Sasayama’s Weblog


2005/09/07 Wednesday

日本と中南米とのH5N2鳥インフルエンザウイルスの接点

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:21:18

2005/09/07(Wed)

null 2005年9月2日、農林水産省家禽病小委員会委員長である北海道大学の喜田宏教授が、記者会見において、「今回の鳥インフルエンザ流行の感染経路は、非認可のワクチンを接種した結果の可能性がある」ことを明らかにし、養鶏業界に大きなショックを与えている。

また外電でも、the Daily Yomiuri Onlineの
Artificial infection suspected in Japanese bird flu outbreak」やUnited Press Internationalの「Japan to cull 1.5M chickens with bird flu」などを元に、世界に伝えられた。

動物衛生研究所による遺伝子配列解析の結果によると、日本のウイルスはメキシコとグアテマラのウイルス株に94〜97%一致(concordance rate)するという。

そこで、不十分に不活化されたワクチン(あるいは生ワクチン)を使ったため、この事態をもたらした可能性があるというのだ。

しかし、家禽疾病小委員会は、違法ワクチンによる中南米のウイルスと日本との関係をにおわせてはいるものの、遺伝子シーケンス(genome sequence )など、その証拠となりうるものは、何一つ示していない。

そして、うわさだけが先行して疑心暗鬼をうみだしてしまっている。

家禽疾病小委員会の無責任ぶりがかんじられる。

家禽疾病小委員会は、もし、ワクチン原因論を展開するのであれば、におわして反応を見るというのではなくて、遺伝子シーケンスを同時に発表するとか、具体的なことを言うのでなければ、混乱を引き起こすばかりである。

「Research Issues in Animal Surveillance and Pandemic Planning」

Vaccination of chickens against H5N1 avian influenza in the face of an outbreak interrupts virus transmission

「Influenza: Emergence and Control」
にある情報では
「伝統的に香港で商業的に使われている家禽ワクチンは、
A/CK/Mexico/232/94/(H5N2)をベースに作られている。」という。

もし、この情報が正確であるとすると、推測にはなるが、日本と中南米を結ぶ接点は、このあたりにあるようにも思われる。

A/CK/Mexico/232/94/の遺伝子シーケンス(Raw Sequence)は、こちら
http://flu.lanl.gov/search/view_record.html?
accession=AY497191&database=fluA

で見ることができる。

また、サイト「The Influenza Sequence Database 」

「A/chicken/Mexico/」をサーチすると、これだけのウイルス株があることがわかる。

A/chicken/Mexico/31381-Avilab/94
A/Chicken/Mexico/31381-8/94
A/Chicken/Mexico/31381-7/94
A/chicken/Mexico/31381-6/94
A/Chicken/Mexico/31381-5/94
A/Chicken/Mexico/31381-4/94
A/Chicken/Mexico/31381-3/94
A/Chicken/Mexico/31381-2/94
A/Chicken/Mexico/31381-1/94
A/chicken/Mexico/28159-541/95
A/Chicken/Mexico/26654-1374/97
A/chicken/Mexico/232/94
A/chicken/Mexico/15407/97
A/Chicken/Mexico/31382-1/94
A/Chicken/Mexico/31382-7/94
A/chicken/Mexico/37821-771/96

各ウイルスの遺伝子シーケンスは、それぞれの「Accession 」欄の数字をクリックすると出てくる。

H5N2としては、世界にこれだけのウイルス株があるようだ。

さらに、メキシコでは、1995年1月から、鳥インフルエンザ・ワクチネーション・プログラムが実施され、130億服の不活化ワクチンと、八億五千万服の鳥インフルエンザ組み込みの遺伝子組み換え・鶏痘ワクチン(recombinant fowlpox vaccine containing an avian influenza virus gene または、Recombinant fowlpox virus-vector vaccine、Trovac Aih5)が、使用された。

これによって、1995年6月までに、高病原性のH5N2は、根絶されたが、低病原性のH5N2は、根絶されえず、中央メキシコに、今も、循環しているという。
http://www.sld.cu/pipermail/farmepi-l/2004-March/000352.html
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=
PubMed&list_uids=10737653&dopt
=Abstract
参照

