2009/05/17(Sun)
1968年の香港カゼのパンデミックは、H3N2であったが、このときにヒトに与えた抗体が、今回の新型インフルエンザウイルスH1N1にも効力を発揮する抗体を与えているのではないか、との謎を、アメリカCDCは、想定しているようである。
このことについては、二年前の私のブログ記事
「H5N1鳥インフルエンザ・ウイルスに対して、H1N1ウイルスのN1部分に対する自然免疫が、効果を発揮しているとの学説」
とも、関係してくるのであるが、ここでは、H1N1ウイルスのN1部分での自然免疫がH5N1ウイルスにたいして、効力を発揮しているとの研究成果であった。
これが、さらに、H3N2ウイルスの自然免疫がH1N1ウイルスにたいして、効力を発揮している、となれば、H3N2→H1N1→H5N1への自然免疫の連鎖が起きている、と、見ることも出来るというわけだが。(cross-reactive N1 NA immunity )
いずれにしても、過去のパンデミックによって得た自然免疫が、HAの差異を越して、N2部分の共有によって、H3にもH1にもH5にも、効力を発揮している、と見たほうがよさそうだ。
今回のH1N1パンデミックにおいて、なぜ低年齢にのみ感染者が多いかは、これで謎解きが出来るはずだが。
このCIDRAPの記事
「Fewer senior swine flu cases may hint at protection」
においては、
なぜ今回のH1N1が若いヒトのみをおそうのか?について触れていて、その理由として
「過去にこれまでその人がどのようなワクチン接種を受けていたかがポイントになる。」として
「メキシコにおける感染者の51パーセントが20歳未満であること、アメリカにおける感染者の58パーセントが18歳未満であること、などから、それより年取ったヒト、特に60歳以上の人には、何らかの免疫体が備わっているのではないか、という推測ができる。」としている。
ちなみに、これまでのパンデミックをみてみると、
1918年はH1N1
1957年から1958年まではH2N2
1968年はH3N2
1976年豚インフルエンザではH1N1
となっている。
今回のH1N1新型インフルエンザ・ウイルスは、これまでの上記のウイルスとは、似ていないものではあるが、なぜか、60歳以上の人は、今回の新型インフルエンザウイルスに対して、抗力を示している。
CDCは、これらのことについて、現在検証中である。
また、今日のワシントン・ポスト紙の記事「Age of Flu Victims Has Big Implications」では、今回の新型インフルエンザの犠牲者の年齢分布が、重要な鍵を握るとしている。
すなわち、1918年のスペイン風邪、1957年のアジアカゼ、1968年の香港カゼ、1977年のソ連型カゼに共通して言えることは、このいずれのときにも、若い世代が、多く罹患していたとしている。
この原因は、このいずれの場合も、ある程度の抗体が作用していたと見ている。
今回の新型インフルエンザにおいても、平均罹患年齢は、15歳であって、罹患者の三分の二が18歳以下であると言うことだ。
今回の新型インフルエンザが若い人にのみ影響している理由として、二つのことがあげられているとしているる
第一は、若い人ほど、その行動範囲が広く、濃厚接触の度合いがおおきい、ということであるる
第二の理由として、幾人かの専門家は、いくつかの仮説をあげている。
New York Medical CollegeのEdwin D. Kilbourne氏の仮説はつぎのとおりだ。
すなわち、いまの若い世代のうち、一定の割合の人たちは、これまで、H1N1との感染の機会がないか、または、H1ワクチンの接種の機会がなかったのではないのか?という仮説である。
今回のインフルエンザ感染の地理的な分布を見ると、著しい差が地理的にみられるが、これは、1968年にパンデミックとなった香港カゼの北米大陸とヨーロッパ大陸との感染度の違いと一致しているという。
このときは、1968年から1969年の冬にかけての第一波で、北米大陸の死亡者数の四分の三が、インフルエンザによるものであったのに対して、1969年から1970年の冬にかけての第二波において、フランスやイギリスでは、それを上回る四分の三以上が、インフルエンザによるものであったとしている。
つまり、この第一波と第二波との間において、ウイルスはH2N2からH3N2にシフトしたと、専門家は、見ているようだ。
このことから、ヨーロッパ人においては、北米人よりも、H2N2への曝露歴は、少なく、最近になって、ヨーロッパ人は、抗体を獲得したと、見ている。
そして、このことが、ヨーロッパ人をして、北米人よりも、「半分新しい(Half-New)H3N2」の到来に対して部分免疫を持っているのではないか、との推測をしている。
一方、第ニ波においては、N2部分の変異によって、ヨーロッパ人は、H3N2への抗体力が低下していたため、北米人よりも、インフルエンザによる死亡率が高くなってしまった、と、見ている。
今回においても、新型インフルエンザH1N1が、第二波において、どのような変異(ウイルスの免疫回避– immune evasion-によるウイルスのH部分またはN部分におけるチェンジ・コート-changes coats-)をするかによって、大陸別の犠牲者の数が、どう変化するのか、が注目されると、このワシントンポストは、結んでいるのだが。
参考
「INVESTIGATION INTO PERPLEXITIES IN THE SERODIAGNOSIS H1N1 SUBTPYE SWINE INFLUENZA VIRUS INFECTIONS」
「Predicting Antigenic Variants of Influenza A/H3N2 Viruses 」
「Immunity to Influenza A Virus in Humans By Brian Murphy」
「The role of cross-immunity and vaccines on the survival of less fit flu-strains 」
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