Sasayama’s Weblog


2005/03/21 Monday

「財政赤字は、テロリズムよりも怖し」との米調査機関の報告

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2005/03/21(Mon)

NABE( National Association for Business Economics)というアメリカの経済調査機関が3月21日に発表した調査報告では、アメリカ経済にとって最大の脅威は、テロリズムではなく、財政赤字であるとしている。
http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=10000103&sid=aV9d59yRSIhA&refer=us参照

また、長期的には、社会保障費の増嵩であり、短期的には、経常収支の赤字であるとしている。

レーガン時代の「双子の赤字」が、ブッシュ時代に、再び再現しつつあるとは、これまでにもいわれてきたことだが、その状況がさらに深刻化しつつあるということなのだろう。

経常収支は、財政収支と民間収支を足したものであり、その財政収支は、歳入と歳出との差であり、民間収支は、貯蓄と投資との差である。

レーガン時代の双子の赤字(財政収支と経常収支とが、ともに赤字になるという現象)は、どうして生まれたかといえば、減税先行をしたがために、財政赤字が増え、その分を国債増発でまかなったため、金利が高くなって、ドル高になり、それに、減税による景気刺激も手伝って、需要が増加し、この両者があいまって、貿易赤字が拡大していったというものである。

ブッシュ時代の双子の赤字は、このレーガン時代の双子の赤字とは、いくつかの点で異なっている。

イラク出兵や減税先行によって、財政赤字が拡大していることには変わりない。

しかし、金利は、いまだ低水準にあり、米連邦準備制度理事会(FRB)は、余裕を持って、次期金利引き上げを、計画的にしようとしている。

また、ドルは、前スノー財務長官がドル安容認発言をして以来、為替介入なしに、市場原理のままに、あがったり下がったりしている。

本来、ドル高・ドル安は、貿易収支の赤字・黒字をビルトインで調整する働きをかつてはしていたのだが、今の状況は、レーガン時代と異なり、貿易収支が赤字とあっても、ドル安の状態が続くというのは、おそらく、巨大な中国市場のバブル圧力の故なのだろう。

さらに、アメリカの貿易の主要相手国は、日本から中国へとシフトしている。

だから、レーガン時代の双子の赤字は、原因と結果が、つながって、悪循環を招いての双子の赤字であったのが、今回のブッシュ時代の双子の赤字は、意図しての財政赤字であり、中国という巨大市場相手のやむを得ざる貿易赤字であり、減税での購買力堅調による民間収支赤字なのである。

つまり、レーガン時代のような、結果としての双子の赤字なのではなく、ブッシュ時代の双子の赤字は、「双子の赤字先にありき」の与件としての双子の赤字なのである。

しかし、次の要因は、どうなのだろう。

アメリカの対外純資産が、債権国 (所得収支がプラス) から債務国 (所得収支がマイナス)へと変化しているという要因についてである。

すなわち、過去に発行した米国債が、すでに、日本を中心として、海外の民間ならびに公的な資産となっているという状態の下での双子の赤字問題ということである。

原油高の要因や、米国の先行きを悲観しうる要因によって、米国債をユーロ債なり金なりにシフトする動きが高まると、アメリカの長期金利は、うなぎのぼりに上がり、米国債価格は、暴落する。

それは、ドミノ的に、すでに米国債を持っていた保有国の資産価値目減りをおこさせ、更なる、米国債から他の運用ツールへと、シフトしていく。

長期金利下落にともなうドル安は、アメリカの過去債分の利払い負担を減少させはするものの、そのこと自体、米国債保有そのものへの魅力を減じさせる。

すなわち、レーガン時代の双子の赤字は、それによって、米国債増発の要因になリ、それが、ドル高や高金利を招いたのだが、ブッシュ時代の双子の赤字とは、その赤字額自体が、すでに米国債を保有している海外保有者の信任投票のメルクマールに過ぎないものとなっているのだ。

その意味では、「時すでにおそし」であり、その時、一蓮托生となりうるのは、溝口前財務官のおこなった巨額の為替介入で、図らずも、「バブル時のゴルフ会員権のような存在となりかねない」大量の米国債を保有してしまっている「名目的には、巨大な債権国」日本が、やむを得ず、アメリカとともに、最後の「アルゼンチンタンゴを踊る」破目となってしまう気配なのだ。

