Sasayama’s Weblog


2009/11/11 Wednesday

戸別所得補償制度の生みの親・篠原孝さんの嘆き節ブログ

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:00:43

2009年11月11日
 
おやおや、といったところである。

事実上、戸別所得補償制度生みの親として、自他共に認められる篠原孝さんが、今日のブログでこんな記事を書いていらっしゃる。

参考「民主党の政策論議の場づくり-09.11.11-」

以下、引用

< 歪められた農業者戸別所得補償>

ちょうどその密着取材を受けているとき、私が長年関わってき農業者戸別所得補償が、来年度は米を先行させるモデル事業で5600億円を予算要求することが決まり大変な衝撃を受けた。

私が手塩にかけて育んできた政策が、音を立てて崩れていく。

麦・大豆・菜種・そば・飼料作物といった土地利用型作物に米並みの所得を補償することにより、米の過剰を減らし自給率も高め‥‥と狙っていたのに、米を先行させては何にもならない。

「馬鹿な‥」と声をあげずにいられなかった。このいびつな形の事業(2011年度に1兆円で開始するのがマニフェスト)は既に政府内で 決定されており、我々は関与しようがないのだ。

以上引用終わり

まあ、また、皮肉っぽくなってしまうが、この戸別所得補償制度と、例の自民党政権の置き土産か、地雷か、時限爆弾かはわからないのだが、「減反選択制プラス直接支払い」のスキームが、引き継いだ民主党政権が、その違いも見分けできないままに、幸か不幸か、渾然一体となって、「直接支払いモト゜キ」のような政策スキームとなって生まれてしまったということなのでしょうかね?
(まさか、『だんな、いいスキーム、用意してまっせ』などといって、一見新品に見える亡妻が残した中古品を売りつけたんじゃあないんでしょうね。それとも、「減反選択制プラス直接支払い」スキームは、トロイの木馬だったのかも?)

全中の馬場部長が、公明党との会談の中で、「農家の戸別所得補償というより、生産調整の追加メリット措置の一環としてとらえている」との認識を示したというのだが、さすがに、よくお分かりになっている、と言う感じだ。

つまり、支払い形態のみ『直接支払い」というだけで、WTO農業協定にもとづく『直接支払い』ではないということですね。

石破前農林水産大臣の下に、構築されてきた減反選択制は、
「米の買い支え政策をやめる代わりに、減反に加わるかどうかは、農家の自立的判断に任せ、減反に参加した農家には、これまで減反奨励金に使った資金を、所得補償に振り向ける」
というスキームとすると。

このスキームにおいては、これまでの減反奨励金とトレード・オフとなるのが、戸別所得補償、ということになってしまうのだが。

石破さんの『米政策の第2次シミュレーション結果と米政策改革の方向』の「選択肢3」
によれば、「生産費の低下スピードと生産調整の「緩和」による米価下落のスピードを調和させることにより、財政負担を抑えることが可能となる。」んだそうですが、まあ、このフローティングのような発想は、善意のマーケットメーカーがいなければ、不可能のスキームのようですね。

まさか、空中給油(米価下落のスピード)しながら飛ぶ戦闘機(生産費の低下スピード)を、オタク的に想像しているわけではないでしょうが。

米の卸は、ギリギリ下限を狙って値決めしてくるに違いありませんから、これじゃあ、永遠に給油ポットをつないで、低空飛行しなくちゃならない羽目におちいりそうですね。

(そういえば、いつだか、昔、豚肉の基準価格を決める小委員長を担当していたときに、今はなき江藤隆美先生から、「おまえ、基準価格の相場は絶対事前に漏らすな。差額関税狙いで、すぐ、台湾に電話するやつがいるから注意しとけ。」っていわれて、業界の厳しさを身を持って味わったことがありましたっけ。

この豚肉の差額関税制度とおんなじようなモラルハザードは、戸別所得補償制度においても、容易に発生しえますね。

すなわち、
価格水準にかかわらず交付する定額部分=標準的な生産に要する費用(過去数年分の平均)(家族労働費8割+経営費)
マイナス
標準的な販売価格(過去数年分の平均)

