2009年01月25日
このところ、派遣切りなどにあった労働力の受け皿として、農業の場をという、新たな帰農論が、ジャーナリズムで幅を利かすご時世となった。
これについては、大分以前のことだが、このブログでも、「「建設帰農」というパラダイムの光と影」と言う題で、その疑問点を提示したことがあった。
ここにきての農村回帰説をとなえているのは、中央のオピニオン・リーダーたちであるが、当の既存の農業従事者たちの本音はどうなのだろう?
これら榊原英資さんなどのオピニオン・リーダーたちが構想しているらしきものは、
�〆2鵑遼犹づ�失業状態にある方々のための雇用の受け皿に農業生産の現場を、あわせて、日本の食料自給率の向上を
というものと、
�△海譴蕕里�たがこれまではたらいてきた産業現場で得たスキルを、農/工/商一体のスキームのもとに、農業の活性化につなげよう
というものとに大別されうるようだ。
�,砲弔い討澆譴弌�農村なり農業を、摩擦的失業者の雇用の現場に選んだ場合、問題は、大きくふたつあって、住の問題をどうするのか、ということと、繁閑差の問題をどうするのか、ということが上げられるだろう。
�△砲弔い討澆譴弌△海譴蕕離好�ルを活かせるスキームが、そもそも、農村部には、システム的に備わっていない
ということなのだろう。
さらに、これらの摩擦的失業者が、どのような目線なり立場で、参画していくのか、永続的な参加が可能なのか、いいとこ取りに終わらないのか、についての農村地域・農業者側の疑心暗鬼というものは、容易には、払拭しきれないであろう。
定年帰農は、社会政策とトレードオフにはなりえない、農村社会にとってハームレスなスキームであるが、派遣帰農は、社会政策とのトレードオフの元に行われる、場合によっては、農村社会なり農村経済に新たな負荷を加えうる存在になりかねない、という違いがある。
では、どうしたらいいのか。
そこに、農村社会にとっても、都市部・産業部門からの新規流入者にとっても、ウィン・ウィンの関係が生じうるスキームなり戦略でなければならないのだろう。
その意味で、急に世論に浮上してきたかに見える安易な帰農論には、基本的な戦略スタンスが整っていないように見える。
ここでの基本的な戦略スタンスとは、あくまで、農業者側主導型でのダイバーシフィケーションの振興をめざすため、これら摩擦的失業人材の活用をしよう、と言う戦略的視点である。
もうすこしいえば、安易な工業部門から農業部門への雇用のシフトは、そのまま、農業部門のただでさえ少ないパイの農業・農村部門での奪い合い、という結果にも終わりかねないと言うことなのだ。
この経済恐慌で図らずも得た工業部門から農業部門への雇用のシフトを生かし、農村地域に、これまでにない、いかに多様な農業兼業部門におけるスモール・ビジネスを輩出させ、農村地域総体でのパイの拡大を目指すためのスキームでなければ、単に、農業・農村部門は、恐慌避難民のための広大なシェルターと化してしまう懸念もなくはないのだ。
ただでさえ少ない農村部の恒久的雇用の場が、これらシェルター難民のために、クラウディングアウトされてしまうという懸念もあるだろう。
そうならないためには、このチャンスに、農業・農村部門で多様な換金回路が構築できるような公的支援措置を行政サイドで用意することが必要なのだと思うのだが。
つまり、ここでは、帰農のスキームではだめで、起農のスキームでなくてはならないのだ。
そのためには、いまこそ、EUのLEADERプログラムによる事業展開に習った政策スキームの構築が必要な気がしている。
参考
参考1.EUのLEADERプログラムによる事業例
アグリビジネス・商業
・地元農産物の販売促進(例:販路拡大、流通システム整備)
・農業特産物の生産
・地場産品の付加価値向上(例:農産物加工業、手工芸品の生産振興)
・地場産品を紹介するための情報技術の活用
・デジタル通信
・人材育成、職業訓練、技術研修
・地元企業の改革促進、競争力強化
・企業誘致の促進
・公共/民間サービス分野における新しい取り組み
・特定のテーマでの分野横断的協力
観光業
・旅行者用の新しい宿泊施設の整備
・自炊宿泊施設として活用するための古い農舎の修復
・共同販売、地元の余暇活動、レクリエーション施設
・地元住民と旅行者の交流活動
・当該地域の観光の質を高めるプロジェクト
・全天候型施設への投資など、季節変化への対応
・品質システムの導入など、持続可能な観光業の発展に資するプロジェクト
「欧州連合(EU) の農村振興政策―LEADER 事業―」(国立国会図書館、調査及び立法考査局行政法務課 西川 明子 著)より
参考2.欧州連合(EU)の農村開発政策
参考3.「半定住人口による自然居住地域支援の可能性に関する調査 海外における地域資源保全及び保全施策実態調査 報告書」(農林水産省農村振興局 事業計画課)
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