Sasayama’s Weblog


2007/05/18 Friday

アメリカにおけるハシカのワクチン接種計画見直しの教訓-ブースター・ワクチン接種の必要性-

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:48:50

2007/05/18(Fri)
 
null日本での麻疹(はしか)予防接種は、1966年から、弱毒生ワクチンと不活化ワクチンとの併用接種方式(KL法)で始まり、1969年以降は高度弱毒生ワクチン単独方式に切り替えられた。

また、1978年までは、任意接種でもあり、接種率も約30%程度であったのが、1978年10月に定期接種に組み入れられ、接種率も、60〜70%に達した。

このように、接種率が向上しているにもかかわらず、今回のような若年層を中心にしてのハシカの大量発生の原因として、ワクチン接種計画の問題があるものと思われる。

同様の現象はアメリカにも見られ、接種率が向上したにもかかわらず、若年層を中心にして、近時、修飾麻疹(modified measles )とみなされるハシカの大量発生が見られた原因として、このサイト「Recommendation for a measles booster」では、ブースター効果を効率的に利用していない、ということをあげている。

すなわち、アメリカの接種計画では、MMR(ハシカ・おたふくかぜ・ふうしんの三種ワクチンmeasles-mumps-rubella)の接種計画が、最初が生後12ヶ月から15ヶ月、二回目が4-6 才の二回となっているが、このうちの最初の生後12ヶ月から15ヶ月での抗体獲得失敗(Secondary vaccine failure-ワクチン接種でウイルスに対する抗体ができたあと、その後そのウイルスに全く身体がさらされないと、獲得された抗体が少しずつ減弱してゆく。-)が゜、この青年期のハシカの大量発生につながっていると分析している。

なお、フィンランドのヘルシンキ大学のPeltola H.氏らの研究では、なぜ、生後まもなくのはしかのワクチン接種で、抗体ができにくいかについては、母親のIgG抗体が残存して、それが作用しているためといわれている。
参考
Secondary measles vaccine failures identified by measurement of IgG avidity: high occurrence among teenagers vaccinated at a young age.」

また、スイスのベルン大学のLukas Matter氏らの研究「Decay of Passively Acquired Maternal Antibodies against Measles, Mumps, and Rubella Viruses」では、生まれた子供に残っている母親のIgG抗体が、何ヶ月目に消失するかについて調べたところ、血清陽性率(seroprevalence)のカーブが、おたふく風邪と風疹とは、U字型のカーブを描いたのに対して、はしかは、V字型のカーブを描いたところから、はしかに対してのほうが、おたふく風邪や風疹に比して、母親のIgG抗体の消失が遅いという結果になったという。

これに加えて、本来は、ワクチン接種後に自然感染することによって、体価の上昇(ブースター効果)を得て、修飾感染が防げ得たものが、自然感染の機会がすくなくなったためもあるようだ。

この自然感染の減少を補うものとして、人為的な感染の機会を改めて作る意味で、ブースター・ワクチン(measles booster vaccine)接種の必要性が出てきた。

そこで、1989年から、ブースター効果(booster dose of measles)発揮のために、11歳から12歳の時に、再ワクチン接種計画(the two-dose measles vaccine schedule)(prime/boost vaccination schedule)(追加の接種booster doses)を適用しているということのようだ。

このほか、麻疹ウイルスの変異の問題がある。

麻疹ウイルスの変異によって、遅行性ウイルス脳炎が発症するという問題があり、とくに亜急性硬化性全脳炎(SSPE)(Subacute Sclerosing Panencephalitis)の発症か懸念されている。

上記のはしかに関する問題点を整理すると次のようになる。

第一は、野生ウイルスに接触する機会が少なくなってきたことによるSecondary vaccine failureの問題である。

これについては、接種スケジュールを再考する必要があるのか、それとも、ブースターワクチン接種の必要性があるのか、という選択肢がある。

第二は、はしかのウイルスに対して、母親のIgG抗体の消失が遅いという問題がある。

これについては、生後まもなくのプライム・ワクチンの接種の時期(prime vaccination schedule)についての再検討が必要になる。

第三は、麻疹ウイルスの変異によって、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)(Subacute Sclerosing Panencephalitis)などの遅行性ウイルス脳炎が発症するという問題である。

第四は、そもそも、プライム・ワクチンの接種を受けない人への対策である。

日本における麻疹ワクチンの接種計画は、1回目・月齢12〜23ヶ月、2回目・小学校入学前の1年間 となっているようだ。

又、日本では、1988年から、麻疹・流行性耳下腺炎・風疹混合ワクチン(新三種混合ワクチン、MMRワクチン)の接種がされてきたが、ムンブスワクチン接種による無菌性髄膜炎の発生についての訴訟問題がおきて以降、1993年にはMMRワクチンの接種は中止され、現在は、麻疹・風疹混合ワクチンが使われている。

このような、これまでの経緯が、親をして、積極的なワクチン接種を躊躇させているのかもしれない。

今後の日本での課題だが、現実、学校閉鎖という社会的なマイナスが生じているのであるから、これを機会に、このマイナスをミチゲートしうる社会システムの用意が必要なものと思われる。

すなわち、これまでのプライム・ワクチン接種計画にブースター・ワクチン接種計画を付与し、この両者を包摂したプライム/ブースター・ワクチン接種計画(prime/boost vaccination schedule)とするかどうかの政策判断に迫られているのではなかろうか。

もちろん、ブースター・ワクチン接種については、インフォームドコンセントをどうするか、などの問題も解決しておかなければならない。

最後に、近時の新聞の社説に見られる、「日本は、はしか輸出国」なる言葉についてだが、この自虐的な言葉は、何も、日本だけでなく、「ワクチン反対先進国」のうら返しの言葉として、他の国でも使われているようだ。

たとえばこのサイト「Homeopathy in the News」では、ドイツが「はしか輸出国」(measles exporters )としている。

ドイツでは、毎年7千人から一万人がはしかにかかっつているようで、このサイトでは、「ドイツ人がアメリカを訪れるときには、「ワクチン・パスポート」が必要な時期が、じきに来るだろう。」としている。

この「はしか輸出国」というのは、アメリカにとっての「はしか輸出国」ということで、ドイツ、フランス、日本が、「はしか輸出国」の三大大国とされているようだ。

アメリカの「はしか輸入」( importations of the measles virus )状況については、下記のサイトをご参照
http://www.paho.org/English/AD/FCH/IM/TAG16_FinalReport_2004.pdf
MEASLES VIRUS

また、気になる北朝鮮でのはしかの流行状況だが、今年の3月21日に、『Measles Epidemic Appeal No. MAA54001 Operation Update No. 1
という報告書が出ており、これによると、北朝鮮では、昨年の11月にはしかの大量発生があり、3600人が感染し、うち、4人が死亡したとの事だ。

そこでユニセフの主導の下に、3月と4月の二回のフェーズに分けて、麻疹免疫化共同計画なるものがなされ、赤十字の協力の下に、生後6ヶ月から15歳までの子供6百万人に対して、免疫化計画が実施されたとの事だ。

一方、レチノール配合のビタミンA剤一千二十万服を用意し、麻疹発生率の激しい4地方に対しては、アンピシリン262000服を用意したようだ。

ちょうど、寒気の激しいときだったので、人々が部屋にこもっている機会が多かったため、感染率が上昇したようだ。

死んだ4人の内訳は、大人二人に子供二人のようだ。

報告全文は、このサイトにある。


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