「アメリカの財政赤字は、日本にとっても、テロリズムより怖し」なのかもしれない。

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2005/03/19 Saturday

注目する、今日のライス国務長官の牛肉貿易に関する言及

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2005/03/19(Sat)
 
null来日中のライス米国務長官(US Secretary of State Condoleezza Rice)が、今日、上智大学で行う予定のアジア政策に関する演説の事前原稿が公開され、この中で、アメリカ牛肉の輸入再開問題について、「この問題については科学的根拠に基づく国際基準が存在する。国際基準に基づいて解決を図るべき時だ。」と訴えている。

おそらく、そのいわれる『科学的根拠にもとづく国際基準」とは、「ミニマル・リスク論」であり、「ミニマル・リスク地域」を指すのであろう。( OIEの「Terrestrial Animal Health Code (2004)」の「Article 2.3.13.5.」
日本語で見られたいかたは、次のサイトhttp://www.maff.go.jp/soshiki/seisan/eisei/bse/iinkai/siryo1-2.pdfをご参照。ただし、これは、2001年のコードである。
2004年のコード改定についての論点は、http://www.oie.int/eng/Session2005/A_RF2004_WP.pdfをご参照)

これがOIEガイドラインに沿ったものとして認知されることによって、SPS協定もクリアでき、WTOの場でも、パネル設置が出来る環境に、本来は至ったはずだったのだが。

しかし、その『科学的根拠に基づく国際基準』をはじめて適用しようとしたカナダが、アメリカ議会自らの手で、否定されてしまっているではないのか?

その矛盾にどうこたえられるのですか?
ライスさん。

かつて、日本の池田勇人さんが、ドゴール大統領に「トランジスターの商人」(ドゴール大統領が池田総理と会われた後、側近に『今会ったトランジスタ・セールスマンの名前、なんていうんだっけ?( “Who is that transistor salesman?”)』と、聞いたというのだが、本当かどうかは、よくわからない。)と言われたそうだが、、まさか、ライスさん、「牛肉の商人」( “Who is that beef salesman?”)なんては、いわれたくはないでしょう。

そうですねえ。
上智大学で、ライスさんにプラカードを掲げるとしたら、ボードに書く一番有効なメッセージは、「アメリカは、日本の消費者の口を、汚染されたカナダ牛肉のゴミ捨て場にするな!!」(The United States must not make a Japanese consumer’s mouth the garbage of the polluted Canada beef.)「アメリカは、カナダとの国境を開放してから、日本に圧力をかけるべし!!」ってとこですかね。
もちろん、そんなことはしないでくださいよ。

やはり、今のアメリカにとっては、カナダ牛肉のことを言われるのが、一番つらいのではないのでしょうかね。

そこが、最大の矛盾でしょうからね。

しかし、日本のマスコミは、この点についての追求は一切しないというのも、よく教育されたというか、よく飼いならされたもんですね。

そのマスコミですが、今日の産経新聞で、「日本政府が、食品安全委員会に対して、諮問する事項を、牛の感染価から人の感染価に絞って諮問する』という記事が出ていますが、この記事の意味するところが、ちょっとわかりかねますね。

記事によれば、「政府が、食品安全委員会への諮問項目を絞る方針を決め」「輸入される米国牛肉の食肉の安全性に絞ったリスク評価を求め」「米国の牛の感染リスクよりも、実際に人が食べる食肉の安全性に絞って、人への感染リスクを評価することを重視」して、諮問項目を絞るというのですが。

一見すっきりしているようで、重大な抜け穴がありますね。

牛肉にまつわるリスクには、三つあって、「プリオン感染への牛のリスク」、「vCJD感染への人のリスク」そして、「プリオン感染した牛からvCJD感染する人への、種の壁を越えた感染リスク」とがあるわけですね。

