隆総合食料局食糧部長も口裏あわせの同罪ということになってしまいそうなのですが。(秋田県庁から、そのときのやり取りの詳細は、いずれ、明らかにされるんでしょうから。覚悟すべし。)

以下は記者会見のやりとりから

山田副大臣
大臣も、その趣旨で、我々、三役、今まで、きているんですが、たまたま、秋田県側で、非常に、ペナルティーを外してはいけないというような、そういう一部の声があるというお話を聞いた時、まあ、大臣が、そんなことじゃ、困るじゃないかと、仮に、そんなことがあったら、仮にですよね、交付金そのものも、所得補償の、それは、あり得ないわけじゃないなという言い方を、たしかに、我々、政務三役会議で、大臣が、仮にと、あくまで、仮に、という話をしたので、私ども、農水省、政府側としては、あくまで、やっぱり、秋田県内において、双方が、納得のいくような調整をしていただきたいということで、荒川(総合食料局食糧)部長にも、昨日、秋田の方に飛んでもらって、そういう、納得のいく説明を、私ども、農水省としても、丁寧に丁寧にやらせていただくつもりでおります。

記者
そうすると、あえて、総合食料局の幹部、食糧部長とか、要職の方を、秋田県に行って県の農林水産部長とお話をさせたというのは、なぜなのかとか、どういうお話を県側にはされたのでしょうか。

山田副大臣
いわゆる、今回の国の方針と言いますかね、今まで、大潟村についても、ペナルティー科してきたわけでしょう。しかし、今回、我々は、ペナルティー科さないとなったけれど、かといって、不公平感がないような形での調整というのをつけてもらいたい、そういう趣旨を、県側に伝えたいということから、行ってもらったということです。

記者
要は、さっきの、外すこともあり得るよ、みたいなことを言いに行ったわけではないのですか。

山田副大臣
いえいえ、そういうわけじゃありません。

記者
それは、言っていないのですね。

山田副大臣
はい。それは、荒川部長、言っていないよな?

総合食料局食糧部長
もともと、前々から、これでございます。各県に丁寧にご説明をするようにというご指示でございましたので、そういうことで、私が参ったということでございます。今、副大臣がおっしゃったとおりでございます

山田副大臣
私も、各都道府県から、課長クラスとか、課長補佐クラスかな、集まって生産数量目標を割り当てた時に、皆さんにお話しした時に、ペナルティーを今回は外させていただきますという話をして、その時も、ある程度の納得いただけたと、そうは思っているんですがね。そういう意味では、調整の難しい県には、できるだけ出かけて行って、丁寧に説明して欲しいと、今、言っているところです。

記者
ちょっと、くどいですけれども、大臣のご発言の中で、やっぱり県の知事とか幹部が、制度の理解が足りないようだという趣旨のことをおっしゃってたようなんですが、副大臣自身の今のご認識では、いろいろな各地の中で、秋田県のところだけ、制度に対する理解が甘いんじゃないかとか、あまりきちんと分かってないんじゃないかとか、そういうご認識は、副大臣はお持ちなんですか。

山田副大臣
いえ、別に持っておりません。それは、各都道府県担当者に、私からも、今回の制度の説明はしておりますし、そういう、秋田県だけ特別に理解してないという気持ちは、私どもには、ありません。

記者
秋田の話に戻るのですけれども、先ほどの荒川部長のお話ですと、一般的な説明の、各都道府県を訪れる一環として行ったというようなニュアンスに聞こえたのですけれども、それだとすると、だいぶ、大臣のおっしゃったのとは齟齬(そご)があるような気がしてならないのですが、何らかの、誰が何を言ったかはともかくとして、どうも秋田の方で制度が誤解されているようだという、そういう問題、秋田固有の問題意識があって派遣されたということではないのでしょうか。

山田副大臣
先ほどから言っているように、仮に、もし、我々の原則に反してペナルティーを科すようなことのないようにと、そういう意味で行ったもので、それはね。そういうことも説明してきたんじゃないかと、そう思ってます。

記者
いや、なぜ、わざわざ食糧部長を秋田に派遣されたのかという話なんですけれども、その発端には、やっぱり何かしらの問題意識があって、仮にと、おっしゃいますけれども、どうも何か県の側でこういう動きがあるようだとか、こういうふうに誤解されているようだとか、分かりませんけれど、何らかの問題意識があって派遣したということではないのでしょうか。

山田副大臣
県の側だって、そこは、定かに聞いていませんが、たしか政務三役会議の時には、秋田県においては、大潟村の生産調整について、今まで全く非協力的な農家に対しても配分するということはけしからんという声が、かなり湧いているという話が、政務三役会議の中であったんじゃないかと、そんなこともあって、大臣が、ああいう発言になり、部長も、丁寧に、秋田県に我々の趣旨を説明に行った、というところじゃないかと、そう思っておりますが。

記者
地元でどうもそういう話があるようだということで行かれたと。

山田副大臣
うん。はい。

記者
そうすると、ペナルティーを、2010年産米の配分で科そうとしていたという大臣の発言で、県側は、それは全くないと言っていますけれども、副大臣は、それは、事実、科そうとしていたということは、事実だったとお考えなのでしょうか。それとも、そういう事実はなかったと考えているのでしょうか。

山田副大臣
私はね、そういうことが大潟村であっているようだというのは、噂程度の話が、政務三役会議の中で出てきたんじゃないかと、秋田県がそう言ったとか、市がそういったとか、そういう、水田調整会議がそう言ったとか、協議会がそう言ったとか、そういう話は聞いていないのですがね。

記者
そうすると、噂程度の話を会見でしゃべられるということは、これは、適切であったのでしょうか。

山田副大臣
まあね、そんな、軽い気持ちで話したと思うのですが、大臣ね。
そういう深刻に、秋田県側に交付金を云々(うんぬん)とかという気持ちはなかったと思いますよ。それは、我々、制度上考えられないことですから。双方が、納得いくように調整して下さいというところですから、政府としてはね。

記者
そうすると、噂程度の話を軽い気持ちでしゃべって、秋田県側は納得いかないと、事実無根だと怒っているといいますか、抗議の意を示しているわけですけども、それに対しては、農水省としては、何のリアクションもとらないということなのでしょうか。

山田副大臣
軽い気持ちでというのはどうだったか、適切ではないかも知れませんけれど、大臣としては、この戸別所得補償に対する思い入れが強いですから、ペナルティーを科さないという方針は貫いて欲しいと、そういう気持ちもあって、ああいう発言に結びついたのじゃないかと、そう思いますがね。

以上

参考 私のブログ記事における大潟村問題記事

秋田県の誰がペナルティを科すといったかについては、結局示せなかった、今日の赤松農相記者会見のみっともなさ
赤松農相「秋田を戸別所得補償から外す」トンデモ勘違い発言のソースは?」
赤松農相が大潟村に謝罪というが、おかしくね?」

 

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2009/12/03 Thursday

WTOの場で、ボエルEU農業委員に戸別所得補償スキームの黄色度を注意されたらしい赤松農林水産大臣

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 14:32:44

2009年12月3日
 
nullWTO閣僚会合に出席してきた赤松農林水産大臣が、12月1日には、分科会に出席したほかウォーカー農業交渉議長やボエルEU農業委員と個別会談したというのだが、そのボエルEU農業委員との席で、ボエルEU農業委員が、日本の新政権が戸別所得補償制度を軸とした新しい政策を検討していることに触れ、WTO協定上、問題にならないかと赤松農相に質問したうえで、「EUのデカップリング政策を参考にしてほしい」と述べたというのだが、これに対して、赤松農相は、「EUをはじめいいところは見習っていきたい。」と答え、、戸別所得補償制度がWTO協定に「心配をかけることがないような配慮は十分にしていきたい」と応じたという。
参考「【WTO閣僚会合・4】2010年妥結「そう簡単ではない」 WTO閣僚会合で赤松農相」

果たして、赤松農相、そのボエルEU農業委員が指摘した真意がおわかりになったのでしょうかね?

つまり、ボエルEU農業委員が「EUのデカップリング政策を参考にしてほしい」といったのは、日本が参考にすべきEUの直接型支払いは、「1992年のMacSharry reforms(Old Cap)と呼ばれているWTO非適合型直接支払い(“compensatory payments” )」ではなくて、「2003年のFischer reform(New Cap)と呼ばれる、Old Capの見直しによって生まれたWTO適合型直接支払い(”decoupling’ payments “)である。」ということなのですね。

ところが、日本の新政権が目指しているという戸別所得補償は、「完全に生産からニュートラルなデカップリング」のスキームではないものですから、ボエルEU農業委員が心配したということなんではないでしょうか。

それとも、ひょっとして、ボエルEU農業委員、私のサイト「私が農林水産省に提出した戸別所得補償制度に関する意見の全文」でもみたんでしょうかね?

アメリカのUSDRもEUも、よく、私のサイトを訪れることあるもんで。

日本の戸別所得補償制度のスキームが、国辱もののスキームとならないことを切に願うばかりです。

ちなみに、ボエルEU農業委員は、OldCAPをヘルスチェックし、NewCAPに仕立て上げた立役者です。

OldCAP(MacSharry reforms)に対する批判は、大きく二つあって、第一は、財政負担があまりに大きくなってきていること。第二は、必ずしも、生産に対して、ニュートラルではない。との批判でした。

このサイト「Fischer Boel: Future farm policy ’should bolster production’ 」では、ボエルEU農業委員が、今後のEUの直接支払いの目指すべきは、EUへの新加盟国への支払いの傾斜と旧加盟国の支払いの漸減の必要性、直接支払いから農村開発・環境資源開発への財源のシフトの必要性、直接支払い財源の縮小には一定の調整期間が必要であること、など、今後のEUの直接支払いについての展望と見通しを語っていて、興味深い。

なお、ボエルさんは、今年でEUでの五年の任期を終え、それまでのCommissioner for Agriculture and Rural Developmentの座をルーマニアのDr Dacian Ciolosさんに譲る予定となっている。

参考 ボエル(Mariann Fischer Boel)さんのブログとサイト

ブログ
サイト

EU議会で演説するボエル(Mariann Fischer Boel)さん


 

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2009/11/26 Thursday

赤松農相が大潟村に謝罪というが、おかしくね?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 13:51:13

2009/11/26(Thu)
 
赤松広隆農相が、今日、11月26日の秋田県大潟村の視察において、「大潟村は国の政策に翻弄され、苦労されてきた。国の責任だ」と謝罪したというのですが、赤松さん、まず一番の謝罪の相手を間違ってはいませんでしょうか?

大潟村の過去の減反やぶりで、一番迷惑をこうむったのは、秋田県内の非入植者である一般農家なのです。

そして、その減反破りのそのつど、県内減反調整や県間減反調整(都道府県間調整)で、一番肩身の狭い思いをしたのも、県内一般農家なのです。

おそらく、大潟村の県内入植者もそうだったに違いありません。

なぜなら、県内にある自分の出身の村では、減反順守しているのに、自分が県内入植した大潟村では、堂々と減反破りをしていたんですから。

ですから、もし、「国の政策に翻弄」されたとして、謝るのであれば、大潟村よりも先に、秋田県内一般農家に先に謝るのが筋ってもんではないでしょうか。

なぜなら、大潟村にも、順守派(減反順守派)もいたし、彼らのような非順守派(ヤミ米派=過剰作付け派)もいたわけですから、非順守派のかたがたは、その当時、減反を守らないことにより、一定の機会利益を得ていたはずなのですから。

ですから、この論理ですと、当時のヤミ米派には、この時点でコンプライアンス違反をしていたわけですから、国の不作為は問えませんが、当時、減反を遵守していた農民には、国の不作為を問う権利があるということになってしまいますよ。

それでいいのですか?

当時の順守派は、今日の赤松発言を基にして、国賠訴訟に持ち込みますよ。

赤松広隆農相は、明らかに、謝る順序を間違えているとしかいえません。

これでは、まさに、『正直者が馬鹿を見る』の構図です。

まるで、戦争の開戦・敗戦の責任を、従軍兵に対してでなく、まず、逃亡兵に対して、お詫びで頭を下げているのと、おんなじ構図です。

今回の自主作付け派の戸別所得補償にかける思惑などについては、この土門剛さんのサイト『減反破綻の象徴的舞台となるか大潟村(減反補助金で借金チャラ作戦)』なんかを見るとよくわかってくるかもしれません。

つまり、大潟村の自主作付け派にとって、近時のコメ販売環境の変化で、これまでコンプライアンス違反でスキミングしてきたような優位な販売戦略構築が難しくなってきている中で、ここで減反遵守宣言をし、戸別所得補償スキームになだれ込むことによって、自主作付け路線の転換・撤退費用の原資として、戸別所得補償スキームを累積負債整理のツールとして利用しようとしているのではないか、ということについての疑心暗鬼が、県内一般農家の中にはあるということですね。

このかぎりにおいて、県内一般農家は、またしても、彼らの踏み台にされてしまうというわけです。

たとえて言えば、こんなところでしょうかね?

「マンションの管理組合が、マンション管理費を払っている入居者に限って、これから、管理費を大幅に値下げすると決定したとたんに、これまで、マンション管理組合に管理費を払ってこなかった不良入居者が、これからは、管理費をはらいますよ、といって、急に態度を変化させて、管理組合に入会してきた。じゃあ、これまでの滞納してきた不良入居者の滞納管理費累積分は、利息分も含めて、ここで、チャラにしてしまうの?」
っていう感じでしょうか。
「マンションの修繕積立金の不足分は、これまで、残りの入居者の負担分でまかなってきたのに。」って言うのが、これまで減反遵守してきた秋田県内一般農家の言い分となるのでしょう。

だんだん、怒りがこみ上げてきています。

おそらく、秋田県内一般農家も、大潟村の順守派のかたがたも、同じ気持ちでしょう。

追記 2009年12月9日 自ら進んで秋田県一般農民の心の中にあるトラの尾を踏んでしまっている赤松農相

昨日、赤松農相は、記者会見で、『秋田県を戸別所得補償の対象からはずす』との筋違い発言をされているようです。

赤松さんは、上記の大潟村での自らの軽率な発言で、いったんは封印されかけたパンドラの箱を自ら軽率に開け、秋田県一般農民の忘れかけていたヤミ米派との過去の県内確執をふたたび思い出させ、自ら、事態をややこしくされていることに、まだ、お気づきでないらしいのですが。

以下は、昨日の大臣発言の内容です。(ちょっと、取り留めのない雑談調なので、読みづらいのですが。とくに”あれ”という言葉がお好きのようで、この日の記者会見でも、13回も連発されていますね。
現在のペナルティについては、このサイト「農政改革三対策の着実な推進について」ご参照)

「今日は、ちょっと時間があるんでゆっくり話しますが、
例えば、この間、大潟村へ行ってきたと、
そうすると、大潟村で、あれだけ反目し合っていた人たちが、今、本当に仲良くなって、今まで、減反やってきた人、反対してきた人、それが本当に一つになって、これを機会に和解して、みんなでいい大潟村を作ろうということでなっているんですね。
ところが、県の知事や農政部あたりの、そういう地方の幹部が理解してないと、
今、何を言っているかというと、「いやいや、そんな造反してきた、あれやってきたやつは駄目だ」と、
特に自民党の県議会何か、「あんな涌井(徹)みたいなやつ許せるか」と、「あんな者は今までどおり、割り当ては30パーセントだ」なんていうことを、平気で言っているわけです。
じゃあ、30パーセントで、じゃあ、涌井さんにやれと言ったって、今までは作らない30パーセントだから、そんなものは、10パーセントだってなんだって、関係ないんだけども、今度は決められた生産数量目標を守ると言っているわけですから、守るためには、採算を合わせようと思ったら、これは、まあ、全部、今まで、六十何とかまではいかないにしても、少なくとも、これはもう、両方に言っているのですけれども、今まで、あんた、人のあれをかさ上げして、たくさんもらいすぎていたんだから、これは、ちゃんと減らすので、減りますよと、
しかし、あなたも、一ぺんに、みんなと一緒というわけにはいかないから、いろいろな経緯もあるのだから、まあ、そこそこのところで我慢しなさいよということを、僕は、現地で言ってきたのですけれども、
しかし、そういうことが守られずに、ペナルティーはなしだというのが、この大方針ですから、ペナルティーはこれからもやっていくんだみたいなことを、勝手に、地方のそういう人たちが言っていると
まず、県全体で、大潟村を、まず差を付けて、大潟村の中で、また差を付けて、お前は来ないようにやるんだみたいなことをやっていることがあるものですから
これは、8日って今日だっけ。
今日、担当の責任者を現地に行かせて、もしも、そんなふうでやるんだったら、秋田県全体を、その対象から外しますよと、
生産数量目標を守る人たちも含めて、全部、県全体が、最初から割り当て、違う方向でやっているわけですから、これは法律違反だから、やろうと、まだ決まったわけじゃない、やろうとしたとしたら、これは法律違反になるんで、そういうこともあり得ますよということを、大臣の意思だと言って、はっきり言ってこいと言っておきました。
まあ、理解をしていただければ結果としてそうならないと思いますが、まだまだ、地方へ行くと、時代が変わったと、もう今までの仕組みは、百八十度違うんだということを理解していない人は、残念ながら、まだいるということで、その辺の趣旨を、きちっと理解してもらえるようにやっていくということが、私は必要だと思ってます。
だから、これからが、むしろ、大変だなと思っていますがね。」
http://www.maff.go.jp/j/press-conf/min/091208.html


