Sasayama’s Weblog


2005/09/28 Wednesday

近時の労働安全衛生の傾向と対策−メモ的に−

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2005/09/28
 
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1.労働安全衛生管理をめぐる新しい方向

 高度経済成長時代に効果を挙げてきた労働安全衛生管理だが、近時になって、再び、重大災害(一時に三人以上死傷)についての労働災害が増えつつあり、これまでの労働安全衛生管理のあり方について、見直しが迫られている。

 これまでの労働安全衛生対策は、発生した労働災害についての原因究明と、再発防止策の実施が中心となってきたが、これでは、近時の労働災害の変質に対応しきれなくなってきた。

 すなわち、これまでの労働災害が、機械による巻き込まれやはさまれ、墜落・転落などが中心となっていたのに対して、近時の労働災害は、非定常作業(保全等作業や異常処理作業)や、機械故障時の復旧作業,ヒューマンエラー(不安全行動や安全意識の欠如によるエラーで、「認知・確認」「記憶・判断」「動作・操作」の3つのミス)にかかわるものなどが多くなってきていることである。

 そこで、従来の労働安全衛生対策を、システマティックに、しかも、全社レベルで展開しうる手法として、JIS規格やISOに準拠したリスク・アセスメントとリスク低減の実施や、労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS)を中心とする今日的対策の導入が、求められるようになってきた。

 もっとも、その企業の規模や管理体制によって、従来型の労働安全衛生対策についても、利点があり、現在は、その二つの対策が、同時並行的に試行錯誤されつつある状況であるといえる。

 以下に(1)従来型労働安全衛生対策 (2)今日型労働安全衛生対策 それぞれの概要を記す。

(1)従来型労働安全衛生対策の概要

A. KYT(危険予知トレーニング)による安全意識の向上
手順=危険の発見→危険箇所の発表→危険箇所の絞り込み→重点危険箇所→対策→実行計画・スローガンの策定→スローガン発表

B. ヒヤリハット報告活動の実施

手順=ヒヤリとしたりハットしたりした体験報告の収集→収集事例の分析と評価→原因・種類内容などをコード化→ ヒヤリハット事例集を策定→ヒヤリハットの評価分析を元に、独自の事故防止マニュアルを作成→マニュアルの定期的な見直し
ハインリッヒの法則(1件の重大災害の裏には、29件のかすり傷程度の軽災害があり、その災害の裏には、ケガは無いが、ヒャッとした300件の体験がある。)にもとづく。

C. 3S(整理・整頓・清掃)運動など

3S(整理・整頓・清掃)運動

5S(3S+清潔+しつけ)運動

5S+3T(5S+定位+定品+定量)運動

赤札作戦(整理の手法で、職場全員で職場の不要なものに赤札を貼ることによって、全員で整理)

「量規制」(整理の手法で、最大在庫数、最小在庫数を決めたら、最大在庫(定量)位置に赤マークを設定し、最大量オーバーがひと目でわかるようにする量規制のやり方)

床ペンキ作戦(整頓の手法で、工場内のレイアウトを考慮し、位置決めをしたら作業区、通路、休憩所、倉庫等用途に合わせてペンキで床を塗り分けるやり方)、

線引き作戦(整頓の手法で、用途に合わせた床の色を決めたら、それらを区画する線を引く。)

看板作戦(整頓の手法で、社内の職場や場所が誰にでも、はっきりとわかるように看板を表示する。)

D.コンプライアンス(労働衛生安全法および関連諸制度の遵守)の観点からの体制整備
現場作業者の管理、公的資格制度の導入、労働安全責任者・安全衛生推進者・労働安全委員会の設置、安全衛生委員会実施マニュアルの策定

E.労働安全コンサルタント、労働衛生コンサルタントの活用
機械設備についてのコンサルタント、管理体制についてのコンサルタント、安全衛生教育についてのコンサルタント