この産経新聞さんの言われる「絞った諮問項目」ですと、諮問項目を、この三つのリスクのどれに絞るというんですかね。

USDAがこよなく愛される例のハーバード大学のリスクアナリシス(the Harvard-Tuskegee Risk Model Study)(Evaluation of the Potential for Bovine Spongiform Encephalopathy in the United States)ですと、牛への感染価と、人への感染価とをごちゃまぜにして考えているのだが、これに対して、SSCでは、これらの二つの感染価(cattle oral ID50と、human oral ID50)は、セパレートして考えるべきだとしていますね。

参考 1.ライスさんのいわれる「科学に基づいた国際的な基準」としてのOIE基準について

OIEの「健康基準」( Health standards)の中には、「陸生動物の健康基準」(Terrestrial Animal Health Code)というのがあって、その中は、「パート1」の「一般条項」(General provisions)と、「パート2」の「特異的疾患についての勧告」(Recommendations applicable to specific diseases)と、「パート3」の「付録」(Appendices)と、「パート4」の「国際的証明事例」(Model international veterinary certificates)とに分かれていて、BSEについての勧告は、そのうちの「パート2」の「特異的疾患についての勧告」(Recommendations applicable to specific diseases)のなかの、「セクション2.3.脳疾患」(SECTION 2.3. BOVINE DISEASES)の中に書かれている。

この「セクション2.3.」は、さらに、15のチャプターに分かれており、BSEについては、このうちの「チャプター2.3.13 BSE」( CHAPTER 2.3.13. Bovine spongiform encephalopathy)
http://www.oie.int/eng/normes/mcode/en_chapitre_2.3.13.htm
に書かれている。

さらに、このチャプターは、22の項目(Article 2.3.13.1.からArticle 2.3.13.22.まで)に分かれていて、その中での「BSEフリーの国やゾーン」(BSE free country or zone)の定義としては、「Article 2.3.13.3.」に、「地域的にBSEフリーの国やゾーン」(BSE provisionally free country or zone)の定義としては、「Article 2.3.13.4.」に、「最小のBSEリスクのある国やゾーン」(Country or zone with a minimal BSE risk)の定義としては、「Article 2.3.13.5.」に、「中庸のBSEリスクのある国やゾーン」(Country or zone with a moderate BSE risk)の定義としては、「Article 2.3.13.6.」に、「BSEハイリスクの国やゾーン」(Country or zone with a high BSE risk)の定義としては、「Article 2.3.13.7.」に書かれているというわけだ。

そこで、アメリカは、このうちの「Article 2.3.13.5.」に、カナダやアメリカを当てはめようとして、ファイナルルールというものを作ったというわけだ。
http://nowherethoughts.net/sarpysam/archives/2005/03/05.html参照

この「Article 2.3.13.5.」には、さまざまな条件があるが、カナダに当てはめた場合、このうち、もっとも問題なのは、『飼料規制の有効性』という項目なのだ。

アメリカのように、今のOIEのArticle 2.3.13.5.活用で、「暫定正常国」扱いになりたい国というものは、現在は、BSEフリーであっても、将来のことを考えて、OIEのArticle 2.3.13.5.活用を主張してきている国も含めて、徐々に増えてきているように感じている。

現在、BSE に関する OIE Chapter の適用を国際的に改善するよう要求しているグループとして、the Five Nations Beef Group(アメリカ、オーストラリア、カナダ、メキシコ、ニュージーランド)といわれるものがあるが、これらの国々は、BSE に関する OIE chapter に関連した国際的現状の改善要求をしている。

また、OIE加盟国の多くが現行のOIE ガイドラインに従わずに牛肉輸入を禁止している現状を踏まえ、本グループはchapter のより科学的な改正を進めているOIEの対応を支持するとしている。

これらの国々は、the Five-Nations Beef Conference (FNBC) という会合を持っている。

このグループが、オーストラリア、ニュージーランドを皮切りにして、今度は、いわゆるケアンズグループ( アルゼンチン、オーストラリア、ボリビア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、パラグアイ、南アフリカ共和国、タイ、ウルグアイ 16カ国)をまき込もうという状況のようだ。

http://www.abc.net.au/rural/tas/stories/s1037025.htm
http://www.meatnz.co.nz/wdbctx/corporate/docs/FILE011093.HTM
参照