追記 現在のペナルティの措置の概要

目標未達成の都道府県・地域・農業者への対処( ペナルティ)

( 1 ) 目標を達成したかどうかは、当該地域全体としての主食用作付面積( 全水稲作付面積から加工用米・新規需要米の作付面積を控除したもの) で判定することを基本とする( 作況による生産オーバーが発生した場合は、集荷円滑化対策等で対応)。
ただし、当該地域全体としての主食用販売数量( 総収穫量からくず米・加工用米・新規需要米・区分出荷米の販売予定数量を控除したもの) が生産数量目標の範囲内となっている場合も達成とする。

( 2 ) 2 0 年産の生産調整が目標未達となった都道府県・地域については、
2 0 年産の産地づくり対策が、予定通り交付されないことがあり得る。
2 1 年産の各種補助事業・融資について、不利な取扱いを受けることがあり得る。
2 1 年産の産地づくり対策について、不利な取扱いを受けることがあり得る。
なお、関係者は目標未達成とならないよう全力をあげることとし、未達となった都道府県・地域の具体的な取扱いについては、2 0 年産の生産調整のステージごとの推進状況・達成状況等を見ながら、適切なタイミングで決定する。

( 3 ) 認定農業者であることが要件となっている農林漁業金融公庫のスーパーL 資金については、今後( 平成1 6 年8 月の借用証書変更以降の借入れに適用)、生産調整非実施となったことを理由に認定農業者の認定が取り消された場合には、繰上償還を求めるとともに、農林水産長期金融協会からの利子助成の措置を停止する。
スーパーL 資金以外の政策融資、融資残補助をはじめとする各種政策支援措置については、災害資金など一定の分野を除き、生産調整非実施者をその対象としない方向で検討する。

参考 私のブログ記事における大潟村問題記事

秋田県の誰がペナルティを科すといったかについては、結局示せなかった、今日の赤松農相記者会見のみっともなさ
赤松農相「秋田を戸別所得補償から外す」トンデモ勘違い発言のソースは?」
赤松農相が大潟村に謝罪というが、おかしくね?」

 

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2009/11/19 Thursday

野田財務副大臣が「戸別所得補償制度について麦・大豆先行を示唆」というのだが。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 19:51:56

2009/11/19(Thu)
 
「野田佳彦財務副大臣は19日の記者会見で、マニフェスト(政権公約)の関連予算圧縮で焦点となっている農家への戸別所得補償制度について「本来は(自給率向上を目指す)麦や大豆の方が順番は先だ」と述べ、コメの先行実施を目指す農水省に再考を促す考えを表明した。
麦や大豆の方が予算措置が少なく済むとみられている。」

という記事なのだが、ここには、大きな問題がひとつあって、これまでの地域提案対応型の「産地づくり交付金」の流れ(市町村単位に「地域水田農業推進協議会」設置→「水田農業ビジョン」策定→水田農業交付金運営協会から交付金交付)が、一変してしまい、水田利活用自給力向上事業では、全国一律単価の交付となり、地域での戦略作物へのインセンティブが働かなくなってしまう、という一大重要欠陥が露呈してしまうのだ。

農業関係者の中には、「せっかく、5年前の米政策改革で、単価の設定を地域関係者が戦略的に、自らできるようにしたのに、助成単価の設定に関する地域の裁量権を取り上げ、再び、国に返上させるつもりなのか。」などといきまく筋もあるようだ。

たとえば、ある産地での現在の産地作り交付金の単価は、下記のようになっている。

転作作付10アールあたり助成金額

麦・大麦15000円、
花卉11000円、
果樹6000円、
一般野菜6000円、
景観形成11000円、
飼料作物[産地づくり交付金22000円+新受給調整システム定着交付金16000円])

これが、水田利活用自給力向上事業では、全国一律となってしまうことで、現在、これらの産地では、ようやく定着化したこれら事業の再構築を迫られている、という有様のようである。

水田利活用自給力向上事業では、下記のとおりとなっている

麦、大豆、飼料作物 35000円
新規需要米80000円
そば、菜種、加工用米20000円
その他作物−地域で設定可能 10000円

まだ、単価は、最終決定されていない様だが、生産制限を設けていないという要件からすれば、上記の単価でいけるはずはなく、上記単価をかなり下回ることになるだろう。

このジレンマは、そもそも、新政権の水田利活用自給力向上事業が、品目横断的でもなく、生産制限的でもない、という、性格をもっているがための宿命とも言える。

すなわち、石破茂前農林水産大臣の『米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向』構想にもとずく「減反選択制プラス直接支払い」というスキームから、水田利活用自給力向上事業が逸脱できていないということでもある。

直接支払いという名前がついてはいるものの、それは、ただ、「奨励金的な支払いの形態が生産者へ直に支払われる』というのみの意味のようで、WTO農業協定に定められた直接支払いの定義である「品目横断的であり、生産抑制的であり、生産価格に対しても販売価格に対してもニュートラルな直接支払い」の概念とは、著しく乖離した『イミテーション・直接支払い』のスキームである。

(赤松国務大臣の答弁
 これは非常にわかりやすく申し上げると、戸別所得補償ですから、戸別に直接お金を支払いますよ、交付金を払いますよと。もっと極端に言えば、国の機関であります農政局から、農業者の、これは農協に口座があるかもしれません、郵便局かもしれません、そこに直接支払いますよ、振り込みをしますよということなんです。
 今まではいろいろな団体を通じて払っていましたが、私どもの言っている戸別というのはそういう意味なんです。直接支払いますよ、そういうことなんです。ぜひそういうことで御理解いただきたい。)(www)(まあ、赤松大臣には、大変失礼なのだが、この程度のご認識のようである。嘆かわしい。)

ここいらで、民主党政権の皆さんは、『直接支払い』の真の意味を再確認され、スキームの再構築にあたられたらよろしいのではなかろうか。

水田利活用自給力向上事業が減反選択制スキームの派生物である以上、この野田財務副大臣のいわれるような、コメ問題と転作作物問題とのスキームのツイン切り離し構想はなかなかむずかしく、こっちが決まらなければ、あっちも決められない、といったトートロジーの輪廻に、農林水産省は悩まされることになるのだろう。

ラドヤード・キップリング(Rudyard Kipling)の「東と西のバラード」(“The Ballad of East and West” 1892)になぞらえて言えば、

「ああ、コメはコメ、転作作物は転作作物、この二つが交わることは決してない。
大地と空が神の審判の前に立つ最後のときまで。
しかし、たがいに地の果てから来ようとも、二人の勇者が向かうときには、 コメもなく転作作物もなく、国境もなく、民族や生まれの違いもない!」
(Oh, East is East, and West is West, and never the twain shall meet,Till Earth and Sky stand presently at God’s great Judgment Seat;
But there is neither East nor West, Border, nor Breed, nor Birth,
When two strong men stand face to face, tho’ they come from the ends of the earth!)

まさに、日本においては、麦、大豆、コメは、シャムの三兄弟なのである。

 

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「シカゴ・オプション売買戦略マニュアル」
(A4版297ページ、5,900円、CD-ROM版は4,800円)
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2009/11/11 Wednesday

えっ?戸別補償制度生みの親・篠原さんの嘆き節ですって?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 16:30:20

2009年11月11日
 
おやおや、といったところである。

事実上、戸別所得補償制度生みの親として、自他共に認められる篠原孝さんが、今日のブログでこんな記事を書いていらっしゃる。

参考「民主党の政策論議の場づくり-09.11.11-」

以下、引用

< 歪められた農業者戸別所得補償>

ちょうどその密着取材を受けているとき、私が長年関わってき農業者戸別所得補償が、来年度は米を先行させるモデル事業で5600億円を予算要求することが決まり大変な衝撃を受けた。

私が手塩にかけて育んできた政策が、音を立てて崩れていく。

麦・大豆・菜種・そば・飼料作物といった土地利用型作物に米並みの所得を補償することにより、米の過剰を減らし自給率も高め‥‥と狙っていたのに、米を先行させては何にもならない。

「馬鹿な‥」と声をあげずにいられなかった。このいびつな形の事業(2011年度に1兆円で開始するのがマニフェスト)は既に政府内で 決定されており、我々は関与しようがないのだ。

以上引用終わり

まあ、また、皮肉っぽくなってしまうが、この戸別所得補償制度と、例の自民党政権の置き土産か、地雷か、時限爆弾かはわからないのだが、「減反選択制プラス直接支払い」のスキームが、引き継いだ民主党政権が、その違いも見分けできないままに、幸か不幸か、渾然一体となって、「直接支払いモト゜キ」のような政策スキームとなって生まれてしまったということなのでしょうかね?
(まさか、『だんな、いいスキーム、用意してまっせ』などといって、一見新品に見える亡妻が残した中古品を売りつけたんじゃあないんでしょうね。それとも、「減反選択制プラス直接支払い」スキームは、トロイの木馬だったのかも?)

全中の馬場部長が、公明党との会談の中で、「農家の戸別所得補償というより、生産調整の追加メリット措置の一環としてとらえている」との認識を示したというのだが、さすがに、よくお分かりになっている、と言う感じだ。

つまり、支払い形態のみ『直接支払い」というだけで、WTO農業協定にもとづく『直接支払い』ではないということですね。

石破前農林水産大臣の下に、構築されてきた減反選択制は、
「米の買い支え政策をやめる代わりに、減反に加わるかどうかは、農家の自立的判断に任せ、減反に参加した農家には、これまで減反奨励金に使った資金を、所得補償に振り向ける」
というスキームとすると。

このスキームにおいては、これまでの減反奨励金とトレード・オフとなるのが、戸別所得補償、ということになってしまうのだが。

石破さんの『米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向』の「選択肢3」
によれば、「生産費の低下スピードと生産調整の「緩和」による米価下落のスピードを調和させることにより、財政負担を抑えることが可能となる。」んだそうですが、まあ、このフローティングのような発想は、善意のマーケットメーカーがいなければ、不可能のスキームのようですね。

まさか、空中給油(米価下落のスピード)しながら飛ぶ戦闘機(生産費の低下スピード)を、オタク的に想像しているわけではないでしょうが。

米の卸は、ギリギリ下限を狙って値決めしてくるに違いありませんから、これじゃあ、永遠に給油ポットをつないで、低空飛行しなくちゃならない羽目におちいりそうですね。

(そういえば、いつだか、昔、豚肉の基準価格を決める小委員長を担当していたときに、今はなき江藤隆美先生から、「おまえ、基準価格の相場は絶対事前に漏らすな。差額関税狙いで、すぐ、台湾に電話するやつがいるから注意しとけ。」っていわれて、業界の厳しさを身を持って味わったことがありましたっけ。

この豚肉の差額関税制度とおんなじようなモラルハザードは、戸別所得補償制度においても、容易に発生しえますね。

すなわち、
価格水準にかかわらず交付する定額部分=標準的な生産に要する費用(過去数年分の平均)(家族労働費8割+経営費)
マイナス
標準的な販売価格(過去数年分の平均)

なんですから、農業関連業界では、ある年あたりから定額部分の相場が大体決まってきたら、「標準的な生産に要する費用」関連業界では、定額部分相場にあわせてのすれすれの高い資材の価格増加を狙ってくるであろうし、いっぽう、「標準的な販売価格』関連業界では、定額部分相場にあわせてのすれすれの低い米の卸の値づけをはかってくる、という構図ですね。
すべて、これ、フリーライダーの裨益の民ってことになるんですね。)

日本の米作り農家が、総ポール・プッシャー(pole pusher、点滴スタンドを押しながら歩く人)となる姿は、見たくないものですね。

インセンティイブの根底の精神は関係なく、財源のシフトと表面的なトレード・オフにばっかり頭がいっちまっている器用貧乏的構想ってとこでしょうかね。

その意味では、生産インセンティイブを直接支払いが持ってしまっている。ということになってしまう。

一方、篠原さんが考えているらしいスキームというのは、生産品目間のハンディをイコールフッティングにするためのインセンティブとして、戸別所得補償を考えていた、というスキームなんでしょうかね。

農業内でのダイバーシフィケーション(多様化)(agricultural crop diversification)を実現するために、この戸別所得補償のスキームを考えられていた節が見られますね。

ここらあたりは、いかにも、ご郷里の風土産業論の三沢勝衛さんのお考えに似ていますね。(三沢さんは松本深志高校、篠原さんは、長野高校、関係ないか。)

生産優位性のないものに、下駄を履かせ、ダイバーシフィケーションによる地域活性化を狙う、という意味での、戸別所得補償、ってとこでしょうかね。

これも、篠原さんの専売特許である地産地食へのインセンティブにもなりえますね。

ですと、こちらのほうは、より、デカップリングのほうの考え方に近くなっているようなんですが。

もっとも、これでも、まだまだ、特定作物への誘導ということになって、ニュートラルな直接支払いということにはなりませんがね。

しかも、今回提示された「水田利活用自給率向上」スキームは、真黄色のキ-ですからね。

身内からこのような反論が出てきては、しかも、戸別所得補償制度の生みの親から、このようなクレームなり異論が出てきているんでは、何やら、おぼつかなくなってきましたね。

それにしても、以上に見た例は、インセンティブには、客観的に申し開きができる理屈がとおっていることが必要、という、ことの、好例なんでしょうね。

ボス交感覚で、農政をやられたんでは、たまったもんではありませんぜ。

それと、大臣記者会見で、長年、秋田県で、減反破りをして、”うぶ”で”おぼこ”な秋田県内土着農民を泣かせてきた「あのかたも、戸別所得補償制度に賛同いただいている」、などと、オピニオンリーダー扱いにして、いうことだけは、やめてほしいですね。

どんだけ、あの方に、秋田県農政は、長年、苦しめられて来たんだか—

あのかたの横紙破りで、正直者が馬鹿を見たのが、過去の秋田県農民だど—-
(減反破りをされた面積の帳尻あわせで県内調整を迫られたのは、この県内土着農民だったんですぞ)

それが今はすつかり、戸別所得補償マンセイ派になっちまっている。

これら戸別所得補償マンセイ派がすぐに口にするのは、『日本においても、EU並みの直接補償を』とか『直接支払いをしていないのは、日本だけ』などと、二の次には、言われるのですが、どうも、これらの方は、その当のEUが、1992年のMacSharry reforms(Old Cap)による巨額の財政負担を伴う直接支払いに耐えかねて、すでに2003年のFischer reform(New Cap)とアジェンダ2000によって方向転換(farm support (Pillar 1) と rural development (Pillar 2))をしているということをご存知ないらしいんですね。

つまり、WTOコンプライアンス適合型の直接支払いをしているのは、Fischer reform後のEUだけ。
日本が真似ようとしているアメリカの直接支払いも、EUのFischer reform前の直接支払いも、いずれも、WTO非適合型直接支払いだってことを、ゆめ、お忘れなく。

あーあ。

 

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「水稲共済」の加入者が戸別所得補償の対象者というのだが、ちょっと、理論的におかしいですね。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:47:19

2009/11/11(Wed)
 
農林水産省は9日、10年度から全国で実施するコメ戸別所得補償モデル事業の補償対象となるのは、コメ農家の多くが加入している「水稲共済」の加入者(約180万戸)どあり、未加入者が補償対象になるには、前年度の販売実績を証明する書類の提出が必要となる。

というのだが、ここで思い出されるのは、水稲共済である農業災害補償制度が発足するときのGHQとのやり取りである。

当初、農林省では、農業保険制度としたのだが、「掛け金の一部を国庫が代わって負担する制度を保険とはいわない」とGHQが横槍を入れてきて、「国家が災害による農業被害を補償する制度だから、保険というタイトルは、補償というタイトルに改めるべきだ」ということで、現在の農業災害補償制度という名前に落ち着いたという経緯がある。

なぜ、日本の農業保険が、保険のスキームではなくて、補償のスキームになったかだが、当時の日本列島の農業地帯においては、冷害常襲地帯があって、これらの地帯の農業者にとっては、事故率からいって、保険のスキームが成り立たないという事情から発しているとされている。

しかし、昭和36年から38年頃にかけて、強制加入の掛け金掛け捨てに対する不満が全国的に広まり、その慰撫のために、末端共済組合にも、共済金の一部留保を認める制度改正があり、不満の解消を見たという経緯がある。

で、今回「水稲共済」の加入者というのは、その農災掛け金の一部をすでに国庫が負担しているという意味で、すでに国家によるセーフティーネットがかかっている。

掛金は国がおおむね50%の負担(600億円強)をしている。
(掛け金の国庫負担率 農作物共済 水稲・陸稲:50%、麦:50〜55% 畑作物共済 畑作物:55%、蚕繭:50% 果樹共済 50% 家畜共済 牛・馬:50%、豚:40% 園芸施設共済 50%
その他、共済組合への事務費負担金(約500億円)・ 特別事務費等補助金(6億円程度)がこれにくわわる。)

今回の戸別所得補償制度によって、ダブルの国家によるセーフティーネットが、災害と価格下落との両方にかかるとすれば、あわせて、現在の農業災害補償制度の見直し論がそれに伴わなければならないはずなのだが、どんなもんなのだろう?