この際、組み込みに使用されたH5N2は、ProMED情報によれば、1994年から95年のメキシコでのH5N2型株を使用したとある。

となれば、以下のうちのどれかということなのだろう。

A/chicken/Mexico/232/94
A/chicken/Mexico/31381-Avilab/94
A/Chicken/Mexico/31381-1/94
A/Chicken/Mexico/31381-2/94
A/Chicken/Mexico/31381-3/94
A/Chicken/Mexico/31381-4/94
A/Chicken/Mexico/31381-5/94
A/chicken/Mexico/31381-6/94
A/Chicken/Mexico/31381-7/94
A/Chicken/Mexico/31381-8/94
A/chicken/Mexico/28159-541/95
A/Chicken/Mexico/31382-1/94
A/Chicken/Mexico/31382-7/94
A/chicken/Mexico/37821-771/96

今後、これらの鶏痘ウイルスや、ニューカッスルウイルスなどにウイルスベクター(poxvirus-vectored)された、多価ワクチン(現行のウイルスワクチンをベースにして外来抗原を発現させるベクターワクチン、multiantigen, multistage vaccine )は、ますます、増えてくるように思われる。

メッドイミューン社とリバースジェネティクス(逆遺伝子)技術に関してライセンス契約を締結されている日本のシゲタ動物薬品工業株式会社のサイトの中に、「H5N1アジア株とH5N2アメリカ・メキシコ株の抗原性比較表」
というサイトがある。

この表の中の「相同性」(homology)の数値を見ると、A/Ck/Mexico/31381-3/94(H5N2)と遺伝子組換えワクチン(H5N1型)との相同性は、85パーセントとなっている。

相同性の観点から見ると、遺伝子組換えワクチン(H5N1型)とH5N2ウイルスとの相同性数値は、異なるN亜型であっても、かなり、高い数値を示していることがわかる。

(相同性検索は、こちらのNCBIサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/で可能。)

同じサイトの中の「ワクチン開発の経緯」には、『現在アジアを中心に使用されている鳥インフルエンザH5亜型不活化ワクチンはH5N2型株(Heterologous vaccine)であり、H型が同一であるがN型が異なる株を用いて製造されています。これらの製造方法によるワクチンは、病原体の増殖を抑え、発症及び死亡を抑制するのみの効果であり、病原体の感染自体を防止することはできません。』との記述もある。

また、「A/chicken/Guatemala」でサーチすると、次の種類があることがわかる。

A/Chicken/Guatemala/194573/02
A/chicken/Guatemala/45511-1/00
A/chicken/Guatemala/45511-2/00
A/chicken/Guatemala/45511-3/00
A/chicken/Guatemala/45511-4/00
A/chicken/Guatemala/45511-5/00

これについても、同様に、それぞれの「Accession 」欄の数字をクリックすると、「A/Chicken/Guatemala/194573/02 」の遺伝子シーケンスなど、このように見ることができる。

今では、ウエブサイトで、遺伝子配列を入力すると、どのウイルスかを判定してくれるものもある。

このウェブサイト『WWW Signal Scan』のように、「Select signal classes to scan 」のなかの「Bird」にチェックを入れ、「Please enter or paste a Nucleic Acid sequence to analyze 」の欄に、遺伝子配列を入力して、「submit」をクリックすると、該当のウイルスの特徴を表示してくれるというようなものまである。

結果は、この「Cis-element」(遺伝子発現転写制御領域)リストなどと照らし合わせてみる。

なお、昨年11月10日の薬事・食品衛生審議会のワクチン審議 では、日本の権威者が、鳥インフルエンザ用ワクチンをどう考えているかについて知るためには、きわめて興味深い論議が展開されている。

当日は、いくつかのものについての輸入承認にかかわる審議がされている。

この日の審査の対象となったのは、次の三種類の鳥インフルエンザワクチンの輸入についてである。

。腺鼻複硲毅裡屋〃拭防坡莢愁錺チン(NBI) 輸入元日本バイオロジカルズ株式会社
メキシコのAvi−Mex社が1998年に同国において製造承認を得たもの ワクチン株はH5N2亜型

▲譽ぅ筺璽潺紂璽鵤腺稗 輸入元株式会社シーエーエフラボラトリーズ
米国バイオミューン社製 ワクチン株は、H5N9亜型

ノビリスIA inac 株式会社インターベット
ワクチン株は、H5N2亜型で、A/Chicken/Mexico/26654-1374/94(M5/94)が本製造用株