一方、SPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定 Agreement on the Application of Sanitary and Phytosanitary Measures)には、
「第三条 措置の調和」に
「3 加盟国は、科学的に正当な理由がある場合又は当該加盟国が第五条の1から8までの関連規定に従い自国の衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))を決定した場合には、関連する国際的な基準、指針又は勧告に基づく措置によって達成される水準よりも高い衛生植物検疫上の保護の水準をもたらす衛生植物検疫措置を導入し又は維持することができる(注)。」とあつて、その(注)として「注)この3の規定の適用上、「科学的に正当な理由がある場合」には、入手可能な科学的情報のこの協定の関連規定に適合する検討及び評価に基づいて、関連する国際的な基準、指針又は勧告が自国の衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))を達成するために十分ではないと決定した場合を含む。」とあり、
また、
「第五条 危険性の評価及び衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))の決定」のなかの
「6 第三条2の規定が適用される場合を除くほか、加盟国は、衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))を達成するため衛生植物検疫措置を定め又は維持する場合には、技術的及び経済的実行可能性を考慮し、当該衛生植物検疫措置が当該衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))を達成するために必要である以上に貿易制限的でないことを確保する。(注)」の(注)として「(注)この6の規定の適用上、一の措置は、技術的及び経済的実行可能性を考慮して合理的に利用可能な他の措置であって、衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))を達成し、かつ、貿易制限の程度が当該一の措置よりも相当に小さいものがある場合を除くほか、必要である以上に貿易制限的でない。」とあり、
また、
「7 加盟国は、関連する科学的証拠が不十分な場合には、関連国際機関から得られる情報及び他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報に基づき、暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる。そのような状況において、加盟国は、一層客観的な危険性の評価のために必要な追加の情報を得るよう努めるものとし、また、適当な期間内に当該衛生植物検疫措置を再検討する。」とある。

現在の日本とアメリカとの牛肉貿易途絶の状況は、日本側が、SPS協定五条2項での「(アメリカの牛肉についての)危険性の評価を行うに当たり、入手可能な科学的証拠」が、不十分な状況の元での、五条7項の「暫定的に衛生植物検疫措置を採用」により、アメリカからの牛肉がストップしている状態にあると主張しているのに対して、
アメリカ側は、OIEの「Article 2.3.13.5.」を根拠にして、昨年12月29日に、「Final Rule」を策定し、この「Final Rule」が、SPS協定三条3項の「科学的に正当な理由がある場合」に該当するとし、また、五条の「危険性の評価」をした上で、五条6項の「衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))を達成するため衛生植物検疫措置を定め又は維持する場合」に該当するとしている。

また、アメリカについては、「緩和されたリスク」(“risks are mitigated”)についての概念が、日米の隔たりとなっている。

参考2.OIEの「Terrestrial Animal Health Code (2004)」の「Article 2.3.13.5.」

第2.3.13.5条

B S E 低発生国または地域

以下の条件を満たす場合は、BSEの低発生国または地域であるとみなされる。

1) 第2.3.13.1条に記載された基準を満たし、国内または地域内に存在する24ヶ月齢以上の牛に関して、過去12ヶ月間について計算された国産の牛におけるBSE発生率が、100万分の1例以上ないし100万分の100例以下である。

または、

2) 第2.3.13.1条に記載された基準を満たし、上記1) の条件で計算されたBSE発生率が、連続した12ヶ月を1単位として4単位(48ヶ月)の間、100万分の1例を下回っている。

かつ、

3) 感染牛ならびに、

a) これらの牛が雌の場合は、発病の前後2年以内にその牛から生まれた最後の子牛、

b) 感染牛と同一牛群の中で感染牛が生まれた12ヶ月以内に生まれた牛、または生後1年間感染牛と一緒に飼育された全ての牛であって、いずれの場合も、生後1年間感染牛が摂取した飼料と同様の汚染した可能性のある飼料を摂取している可能性がある牛が国内または地域内で生存していた場合は、と殺され完全に処理されていること。
24ヶ月齢以上の牛に関して過去12ヶ月間について計算した国産牛におけるBSE発生率が100万分の1例以下であるが、第2.3.13.1条1)に述べられたリスク分析の結果、BSE暫定清浄国または地域の基準の少なくとも1つを満たしていない国または地域は、BSEの低発生国または地域とみなされるものとする。