価格下落を国家補償するとすれば、災害は、生産者自身の保険金によってまかなう、という理論的整理も成り立ちうるのだが—

なんやら毅然とした原則を無視した私生ルールが、近時の農政には、まかり通っているようである。

 

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戸別所得補償制度の生みの親・篠原孝さんの嘆き節ブログ

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:00:43

2009年11月11日
 
おやおや、といったところである。

事実上、戸別所得補償制度生みの親として、自他共に認められる篠原孝さんが、今日のブログでこんな記事を書いていらっしゃる。

参考「民主党の政策論議の場づくり-09.11.11-」

以下、引用

< 歪められた農業者戸別所得補償>

ちょうどその密着取材を受けているとき、私が長年関わってき農業者戸別所得補償が、来年度は米を先行させるモデル事業で5600億円を予算要求することが決まり大変な衝撃を受けた。

私が手塩にかけて育んできた政策が、音を立てて崩れていく。

麦・大豆・菜種・そば・飼料作物といった土地利用型作物に米並みの所得を補償することにより、米の過剰を減らし自給率も高め‥‥と狙っていたのに、米を先行させては何にもならない。

「馬鹿な‥」と声をあげずにいられなかった。このいびつな形の事業(2011年度に1兆円で開始するのがマニフェスト)は既に政府内で 決定されており、我々は関与しようがないのだ。

以上引用終わり

まあ、また、皮肉っぽくなってしまうが、この戸別所得補償制度と、例の自民党政権の置き土産か、地雷か、時限爆弾かはわからないのだが、「減反選択制プラス直接支払い」のスキームが、引き継いだ民主党政権が、その違いも見分けできないままに、幸か不幸か、渾然一体となって、「直接支払いモト゜キ」のような政策スキームとなって生まれてしまったということなのでしょうかね?
(まさか、『だんな、いいスキーム、用意してまっせ』などといって、一見新品に見える亡妻が残した中古品を売りつけたんじゃあないんでしょうね。それとも、「減反選択制プラス直接支払い」スキームは、トロイの木馬だったのかも?)

全中の馬場部長が、公明党との会談の中で、「農家の戸別所得補償というより、生産調整の追加メリット措置の一環としてとらえている」との認識を示したというのだが、さすがに、よくお分かりになっている、と言う感じだ。

つまり、支払い形態のみ『直接支払い」というだけで、WTO農業協定にもとづく『直接支払い』ではないということですね。

石破前農林水産大臣の下に、構築されてきた減反選択制は、
「米の買い支え政策をやめる代わりに、減反に加わるかどうかは、農家の自立的判断に任せ、減反に参加した農家には、これまで減反奨励金に使った資金を、所得補償に振り向ける」
というスキームとすると。

このスキームにおいては、これまでの減反奨励金とトレード・オフとなるのが、戸別所得補償、ということになってしまうのだが。

石破さんの『米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向』の「選択肢3」
によれば、「生産費の低下スピードと生産調整の「緩和」による米価下落のスピードを調和させることにより、財政負担を抑えることが可能となる。」んだそうですが、まあ、このフローティングのような発想は、善意のマーケットメーカーがいなければ、不可能のスキームのようですね。

まさか、空中給油(米価下落のスピード)しながら飛ぶ戦闘機(生産費の低下スピード)を、オタク的に想像しているわけではないでしょうが。

米の卸は、ギリギリ下限を狙って値決めしてくるに違いありませんから、これじゃあ、永遠に給油ポットをつないで、低空飛行しなくちゃならない羽目におちいりそうですね。

(そういえば、いつだか、昔、豚肉の基準価格を決める小委員長を担当していたときに、今はなき江藤隆美先生から、「おまえ、基準価格の相場は絶対事前に漏らすな。差額関税狙いで、すぐ、台湾に電話するやつがいるから注意しとけ。」っていわれて、業界の厳しさを身を持って味わったことがありましたっけ。

この豚肉の差額関税制度とおんなじようなモラルハザードは、戸別所得補償制度においても、容易に発生しえますね。

すなわち、
価格水準にかかわらず交付する定額部分=標準的な生産に要する費用(過去数年分の平均)(家族労働費8割+経営費)
マイナス
標準的な販売価格(過去数年分の平均)

なんですから、農業関連業界では、ある年あたりから定額部分の相場が大体決まってきたら、「標準的な生産に要する費用」関連業界では、定額部分相場にあわせてのすれすれの高い資材の価格増加を狙ってくるであろうし、いっぽう、「標準的な販売価格』関連業界では、定額部分相場にあわせてのすれすれの低い米の卸の値づけをはかってくる、という構図ですね。
すべて、これ、フリーライダーの裨益の民ってことになるんですね。)

日本の米作り農家が、総ポール・プッシャー(pole pusher、点滴スタンドを押しながら歩く人)となる姿は、見たくないものですね。

インセンティイブの根底の精神は関係なく、財源のシフトと表面的なトレード・オフにばっかり頭がいっちまっている器用貧乏的構想ってとこでしょうかね。

その意味では、生産インセンティイブを直接支払いが持ってしまっている。ということになってしまう。

一方、篠原さんが考えているらしいスキームというのは、生産品目間のハンディをイコールフッティングにするためのインセンティブとして、戸別所得補償を考えていた、というスキームなんでしょうかね。

農業内でのダイバーシフィケーション(多様化)(agricultural crop diversification)を実現するために、この戸別所得補償のスキームを考えられていた節が見られますね。

ここらあたりは、いかにも、ご郷里の風土産業論の三沢勝衛さんのお考えに似ていますね。(三沢さんは松本深志高校、篠原さんは、長野高校、関係ないか。)

生産優位性のないものに、下駄を履かせ、ダイバーシフィケーションによる地域活性化を狙う、という意味での、戸別所得補償、ってとこでしょうかね。

これも、篠原さんの専売特許である地産地食へのインセンティブにもなりえますね。

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もっとも、これでも、まだまだ、特定作物への誘導ということになって、ニュートラルな直接支払いということにはなりませんがね。

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身内からこのような反論が出てきては、しかも、戸別所得補償制度の生みの親から、このようなクレームなり異論が出てきているんでは、何やら、おぼつかなくなってきましたね。

それにしても、以上に見た例は、インセンティブには、客観的に申し開きができる理屈がとおっていることが必要、という、ことの、好例なんでしょうね。

ボス交感覚で、農政をやられたんでは、たまったもんではありませんぜ。

それと、大臣記者会見で、長年、秋田県で、減反破りをして、”うぶ”で”おぼこ”な秋田県内土着農民を泣かせてきた「あのかたも、戸別所得補償制度に賛同いただいている」、などと、オピニオンリーダー扱いにして、いうことだけは、やめてほしいですね。

どんだけ、あの方に、秋田県農政は、長年、苦しめられて来たんだか—

あのかたの横紙破りで、正直者が馬鹿を見たのが、過去の秋田県農民だど—-
(減反破りをされた面積の帳尻あわせで県内調整を迫られたのは、この県内土着農民だったんですぞ)

それが今はすつかり、戸別所得補償マンセイ派になっちまっている。

これら戸別所得補償マンセイ派がすぐに口にするのは、『日本においても、EU並みの直接補償を』とか『直接支払いをしていないのは、日本だけ』などと、二の次には、言われるのですが、どうも、これらの方は、その当のEUが、1992年のMacSharry reforms(Old Cap)による巨額の財政負担を伴う直接支払いに耐えかねて、すでに2003年のFischer reform(New Cap)とアジェンダ2000によって方向転換(farm support (Pillar 1) と rural development (Pillar 2))をしているということをご存知ないらしいんですね。

つまり、WTOコンプライアンス適合型の直接支払いをしているのは、Fischer reform後のEUだけ。
日本が真似ようとしているアメリカの直接支払いも、EUのFischer reform前の直接支払いも、いずれも、WTO非適合型直接支払いだってことを、ゆめ、お忘れなく。

あーあ。

 

お知らせ:

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私が農林水産省に提出した戸別所得補償制度に関する意見の全文

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 08:08:24

2009年11月10日
 
農林水産省で戸別所得補償制度に関する意見の募集をしていましたので、余計なことかとは思いましたが、下記のような意見(原稿用紙換算36枚)を、本日提出しておきました。

ご参考まで、掲載しておきます。

以下、意見の全文

戸別所得補償制度がWTOコンプライアンスに抵触することへの危惧

                                   笹山 登生

今回、 農林水産省から国民に意見を求められている戸別所得補償制度は、その原型を、現在の政権与党の民主党が数年前に掲げた個別(戸別)所得補償制度(後の農業者戸別所得補償制度)においているものとみられます。

この原型が数年前に提示された時点から、私は、この制度のスキームが、著しく、アメリカの当時の2002年農業法における価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCP)に似ているものと想定し、この個別(戸別)所得補償制度が、WTOにおいて、当時から、アメリカの価格変動対応型支払(CCP)が指弾されていると同様、貿易歪曲的な国内対策として、WTOの場で、今後、指弾されるのではないか?との懸念・危惧をもち、いろいろな場面で主張してきました。
ご参照
当時の私のブログ記事「小沢民主党が掲げる個別(戸別)所得補償制度は、貿易歪曲的補助金ではないのか?」
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=653
など。

なお、この当時の価格変動対応型支払は、その後、2008年農業法において「直接・不足払い補助金制度」(The Direct and Counter-cyclical Payment Program (DCP) )になりかわり、従来のスキーム(価格変動対応型支払い+直接固定支払い)にくわえ、 新たに、オプションとして、ACRE支払いが追加されております。

今回、農林水産省から、一枚のペーパーのみの形ではありますが、 正式に「戸別所得補償制度」のスキームが提示され、あきらかになるとともに、私は、ますます、このスキームが、WTOコンプライアンスに抵触することへの危惧・懸念を強めています。

1.戸別所得補償制度のスキーム

今回、 農林水産省ご提示の「戸別所得補償制度に関するモデル対策」を 見る限り、次のようなスキームであると、 解釈されます。

(1).米戸別所得補償モデル事業

米の「生産数量目標」に即した生産を行った販売農家(定義は不明)を対象とし、補償措置を講じる。

A.価格水準にかかわらず交付する定額部分=標準的な生産に要する費用(過去数年分の平均)(家族労働費8割+経営費)
マイナス
標準的な販売価格(過去数年分の平均)

B.補償対象の米価水準=標準的な生産に要する費用

C.補償金額

(A)標準的な生産に要する費用 > (価格水準にかかわらず交付する定額部分+当年の販売価格)
の場合

補償金額=標準的な生産に要する費用−当年の販売価格

(B)標準的な生産に要する費用 <  (価格水準にかかわらず交付する定額部分+当年の販売価格)
の場合

補償金額=価格水準にかかわらず交付する定額部分

「標準的な生産に要する費用」、「標準的な販売価格」、「当年の販売価格」の算定方法については、不明。

(2)水田利活用自給力向上事業

米の「生産数量目標」に即した生産のいかんに関わらず、すべての生産者(定義は不明)を助成対象とし、水田を有効活用し特定品目を生産する販売農家(定義は不明)に対し、主食用米並の所得を確保し得る水準を直接支払いする。

対象品目別に単価(10a当たり)設定

対象品目は
麦、大豆、飼料作物
新規需要米(米粉用・飼料用・バイオ燃料用米、WCS用稲)
そば、なたね、加工用米
その他作物:地域で単価設定可能

2.WTOコンプライアンス判断の前提条件

今回提示された簡単な一枚ペーパーからのみ言えることは、下記の点ではなかろうかと存じます。

(1).「標準的な生産に要する費用」については、「過去数年分の平均」を「家族労働費8割+経営費」などについて、算定すること。

(2).「標準的な販売価格」については、「過去数年分の平均」について、算定すること。

(3).「標準的な生産に要する費用」としながら、中に「家族労働費8割」とあり、一定割合での所得保障でもあること、

(4).米戸別所得補償モデル事業における補償措置は、米の「生産数量目標」に即した生産を行った販売農家を対象とし、水田利活用自給力向上事業による直接支払いは、米の「生産数量目標」に即した生産のいかんに関わらず、すべての生産者を助成対象とし、特定品目を生産する販売農家に対し、行うこと、

(5)「定額部分+アルファ」で補償することはあるが、定額部分の一部をアシキリし補償することはない。

(6)次の項目の要件についての詳細が、示されていない。
A.「販売農家」の定義が不明
B.「すべての生産者」の定義が不明
C.「標準的な生産に要する費用」の算定方法が不明、
D.「標準的な販売価格」の算定方法が不明、
E.「当年の販売価格」の算定方法が不明

前提条件

以上のことから、次のことが言えるかと存じます。

米戸別所得補償モデル事業は、米の「生産数量目標」に即した生産を行った販売農家を対象としている点からは、「生産制限的(production-limiting )」であるといえます。

しかし、「価格の上昇・下降によって、補償金額が上昇・下降」すること、また、「現在の生産が、補償金額と連動」することが、WTOの農業協定のアーティクル6と附属書2に背馳することが懸念されます。

さらに、米に品目を特定している点で、産品特定的(product specific )」であるといえます。

標準的な生産に要する費用の算出において、「家族労働費8割+経営費」とあるのは、WTO農業協定付属書2の中の「7 収入保険及び収入保証に係る施策への政府の財政的な参加」(b) この支払の額は、生産者がこの援助を受けるための適格性を有することとなった年の当該生産者の喪失した収入の七十パーセント以上の額を補償するものであってはならない。」の規定に抵触しえます。。

水田利活用自給力向上事業は、米の「生産数量目標」を守る農家も守らない農家も、対象としている点で、「生産制限的(production-limiting )」ではなく、また、品目を特定(product specific )している点で、品目横断的 (non-commodity specific)ではありません。

「定額部分」 を上回って補償することはあるが、定額部分を下回ることはなく、この「定額部分を上回り補償する部分」についての理論的な説明がありません。

3.アメリカの直接・不足払い補助金制度と、日本の戸別所得補償制度との類似点

アメリカの2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and
Counter-cyclical Payment、2002年農業法でのCCPにおいても価格変動対応型支払いと直接固定支払いについては同様)における「価格変動対応型支払い」「直接固定支払い」「ACRE支払い」の公式は下記のとおりです。
ご参照
私のブログ記事
「覚書-民主党の戸別所得補償制度とアメリカの直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)との違い」
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=1097

(1).価格変動対応型支払い

不足払い額単価(CCP PaymentRate)=目標価格(Target Price)−有効価格(Effective Price)

(2).直接固定支払い

直接支払い額単価(Direct Payment Rate)=定率支払いレート(payment rate )×基準面積(base acres )×農場プログラム産出高( farm program yield)×85パーセント

(3).ACRE支払い

従来の「価格変動対応型支払い+直接固定支払い」のオルタナティブであり、ACRE支払いか、「価格変動対応型支払い+直接固定支払い」かのどちらかを二者択一でえらぶ。
過去作付け実績のない作物に切り替えても、補償額に反映できるようになっている。

ACRE保証額=0.9×過去5年平均州単収×過去2年平均全国価格
           
          但し、5年平均は最大最小の年を除く3年平均 

二つのスキームの類似点

ここで、つぎの公式の置き換えをして見ますと、日本の戸別所得補償方式と、アメリカの2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度との類似度がわかるかと存じます。

アメリカの不足払い補助金制度の「不足払い額単価(CCP PaymentRate)」=日本の戸別所得補償制度の「価格水準にかかわらず交付する定額部分」

アメリカの不足払い補助金制度の「目標価格(Target Price)」=日本の戸別所得補償制度の「標準的な生産に要する費用」

アメリカの不足払い補助金制度の「有効価格(Effective Price)」=日本の戸別所得補償制度の「標準的な販売価格」

4.現在、WTOドーハラウンド交渉でアメリカの直接・不足払い補助金制度の何が問題になっているのか?