このうち日本バイオロジカルズ株式会社から輸入申請されているワクチンは、A/chicken/Mexico/232/94を使っている。

遺伝子塩基配列は、こちら参照

また、「Nobilis Influenza H5」ワクチンは、オランダのAkzo Nobel系列のIntervet社のもので、David E. Swayne博士によって、メキシコのウイルス株によって作られたものである。
http://www.avian-influenza.com/Control/efficacy_study.asp
http://www.avian-influenza.com/binaries/95_77040.doc
http://www.undp.org.vn/mlist/envirovlc/022004/post87.htm
参照

この輸入元の株式会社インターベットは茨城県(茨城県かすみがうら市深谷1103)に中央研究所を有し、ワクチンをはじめとする動物医薬品等の研究・開発・承認取得、輸入、販売をしている。

であるとするなら、なぜ農林水産省家禽疾病小委員会は、今回、「茨城のH5N2ウイルスの遺伝子シーケンスを発表しながら、違法ワクチン疑惑説を公表する。」という方法をとらなかったのであろうか?

「動物衛生研究所による遺伝子配列解析の結果によると、日本のウイルスはメキシコとグアテマラのウイルス株に94〜97%一致するという。」というのであれば、遺伝子シーケンスは、公表できる状態にあるということであろう。

いたずらな疑心暗鬼は、現在、OIEやEUで進められている大きな鳥インフルエンザ・コントロール・ツールの変化を見失うことにつながってしまうのではないのか。

違法ワクチン問題を論じるときに、次の二つの視点を明確に分ける必要がある。

ひとつは、法令遵守−コンプライアンス−の問題
もうひとつは、本来、ワクチン接種解禁のあり方の問題
である

この二つを整理しないまま、先日の家きん疾病小委員会は、国民の目の前で、バケツをぶちまけただけで、帰ってしまったようにも、思われる。

それに、遺伝子シーケンスを明確に示した上でのものではなかったということも、混乱に輪をかけている。

少なくとも、疑いにたる状況証拠を示しての記者会見でなければ、いたずらに、疑心暗鬼を生むだけであろう。

この5月、鳥インフルエンザに関するOIEコードを変更したが、これは、コントロール手段として、Stamping Outとワクチネーションとのミックスド・コントロール・ツール(an additional tool for the control and eradication of AI.)を取り入れようとの意図が強いものと思われる。
参照
『 News: OIE: Terrestrial Animal Health Code, Revisions 』
「Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals」
Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals Chapter 2.1.14.」

ちなみに、OIEでは、このサイト『THE USE OF VACCINATION AS AN OPTION FOR THE CONTROL OF AVIAN INFLUENZA』
の中の4ページ「Table 1. Guidelines for the application of control policies for AI」にみるように、、バックヤード養鶏と企業養鶏とでのワクチネーションで、次のような層別対応をすることを推奨している。

1.バックヤード養鶏(Backyard)
企業養鶏部門に、まだ、感染が広がっていなくて、飼養密度が高いか低い場合には、殺処分

2.バックヤード養鶏(Backyard)
企業養鶏部門に、すでに感染が広がっていて、飼養密度が低い場合には、殺処分

3.バックヤード養鶏(Backyard)
企業養鶏部門に、すでに感染が広がっていて、飼養密度が高い場合には、ワクチネーション

4.企業養鶏(Industrial)
企業養鶏部門に、まだ、感染が広がっていなくて、飼養密度が高いか低い場合には、殺処分

5.企業養鶏(Industrial)
企業養鶏部門に、すでに感染が広がっていて、飼養密度が低い場合には、殺処分

6.企業養鶏(Industrial)
企業養鶏部門に、すでに感染が広がっていて、飼養密度が高い場合には、ワクチネーション

以上のように、殺処分とワクチネーションとを、その状況によってたくみに使い分け、鳥インフルエンザの感染をコントロールしている。

今回のOIEの鳥インフルエンザに関するコードの主な変更点は、要約すると、次のとおりである。

「1.低高病原性鳥インフルエンザの所在の通知報告
2.家禽の概念には、商業的家禽も含むこと。
3.野生の鳥の鳥インフルエンザの所在の報告も含むこと。
4.区画化(compartmentalization)によって、家禽の分集団の安全性を確保するための概念の導入。
5.ワクチネーションについては、コントロールのための追加的ツールとしてワクチネーションが導入された貿易商品についての新しい基準を組み込む。
また、ワクチネーションは、OIEマニュアルのプロトコルに従った、認可ワクチンでの、実行がされるものとする。」

