2009/01/23(Fri)
一昨日あたりから米国国債の、特に年限の長い30年債や10年債を中心に比較的大きな売り物が見えているという。
来週、2年物と5年物の米国債が売り出される予定であるが、その売れ行きにも注目が集まっているようだ。
近時入札があったドイツのソブリン債は札割れとのことである。
その背景に、何か不気味なものを感じるのだが。
難産の末、議会承認された新財務長官候補のTimothy Geithner氏は、上院指名ヒアリングの席で、オバマ政権は、対中国への通貨政策要求について、ブッシュ政権よりも、「よりアグレッシブになるだろう。」としている。
Timothy Geithner氏は、「強いドルは、アメリカにとっての国益である。」としながらも、一方で「オバマ大統領は、中国は、通貨のマニュピレーターであり、中国に対して、通貨再編成を求める」と言ったことで、中国との通貨問題についての緊張関係をもたらし、このことで、さらに、アジア諸国の中央銀行が、米国債の購入を抑制するのではないかとの疑心暗鬼を生み出している。
つまり、この一連の動きの結果として、オバマ新政権は、元切り上げのプレッシャーを、ブッシュ政権よりも、明確に中国側に要求していくであろうとの見通しのようにも見える。
それに対応しての中国側の切り札は、保有する米国債の放出ということが考えられる。
アナリストは、この新財務長官の今回の発言が、直ちに、中国側をして、保有米国債の減少を招かないとは見ているが、米中間に、いつ爆発するかわからないひとつの地雷が設置されたと見てもよいだろう。
米国債の販売の帰趨は、そのまま、アメリカの財政危機に直結しうる。
つまり、公的資本注入によって、アメリカの民間市場のデフォルトリスクは、完全に、政府資本に移転し、政府資本のデフォルト・リスクは、そのまんま、米国債のデフォルト・リスクとなって、体化していくからだ。
中国側は、すでに昨年の7月時点で、大量保有していたファニーメイなどのGSE機関債を米国債へとシフトさせていた。
今度は、オバマ政権の対中国強行為替政策の到来に先駆けて、いち早く、その牽制球を投げ始めたとみるのは、うがちすぎであろうか。
その日中の米国債の雪合戦のはざまで、手も足も出せずにおろおろするばかりの、これまた米国債を大量保有している雪だるま的日本だったとしたら、対岸の火事とばかり、悠然としているわけにはいかないのではなかろうか。
参照
A New U.S. Policy for China?
China notes U.S. yuan charge, to hold anger in check
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