歴史的な経緯を述べる前に、 別に皮肉な意味で掲げるわけではありませんが、 2009年3月12日にWTOで開催された「 committee meeting 」での日本側の意見を見てみましょう。
参照
「Committee focuses on monitoring agriculture commitments」
http://www.wto.org/english/news_e/news09_e/ag_com_12mar09_e.htm

ここでの主要議題は、アメリカの直接・不足払い補助金制度の貿易歪曲度についての各国からの意見聴取でした。

ここで、日本側は、オーストラリア、ブラジルとともに、アメリカの直接・不足払い補助金制度に対し、次のような質問をしています。

「アメリカは、今後ともこれらの支払いが、特定の作物に対して、支持を与えるものではないといい続けて、この支払いを正当化するのですか?」

これらの疑問は、これ以前から、たびあるごとに出されるのですが、これに対するアメリカ側の答えは、いつも、一緒で、

「これらの支払いは、過去の生産実績に基づいて支払われており、かならずしも、特定作物の生産者が支払いの受領者となることは、要求していない。したがって、この支払いは、いかなる特定の作物への支払いでもないことを意味している。」

これらのやり取りが、今度は、ブーメランのごとく、日本側にかえってこないことを念じるばかりです。

WTOドーハ・ラウンドにおけるアメリカ側の四つの誤算

現在の2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度のベースとなっている2002年農業法における価格変動対応型支払は、さらに、 それをさかのぼる1996年農業法の不足払いのスキームを引き継いだものですが、WTOにおいては、たびたび、その支払いが、貿易歪曲的な国内価格支持であると、指弾されてきました。

そこで、アメリカUSDAでは、WTOコンプライアンス違反への各国からの非難を、ドーハラウンド交渉で避けるために、次の四つのテクニカルな手段でかわそうとしてきました。

第一は、不足払いを、 「新・青の政策」として、認めさせようとすること

第二は、譲許ベースのカウントと、実行ベースのカウントが、異なることを利用して、黄色の政策から緑や青の政策への、ボックス・シフトを行うこと、

第三は、品目横断を隠れ蓑にした「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」を利用すること、

第四は、2008年農業法において、これまでの直接・不足払い補助金制度のオルタナティブとして、 新たに、ACRE支払い(平均作物収入選択プログラム)制度を もうけたこと

しかし、 このいずれも、これまでのWTOドーハラウンドでの交渉では、各国から、否定されております。

すなわち、第一のアメリカの「新・青の政策」提案は、2004年7−8月合意のフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)でされましたが、その後、 2006年3月22日に、非公式で開かれたコンサルテーション会議において、「従来の青の政策(Old Blue Box)の議論と、今回アメリカ側提案の新・青の政策(New Blue box)とは、隔絶して議論すべき」との意見でまとまりました。

第二のボックス・シフトは、黄色の政策から振り替えられ、水増しされたデミニミスや青の政策のカウントは、譲許ベースではなく、実行ベースでカウントされるため、譲許(約束) 水準での黄色の政策の削減は果たされているが、全体では、ボックス間のやりくりによって、貿易歪曲的国内補助金の総額(全体的削減)は、減額されていない、というトリックです。

黄色のボックスから青のボックスへのボックス・シフト」(box shifting amber box to blue box)または、「補助金の衣替え」(reclassify subsidies)などといわれています。

これを、シーリングと実際適用との間のギャップにある、国内支持政策の水増し(the stretch of water )または、オーバーハング(Overhangまたは、Binding Overhang)といっています。

2005年12月18日の香港でのWTOでの最終合意閣僚宣言(ドーハ作業計画閣僚宣言)のパラグラフ5(On domestic support)において、次のような、「ボックス・シフティング規制ルール」ともいうべきものが付け加えられました。

「貿易歪曲的国内支持全体の削減は、助成合計総量の最終譲許水準、デミニミス及び青の政策の削減の合計の方が全体の削減より小さくても行われる必要がある」

これによって、アメリカのボックス・シフティングを利用した黄色の政策逃れは、誤算に終わりました。

また、これによって、第三の品目横断を隠れ蓑にした「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」利用も、封じられることとなります。

ちなみに、アメリカのボックスシフティングの実態についてですが、 2001年2月届出の黄色の政策(AMS)では144億ドル、ドーハラウンドでは76億ドルと、68億ドル減少していますが、かわりに、デミニミス+27億ドル、青の政策+48億ドル、緑の政策0、となっており、実質的なTDS(AMS(黄色) +デミニミス+ 青の政策)は、 逆に、7億ドルの増加になってしまっているという現況のようです。

第四のACRE支払い(平均作物収入選択プログラム)制度についても、これまでの2002年農業法でのスキーム以上に黄色の政策であるとの批判が高まっています。

FAPRI(Food and Agricultural Policy Research Institute)が昨年8月に予測したACRE支出の数値によりますと、2009年11,683百万ドル、2010年2,283百万ドル、2011年 2,203百万ドル、2012年2,039百万ドル,2013年1,901百万ドルになるとしています。

アメリカのACREも含めた黄色の政策のシーリングが,年ベースで191億ドルですので、いかに、このACREが貿易歪曲的な働きをしているか、ということが、各国からの警戒心につながっているものと思われます。

先にあげた 2009年3月12日にWTOで開催された「 committee meeting 」でも、アルゼンチン、オーストラリア、カナダの代表が、アメリカのACREについて、黄色の政策ではないことについての説明をアメリカ側に求めたましたが、アメリカ側は、実績がまだ出ていないことを理由に、その説明を拒否したといわれています。

このACREが、黄色の政策に分類される理由として、次のことが挙げられています。

「ACRE支払いが、作付けに基づき、作付面積と平均作物販売価格と収量とに基づく限り、WTOでは、農作物価格支持補助金の黄色の政策のカテゴリーに分類される」

5.WTOドーハラウンド決着で国内農業支持政策は、どう、変革を迫られるのか?

WTOドーハラウンドは、2009年9月のG20での各国の首脳の確約(ピッツバーグ・ステートメント)によって、2010年中での決着が合意されたところですが、今後、新たなモダリティ・テキストの新版が出るかどうかについては、微妙な情勢のようです。

すなわち、一部には、合意のため、新しいテキストの必要性を強調している向きもあるようですが、 これまでの合意点を崩さないためには、すくなくとも、昨年12月の第四版モダリティ・テキストをベースに、妥結への議論が進められるであろうというのが、大方の関係者の見方であり、その意味では、ここにいたるまでのWTO内部での論議に、大幅な変更はないものと推測されます。

残念ながら、日本が最重要項目として主張している、―斗徂別椶僚淑な数と柔軟な取扱いの確保、⊂絽卒慇任寮瀋蠢忙漾↓4慇燃篥の新設、についても、2008年12月6日の改訂モダリティ案と大きく変わることはなさそうです。

そこで、 これまでに出ている昨年12月の第四版モダリティ・テキストをベースに、日本への影響を試算してみますと、次のようになるかともいえます。

第四版モダリティ・テキストにおいては、

助成合計総量の最終譲許水準の削減(Final Bound Total AMS)(FBTA)

貿易歪曲的国内支持全体の削減(Overall Trade-Distorting Domestic
Support)(OTDS)

が打ち出されていますが、

Final Bound Total AMS(助成合計総量の最終譲許水準)(黄色の政策)(黄色の削減)

(1).AMSが400億ドル以上は、70%削減
(2).AMSが150億ドル以上は、60%削減
(3).AMSが150億ドル以下は、45%削減

Overall Trade-Distorting Domestic Support(OTDS)(貿易歪曲的国内支持全体の削減)(全体的削減)
注−OTDS=Final Bound Total AMS( 黄色の政策) +デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策 この三つの合計額

(1).OTDSが600億ドル以上は、80%削減
(2).OTDSが100億ドル以上は、70%削減
(3).OTDSが100億ドル以下は、55%削減

となっています。

これに変化がなければ、日本のFinal Bound Total AMSは、2000年約束水準で3兆9729億円(431億ドル)ですので、

階層は、
AMSについては、the top tier、
OTDSについては、the middle tier
該当ということで、

AMSは、70パーセント削減、
OTDSについては、農業総生産額の40%以上であることによる追加的努力分が、+5%加算され、70+5=75パーセント削減、
となりそうです。

そこで、日本の一部に、「これまでの日本の黄色の既存削減枠(いわゆる『貯め』)を、「戸別所得補償制度」の原資に使おう」、と主張される向きもあるようですが、果たして、どうなのでしょう?

2000年約束水準で、日本の黄色の政策は、3兆9729億円、これに「デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策」を加えたのがOTDSですが、2006年では、デミニミス376億円、青の政策701億円となっているようです。

仮に黄色の削減率7割であれば、削減後は
3兆9729億円×30パーセント=1兆2千億円程度(Final Bound Total AMS” ( Amber Box))となります。

しかし、すでに、日本は、2006年時点で、黄色の政策は、5712億円となっており、2000年約束(譲許)水準の14%まで削減しているので、余分に削減している部分は、
30パーセント−16パーセント=1兆2千億円-5712億円=7200億円程度 ということになります。

では、この部分については、今後、あらたに黄色の政策としてつかえるのか?、ということになるのですが、この対象作物を替えないで「黄色の政策から、再び、黄色の政策へ」( “amber to white to re-amber”)のゾンビ的な解釈は、WTOの趣旨からして、通用しないように思えます。

さらに、1995-2000年ベースでの黄色の政策と青の政策とを結合させたCapである「個別産品毎の黄の政策の上限規制」(Commodity-Specific AMS Cap)という品目別AMSの上限があります。
これらは、国別、個別品目別に、モダリティの付属書において一覧表にされます。
これが適用されるとなると、コメ農家救済を主軸としたスキームは、この点からもCombined Capとしての制限を受けうる可能性も大きいといえます。
「個別産品毎の黄の政策の上限規制」(Commodity-Specific AMS Cap)の帰趨如何によって、黄色から黄色への安易なボックス内シフトは、難しくなるのではないでしょうか?

6.WTOドーハラウンド決着後の各国の国内農業支持政策の見直し機運

WTOドーハラウンド決着後は各国の国内農業支持政策は、いずれも、修正を 余儀なくされると思います。

とくに注目されるのは、アメリカのオバマ政権の動きです。

2008年農業法が、ブッシュ政権とオバマ政権との間で誕生したという事情があるにせよ、 ブッシュ政権からの「残された荷物」である、直接・不足払い補助金制度については、ドーハ・ラウンドが決着した時点で、見直したい、という機運が、オバマ政権では、発足当初からあるようです。

オバマ大統領は、2010年予算で、直接支払いのカットを議会に要請したほか、直接支払いの上限を、一人4万ドルに制限すること、CCPについても、6万5千ドルの上限を設けること、その代わりとして、145.000ドル融資限度のマーケティングローンの創設をするなどの対策に乗り出しており、これらのカットにより生じた財源を、環境改善事業などの新興事業部門にシフトさせる考えであるといいます。

この流れからすると、アメリカは、すでに直接支払いの方向から、新しい環境部門への財源のシフトを図りつつあるようです。

これらの動きは、WTO対策であるとも見られています。

すなわち、WTOをいいきっかけにして、巨大な財政支出を伴うこの直接・不足払い補助金スキームを見直したいというインセンティブが強いようです。

日本においても、とくに、品目横断的経営安定対策については、WTOコンプライアンスの点からは、多少の見直しを迫られるのではないかと思っています。

私は、この品目横断的経営安定対策は、WTOコンプライアンスのすれすれを狙った、当時の農林水産官僚の皆様の英知が絞られた傑作であると評価しています。

ただ、この法案提出の時点(2006年6月21日成立)では、アメリカの「新青の政策」が、WTOから認知されるのではないか、との前提がありました。
その後の経緯は、上記のとおりアメリカの「新青の政策」は、認知されませんでした。

品目横断政策には、「げた」部分(生産性条件格差の是正対策)と、「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)の二つがあり、さらに、「げた」部分については、「過去の作付面積に基づく支払い」「年々の生産量等に基づく支払い」がありました。

当時の農林水産省の解釈では、

「過去の作付面積に基づく支払い。」は、現実の生産と関連していないので、緑の政策に該当。いわゆる「緑ゲタ」
「年々の生産量等に基づく支払い。」は、黄色の政策、いわゆる「黄ゲタ」
「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)」は、品目横断的(non-commodity specific)であり、生産調整を伴った「生産制限的(production-limiting )である」との条件の下に、「青の政策」

との見解があったように思えます。

しかし、ドーハ・ラウンドの決着によって、黄ゲタ部分はもちろんですが、緑ゲタについても、「過去の生産にもとずく」との部分が、アメリカ同様、問われかねないし、また、「ならし」部分についても、グレーゾーンの色合いがより強まってくるものと思われます。

7.結論-戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度

以上のことから、戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度を点検してみましょう。

(1)適合度判断の基準

判断の基準をわかりやすく書いたWTOのサイト

WTO「Domestic support」
http://www.wto.org/english/tratop_e/agric_e/ag_intro03_domestic_e.htm
がこの場合、参考になりそうです。

これによりますと

A.緑の政策の条件

政策原資は、消費者からの移転を伴わう原資を含まないものであって、生産者への価格支持効果を持つものであってはいけない。
政策プログラムにおいては、研究プログラムや、トレーニングプログラムなどを含むものとなる。
生産者に対する直接支払いとしては、生産決定につながらないもの(この支払いが農業生産の経営形態や生産量に影響を与えない、デカップリングされたもの)
直接支払いの量が、支払い後の一定期間のあいだ、 生産、価格、 生産要素に、 リンクするものであってはならないこと。
直接支払いを受けても、それによって、生産を要求されるものではないこと。

その直接支払いの意味するところが、次のものに関係している場合には、別の基準によるものとする。

デカップリング所得補助、所得補償、セーフティーネットプログラム、自然災害救助、構造調整プログラムによったもの、環境プログラムによったもの、地方支援プログラムによったもの、

B.青の政策の条件

支払いは、「一定のエリア」「一定の産品」「一定数の家畜」に対するものであること。
支払いは、「一定の期間における生産の85パーセント以下のもの」に対するものであること。
緑の政策が、デカップリングされた支払いすべてを カバーするのに対して、青の政策は、支払いを受けるためには、なお、 生産は必要ではあるが、 現実の支払いは、現在の生産量に、直接、関係するものであってはならない。

C.デミニミス(De minimis)の条件

農業生産額の5%以下の補助については、品目を特定していない国内支持(品目横断的 (non-commodity specific)な助成)であれば、少量であることから、「デミニミス」として削減対象から除外される。