Article 2.3.13.5.
Country or zone with a minimal BSE risk

The cattle population of a country or zone may be considered as presenting a minimal BSE risk should the country or zone comply with the following requirements:

1.

a risk assessment, as described in point 1 of Article 2.3.13.2., has been conducted and it has been demonstrated that appropriate measures have been taken for the relevant period of time to manage any risk identified;
2.

a level of surveillance and monitoring which complies with the requirements of Appendix 3.8.4. is in place, and:

EITHER
1.

the last indigenous case of BSE was reported more than 7 years ago, the criteria in points 2 to 5 of Article 2.3.13.2. are complied with and the ban on feeding ruminants with meat-and-bone meal and greaves derived from ruminants is effectively enforced, but:
1.

the criteria in points 2 to 5 of Article 2.3.13.2. have not been complied with for 7 years; or
2.

the ban on feeding ruminants with meat-and-bone meal and greaves derived from ruminants has not been effectively enforced for 8 years;

OR
2.

the last indigenous case of BSE has been reported less than 7 years ago, and the BSE incidence rate, calculated on the basis of indigenous cases, has been less than two cases per million during each of the last four consecutive 12-month periods within the cattle population over 24 months of age in the country or zone (Note: For countries with a population of less than one million adult cattle, the maximum allowed incidence should be expressed in cattle-years.), and:
1.

the ban on feeding ruminants with meat-and-bone meal and greaves derived from ruminants has been effectively enforced for at least 8 years;
2.

the criteria in points 2 to 5 of Article 2.3.13.2. have been complied with for at least 7 years;
3.

the affected cattle as well as:
*

if these are females, all their progeny born within 2 years prior to and after clinical onset of the disease, if alive in the country or zone, are permanently identified, and their movements controlled, and when slaughtered or at death, are completely destroyed, and
*

all cattle which, during their first year of life, were reared with the affected cattle during their first year of life, and, which investigation showed consumed the same potentially contaminated feed during that period, if alive in the country or zone, are permanently identified, and their movements controlled, and when slaughtered or at death, are completely destroyed, or
*

if the results of the investigation are inconclusive, all cattle born in the same herd as, and within 12 months of the birth of, the affected cattle, if alive in the country or zone, are permanently identified, and their movements controlled, and when slaughtered or at death, are completely destroyed.

参考
「Canada: a minimal BSE risk country」

http://www.inspection.gc.ca/english/anima/heasan/disemala/
bseesb/minrise.shtml

「Comments on Proposed Rule - Docket No. 03-080-1 - “Bovine Spongiform Encephalopathy: Minimal Risk Regions and Importation of Commodities”」
http://www.inspection.gc.ca/english/
anima/heasan/disemala/bseesb/americ/comment/commente.shtml

「Comments by Japan on the propos ed amendment on the BSE Code in December 23,2003」
http://www.maff.go.jp/soshiki/seisan/eisei/bse/oie_e.pdf
「What risks need to be managed or mitigated?」
http://www.e-government.govt.nz/docs/workspace-2/chapter10.html
http://216.239.63.104/search?q=cache:TK_aqyP80G8J:mkaccdb.cec.eu.int/
cgi-bin/spsview/barrierintSPS.pl%3Fbnumber%3D970208++
OIE+criteria++review%E3%80%8CTerrestrial+Animal+Health+Code&hl=ja&client=firefox-a

参照

2005/03/20追記

アメリカ国務省から、ライス長官の昨日の上智大学での講演内容が発表されています。

下記のサイトです。
質疑応答についても記載されています。
その他の来日中の日本の報道各社とのインタビューの内容などは、このサイト
http://www.state.gov/secretary/rm/2005/
にリンクされています。