F.労働安全週間・月間活動の導入、各種表彰制度、安全講習会、安全衛生発表会、改善提案制度などによるモチベーション喚起

G.各種研修教育の実施
デュポン社のSTOP(安全トレーニング観察プログラム、けがの原因の96%を占める不安全行動を体系的、効果的に観察・措置・再発防止する方法を学習するためのプログラム、Safety Training Observation Program)、
職長教育、安全衛生責任者教育、各種有資格者に対する再教育、OJTなど

H.危険箇所の点検整備
安全診断の実施、安全パトロールの実施、作業手順の作成、災害現認書の配布などによる再発防止策、災害発生時のマニュアル作成、老朽化設備などへの安全防災対策投資の実施、など

I.その他
交通労働災害防止対策、腰痛防止対策の実施、災害事例研究、環境安全監査の実施、地震発生時などの保安防災対策、防災訓練の実施、指差し呼称の実施、相互注意運動の実施、始業時ミーティングの実施、快適職場作り、分煙対策、健康づくり、メンタルヘルス対策、産業医への委嘱、セクシャルハラスメントの防止、等

(2)今日型労働安全衛生対策の概要

A. 事業ミッションの見直し
「安全・環境・品質・コスト・納期についての顧客満足度を高める」との、安全の趣旨を取り入れた事業ミッションへの変革

B. JIS規格にもとづいたリスク・アセスメント実施と、設計・製造のリスク低減

(A)リスク・アセスメントと、リスク低減 実施の過程
ISO14121(「機械の安全性−リスク・アセスメント」国内翻訳JIS規格では、「JIS B 9702」)に基づいて、リスク・アセスメント実施→NO→ISO12100(「機械類の安全性−基本概念:設計のための一般原則」国内翻訳JIS規格では、「JIS B 9700」)に基づいて、リスク低減実施→YES→再度、ISO14121に基づいて、リスク・アセスメントの実施→OK

(B)リスク低減の方法
a.本質安全設計によるリスク低減
ISO12100の条項遵守
「鋭利な端部・角部・突出部の回避」「本質安全設計の採用」「構成部品間のポジティブな機械的作用の権利適用」「人間工学原則遵守」「制御システム設計時の安全原則適用」「空圧・油圧設備の危険源防止」「電気的危険源の防止」「危険源の暴露機会の制限」

注 ISO12100で規定する危険源
「機械的危険源」「電気的危険源」「熱的危険源」「騒音危険源」「振動危険源」「放射線危険源」

b.安全防護によるリスク低減
(1)隔離の原則−安全柵による安全防護
(2)停止の原則−ドア・インターロック装置、非常停止スイッチ、ティーチング装置、イネーブル装置などの安全装置による安全防護

(C)リスク・アセスメントの方法

「危険源(リスク)の抽出」→「評価」→「改善領域を決定」→
「改善領域以外について改善を実施 」

(D)リスクカテゴリーの計算式
リスクカテゴリー=「ケガの重大性」×(「危険に遭遇する頻度」+「ケガの可能性」)−「防護のレベル」

(E)防護のレベルの五段階評価
評価点5−本質安全、 評価点4-フェール・セーフ機器・フール・プルーフ機器・ガード、評価点3-保護具、評価点2-一般の検出機器、評価点1−表示警告・教育訓練

注 フェール・セーフ(安全損傷)の4+1方法
1.分割構造:ダブル(DOUBLE)
2.多経路荷重構造:リダンダント(REDUNDANT)
3.肩代わり構造:バック・アップ(BACK UP)
4.荷重軽減構造:ロード・ドロッピング(LOAD DROPPING)
番外.フール・プルーフ(FOOL PROOF)設計(馬鹿よけ設計)

(F) リスクカテゴリー・レベルの五段階評価

レベルー許容できない(改善領域)、レベル-重大な問題あり(改善領域)、レベル-問題が多少あり(改善領域)、レベルー許容できる(維持領域)、レベル-無視できる(維持領域)、

(G)リスクカテゴリー・レベルに対する段階別対応。
レベル機峭く受け入れ可能なリスクの領域までは、安全。」
レベル供峙容できるリスクまでは、残留リスクをリスク低減策で減らした上で、安全とみなす。」
レベル轡譽戰覘献譽戰覘后峙容できるリスクを超えて、許容できないリスクにいたる領域については、改善安全対策を施す。」