なお、ドーハラウンドでは、これに追加的制約条項が加わる。

(2)戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度判断

上記によって、戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度を点検すると、次のようになりえます。

A.米戸別所得補償モデル事業

米戸別所得補償モデル事業は、「生産制限的(production-limiting )」であるが、「価格の上昇・下降によって、補償金額が上昇・下降」し、「現在の生産が、補償金額と連動」している。

判断

1.緑の政策とは、 まったくいえない。 (理由-「この支払いが農業生産の経営形態や生産量に影響を与えない、デカップリングされたもの」ではない。)
2.現実の支払いが、現在の生産量に、直接、関係しており、また、現実の支払いが、現在の販売価格に、直接、関係しているので、青の政策でもない。(理由-「生産は必要ではあるが、 現実の支払いは、現在の生産量に、直接、関係するものであってはならない。」ではない。)
3.生産制限計画による直接支払いであっても、「一定の面積及び生産に基づいて行われる支払」であるとはみなされえない。(理由-価格と連動しているため「一定」(fixed)とはみなされない。付属書2.6「生産に係る国内価格又は国際価格に関連し又は基づくものであってはならない。」に違反)
3.「標準的な生産に要する費用」の計算方式が明らかにされていないので、アメリカの言い訳である「これらの支払いは、過去の生産実績に基づいて支払われている。」と同様の言い訳が通用しうるのかどうかが、明らかではない。(理由-農業協定6項5項(i)違反の可能性、付属書2.6(b)「生産者によって行われる生産の形態又は量(家畜の頭数を含む。)に関連し又は基づくものであってはならない。」に違反)
4.アメリカの2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度と同様、WTOの農業協定のアーティクル6と附属書2に背馳する部分がある。(理由-該当条項は、 第6条の5項(a)()、付属書2の6(b)、付属書2の6(c)、付属書2の7(b)、付属書2の7(c)などであり、とくに、第6条の5項(a)() )
5.「標準的な生産費用」の中で「家族労働8割」とある。(理由-付属書2の7(b)の「当該生産者の喪失した収入の七十パーセント以上の額を補償するものであってはならない。」に違反)
6.米に品目を特定しているため、産品特定的(product specific )である。(理由-第6条4項(a)()「産品が特定されない国内助成であって、その総額が加盟国の農業生産総額の五パーセントを超えないもの」に違反)

以上のことから、しいて言えば、アメリカが過去に提案した「新青の政策」に近いといえるが、アメリカの不足払い補助金制度においては、不足払い額単価が市場年度内の全米平均市場価格の最高値を上回った場合には、不足払い額単価はゼロになるのに対して、戸別所得補償制度においては、「定額部分+アルファ」の補償が行われるという点などをも含め、アメリカの「新青の政策」よりも、より「黄色の政策」に分類されえる。

B.水田利活用自給力向上事業

水田利活用自給力向上事業は、「生産制限的(production-limiting )」ではなく、また、品目を特定(product specific )している点で、品目横断的 (non-commodity specific)ではない。

したがって、まさに、「黄色の政策」そのものの要件を備えている。

結語-WTO非適合型直接支払いからWTO適合型直接支払いへのシフトが必要-

以上のことから、現にWTOで糾弾されている2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度に極似したスキームである戸別所得補償方式を、日本政府が、ドーハ・ラウンド合意間近いこの時点で、しかも、2010年中にドーハ・ラウンド合意を旨とした先月のG20でのピッツバーグ・ステートメントに、 日本の総理が加わっている以上、このタイミングで、この政策を打ち出すことは、たとえ、近時の世界の 保護貿易主義の台頭によって、WTOの結論が翻弄されることはあるであろうにしてみも、 あまりに、無謀であるといえます。

むしろ、この際、ドーハ・ラウンド決着を前提にしての、オバマ政権がすでに志向し始めているような、農政の環境シフトや、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立といった、パラダイム・シフトが必要のように思えます。

直接払いならどんなスキームでもいいというわけではありません。

WTO適合型直接支払いのスキームもあれば、WTO非適合型直接支払いのスキームもあります。

『日本にも、EU型の直接支払いを導入すべし』とか『直接支払いをしていないのは、日本だけ』論を展開されている政治家の方の想定している「EUの直接支払い」とは、その旧来型のスキームであった、1992年のMacSharry reforms(Old Cap)と呼ばれているWTO非適合型直接支払い(“compensatory payments” と呼ばれる直接支払い)を、ごっちゃにして、いわれている嫌いがあるようです。

MacSharry reformsに対する批判は、大きく二つあって、第一は、財政負担があまりに大きくなってきていること。第二は、必ずしも、生産に対して、ニュートラルではない。との批判でした。

この批判は、今回の日本の戸別所得補償制度にたいしても、そのままの批判点となりえそうです。

直接支払いの先進地域であるEUが、2003年のFischer reform(New Cap)とアジェンダ2000と呼ばれるCAP見直しで目指したのは、まさに、これらのMacSharry reformsに対する批判に応え、CAPをWTO適合型直接支払い("decoupling' payments "と呼ばれる直接支払い)とするための改革であり、その内容は、『直接支払いから単一支払いスキーム』(From a direct payments system to a single payment scheme)への転換でありました。

すなわち、それは、farm support (Pillar 1) と rural development (Pillar 2))とからなるもので、完全に生産からニュートラルなデカップリングと、直接支払いを受け取るすべての農民に対して義務付けられる農地の適正な農業・環境条件の維持についての強制クロス・コンプライアンス、そして、農村開発政策の強化に、財源を、直接支払いを減額してもシフトさせる農村開発戦略から成り立っています。

このように、WTOコンプライアンス適合型の直接支払いをしているのは、Fischer reform後のEUだけであり、日本が戸別所得補償制度によって真似ようとしているアメリカの直接支払いも、EUのFischer reform前の直接支払いも、いずれも、WTO非適合型直接支払いだということを銘記しなければならないでしょう。

日本においても、過去の直接支払いの先進国がたどった直接支払いのもつ、宿命的な財政負担のトラウマから回避するためのスキームを、日本版WTO適合型直接支払いのスキームとして、いまから確立しておく必要があります。

以上

参考1. 戸別所得補償制度が抵触するであろうWTO農業協定 アーティクル6と付属書2の該当箇所一覧

農業に関する協定 第四部

第六条 国内助成に関する約束

4 (a) 加盟国は、次の国内助成を現行助成合計総量の算定に含めること及び削減することを要求されない。
  (i) 産品が特定された国内助成(自国の現行助成合計量の算定に含めるべきものに限る。)であって、その総額が当該年における一の基礎農産品の生産総額の五パーセントを超えないもの
  (ii) 産品が特定されない国内助成(自国の現行助成合計量の算定に含めるベきものに限る。)であって、その総額が加盟国の農業生産総額の五パーセントを超えないもの
 (b) 開発途上加盟国については、この4に定める百分率は、十パーセントとする。

5 (a) 生産制限計画による直接支払であって次のいずれかに該当するものは、国内助成を削減する約束の対象とならない。
(i) 一定の面積及び生産に基づいて行われる支払
(ii) 基準となる生産水準の八十五パーセント以下の生産について行われる支払
(iii) 一定の頭数について行われる家畜に係る支払
 (b) (a)に定める基準を満たす直接支払に係る削減に関する約束の対象からの除外は、加盟国の現行助成合計総量の算定において当該直接支払の価額を除外することによって行う。

第七条 国内助成に関する一般的規律

1. 各加盟国は、農業生産者のための国内助成措置であって、附属書二に定める基準を満たすことにより削減に関する約束の対象とならないものについて、当該基準を引き続き満たすことを確保する。

2. (a) 農業生産者のための国内助成措置(修正されたものを含む。)及び後に導入された措置であって、附属書二に定める基準を満たすこと又はこの協定の他の規定に基づいて削減の対象から除外されることを示すことができないものについては、加盟国の現行助成合計総量の算定に含める。
(b) 助成合計総量に関する約束が加盟国の譲許表第四部に明記されていない場合には、当該加盟国は、前条4に定める該当する百分率を超えて農業生産者に助成を行ってはならない。

附属書二 国内助成(削減に関する約束の対象からの除外の根拠)

5 生産者に対する直接支払
  生産者に対する直接支払(現物による支払及び現に徴収されなかった収入を含む。)による助成であって削減に関する約束の対象から除外されるものとして扱われるものは、1に定める基本的な基準のほか、6から13までに定める直接支払の個別の類型に係る特定の基準を満たすものでなければならない。6から13までに定める直接支払以外の既存の又は新たな類型の直接支払であって削減の対象から除外されるものとして扱われるものは、1に定める一般的な基準のほか、6の(b)から(e)までに定める基準に適合するものでなければならない。

6 生産に関連しない収入支持
 (a) この支払を受けるための適格性は、定められた一定の基準期間における収入、生産者又は土地所有者であるという事実、要素の使用、生産水準その他の明確に定められた基準に照らして決定される。
 (b) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において生産者によって行われる生産の形態又は量(家畜の頭数を含む。)に関連し又は基づくものであってはならない。
 (c) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において行われる生産に係る国内価格又は国際価格に関連し又は基づくものであってはならない。
 (d) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において使用される生産要素に関連し又は基づくものであってはならない。
 (e) この支払を受けるために、いかなる生産を行うことも要求されてはならない。

7 収入保険及び収入保証に係る施策への政府の財政的な参加
 (a) この支払を受けるための適格性は、農業から得られる収入のみを考慮して、過去三年間における若しくは過去五年間のうち収入が最大及び最小の年を除く三年間における総収入(同一又は同様の施策により受けた支払を除く。)の平均の三十パーセントに相当する価額又は純収入を用いて算定した同等の価額を超える収入の喪失があることに基づいて決定される。この条件を満たす生産者は、支払を受けるための適格性を有する。
 (b) この支払の額は、生産者がこの援助を受けるための適格性を有することとなった年の当該生産者の喪失した収入の七十パーセント以上の額を補償するものであってはならない。
 (c) この支払の額は、収入にのみ関連するものとする。この額は、生産者により行われる生産の形態若しくは量(家畜の頭数を含む。)、当該生産に係る国内価格若しくは国際価格又は使用される生産要素に関連するものであってはならない。
 (d) 生産者がこの7の規定に基づく支払及び8の規定(自然災害に係る救済)に基づく支払を同一の年において受ける場合には、これらの支払の総額は、生産者の損失の総額の百パーセント以上であってはならない。

参考2.アメリカがCCPを『青の政策』とする根拠として掲げている農業協定アーティクル6.5(Article 6.5)のドーハラウンドにおける解釈について

アメリカは農業協定6項5項(i)「一定の面積及び生産に基づいて行われる支払」(such payments are based on fixed area and yields)を根拠として、CCPを青の政策として言い張っているが、ドーハラウンド交渉においては、次のようなことになっている。
「WTO agreement on agriculture: The blue box in the July 2004 framework agreement」(Ivan Roberts.abare eReport 2005.4)
http://www.abare.gov.au/publications_html/trade/trade_05/er05_wto.pdf

Extending blue box exemptions to include payments that do not require production and ways that these might be disciplined
(生産することや、規制されるであろう方法を必要としない支払いを含む、『青の政策』の拡大について)

■ Allowing ‘payments that do not require production’ would introduce payments related to prices into the blue box.
(生産を必要としない支払いを青の政策に含めることは、価格に関係した支払いを青の政策に含めることにつながってしまう。)

These payments currently  fall under the amber box. Such a change would make it easier for the United States to ‘achieve’substantial cuts to its amber box payments.
(これらの支払いは、今のところは、黄色の政策に分類される。
上記のような変更は、アメリカにとって、黄色の政策のカットをたやすくしてしまう。)

■ The new blue box provision would allow additional market distorting support and would weaken current WTO domestic support disciplines.
(『新青の政策』条項を設けることは、さらなる貿易歪曲的国内支持を付加することになり、現在のWTOの国内支持規制を弱くさせてしまう。)
It may also enable the United States to meet the Doha Round mandate of achieving ‘substantial reductions in domesticsupport’ without having to change the form or actual level of support to US producers.
(さらに、されは、WTOドーハラウンドにおける『国内支持の実質的な縮減」という命題に、アメリカをして、適合させてしまうことにつながってしまう。)

■ Just stipulating that farmers do not need to produce to receive payments does not mean that those payments will not encourage additional production.
(農民が直接支払いを受けるには、生産することを要しないと規定するということは、それらの支払いが更なる追加的生産を奨励しない、ということを意味するものではない。)

■ If payments are related to prices, such as counter cyclical payments,they are likely to influence production.
(もし、直接支払いが、アメリカのカウンター・サイクリカル支払いのように、価格に関係するものであったなら、)それらの支払いは、生産にたぶんに影響するであろう。)

■ The stipulation of fixed and unchanging bases in blue box criteriain the WTO negotiating agreement will help to limit market distortions arising from growers’ expectations of changing bases in the future.
(WTO農業協定における青の政策の基準である『固定され、変わらないベース』との規定には、生産者が、将来、ベースが変わることを予測しての、市場の歪曲を制限する意味がある。)

■ The weakening of the WTO domestic support rules arising from the inclusion of the new blue box provision (allowing the inclusion of some forms of price related support) could be limited by placing further controls on such support. 
(『新青の政策』条項の新設によって、価格に関連した国内支持が寝青の政策に含まれることを許してしまうことで、WTOの国内支持規制が弱まってしまうことは、そのような支持に対し更なるコントロールをすることに限界を与えてしまう。)

The 5 per cent limit on blue box exemptions
(青の政策に対する5パーセント例外制限について)

■ US counter cyclical payments could be included under the new provision in the negotiating agreement to allow blue box exemptions or payments where no production is required.
(アメリカのカウンター・サイクリカル・ペイメントは、新青の政策の下では、青の政策の例外を認められるものに含まれうるし、また、生産が要求されない直接支払いにも含まれうる。)

Under present legislation these payments would be well below the proposed 5 percent limit.
(現在のWTO規制においては、これらの支払いは、5パーセント限界値以下であろう。)

This is largely because the value of the items receiving support payments constitutes only about 25 per cent of the total value ofUS agricultural production.
(これは、大きく、支持支払い対象品目の値が、アメリカの農業生産の総価値のたった25パーセントとしかないことによるものである。)

So the 5 per cent limit is equivalentto 20 per cent of the value of the supported activities.
(したがって、5パーセント制限ということは、支持行為の価値の20パーセントと等しいということになる。)

Maximum countercyclical payments are estimated at US$7billion a year, which is well below the 5 per cent limit which would vary between about US$9.2 billion and US$10.2 billiona year.
(カウンター・サイクリカル・ペイメントの最大支払いは、一年間70億ドルであると評価されており、これは、一年で、92億ドルから102億ドルの間で、変化しうるなかで、5パーセント制限以下になっているものである。)

Under present WTO provisions, the United States already has the ability to provide payments of over 40 per cent of the value of program crops even without the addition of the new blue boxexemption provision in the negotiating agreement.
(現在のWTOの条項によれば、アメリカは、新青の政策の例外条項を設けなくとも、すでに、 カウンター・サイクリカル・ペイメント・プログラムの対象作物の価値の40パーセントを超える支払い能力を備えている。 )

■ The European Union is currently the largest user of blue box exemptions, with its most recently notified use being around 9 per centof its total value of agricultural production.
(EUでは、現在は、青の政策の例外措置を使用している最大のユーザーであり、最近の数値では、農業生産の総価値の9パーセントを使っていると通告されている 。)

This is well above the proposed 5 per cent cap.
(これは、5パーセント以上の数値である。)

■ Under EU reforms, support is being restructured toward single farmpayments on which the European Union seems likely to seek green box exemptions on the grounds of decoupling.
(EU改革によって、これらの支持政策は、単一支払いに向けて、リストラクチャーされており、EUでの直接支払いは、デカップリング・ベースでの緑の政策での例外措置を模索しているように見える。)

Such a transition could enable the European Union to manage its blue box payments to fall within the proposed 5 per cent cap.
(このような直接支払いの移行は、EUをして、これまでの青の政策を5パーセント以下のキャップにとどませるよう管理することを可能にさせうるものとなっている。)

■ In recent years, EU support levels (as indicated by the Aggregate Measurement of Support) have been markedly below the European Union’s permitted limits.
(最近のEUでの支持レベルは、AMSで示される限り、著しくEUが認められているレベルを下回ってきている。)

