2005/12/23(Fri)
昨日の厚生労働省の平成十七年人口動態統計・年間推計発表で、今年一年間に生まれた赤ちゃん百六万七千人、死亡数百七万七千人と推計し出生数が死亡数を下回る「自然減」になるのがほぼ確実になったことで、いずれの識者も大臣も、大変だ、との一点張りのコメントなのだが、あまりにも、芸のなさ過ぎるコメントの乱発のような気がする。
女性大臣のコメントなど、ちょっと、悲惨でさえあった。
「Beyond Economic Man: Feminist Theory and Economics
edited by Marianne Ferber and Julie Nelson U. of Chicago Press, 1993」では、経済的視点からだけ、ジェンダーの問題を捉えると、過誤を犯すと、警告している。
この少子化の問題が、子供を生まない、または、生めない女性に対する社会的脅し(Social Thread)になりかねない要素をはらんでいるからだ。
これらの女性大臣が、そのような深謀遠慮を含んでのコメントをしているとは、到底思えなかったのは残念である。
人口爆発と少子化とは、裏表の関係にあるのだが、要は、それをマクロで考えるのか、それとも、パーキャピタ(per capita一人当たり)の指標で考えるのかによって、まるっきり視点が違ってくる問題である。
前にも、ハーベイ・ライベンスタイン(Leibenstein, Harvey)という経済学者の学説を紹介した事があったが、その著「経済的後進性と経済成長」(Economic Backwardness and Economic Growth )では、
子供の効用を、
労働力の担い手という「生産効用」、
老後の面倒をみてもらう「年金効用」、
かわいらしさの対象である「消費効用」
の三つに分け、
開発途上国では所得効用や年金効用が大きいから子供の数が多いが、先進国では消費効用だけであるからその数が減ると説明している。
ライベンスタインは、人口爆発の経済成長に与える影響を考察した。
今度は、その裏返しを考察する番である。
で、少子化をパーキャピタの視点で見ると、一人当たりの社会資本は、増加するし、一人一人の社会機会(就労機会、能力発揮機会など)は、非グローバルの視点からだけ云うなら、増大しうる。
要は、少子化であっても、それに見合った社会設計をしていけば、パーキャピタでみると、高付加価値型の人生設計の元で、快適な未来社会が築けるという展望に立てる。
コンパクトシティの国家版のビジョンとでもいおうか。
後の、人口増加世代の残す負の遺産についての処理をどうするかだけを考えていけばいいのである。
参考1.「貧困の人口学―「貧困の罠」と生活の質 野上裕生」
参考2.出生率と少子化対策・男女共同参画政策の推移
年 出生率
79 1.77 ……国連で「女子差別撤廃条約」採択
80 1.75
81 1.74 ……国連で「女子差別撤廃条約」発効
84 1.81
85 1.76 ……日本で「女子差別撤廃条約」批准→「男女雇用機会均等法」
87 1.69 ……西暦2000年に向けての新国内行動計画」策定
89 1.57
90 1.54
92 1.50……育児休業法
93 1.46……地方交付税に男女均等推進対策経費
94 1.50……「エンゼルプラン」男女共同参画推進本部 男女共同参画審議会 男女共同参画室設置
95 1.42……兼業主婦に育児休業給付…北京宣言
96 1.43……「男女共同参画2000年プラン」
97 1.39……週40時間労働、男女共同参画審議会設置法施行 婦人局→女性局 婦人少年室→女性少年室
99 1.34……「新エンゼルプラン」、「男女共同参画社会基本法成立・施行」
00 1.36……児童手当の拡大
01 1.33……保育所待機児童ゼロ作戦、男女共同参画局設置
02 1.32
03 1.2905
04 1.2886
05 「新新エンゼルプラン予定」
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