Sasayama’s Weblog


2010/01/07 Thursday

菅直人vs小野善康vs山形浩生のトライアングルだったりして

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 09:16:50

2010/01/07(Thu)
 
菅直人さんの財務大臣ご就任によって、俄然、脚光を浴びだしてきたような小野善康さん、まあ、菅さんと同じ東工大ご出身というような世俗的な連想から生まれているものなのでしょうが。

小野善康さんについては、私のサイトでも
本当に「言論不況」なのか。
小泉構造改革の視点の誤り−公的部門と私的部門とでは、やるべきことがちがうのに−
やなんかで、何度か取り上げさせていただきました。

この後者で取り上げたのですが、小野善康さんが主張される「合成の誤謬」では、ミクロで正しいことでも、それと同じことを私的部門も公的部門も同じやり方で同時にやれば、それは、マクロでは、誤ったやり方になるというのが、ミソですね。

いわゆる、部分最適・全体最悪の構図です。

で、ここに、絡んでくるのが、山形浩生さんです。

このサイトこのサイトでの山形vs小野のやり取りなんか、面白いですね。

山形浩生さんは、小野善康さんの言われる「良い公共投資を延ばすことの必要性」「需要創造型の良い公共投資」とは一体何なのかを、小野さんは指し示していない、と批判しています。

これに対して、小野さんは、構造改革と景気対策とは、全く別物であり、前者は、過去の損失の配分問題であり、後者は、カネからモノへの回帰問題だとしておられます。

で、その、カネからモノへの回帰を図るにはどうしたらいいのか、については、確かに、山形さんがおっしゃられるように、小野さんは、具体的な案を示しておられません。

私が察するに、それは、「需要サイドでのビッグ・プッシュ政策」なのではないかと、思っています。

では、「需要サイドでのビッグ・プッシュ政策」とは、なになのか?ということなのですが、残念ながら、まだ、答えはないようです。

子供手当てや農業者戸別所得補償などの直接支払い型の財政支出がそうであると主張される向きもあるでしょうが、少なくとも、それは、マッシプなという意味で、需要創造型の分散型ビッグ・プッシュではあるが、財政負担からいって、持続可能型のビッグプッシュではないとは言えそうです。

ひとつだけ、答えらしきものを言うとすれば、『デマンド・サイドでのビッグ・プッシュ』とは、『サプライ・サイドでの、おなじみのビッグ・ブッシュ』と異なって、「indivisibilities on the demand side」を喚起するものであるということです。

では、デマンドサイドにおける「indivisibilities」(不可分性)とは、何でしょう?

思い出すのは、過去の大量消費時代での大衆喚起による「indivisibilities 」の結果としての具現化ですが、これが、現代に再現できるはずはありません。

また、デフレの罠の存在は、せっかくのデマンド・サイドでのビッグ・プッシュを、音もなく無力化し、吸い取っていきます。

まさに、デマンド・サイドでのビッグ・プッシュの吸血鬼は、デフレの罠であるといえます。

『デマンド・サイドでのビッグ・プッシュ』が、阻害されなくいきわたるためには、やはり、日銀さんがいわれるような期待成長率の上昇にまたなけれはならないのでしょうか?

あるいは、範囲の経済学(Scale of Economies)を意図した今日的なビッグ・プッシュの手法、あるいは、範囲としての「indivisibilities」(不可分性)、を考えるべきなのでしょうか?

つまり、ネットワークによって一体化されたという意味での「indivisibilities」(不可分性)ということになるのでしょうか?

その場合の範囲の経済の効果発現を助長しうる外部経済とは、これまで(昔、ローゼンシュタイン・ロダンが均衡発展論批判において指し示したような)とは異なった社会インフラの具備なのでしょうか?

期待成長率に救いを求める構図は、小野善康さんの言のはしはしにも、見えかくれしています。

山形浩生さんは、ポール・クルーグマンのインフレターゲット論をいち早く日本に紹介したかたでもありますが、では、ご自身がリフレ論者であるかどうかについては、不透明な部分もあるようです。

一方の小野善康さんは、反インフレターゲット論者であると見受けられますが、そうかといって、完全な反リフレ論者であるともいえないようです。

一方、菅直人さんが最近言われている『第三の道』というのが、ちょっと、その内容が見えてこない(あれから一ヵ月半もたって、いまだに『深く考慮中』では困るんですが—)のですが、私なりに解釈すれば、サプライ・サイド経済政策とデマンド・サイド経済政策とのハイブリッドの道をさしているのかな?なんて、かってに考えています。

私自身として、最近出版されたアンソニー・ギデンズの『日本の新たな「第三の道」」なんてのが、いい線を指し示しているようにも見えます。

すなわち、市場至上主義を完全否定するのではなく、それに、福祉改革をハイブリッドに組み合わせた政策志向こそ、日本型社会主義国ニッポンの進むべき道なのかなあ?などと、考えています。

たとえば、非営利組織に対して外部経済の形成を促すようなビッグ・プッシュを与えることは、どうなのでしょう?

形の上では、デマンドサイドとサプライサイドとの中間へのビッグ・プッシュ(分水嶺へのインセンティブとビッグ・プッシュとでもいったほうがいいのでしょうか?)となりえます。

また、非営利組織が文字通りの非営利組織であると言う前提(このごろは、まがいものの非営利組織が多いのでなんともなのですが)ではありますが、投下されたインセンティブが、生産刺激的にも需要刺激的にも、不胎化されうるニュートラルなインセンティブとはなりえます。

これこそ、現代版バージョン『混合経済』の再来のスキームの到来ですね。

この場合は、トライアングル(公・私・非営利)の混合経済のスキームとなりえますが。

過去の混合経済のスキームが、1929年の大恐慌後に広まったスキームであるのと同じように、リーマンショック後の世界経済の混乱期に再び生まれつつある。ニューバージョンの混合経済のスキームへの模索の始まり、というわけです。

 

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