This would appear to give the EuropeanUnion flexibility to offer marked cuts to AMS limits in the DohaRound without having to reduce its present levels of nonexempt domestic support.
(このことは、現在での例外とならない国内支持の現在のレベルをこれ以上減らさなくても、ドーハラウンドにおけるAMS制限を著しくカットすることへのオファーに対して、 柔軟に対応できることを可能にしているように見える。)

以上

 

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2009/11/10 Tuesday

私が農林水産省に提出した戸別所得補償制度に関する意見の全文

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 18:26:20

2009年11月10日
 
農林水産省で戸別所得補償制度に関する意見の募集をしていましたので、余計なことかとは思いましたが、下記のような意見(原稿用紙換算36枚)を、本日提出しておきました。

ご参考まで、掲載しておきます。

以下、意見の全文

戸別所得補償制度がWTOコンプライアンスに抵触することへの危惧

                                   笹山 登生

今回、 農林水産省から国民に意見を求められている戸別所得補償制度は、その原型を、現在の政権与党の民主党が数年前に掲げた個別(戸別)所得補償制度(後の農業者戸別所得補償制度)においているものとみられます。

この原型が数年前に提示された時点から、私は、この制度のスキームが、著しく、アメリカの当時の2002年農業法における価格変動対応型支払(counter cyclical payments)(CCP)に似ているものと想定し、この個別(戸別)所得補償制度が、WTOにおいて、当時から、アメリカの価格変動対応型支払(CCP)が指弾されていると同様、貿易歪曲的な国内対策として、WTOの場で、今後、指弾されるのではないか?との懸念・危惧をもち、いろいろな場面で主張してきました。
ご参照
当時の私のブログ記事「小沢民主党が掲げる個別(戸別)所得補償制度は、貿易歪曲的補助金ではないのか?」
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=653
など。

なお、この当時の価格変動対応型支払は、その後、2008年農業法において「直接・不足払い補助金制度」(The Direct and Counter-cyclical Payment Program (DCP) )になりかわり、従来のスキーム(価格変動対応型支払い+直接固定支払い)にくわえ、 新たに、オプションとして、ACRE支払いが追加されております。

今回、農林水産省から、一枚のペーパーのみの形ではありますが、 正式に「戸別所得補償制度」のスキームが提示され、あきらかになるとともに、私は、ますます、このスキームが、WTOコンプライアンスに抵触することへの危惧・懸念を強めています。

1.戸別所得補償制度のスキーム

今回、 農林水産省ご提示の「戸別所得補償制度に関するモデル対策」を 見る限り、次のようなスキームであると、 解釈されます。

(1).米戸別所得補償モデル事業

米の「生産数量目標」に即した生産を行った販売農家(定義は不明)を対象とし、補償措置を講じる。

A.価格水準にかかわらず交付する定額部分=標準的な生産に要する費用(過去数年分の平均)(家族労働費8割+経営費)
マイナス
標準的な販売価格(過去数年分の平均)

B.補償対象の米価水準=標準的な生産に要する費用

C.補償金額

(A)標準的な生産に要する費用 > (価格水準にかかわらず交付する定額部分+当年の販売価格)
の場合

補償金額=標準的な生産に要する費用−当年の販売価格

(B)標準的な生産に要する費用 <  (価格水準にかかわらず交付する定額部分+当年の販売価格)
の場合

補償金額=価格水準にかかわらず交付する定額部分

「標準的な生産に要する費用」、「標準的な販売価格」、「当年の販売価格」の算定方法については、不明。

(2)水田利活用自給力向上事業

米の「生産数量目標」に即した生産のいかんに関わらず、すべての生産者(定義は不明)を助成対象とし、水田を有効活用し特定品目を生産する販売農家(定義は不明)に対し、主食用米並の所得を確保し得る水準を直接支払いする。

対象品目別に単価(10a当たり)設定

対象品目は
麦、大豆、飼料作物
新規需要米(米粉用・飼料用・バイオ燃料用米、WCS用稲)
そば、なたね、加工用米
その他作物:地域で単価設定可能

2.WTOコンプライアンス判断の前提条件

今回提示された簡単な一枚ペーパーからのみ言えることは、下記の点ではなかろうかと存じます。

(1).「標準的な生産に要する費用」については、「過去数年分の平均」を「家族労働費8割+経営費」などについて、算定すること。

(2).「標準的な販売価格」については、「過去数年分の平均」について、算定すること。

(3).「標準的な生産に要する費用」としながら、中に「家族労働費8割」とあり、一定割合での所得保障でもあること、

(4).米戸別所得補償モデル事業における補償措置は、米の「生産数量目標」に即した生産を行った販売農家を対象とし、水田利活用自給力向上事業による直接支払いは、米の「生産数量目標」に即した生産のいかんに関わらず、すべての生産者を助成対象とし、特定品目を生産する販売農家に対し、行うこと、

(5)「定額部分+アルファ」で補償することはあるが、定額部分の一部をアシキリし補償することはない。

(6)次の項目の要件についての詳細が、示されていない。
A.「販売農家」の定義が不明
B.「すべての生産者」の定義が不明
C.「標準的な生産に要する費用」の算定方法が不明、
D.「標準的な販売価格」の算定方法が不明、
E.「当年の販売価格」の算定方法が不明

前提条件

以上のことから、次のことが言えるかと存じます。

米戸別所得補償モデル事業は、米の「生産数量目標」に即した生産を行った販売農家を対象としている点からは、「生産制限的(production-limiting )」であるといえます。

しかし、「価格の上昇・下降によって、補償金額が上昇・下降」すること、また、「現在の生産が、補償金額と連動」することが、WTOの農業協定のアーティクル6と附属書2に背馳することが懸念されます。

さらに、米に品目を特定している点で、産品特定的(product specific )」であるといえます。

標準的な生産に要する費用の算出において、「家族労働費8割+経営費」とあるのは、WTO農業協定付属書2の中の「7 収入保険及び収入保証に係る施策への政府の財政的な参加」(b) この支払の額は、生産者がこの援助を受けるための適格性を有することとなった年の当該生産者の喪失した収入の七十パーセント以上の額を補償するものであってはならない。」の規定に抵触しえます。。

水田利活用自給力向上事業は、米の「生産数量目標」を守る農家も守らない農家も、対象としている点で、「生産制限的(production-limiting )」ではなく、また、品目を特定(product specific )している点で、品目横断的 (non-commodity specific)ではありません。

「定額部分」 を上回って補償することはあるが、定額部分を下回ることはなく、この「定額部分を上回り補償する部分」についての理論的な説明がありません。

3.アメリカの直接・不足払い補助金制度と、日本の戸別所得補償制度との類似点

アメリカの2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and
Counter-cyclical Payment、2002年農業法でのCCPにおいても価格変動対応型支払いと直接固定支払いについては同様)における「価格変動対応型支払い」「直接固定支払い」「ACRE支払い」の公式は下記のとおりです。
ご参照
私のブログ記事
「覚書-民主党の戸別所得補償制度とアメリカの直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)との違い」
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=1097

(1).価格変動対応型支払い

不足払い額単価(CCP PaymentRate)=目標価格(Target Price)−有効価格(Effective Price)

(2).直接固定支払い

直接支払い額単価(Direct Payment Rate)=定率支払いレート(payment rate )×基準面積(base acres )×農場プログラム産出高( farm program yield)×85パーセント

(3).ACRE支払い

従来の「価格変動対応型支払い+直接固定支払い」のオルタナティブであり、ACRE支払いか、「価格変動対応型支払い+直接固定支払い」かのどちらかを二者択一でえらぶ。
過去作付け実績のない作物に切り替えても、補償額に反映できるようになっている。

ACRE保証額=0.9×過去5年平均州単収×過去2年平均全国価格
           
          但し、5年平均は最大最小の年を除く3年平均 

二つのスキームの類似点

ここで、つぎの公式の置き換えをして見ますと、日本の戸別所得補償方式と、アメリカの2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度との類似度がわかるかと存じます。

アメリカの不足払い補助金制度の「不足払い額単価(CCP PaymentRate)」=日本の戸別所得補償制度の「価格水準にかかわらず交付する定額部分」

アメリカの不足払い補助金制度の「目標価格(Target Price)」=日本の戸別所得補償制度の「標準的な生産に要する費用」

アメリカの不足払い補助金制度の「有効価格(Effective Price)」=日本の戸別所得補償制度の「標準的な販売価格」

4.現在、WTOドーハラウンド交渉でアメリカの直接・不足払い補助金制度の何が問題になっているのか?

歴史的な経緯を述べる前に、 別に皮肉な意味で掲げるわけではありませんが、 2009年3月12日にWTOで開催された「 committee meeting 」での日本側の意見を見てみましょう。
参照
「Committee focuses on monitoring agriculture commitments」
http://www.wto.org/english/news_e/news09_e/ag_com_12mar09_e.htm

ここでの主要議題は、アメリカの直接・不足払い補助金制度の貿易歪曲度についての各国からの意見聴取でした。

ここで、日本側は、オーストラリア、ブラジルとともに、アメリカの直接・不足払い補助金制度に対し、次のような質問をしています。

「アメリカは、今後ともこれらの支払いが、特定の作物に対して、支持を与えるものではないといい続けて、この支払いを正当化するのですか?」

これらの疑問は、これ以前から、たびあるごとに出されるのですが、これに対するアメリカ側の答えは、いつも、一緒で、

「これらの支払いは、過去の生産実績に基づいて支払われており、かならずしも、特定作物の生産者が支払いの受領者となることは、要求していない。したがって、この支払いは、いかなる特定の作物への支払いでもないことを意味している。」

これらのやり取りが、今度は、ブーメランのごとく、日本側にかえってこないことを念じるばかりです。

WTOドーハ・ラウンドにおけるアメリカ側の四つの誤算

現在の2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度のベースとなっている2002年農業法における価格変動対応型支払は、さらに、 それをさかのぼる1996年農業法の不足払いのスキームを引き継いだものですが、WTOにおいては、たびたび、その支払いが、貿易歪曲的な国内価格支持であると、指弾されてきました。

そこで、アメリカUSDAでは、WTOコンプライアンス違反への各国からの非難を、ドーハラウンド交渉で避けるために、次の四つのテクニカルな手段でかわそうとしてきました。

第一は、不足払いを、 「新・青の政策」として、認めさせようとすること

第二は、譲許ベースのカウントと、実行ベースのカウントが、異なることを利用して、黄色の政策から緑や青の政策への、ボックス・シフトを行うこと、

第三は、品目横断を隠れ蓑にした「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」を利用すること、

第四は、2008年農業法において、これまでの直接・不足払い補助金制度のオルタナティブとして、 新たに、ACRE支払い(平均作物収入選択プログラム)制度を もうけたこと

しかし、 このいずれも、これまでのWTOドーハラウンドでの交渉では、各国から、否定されております。

すなわち、第一のアメリカの「新・青の政策」提案は、2004年7−8月合意のフレームワーク(「WTO July 2004 Package of Framework Agreements」)でされましたが、その後、 2006年3月22日に、非公式で開かれたコンサルテーション会議において、「従来の青の政策(Old Blue Box)の議論と、今回アメリカ側提案の新・青の政策(New Blue box)とは、隔絶して議論すべき」との意見でまとまりました。

第二のボックス・シフトは、黄色の政策から振り替えられ、水増しされたデミニミスや青の政策のカウントは、譲許ベースではなく、実行ベースでカウントされるため、譲許(約束) 水準での黄色の政策の削減は果たされているが、全体では、ボックス間のやりくりによって、貿易歪曲的国内補助金の総額(全体的削減)は、減額されていない、というトリックです。

黄色のボックスから青のボックスへのボックス・シフト」(box shifting amber box to blue box)または、「補助金の衣替え」(reclassify subsidies)などといわれています。

これを、シーリングと実際適用との間のギャップにある、国内支持政策の水増し(the stretch of water )または、オーバーハング(Overhangまたは、Binding Overhang)といっています。

2005年12月18日の香港でのWTOでの最終合意閣僚宣言(ドーハ作業計画閣僚宣言)のパラグラフ5(On domestic support)において、次のような、「ボックス・シフティング規制ルール」ともいうべきものが付け加えられました。

「貿易歪曲的国内支持全体の削減は、助成合計総量の最終譲許水準、デミニミス及び青の政策の削減の合計の方が全体の削減より小さくても行われる必要がある」

これによって、アメリカのボックス・シフティングを利用した黄色の政策逃れは、誤算に終わりました。

また、これによって、第三の品目横断を隠れ蓑にした「デミニミス抜け穴(De Minimis loophole)」利用も、封じられることとなります。

ちなみに、アメリカのボックスシフティングの実態についてですが、 2001年2月届出の黄色の政策(AMS)では144億ドル、ドーハラウンドでは76億ドルと、68億ドル減少していますが、かわりに、デミニミス+27億ドル、青の政策+48億ドル、緑の政策0、となっており、実質的なTDS(AMS(黄色) +デミニミス+ 青の政策)は、 逆に、7億ドルの増加になってしまっているという現況のようです。

第四のACRE支払い(平均作物収入選択プログラム)制度についても、これまでの2002年農業法でのスキーム以上に黄色の政策であるとの批判が高まっています。

FAPRI(Food and Agricultural Policy Research Institute)が昨年8月に予測したACRE支出の数値によりますと、2009年11,683百万ドル、2010年2,283百万ドル、2011年 2,203百万ドル、2012年2,039百万ドル,2013年1,901百万ドルになるとしています。

アメリカのACREも含めた黄色の政策のシーリングが,年ベースで191億ドルですので、いかに、このACREが貿易歪曲的な働きをしているか、ということが、各国からの警戒心につながっているものと思われます。

先にあげた 2009年3月12日にWTOで開催された「 committee meeting 」でも、アルゼンチン、オーストラリア、カナダの代表が、アメリカのACREについて、黄色の政策ではないことについての説明をアメリカ側に求めたましたが、アメリカ側は、実績がまだ出ていないことを理由に、その説明を拒否したといわれています。

このACREが、黄色の政策に分類される理由として、次のことが挙げられています。

「ACRE支払いが、作付けに基づき、作付面積と平均作物販売価格と収量とに基づく限り、WTOでは、農作物価格支持補助金の黄色の政策のカテゴリーに分類される」

5.WTOドーハラウンド決着で国内農業支持政策は、どう、変革を迫られるのか?

WTOドーハラウンドは、2009年9月のG20での各国の首脳の確約(ピッツバーグ・ステートメント)によって、2010年中での決着が合意されたところですが、今後、新たなモダリティ・テキストの新版が出るかどうかについては、微妙な情勢のようです。

すなわち、一部には、合意のため、新しいテキストの必要性を強調している向きもあるようですが、 これまでの合意点を崩さないためには、すくなくとも、昨年12月の第四版モダリティ・テキストをベースに、妥結への議論が進められるであろうというのが、大方の関係者の見方であり、その意味では、ここにいたるまでのWTO内部での論議に、大幅な変更はないものと推測されます。

残念ながら、日本が最重要項目として主張している、―斗徂別椶僚淑な数と柔軟な取扱いの確保、⊂絽卒慇任寮瀋蠢忙漾↓4慇燃篥の新設、についても、2008年12月6日の改訂モダリティ案と大きく変わることはなさそうです。

そこで、 これまでに出ている昨年12月の第四版モダリティ・テキストをベースに、日本への影響を試算してみますと、次のようになるかともいえます。

第四版モダリティ・テキストにおいては、

助成合計総量の最終譲許水準の削減(Final Bound Total AMS)(FBTA)

貿易歪曲的国内支持全体の削減(Overall Trade-Distorting Domestic
Support)(OTDS)

が打ち出されていますが、

Final Bound Total AMS(助成合計総量の最終譲許水準)(黄色の政策)(黄色の削減)

(1).AMSが400億ドル以上は、70%削減
(2).AMSが150億ドル以上は、60%削減
(3).AMSが150億ドル以下は、45%削減

Overall Trade-Distorting Domestic Support(OTDS)(貿易歪曲的国内支持全体の削減)(全体的削減)
注−OTDS=Final Bound Total AMS( 黄色の政策) +デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策 この三つの合計額

(1).OTDSが600億ドル以上は、80%削減
(2).OTDSが100億ドル以上は、70%削減
(3).OTDSが100億ドル以下は、55%削減

となっています。

これに変化がなければ、日本のFinal Bound Total AMSは、2000年約束水準で3兆9729億円(431億ドル)ですので、

階層は、
AMSについては、the top tier、
OTDSについては、the middle tier
該当ということで、

AMSは、70パーセント削減、
OTDSについては、農業総生産額の40%以上であることによる追加的努力分が、+5%加算され、70+5=75パーセント削減、
となりそうです。

そこで、日本の一部に、「これまでの日本の黄色の既存削減枠(いわゆる『貯め』)を、「戸別所得補償制度」の原資に使おう」、と主張される向きもあるようですが、果たして、どうなのでしょう?

