Sasayama’s Weblog


2007/01/08 Monday

脳梗塞は、プロテインキナーゼCエータの遺伝子配列の違いが原因との研究

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 17:00:33

2007/01/08
 
null今日の日本の各新聞を騒がせている「脳梗塞の発症率、特定の遺伝子が左右」との論文の原文は、こちら「A nonsynonymous SNP in PRKCH (protein kinase C ) increases the risk of cerebral infarction」(Nature Genetics)である。

概要は、次のとおりである。

人の体質の個人差は遺伝暗号のわずかな差によって決まるが、これは、スニップ(SNP-Single Nucleotide Polymorphism)といわれるものである。

スニップは、遺伝子の塩基配列中に一塩基の変異が集団内で1%以上の頻度で見られるものをさし、数百から千塩基に一個の割合いで存在する。

これが、個人差を決めるポイントとなるもので、日本語では、「一塩基多型」という。

清原裕九州大教授と理化学研究所の久保充明チームリーダーは、52,608の遺伝子のタグSNP(ある領域に多数の多型が存在している場合、それらを代表して分析するために選ばれたSNPのセット)を分析し、さらに、日本の福岡県の脳梗塞患者と福岡県久山町の健常者それぞれ1126人を選び、比較研究をした結果、細かい血管が詰まる「ラクナ脳こうそく」( lacunar infarction )の発症に関わる遺伝子を解明した。

その結果、脳梗塞(脳こう塞)の患者は健康な人と比較して、「プロテインキナーゼCエータ」(protein kinase C, eta)と呼ばれるたんぱく質を作る遺伝子の特定の部分が、1〜2個置き換わっている人が多く、この人々は、その配列の違いで脳こうそくの発症率が高くなることが分かった。

このSNP(一塩基多型)の塩基対はアデニン(A)、グアニン(G)の2種類で構成されており、脳梗塞患者では健常な人に比べ、Aを持つ人が1・7倍多かった。

さらに、久山町の一般住民約1600人を14年間にわたって追跡調査したところ、塩基対が「AA」の人は、「GG」の人より脳梗塞発症率が2.8倍高かった。

この「PRKCH」(protein kinase C, eta)と呼ばれるSNP(一塩基多型)は、PKC(Protein kinase C)の活動に何らかの影響を与えているものと見られる。

また、PKC(Protein kinase C)は、血管内皮細胞に現れ、人間のアテローム動脈硬化症障害において、泡状のマクロファージとなって現れ、障害のタイプが進展するにつれ、これらの現象は、増大してくるとしている。

ところで、せっかくの論文にケチを着けるつもりは、毛頭ないのだが、この中で気になるのは、「清原裕九州大教授と理化学研究所の久保充明チームリーダーが、52,608の遺伝子のタグSNPを分析し、さらに、日本の福岡県の脳梗塞患者と福岡県久山町の健常者それぞれ1126人を選び、比較研究をした結果」の部分である。

論文の原文によれば、

SNP情報は、 the JSNP databaseからセレクトし、

福岡県久山町の情報は、14年間にわたるfollow-up cohort study (1961年から実施している生活習慣病の疫学調査「久山町研究」)から得られたとしている。

つまり、この研究のベースには、膨大な脳梗塞患者と健常者の遺伝子情報があるということである。

遺伝子検査から得られる遺伝子情報も個人情報保護法によって守られるべき重要な個人情報であり、そのためには、個人を特定する情報と遺伝子情報がつながることがないよう匿名化し、直接個人を特定できないような仕組みにしていなければならない。

上記の研究で問題なのは、「福岡県久山町の健常者」ということで、地名の固有名詞を出していることである。

つまり、特定の個人と遺伝子情報とがリンクすることは、たとえ防げても、地域としてのコホートデータベースが、固有の地名を表に出していることによって、間接的なリンクがされていることである。

もし、これが、特定の風土病的偏見につながることがあってはいけないし、このような研究の場合には、特定の地名を明らかにすることは、避けたほうがいいのではなかろうか。

なお、参考までに、このサイト「平成16年度科学技術振興調整費 先導的研究等の推進「久山町における生活習慣病のゲノム疫学研究」実施計画」には、次のように書かれている。

「40歳以上の久山町住民の大多数を対象に精度の高い健診を行い,血液サンプルを3省合同の倫理指針にしたがって収集した。過去の久山町研究のデータとともに,この新たな集団の臨床・健診・剖検情報および遺伝情報を久山町ヘルスC&Cセンターにおいてデータベース化するとともに,同センター内にデータベースの管理システムを構築する。」

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