(H)改善安全対策実施までの過程
「本質安全設計による危険源の除去」→「リスクの低減」→「除去できない危険源に対して、安全防護によるリスクの低減を行う。」→「最後まで低減できない残留リスクに関しては、使用者への情報提供(表示および文字による機械本体への表示など)と警告を行い、機械安全を確保する。」

(I)その他
プロセス安全性評価や潜在危険性評価のためのリスク解析手法としては、HAZOP法(危険性と運転性Hazard & Operability)、What-if法、PHA, FMEA, FMECA, FTA, ETAなどがある。
また、ヒューマンエラー評価については、ヒューマンエラー分析評価手法− J-HPES − がある。

なお、安全性の妥当性確認に必要とされる基礎能力の認定制度として、「セーフティー・アセッサー」制度というものがある。

C. JIS規格に基づいたプロジェクト・マネジメント導入

ISO10006(「プロジェクト・マネジメントにおける品質の指針」 国内翻訳JIS規格では、「JIS Q10006」)のなかの、
5.10−リスクに関連するプロセス
5.10.1−リスクの特定 
5.10.2−リスクのアセスメント 
5.10.3−リスク対応策の作成 
5.10.4−リスクの管理
に基づく

安全設計を取り込んだプロジェクト・マネジメントの導入
現在のISO9000シリーズのガイドラインとしてのISO10006(このうちの、リスクに関するプロセス)を指針としたプロジェクト・マネジメントの導入
個別のプロジェクト管理に安全管理を取り入れる。

D.労働安全衛生マネジメント・システム(OHSMS)の導入
 現状では労働安全衛生マネジメント・システム(OHSMS)の国際規格化はされていないが、各種ある労働安全衛生マネジメント・システム(OHSMS)のうち、OHSAS18001:1996(通称「オーサス18000」)が、将来の国際規格として、有力視されている。
 この「安全に関するOHSAS18000」と、「品質に関するISO9000シリーズ」と、「環境に関するISO14000 」とが一体となり、「統合マネジメントシステム」として機能することが求められている。


2.それぞれの労働安全衛生対策 のメリット・デメリット

 事業体の規模・管理体制・これまでの安全対策の進化度・これまでの事故態様などによって、これからとりうべき労働安全衛生対策 は、異なってくるものと思われる。
 以下にそれぞれの労働安全衛生対策 のメリット・デメリットを記す。

(1)従来型労働安全衛生対策のメリット・デメリット

A.メリット  ボトムアップからの全員参加型安全対策運動の展開が図られる。

B.デメリット  ヒヤリ ハット体験の報告が人事考課に反映されるのではないかとの危惧からの、安全運動の低迷。
安全運動がマンネリ化し、実効が薄いものとなる。

(2)今日型労働安全衛生対策のメリット・デメリット

A.メリット マネジメントにビルトインされた形での展開になるため、安全対策を意識しないで、労働安全が図られる。
非定常作業や、機械故障時の復旧作業,異常時への対処 など、定型化されていない労働災害に対して、実効があがる。
ISO9000シリーズとの連動により、統合化されたメリットを発揮できる。

B.デメリット 推進担当者の不足など、中小企業では、管理体制の確立がむづかしい。

3.今後のとりうる労働安全衛生対策提案

 従来型労働安全衛生対策と、今日型労働安全衛生対策とをハイブリッド化させた対策の構築を目指す。

 すなわち、(1)現在の人的資源によって、実効・即効性があり、管理負担をともなわないいくつかの従来型の労働安全衛生対策 を取り入れるとともに、(2)JIS規格とISOに準拠したリスク・アセスメントとリスク低減策の実施と、(3)すでに取得済みのISO9000シリーズのガイドラインであるプロジェクト・マネジメントISO10006を媒介に統合化が図られうるOHSAS18000 の取得を新たに目指す。

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