2000年約束水準で、日本の黄色の政策は、3兆9729億円、これに「デミニミス+パラグラフ8にもとずく青の政策」を加えたのがOTDSですが、2006年では、デミニミス376億円、青の政策701億円となっているようです。

仮に黄色の削減率7割であれば、削減後は
3兆9729億円×30パーセント=1兆2千億円程度(Final Bound Total AMS” ( Amber Box))となります。

しかし、すでに、日本は、2006年時点で、黄色の政策は、5712億円となっており、2000年約束(譲許)水準の14%まで削減しているので、余分に削減している部分は、
30パーセント−16パーセント=1兆2千億円-5712億円=7200億円程度 ということになります。

では、この部分については、今後、あらたに黄色の政策としてつかえるのか?、ということになるのですが、この対象作物を替えないで「黄色の政策から、再び、黄色の政策へ」( “amber to white to re-amber”)のゾンビ的な解釈は、WTOの趣旨からして、通用しないように思えます。

さらに、1995-2000年ベースでの黄色の政策と青の政策とを結合させたCapである「個別産品毎の黄の政策の上限規制」(Commodity-Specific AMS Cap)という品目別AMSの上限があります。
これらは、国別、個別品目別に、モダリティの付属書において一覧表にされます。
これが適用されるとなると、コメ農家救済を主軸としたスキームは、この点からもCombined Capとしての制限を受けうる可能性も大きいといえます。
「個別産品毎の黄の政策の上限規制」(Commodity-Specific AMS Cap)の帰趨如何によって、黄色から黄色への安易なボックス内シフトは、難しくなるのではないでしょうか?

6.WTOドーハラウンド決着後の各国の国内農業支持政策の見直し機運

WTOドーハラウンド決着後は各国の国内農業支持政策は、いずれも、修正を 余儀なくされると思います。

とくに注目されるのは、アメリカのオバマ政権の動きです。

2008年農業法が、ブッシュ政権とオバマ政権との間で誕生したという事情があるにせよ、 ブッシュ政権からの「残された荷物」である、直接・不足払い補助金制度については、ドーハ・ラウンドが決着した時点で、見直したい、という機運が、オバマ政権では、発足当初からあるようです。

オバマ大統領は、2010年予算で、直接支払いのカットを議会に要請したほか、直接支払いの上限を、一人4万ドルに制限すること、CCPについても、6万5千ドルの上限を設けること、その代わりとして、145.000ドル融資限度のマーケティングローンの創設をするなどの対策に乗り出しており、これらのカットにより生じた財源を、環境改善事業などの新興事業部門にシフトさせる考えであるといいます。

この流れからすると、アメリカは、すでに直接支払いの方向から、新しい環境部門への財源のシフトを図りつつあるようです。

これらの動きは、WTO対策であるとも見られています。

すなわち、WTOをいいきっかけにして、巨大な財政支出を伴うこの直接・不足払い補助金スキームを見直したいというインセンティブが強いようです。

日本においても、とくに、品目横断的経営安定対策については、WTOコンプライアンスの点からは、多少の見直しを迫られるのではないかと思っています。

私は、この品目横断的経営安定対策は、WTOコンプライアンスのすれすれを狙った、当時の農林水産官僚の皆様の英知が絞られた傑作であると評価しています。

ただ、この法案提出の時点(2006年6月21日成立)では、アメリカの「新青の政策」が、WTOから認知されるのではないか、との前提がありました。
その後の経緯は、上記のとおりアメリカの「新青の政策」は、認知されませんでした。

品目横断政策には、「げた」部分(生産性条件格差の是正対策)と、「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)の二つがあり、さらに、「げた」部分については、「過去の作付面積に基づく支払い」「年々の生産量等に基づく支払い」がありました。

当時の農林水産省の解釈では、

「過去の作付面積に基づく支払い。」は、現実の生産と関連していないので、緑の政策に該当。いわゆる「緑ゲタ」
「年々の生産量等に基づく支払い。」は、黄色の政策、いわゆる「黄ゲタ」
「ならし」部分(販売収入の変動緩和対策)」は、品目横断的(non-commodity specific)であり、生産調整を伴った「生産制限的(production-limiting )である」との条件の下に、「青の政策」

との見解があったように思えます。

しかし、ドーハ・ラウンドの決着によって、黄ゲタ部分はもちろんですが、緑ゲタについても、「過去の生産にもとずく」との部分が、アメリカ同様、問われかねないし、また、「ならし」部分についても、グレーゾーンの色合いがより強まってくるものと思われます。

7.結論-戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度

以上のことから、戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度を点検してみましょう。

(1)適合度判断の基準

判断の基準をわかりやすく書いたWTOのサイト

WTO「Domestic support」
http://www.wto.org/english/tratop_e/agric_e/ag_intro03_domestic_e.htm
がこの場合、参考になりそうです。

これによりますと

A.緑の政策の条件

政策原資は、消費者からの移転を伴わう原資を含まないものであって、生産者への価格支持効果を持つものであってはいけない。
政策プログラムにおいては、研究プログラムや、トレーニングプログラムなどを含むものとなる。
生産者に対する直接支払いとしては、生産決定につながらないもの(この支払いが農業生産の経営形態や生産量に影響を与えない、デカップリングされたもの)
直接支払いの量が、支払い後の一定期間のあいだ、 生産、価格、 生産要素に、 リンクするものであってはならないこと。
直接支払いを受けても、それによって、生産を要求されるものではないこと。

その直接支払いの意味するところが、次のものに関係している場合には、別の基準によるものとする。

デカップリング所得補助、所得補償、セーフティーネットプログラム、自然災害救助、構造調整プログラムによったもの、環境プログラムによったもの、地方支援プログラムによったもの、

B.青の政策の条件

支払いは、「一定のエリア」「一定の産品」「一定数の家畜」に対するものであること。
支払いは、「一定の期間における生産の85パーセント以下のもの」に対するものであること。
緑の政策が、デカップリングされた支払いすべてを カバーするのに対して、青の政策は、支払いを受けるためには、なお、 生産は必要ではあるが、 現実の支払いは、現在の生産量に、直接、関係するものであってはならない。

C.デミニミス(De minimis)の条件

農業生産額の5%以下の補助については、品目を特定していない国内支持(品目横断的 (non-commodity specific)な助成)であれば、少量であることから、「デミニミス」として削減対象から除外される。

なお、ドーハラウンドでは、これに追加的制約条項が加わる。

(2)戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度判断

上記によって、戸別所得補償についてのWTOコンプライアンス適合度を点検すると、次のようになりえます。

A.米戸別所得補償モデル事業

米戸別所得補償モデル事業は、「生産制限的(production-limiting )」であるが、「価格の上昇・下降によって、補償金額が上昇・下降」し、「現在の生産が、補償金額と連動」している。

判断

1.緑の政策とは、 まったくいえない。 (理由-「この支払いが農業生産の経営形態や生産量に影響を与えない、デカップリングされたもの」ではない。)
2.現実の支払いが、現在の生産量に、直接、関係しており、また、現実の支払いが、現在の販売価格に、直接、関係しているので、青の政策でもない。(理由-「生産は必要ではあるが、 現実の支払いは、現在の生産量に、直接、関係するものであってはならない。」ではない。)
3.生産制限計画による直接支払いであっても、「一定の面積及び生産に基づいて行われる支払」であるとはみなされえない。(理由-価格と連動しているため「一定」(fixed)とはみなされない。付属書2.6「生産に係る国内価格又は国際価格に関連し又は基づくものであってはならない。」に違反)
3.「標準的な生産に要する費用」の計算方式が明らかにされていないので、アメリカの言い訳である「これらの支払いは、過去の生産実績に基づいて支払われている。」と同様の言い訳が通用しうるのかどうかが、明らかではない。(理由-農業協定6項5項(i)違反の可能性、付属書2.6(b)「生産者によって行われる生産の形態又は量(家畜の頭数を含む。)に関連し又は基づくものであってはならない。」に違反)
4.アメリカの2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度と同様、WTOの農業協定のアーティクル6と附属書2に背馳する部分がある。(理由-該当条項は、 第6条の5項(a)()、付属書2の6(b)、付属書2の6(c)、付属書2の7(b)、付属書2の7(c)などであり、とくに、第6条の5項(a)() )
5.「標準的な生産費用」の中で「家族労働8割」とある。(理由-付属書2の7(b)の「当該生産者の喪失した収入の七十パーセント以上の額を補償するものであってはならない。」に違反)
6.米に品目を特定しているため、産品特定的(product specific )である。(理由-第6条4項(a)()「産品が特定されない国内助成であって、その総額が加盟国の農業生産総額の五パーセントを超えないもの」に違反)

以上のことから、しいて言えば、アメリカが過去に提案した「新青の政策」に近いといえるが、アメリカの不足払い補助金制度においては、不足払い額単価が市場年度内の全米平均市場価格の最高値を上回った場合には、不足払い額単価はゼロになるのに対して、戸別所得補償制度においては、「定額部分+アルファ」の補償が行われるという点などをも含め、アメリカの「新青の政策」よりも、より「黄色の政策」に分類されえる。

B.水田利活用自給力向上事業

水田利活用自給力向上事業は、「生産制限的(production-limiting )」ではなく、また、品目を特定(product specific )している点で、品目横断的 (non-commodity specific)ではない。

したがって、まさに、「黄色の政策」そのものの要件を備えている。

結語-WTO非適合型直接支払いからWTO適合型直接支払いへのシフトが必要-

以上のことから、現にWTOで糾弾されている2008年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度に極似したスキームである戸別所得補償方式を、日本政府が、ドーハ・ラウンド合意間近いこの時点で、しかも、2010年中にドーハ・ラウンド合意を旨とした先月のG20でのピッツバーグ・ステートメントに、 日本の総理が加わっている以上、このタイミングで、この政策を打ち出すことは、たとえ、近時の世界の 保護貿易主義の台頭によって、WTOの結論が翻弄されることはあるであろうにしてみも、 あまりに、無謀であるといえます。

むしろ、この際、ドーハ・ラウンド決着を前提にしての、オバマ政権がすでに志向し始めているような、農政の環境シフトや、農村地域・農業地域の総合的地域政策的観点からの政策樹立といった、パラダイム・シフトが必要のように思えます。

直接払いならどんなスキームでもいいというわけではありません。

WTO適合型直接支払いのスキームもあれば、WTO非適合型直接支払いのスキームもあります。

『日本にも、EU型の直接支払いを導入すべし』とか『直接支払いをしていないのは、日本だけ』論を展開されている政治家の方の想定している「EUの直接支払い」とは、その旧来型のスキームであった、1992年のMacSharry reforms(Old Cap)と呼ばれているWTO非適合型直接支払い(“compensatory payments” と呼ばれる直接支払い)を、ごっちゃにして、いわれている嫌いがあるようです。

MacSharry reformsに対する批判は、大きく二つあって、第一は、財政負担があまりに大きくなってきていること。第二は、必ずしも、生産に対して、ニュートラルではない。との批判でした。

この批判は、今回の日本の戸別所得補償制度にたいしても、そのままの批判点となりえそうです。

直接支払いの先進地域であるEUが、2003年のFischer reform(New Cap)とアジェンダ2000と呼ばれるCAP見直しで目指したのは、まさに、これらのMacSharry reformsに対する批判に応え、CAPをWTO適合型直接支払い("decoupling' payments "と呼ばれる直接支払い)とするための改革であり、その内容は、『直接支払いから単一支払いスキーム』(From a direct payments system to a single payment scheme)への転換でありました。

すなわち、それは、farm support (Pillar 1) と rural development (Pillar 2))とからなるもので、完全に生産からニュートラルなデカップリングと、直接支払いを受け取るすべての農民に対して義務付けられる農地の適正な農業・環境条件の維持についての強制クロス・コンプライアンス、そして、農村開発政策の強化に、財源を、直接支払いを減額してもシフトさせる農村開発戦略から成り立っています。

このように、WTOコンプライアンス適合型の直接支払いをしているのは、Fischer reform後のEUだけであり、日本が戸別所得補償制度によって真似ようとしているアメリカの直接支払いも、EUのFischer reform前の直接支払いも、いずれも、WTO非適合型直接支払いだということを銘記しなければならないでしょう。

日本においても、過去の直接支払いの先進国がたどった直接支払いのもつ、宿命的な財政負担のトラウマから回避するためのスキームを、日本版WTO適合型直接支払いのスキームとして、いまから確立しておく必要があります。

以上

参考1. 戸別所得補償制度が抵触するであろうWTO農業協定 アーティクル6と付属書2の該当箇所一覧

農業に関する協定 第四部

第六条 国内助成に関する約束

4 (a) 加盟国は、次の国内助成を現行助成合計総量の算定に含めること及び削減することを要求されない。
  (i) 産品が特定された国内助成(自国の現行助成合計量の算定に含めるべきものに限る。)であって、その総額が当該年における一の基礎農産品の生産総額の五パーセントを超えないもの
  (ii) 産品が特定されない国内助成(自国の現行助成合計量の算定に含めるベきものに限る。)であって、その総額が加盟国の農業生産総額の五パーセントを超えないもの
 (b) 開発途上加盟国については、この4に定める百分率は、十パーセントとする。

5 (a) 生産制限計画による直接支払であって次のいずれかに該当するものは、国内助成を削減する約束の対象とならない。
(i) 一定の面積及び生産に基づいて行われる支払
(ii) 基準となる生産水準の八十五パーセント以下の生産について行われる支払
(iii) 一定の頭数について行われる家畜に係る支払
 (b) (a)に定める基準を満たす直接支払に係る削減に関する約束の対象からの除外は、加盟国の現行助成合計総量の算定において当該直接支払の価額を除外することによって行う。

第七条 国内助成に関する一般的規律

1. 各加盟国は、農業生産者のための国内助成措置であって、附属書二に定める基準を満たすことにより削減に関する約束の対象とならないものについて、当該基準を引き続き満たすことを確保する。

2. (a) 農業生産者のための国内助成措置(修正されたものを含む。)及び後に導入された措置であって、附属書二に定める基準を満たすこと又はこの協定の他の規定に基づいて削減の対象から除外されることを示すことができないものについては、加盟国の現行助成合計総量の算定に含める。
(b) 助成合計総量に関する約束が加盟国の譲許表第四部に明記されていない場合には、当該加盟国は、前条4に定める該当する百分率を超えて農業生産者に助成を行ってはならない。

附属書二 国内助成(削減に関する約束の対象からの除外の根拠)

5 生産者に対する直接支払
  生産者に対する直接支払(現物による支払及び現に徴収されなかった収入を含む。)による助成であって削減に関する約束の対象から除外されるものとして扱われるものは、1に定める基本的な基準のほか、6から13までに定める直接支払の個別の類型に係る特定の基準を満たすものでなければならない。6から13までに定める直接支払以外の既存の又は新たな類型の直接支払であって削減の対象から除外されるものとして扱われるものは、1に定める一般的な基準のほか、6の(b)から(e)までに定める基準に適合するものでなければならない。

6 生産に関連しない収入支持
 (a) この支払を受けるための適格性は、定められた一定の基準期間における収入、生産者又は土地所有者であるという事実、要素の使用、生産水準その他の明確に定められた基準に照らして決定される。
 (b) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において生産者によって行われる生産の形態又は量(家畜の頭数を含む。)に関連し又は基づくものであってはならない。
 (c) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において行われる生産に係る国内価格又は国際価格に関連し又は基づくものであってはならない。
 (d) いずれの年におけるこの支払の額も、(a)の基準期間後のいずれかの年において使用される生産要素に関連し又は基づくものであってはならない。
 (e) この支払を受けるために、いかなる生産を行うことも要求されてはならない。