なんですから、農業関連業界では、ある年あたりから定額部分の相場が大体決まってきたら、「標準的な生産に要する費用」関連業界では、定額部分相場にあわせてのすれすれの高い資材の価格増加を狙ってくるであろうし、いっぽう、「標準的な販売価格』関連業界では、定額部分相場にあわせてのすれすれの低い米の卸の値づけをはかってくる、という構図ですね。
すべて、これ、フリーライダーの裨益の民ってことになるんですね。)

日本の米作り農家が、総ポール・プッシャー(pole pusher、点滴スタンドを押しながら歩く人)となる姿は、見たくないものですね。

インセンティイブの根底の精神は関係なく、財源のシフトと表面的なトレード・オフにばっかり頭がいっちまっている器用貧乏的構想ってとこでしょうかね。

その意味では、生産インセンティイブを直接支払いが持ってしまっている。ということになってしまう。

一方、篠原さんが考えているらしいスキームというのは、生産品目間のハンディをイコールフッティングにするためのインセンティブとして、戸別所得補償を考えていた、というスキームなんでしょうかね。

農業内でのダイバーシフィケーション(多様化)(agricultural crop diversification)を実現するために、この戸別所得補償のスキームを考えられていた節が見られますね。

ここらあたりは、いかにも、ご郷里の風土産業論の三沢勝衛さんのお考えに似ていますね。(三沢さんは松本深志高校、篠原さんは、長野高校、関係ないか。)

生産優位性のないものに、下駄を履かせ、ダイバーシフィケーションによる地域活性化を狙う、という意味での、戸別所得補償、ってとこでしょうかね。

これも、篠原さんの専売特許である地産地食へのインセンティブにもなりえますね。

ですと、こちらのほうは、より、デカップリングのほうの考え方に近くなっているようなんですが。

もっとも、これでも、まだまだ、特定作物への誘導ということになって、ニュートラルな直接支払いということにはなりませんがね。

しかも、今回提示された「水田利活用自給率向上」スキームは、真黄色のキ-ですからね。

身内からこのような反論が出てきては、しかも、戸別所得補償制度の生みの親から、このようなクレームなり異論が出てきているんでは、何やら、おぼつかなくなってきましたね。

それにしても、以上に見た例は、インセンティブには、客観的に申し開きができる理屈がとおっていることが必要、という、ことの、好例なんでしょうね。

ボス交感覚で、農政をやられたんでは、たまったもんではありませんぜ。

それと、大臣記者会見で、長年、秋田県で、減反破りをして、”うぶ”で”おぼこ”な秋田県内土着農民を泣かせてきた「あのかたも、戸別所得補償制度に賛同いただいている」、などと、オピニオンリーダー扱いにして、いうことだけは、やめてほしいですね。

どんだけ、あの方に、秋田県農政は、長年、苦しめられて来たんだか—

あのかたの横紙破りで、正直者が馬鹿を見たのが、過去の秋田県農民だど—-
(減反破りをされた面積の帳尻あわせで県内調整を迫られたのは、この県内土着農民だったんですぞ)

それが今はすつかり、戸別所得補償マンセイ派になっちまっている。

これら戸別所得補償マンセイ派がすぐに口にするのは、『日本においても、EU並みの直接補償を』とか『直接支払いをしていないのは、日本だけ』などと、二の次には、言われるのですが、どうも、これらの方は、その当のEUが、1992年のMacSharry reforms(Old Cap)による巨額の財政負担を伴う直接支払いに耐えかねて、すでに2003年のFischer reform(New Cap)とアジェンダ2000によって方向転換(farm support (Pillar 1) と rural development (Pillar 2))をしているということをご存知ないらしいんですね。

つまり、WTOコンプライアンス適合型の直接支払いをしているのは、Fischer reform後のEUだけ。
日本が真似ようとしているアメリカの直接支払いも、EUのFischer reform前の直接支払いも、いずれも、WTO非適合型直接支払いだってことを、ゆめ、お忘れなく。

あーあ。

 

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