また、私のブログ「低病原性鳥インフルエンザ対応のEU新司令のもつ意味について-Stamping Out政策からの転換 -」でも紹介したように、先月、欧州委員会は、低病原性鳥インフルエンザに対応した92/40/EEC司令の見直しを、先月8月28日に、採択し、この中で、Stamping Out(根絶)政策からの転換を、強く打ち出した。

今回の違法ワクチン問題から、実りあるものを得るためには、低病原性鳥インフルエンザ蔓延時代での、日本の鳥インフルエンザ対策のコントロール・プロトコルの見直しをする、いい、きっかけにする必要がある。

最後に、日本が、たとえば、部分的にも、ワクチン接種国に転換した場合、問題となるのは、貿易上の問題であると思われる。

すなわち、WTOのSPS協定のベースとなる国際基準として、OIEの陸生動物衛生規約(OIE Terrestrial Animal Health Code)があり、ワクチン接種の基準は、そのなかの「標準診断検査及びワクチンマニュアル」(Manual of Diagnostic Tests and Vaccines for Terrestrial Animals )
に基づく。

これに基づいて、二国間(bilateral )で、家畜衛生条件(Animal Health Requirements)が締結される。

アジアでは、このサイトのような条件になっている。

また、各国でのワクチン接種是非の状況は、このサイトのとおりである。

たとえば、このサイト「タイからの日本国向け加熱処理家きん肉等に関する家畜衛生条件
では、日本への家禽肉輸出の衛生条件として、次の文言が入っている。

(インド・中国からの輸入についても、同様の文言が入っているが、シンガポール、台湾、韓国からの輸入については、ない。)

「4 日本国に輸出される加熱処理をされた家きん肉等の原料に供される家きんについては、次に掲げる条件を満たすものでなければならない。
(1)生産農場においてと殺前少なくとも21日間高病原性鳥インフルエンザ等の発生が確認されていないこと
(2)生産農場において高病原性鳥インフルエンザワクチンを接種されていないこと
(3)5に規定する認定食鳥処理施設において、輸出国の政府機関の検査官が行うと殺の前後の検査により、伝染性疾病に感染しているおそれのないことが確認されたものであること」

また、「台湾から日本向けに輸出される家きん肉等の家畜衛生条件」では、「H5及びH7血清亜型以外の血清亜型のA型インフルエンザウイルスのうち、国際獣疫事務局の標準診断検査及びワクチンマニュアルの定義に基づき高病原性鳥インフルエンザウイルスとされたもの」とある。

ここで、問題は、日本がワクチン接種国になった場合、ワクチン未接種条件をタイや中国などの輸出国に対して、家畜衛生条件のなかで要求できるかどうかなのだが、非常に難しくなるものと思われる。

要は、すべて、今年5月のOIEコードの変更に即しての日本の鳥インフルエンザ防疫方針の変更が、可能かどうかにかかっている。

参考

1.中国でのA/chicken/Mexico/232/94 関連サイト
http://www.oie.int/eng/publicat/rt/2302/PDF/453-465webster.pdf
http://jvi.asm.org/cgi/content/full/78/17/8951
http://library.wur.nl/frontis/avian_influenza/09_ellis.pdf

2.「多年にわたる野外ウイルスの遺伝子変化に対応した、H5 高病原性鳥インフルエンザからのワクチンによる鶏の防御」http://www.nbi.ne.jp/pdf/005_protect.pdf
http://www.nbi.ne.jp/news_all.html
http://www.nbi.ne.jp/index.html

3.中国製ワクチン「禽流感滅活疫苗」
http://www.qiludb.com/web/product.php?class=%D2%DF%C3%E7
http://www.qiludb.cn/web/showproduct.php?sid=163

4.インターネット上で使える遺伝子解析の各種ツール・リンク集
「ExPASy Proteomics tools」

「Genetic Research Tools」

「Affymetrix software」

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

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