7 収入保険及び収入保証に係る施策への政府の財政的な参加
 (a) この支払を受けるための適格性は、農業から得られる収入のみを考慮して、過去三年間における若しくは過去五年間のうち収入が最大及び最小の年を除く三年間における総収入(同一又は同様の施策により受けた支払を除く。)の平均の三十パーセントに相当する価額又は純収入を用いて算定した同等の価額を超える収入の喪失があることに基づいて決定される。この条件を満たす生産者は、支払を受けるための適格性を有する。
 (b) この支払の額は、生産者がこの援助を受けるための適格性を有することとなった年の当該生産者の喪失した収入の七十パーセント以上の額を補償するものであってはならない。
 (c) この支払の額は、収入にのみ関連するものとする。この額は、生産者により行われる生産の形態若しくは量(家畜の頭数を含む。)、当該生産に係る国内価格若しくは国際価格又は使用される生産要素に関連するものであってはならない。
 (d) 生産者がこの7の規定に基づく支払及び8の規定(自然災害に係る救済)に基づく支払を同一の年において受ける場合には、これらの支払の総額は、生産者の損失の総額の百パーセント以上であってはならない。

参考2.アメリカがCCPを『青の政策』とする根拠として掲げている農業協定アーティクル6.5(Article 6.5)のドーハラウンドにおける解釈について

アメリカは農業協定6項5項(i)「一定の面積及び生産に基づいて行われる支払」(such payments are based on fixed area and yields)を根拠として、CCPを青の政策として言い張っているが、ドーハラウンド交渉においては、次のようなことになっている。
「WTO agreement on agriculture: The blue box in the July 2004 framework agreement」(Ivan Roberts.abare eReport 2005.4)
http://www.abare.gov.au/publications_html/trade/trade_05/er05_wto.pdf

Extending blue box exemptions to include payments that do not require production and ways that these might be disciplined
(生産することや、規制されるであろう方法を必要としない支払いを含む、『青の政策』の拡大について)

■ Allowing ‘payments that do not require production’ would introduce payments related to prices into the blue box.
(生産を必要としない支払いを青の政策に含めることは、価格に関係した支払いを青の政策に含めることにつながってしまう。)

These payments currently  fall under the amber box. Such a change would make it easier for the United States to ‘achieve’substantial cuts to its amber box payments.
(これらの支払いは、今のところは、黄色の政策に分類される。
上記のような変更は、アメリカにとって、黄色の政策のカットをたやすくしてしまう。)

■ The new blue box provision would allow additional market distorting support and would weaken current WTO domestic support disciplines.
(『新青の政策』条項を設けることは、さらなる貿易歪曲的国内支持を付加することになり、現在のWTOの国内支持規制を弱くさせてしまう。)
It may also enable the United States to meet the Doha Round mandate of achieving ‘substantial reductions in domesticsupport’ without having to change the form or actual level of support to US producers.
(さらに、されは、WTOドーハラウンドにおける『国内支持の実質的な縮減」という命題に、アメリカをして、適合させてしまうことにつながってしまう。)

■ Just stipulating that farmers do not need to produce to receive payments does not mean that those payments will not encourage additional production.
(農民が直接支払いを受けるには、生産することを要しないと規定するということは、それらの支払いが更なる追加的生産を奨励しない、ということを意味するものではない。)

■ If payments are related to prices, such as counter cyclical payments,they are likely to influence production.
(もし、直接支払いが、アメリカのカウンター・サイクリカル支払いのように、価格に関係するものであったなら、)それらの支払いは、生産にたぶんに影響するであろう。)

■ The stipulation of fixed and unchanging bases in blue box criteriain the WTO negotiating agreement will help to limit market distortions arising from growers’ expectations of changing bases in the future.
(WTO農業協定における青の政策の基準である『固定され、変わらないベース』との規定には、生産者が、将来、ベースが変わることを予測しての、市場の歪曲を制限する意味がある。)

■ The weakening of the WTO domestic support rules arising from the inclusion of the new blue box provision (allowing the inclusion of some forms of price related support) could be limited by placing further controls on such support. 
(『新青の政策』条項の新設によって、価格に関連した国内支持が寝青の政策に含まれることを許してしまうことで、WTOの国内支持規制が弱まってしまうことは、そのような支持に対し更なるコントロールをすることに限界を与えてしまう。)

The 5 per cent limit on blue box exemptions
(青の政策に対する5パーセント例外制限について)

■ US counter cyclical payments could be included under the new provision in the negotiating agreement to allow blue box exemptions or payments where no production is required.
(アメリカのカウンター・サイクリカル・ペイメントは、新青の政策の下では、青の政策の例外を認められるものに含まれうるし、また、生産が要求されない直接支払いにも含まれうる。)

Under present legislation these payments would be well below the proposed 5 percent limit.
(現在のWTO規制においては、これらの支払いは、5パーセント限界値以下であろう。)

This is largely because the value of the items receiving support payments constitutes only about 25 per cent of the total value ofUS agricultural production.
(これは、大きく、支持支払い対象品目の値が、アメリカの農業生産の総価値のたった25パーセントとしかないことによるものである。)

So the 5 per cent limit is equivalentto 20 per cent of the value of the supported activities.
(したがって、5パーセント制限ということは、支持行為の価値の20パーセントと等しいということになる。)

Maximum countercyclical payments are estimated at US$7billion a year, which is well below the 5 per cent limit which would vary between about US$9.2 billion and US$10.2 billiona year.
(カウンター・サイクリカル・ペイメントの最大支払いは、一年間70億ドルであると評価されており、これは、一年で、92億ドルから102億ドルの間で、変化しうるなかで、5パーセント制限以下になっているものである。)

Under present WTO provisions, the United States already has the ability to provide payments of over 40 per cent of the value of program crops even without the addition of the new blue boxexemption provision in the negotiating agreement.
(現在のWTOの条項によれば、アメリカは、新青の政策の例外条項を設けなくとも、すでに、 カウンター・サイクリカル・ペイメント・プログラムの対象作物の価値の40パーセントを超える支払い能力を備えている。 )

■ The European Union is currently the largest user of blue box exemptions, with its most recently notified use being around 9 per centof its total value of agricultural production.
(EUでは、現在は、青の政策の例外措置を使用している最大のユーザーであり、最近の数値では、農業生産の総価値の9パーセントを使っていると通告されている 。)

This is well above the proposed 5 per cent cap.
(これは、5パーセント以上の数値である。)

■ Under EU reforms, support is being restructured toward single farmpayments on which the European Union seems likely to seek green box exemptions on the grounds of decoupling.
(EU改革によって、これらの支持政策は、単一支払いに向けて、リストラクチャーされており、EUでの直接支払いは、デカップリング・ベースでの緑の政策での例外措置を模索しているように見える。)

Such a transition could enable the European Union to manage its blue box payments to fall within the proposed 5 per cent cap.
(このような直接支払いの移行は、EUをして、これまでの青の政策を5パーセント以下のキャップにとどませるよう管理することを可能にさせうるものとなっている。)

■ In recent years, EU support levels (as indicated by the Aggregate Measurement of Support) have been markedly below the European Union’s permitted limits.
(最近のEUでの支持レベルは、AMSで示される限り、著しくEUが認められているレベルを下回ってきている。)

This would appear to give the EuropeanUnion flexibility to offer marked cuts to AMS limits in the DohaRound without having to reduce its present levels of nonexempt domestic support.
(このことは、現在での例外とならない国内支持の現在のレベルをこれ以上減らさなくても、ドーハラウンドにおけるAMS制限を著しくカットすることへのオファーに対して、 柔軟に対応できることを可能にしているように見える。)

以上

 

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2009/11/03 Tuesday

あまりに不親切な、農林水産省の「戸別所得補償制度についての国民からの意見募集」

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 23:13:36

2009/11/03(Tue)
 
 この「戸別所得補償制度に関する意見の募集について」からリンクされている 「戸別所得補償制度に関するモデル対策」が戸別所得補償制度の概要というもののようだが、きわめて不親切な解説なので、わかりずらい。

文章がたったの7行と、それに説明なしの簡単なポンチ絵。

ポンチ絵には、脚注も、ありゃしない。

このあたりも、「政治主導」だったんかしら?(w)

これで、どうやって判断するの?

意見募集するからには、その意見の元となりうる政策のプレゼンテーションは、しっかり綿密にやってもらいたいものだ。

そうでなければ、意見の仕様がない。

もっとも、それがねらいなのなら、それまでだが—

特に知りたいのが、標準的な生産に要する費用、標準的な販売価格、当年の販売価格、の算定方法だ。(このあたりは、突っ込みどころ満載なのに、これについては、何にも書いてないじゃあないですか。)

そこで、こちらのほうで、ここに書かれてあるポンチ絵から判断して、かわって説明を補足してあげると、次のようなことらしい。

標準的な生産に要する費用(過去数年分の平均)(家族労働費8割+経営費)
マイナス
標準的な販売価格(過去数年分の平均)

価格水準にかかわらず交付する定額部分

補償対象の米価水準=標準的な生産に要する費用

ではあるが、これが補償金額というわけではない。

補償金額

”現狹な生産に要する費用 > 〔定額部分(標準的な生産に要する費用-標準的な販売価格)+当年の販売価格〕
の場合

補償金額=定額部分+(標準的な生産に要する費用-当年の販売価格-定額部分)=標準的な生産に要する費用-当年の販売価格

標準的な生産に要する費用 <  〔定額部分(標準的な生産に要する費用-標準的な販売価格)+当年の販売価格〕
の場合

補償金額=〔定額部分(標準的な生産に要する費用-標準的な販売価格)+当年の販売価格〕-当年の販売価格=定額部分(標準的な生産に要する費用-標準的な販売価格)

価格水準にかかわらず交付する定額部分というのは、ここ数年の慢性的な標準的赤字部分についての補償を意味しているようですね。

そこで

‥年の販売価格が例年よりも低く、定額部分を加えても、標準的な生産費用に達しない場合は、
標準的な生産費用に達するまでは「定額部分+アルファ」で補償します。

当年の販売価格が例年よりも高く、定額部分を加えると、標準的な生産費用をオーバーしてしまう場合には、
「標準的な生産費用水準に達した時点で定額部分の一部をアシキリにする」ようなことはしないで、定額部分まるまる補償します。

ということらしいのですが。

まあ、こうしてみると、この公式を、そのまま、アメリカの「2002年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)」の公式に当てはめてみると、そのそっくり度がわかるんですが。
参照「覚書-民主党の戸別所得補償制度とアメリカの直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)との違い」
http://www.sasayama.or.jp/wordpress/?p=1097

「2002年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)の公式」
は、上記のブログ記事で書いたとおり、次のものですね。

不足払い額単価(CCP PaymentRate)=目標価格(Target Price)−有効価格(Effective Price)

ここで、

不足払い額単価(CCP PaymentRate)=戸別所得補償制度での「価格水準にかかわらず交付する定額部分」

目標価格(Target Price)=戸別所得補償制度での「標準的な生産に要する費用(過去数年分の平均)(家族労働費8割+経営費)」

有効価格(Effective Price)=戸別所得補償制度での「標準的な販売価格(過去数年分の平均)」

とおきかえてみますと、そっくりですね。

で、

アメリカのほうの「標準的な生産に要する費用=補償対象の米価水準」である
目標価格(Target Price)の算出は、ヒストリカルな統計データから、the direct payment rate, market price 、 loan rateを勘案し、法定のベンチマーク(statutory benchmark)として算出

標準的な販売価格の算出は、ちょっと複雑になっていて、

有効価格(Effective Price)=
直接支払い額(Direct Payment Rate)(直接支払い額単価(定率支払いレート(payment rate )×基準面積(base acres )×農場プログラム産出高( farm program yield)×85パーセント)

市場年度内に農業生産者が農作物の販売で受け取る全米平均市場価格の高い数値

商品農作物の全米での平均ローンレート(the commodity national loan rate 融資単価)の高い数値
となっています。

(目標価格−直接支払額)が、市場年度内の全米平均市場価格の最高値を上回った場合は、不足払い額(CCP PaymentRate)は、ゼロとなる。---こちらのほうは、アシキリありですね。

直接支払い額単価(Direct Payment Rate)=定率支払いレート(payment rate )×基準面積(base acres )×農場プログラム産出高( farm program yield)×85パーセント

このアメリカの2002年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度(DCP:Direct and Counter-cyclical Payment)が、いま、WTOで黄色の政策(amber box)として指弾され、では、「新・青の政策(New Blue Box)として、認知させようと画策したが、これも失敗し、WTOから、その改革をせまられているのは、農林水産省も、先刻ご承知のはずなのですが---

おまけに、2008年農業法にもとずき、オプションとして付け加えられたACRE支払いについても、アルゼンチン、オーストラリア、カナダの代表からの厳しい批判にあっているという有様。

よりにもよって、アメリカの、今見直しを迫られている旧バーションの貿易歪曲的スキームを、日本が、この時期になって、いまさら、まねをするとは、これいかに?

(アメリカの「2002年農業法に基づく直接・不足払い補助金制度」支払いについての近時のドーハ・ラウンド交渉での論点については、このサイト「Can the United States Meet Its Prospective Doha Commitments under the 2008 Farm Bill?
http://www.inai.org.ar/sitio_nuevo/archivos/20-02-2009%20Final%20report%20US%20subsidies.pdf
をご参照)

ちなみに、WTOガ認める緑の政策の条件と、直接支払いの条件を、以下に掲げておきますが、もし、個別所得補償方式が上記のスキームであるとすると、かなりの部分で、WTOコンプライアンスに背馳してしまうことになりますね。

緑の政策の条件

〇拱Гい蓮現在の価格と関連してはいけない。 (「当年の販売価格」は、まさに、「現在の価格」ですよね。)
∋拱Гい蓮現在の生産と関連してはいけない。(「標準的な生産に要する費用」の算出で、大いに、「現在の生産」と関係してきてしまいますね。)
支払いは、何らかの生産を要求されての支払いであってはならない。

直接支払いの要件

,修了拱Гい、生産の決定にリンクしてはいけない。(「水田利活用自給力向上事業」は、品目別の直接支払いですよね。品目横断(non-commodity specific)では、ありませんよね。明らかな産品特定的な助成(commodity specific) ですよね。どうして、こんな時代錯誤的なスキームを、いまさら引っ張り出してきたんだろう?)

直接支払いを農業者が受領することによって、この支払いが、農業生産のタイプや生産量に影響を与えるものであってはならない。(個別所得補償のほうがいいってんで、すでに、農地の貸し手は、受託・委託スキームから抜け出し始めていて、「農業生産のタイプ」に大影響を与え始めていますね。)

この直接支払いの金額が、その後の一定期間における生産、価格、生産要素とリンクしたものであってはならない。 (当年の「標準的な生産に要する費用」も「標準的な販売価格」も、「過去数年分の平均」のうちの一年分としてカウントされ、その後も「補償金額」は,因となり、果となって、グルグルとローリングして、計算されていくのですから、完全に、「補償金額」は「その後の一定期間における生産、価格」にリンクしてきますよね。)

つ樟椹拱Гい鮗けても、それによって、生産を要求されるものではない。

イ修猟樟椹拱Гい琉嫐するところが、次のものに関係している場合には、別の基準によるものとする。

デカップリング所得補助、所得補償、セーフティーネットプログラム、自然災害救助、構造調整プログラムによったもの、環境プログラムによったもの、地方支援プログラムによったもの

知らぬが仏とは、怖いもんですね。

それに比べて、品目横断的経営安定対策は、WTOコンプライアンスをスレスレすり抜けたスキームの傑作のようにも見えてしまいますね。

これには、今の井出道雄事務次官も、今はなき須賀田菊仁さんも携わったスキームで、WTOコンプライアンスすり抜けスキームとしては、歴史にのこる名スキームと、評価したいですね。(ww)

それにしても、まあ、よくも、こんな不親切な説明で国民の意見募集をするものだと、あきれ返る。

しかも、10月23日にサイトにあげて、締め切りが平成21年11月10日(火曜日)正午必着というのは、あまりにひどすぎるんじゃあないかと。

意見があまりこないことを意図しての、通過儀礼以外の何者でもありませんね。

これは。

 

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