Sasayama’s Weblog


2006/09/14 Thursday

謎の多いセレウス菌感染経路−台湾などで起こった意外な犯人例-

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:59:36

2006/09/13(Wed)
 
null自治医科大学附属病院(栃木県下野市)で、20人以上がセレウス菌に院内感染したということだが、世界には、セレウス菌院内感染の意外な犯人例がいくつもあることが分かる。

たとえば、このサイト「Nosocomial Pseudoepidemic Caused by Bacillus cereus Traced to Contaminated Ethyl Alcohol from a Liquor Factory 」によると、1990年の9月から10月にかけて、台湾の国立台湾大学医学院付設医院で、別々の分棟に入院していた15人の患者が感染した例だが、原因は、皮膚消毒用のエチルアルコールだったという例だ。

そして、そのエチルアルコールは、工場段階で汚染されていたということだった。

この台湾の病院では、工場から出荷のエチルアルコールが、95パーセントのアルコール。

それを病院で、皮膚消毒用に、70パーセントにしていたようだが、そのいずれからも、セレウス菌が発見されたということのようだ。

そして、病院の薬局部門のタンクからも、セレウス菌で汚染された95%アルコールが見つかったということで、主犯は、工場出荷元ということになったようだ。

では、95パーセントのエチルアルコールでさえ、セレウス菌の殺菌力がないのかということなのだが、これは、セレウス菌が有芽胞菌であるため、熱やアルコールに強いことと関係してくる。

有芽胞菌にはアンフィバシラス属、バシラス属、クロストリジウム属、スポロサルシナ属などが存在し、極めて高温に強く、100℃での煮沸によっても完全に死滅させることが出来ず、また、消毒薬などの化学物質やX線などに対して芽胞は極めて高い耐久性を示すという。
参照「芽胞
Bacteria Descriptions
Ecological diversity: Microbes are distributed more widely than any other organisms.」

ちなみに、このサイト「PHYSICAL METHODS OF STERILIZATION OF MICROORGANISMS」では、セレウス菌の殺菌には、摂氏132度の熱風が必要とのことである。

エチルアルコールの殺菌力( germicidal activity )について記した『Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings
では、
「アルコールをベースにした溶液の汚染は、めったに、報告されていない。
ただひとつの報告例として、セレウス菌胞子によって、エチルアルコールの汚染が引き起こされた擬似感染のクラスターが報告されている。」
( Contamination of alcohol-based solutions has seldom been reported.
One report documented a cluster of pseudoinfections caused by contamination of ethyl alcohol by Bacillus cereus spores )

として、この台湾の病院の例が、その論文(Hsueh PR, Teng LJ, Yang PC, Pan HL, Ho SW, Luh KT. Nosocomial pseudoepidemic caused by Bacillus cereus traced to contaminated ethyl alcohol from a liquor factory. J Clin Microbiol 1999)とともに、紹介されている。

また、今回の自治医科大学で懸念されているという、洗濯機とリネンと点滴針を通じての感染に似た感染例としては、1999年におきた、洗濯機と、人工呼吸器回路(ventilator circuit )、NNU(新生児ユニット)、LTS(低温蒸気殺菌器) の複合汚染による新生児感染例があるようだ。

参照「An outbreak of Bacillus cereus respiratory tract infections on a neonatal unit due to contaminated ventilator circuits.」

更に、1994年に発表されたイギリスの、この研究「Contamination of hospital linen by Bacillus cereus.」は、外科手術後の二人の患者がセレウス菌に感染したことについての調査報告書である。
参考「Bacillus cereus meningitis in two neurosurgical patients: an investigation into the source of the organism.」 

これによると、バッチ処理で、絶え間なく洗濯されている洗濯機で洗ったリネンが、ひどくセレウス菌で汚染されていたとのことである。

この洗濯機では、洗剤や、化学添加物や、給水で、汚染源は、きれいになっていたが、洗濯機に入れたリネンは、セレウス菌胞子で汚染されており、洗濯過程が終わった後も、セレウス菌胞子は、残っていたという。

このことから、セレウス菌の胞子は、洗浄の熱湯消毒段階でも、また、化学消毒液の添加でも、希釈の過程においても、生き残っていたと見られる。

それらのリネンに残っていたセレウス菌の胞子は、湿ったまま、ビニール袋に収納されたまま周囲の温度が上昇したりしたことによって、増殖していったものと見られている。

洗濯機の水を多くすることで、セレウス菌の胞子をいくらか、減少させることは、できるという。
「LAUNDRY AND TEXTILE (LINEN) SERVICES INFECTION CONTROL」参照

なお、このサイト『Purification and characterization of laundry detergent compatible alkaline protease from Bacillus cereus』や「Purification and Characterization of Bacillus cereus Protease Suitable for Detergent Industry 」のように、洗剤のもたらすph環境が、セレウス菌の増殖に貢献しているとの説もある。

また、1998年、オランダ・アムステルダムのthe University Hospital Vrije Universiteitでは、人工呼吸器のゴム風船状空気送り器の感染での新生児感染例もあったようだ。
参照「Outbreak of Bacillus cereus Infections in a Neonatal Intensive Care Unit Traced to Balloons Used in Manual Ventilation

各種院内感染例については、
The Journal of hospital infection」ご参照

また、Medscapeでの検索でも、「セレウス菌」でサーチすると、
こんなに出てくる。

Googleでも、こんな具合だ。

この論文「Management of suspected nosocomial infection: an audit of 19 hospitalized patients with septicemia caused by Bacillus species.」は、2000年10月に発表されたものだ。

これは、日本の愛知県小牧市民病院で、2000年4月から8月にかけて、入院患者29人の血液培養から、バチルス桿菌が発見されたもので、そのうちの19人が敗血症になったことについてのものだ。

そのうちの15人は、セレウス菌感染によるもの、二人は、枯れ草菌感染によるもの、一人は、リケニホルミス菌感染によるものであったという。

また、一人の死者が出たが、この患者は、敗血症を発症しておらず、死因は、基礎疾患であった新生物に起因するものと、見ている。

なお、この新聞記事では、「九月十三日に県庁で会見を開いた島田和幸院長は「まさかタオルやシーツなどから感染するとは夢にも思わなかった」と、誰も予想しなかった事態に驚きをあらわにした。」というが、記者会見前に、ちょっとサイトで調べてみれば、上記のような前例が、世界のみならず、日本国内にあったことが分かったはずであり、「夢にも思わなかった」というようなことはいえなかったはずだ。
参考「自治医科大学付属病院 Bacillus cereus血流感染症について

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