上智大学講演での、牛肉に関する部分は、次の箇所です。

「われわれの太平洋地域における繁栄は、経済活動に最善を期することに対しての信頼と漸進的理解の賜物であります。
しかし、時々、この太平洋地域間では、貿易紛争も起こります。
もちろん、最近の日本のアメリカ牛肉輸入問題についても、そうであります。
いまや、この問題を解決するときがまいりました。
私は、日本の皆様に、次のことを保障したいと思います。
すなわち、アメリカの牛肉は、安全であるということ、そして、私ども、アメリカ人は、世界の人々に対しても、また、アメリカの人々に対しても、そして、日本の人々に対しても、食の安全性というものに対して、深く念頭においているということです。
それらを包括しうる科学的な世界標準というものがあるのであり、私どもは、より大きな繁栄を享受する手段である、投資や貿易が出来るような環境を危機にさらすような、例外的状況をそのままにしておくわけにはいかないのです。」

Our Pacific prosperity relies on trust and a growing understanding of economic best practices. From time to time, however, trade disputes do arise among us. The latest, of course, is about Japanese imports of American beef products.
The time has come to solve this problem. I want to assure you: American beef is safe, and we care deeply about the safety of food for the people of the world, for the American people, for the Japanese people. There is a global standard on the science that is involved here, and we must not let exceptionalism put at risk our ability to invest and trade our way to even greater shared prosperity.

牛肉問題に付いてのライス国務長官の昨日の記者会見での見解

アメリカ国務省サイトにおける牛肉貿易再開問題に付いて発表されたライス国務長官の記者会見での模様である。

「最近の牛肉製品貿易における混乱については、私も、アメリカ政府も、アメリカ議会も、アメリカ国民も、気にかけている問題です。

アメリカの牛肉は安全です。

われわれは、アメリカの食料安全保障や食品の安全について、そして貿易相手国の食料安全保障や食品の安全については、非常に気を使っています。

そして、私は、町村外務大臣に対して、この問題に付いては、科学的根拠にもとづいた国際標準があることを前提にして、これらの問題が解決出来るように、もしくは、出来るだけ迅速に、解決するように努力を傾けていただけるように頼んだところです。」

In that regard, I did note my concern, and the concern of the American administration and the American Congress and people about the recent disruption in our trade in beef products.

American beef is safe. We care greatly about food security and safety in the United States, and about the food security and safety of our trading partners. And I urged the minister to resolve, or to put in place, efforts to resolve these issues as quickly as possible, given that there is indeed a science-based standard that is global on this issue.

質疑応答

「そして、私は、長い時間がかかってきた、次の点について、町村大臣に対して、指摘させていただきました。

実際、これは、科学的に根拠のある国際標準がある問題であり、われわれとしては、日本が科学的な根拠にたった標準にしたがっていただきたいということ、そして、食の安全が、アメリカの牛肉にとって非常に重要な問題であるということであるということについてであります。

そして、牛肉輸入再開という問題が、日本とアメリカならびにアメリカ政府との関係において、非常に重要な問題であるゆえに、私は、牛肉輸入の早期再開を日本にのぞむものであります。」

And I made the following point to the Minister that this has gone on for a very long time. That in fact, there is a science-based standard internationally, and we would hope that Japan would follow that science-based standard, and that food safety is extremely important to the United States. American beef is safe. And we hope for an early resumption of the beef imports because this is a very, very important concern of the United States and the United States government.

全体の原文については、以下のアメリカ国務省サイトをご参照
http://www.state.gov/secretary/rm/2005/43653.htm
http://www.state.gov/secretary/rm/2005/43655.htm

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http://www.oie.int/eng/normes/mcode/en_chapitre_2.3.13.htm

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

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笹山登生HOME-オピニオン-提言-情報-発言-プロフィール-図書館-掲示板

2005/03/17 Thursday

本格的な原油高時代を迎えての頭の整理として

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:46:31

 
2005/03/17(Thu)

nullどうやら、本格的な原油高時代を迎えたようだ。

ここで、頭の整理として、この原油高の時代に、何を指標に見ていけばいいのかを、メモ的に記してみよう。

かつて、「OPECの3方程式」というのは、次のようなものであった。

「世界なりアメリカがインフレ傾向にあれば、原油価格を引き上げないと、相対価格が減価してしまうので、原油価格を引き上げる。」

「世界成長率があがリ、インフレ機運がたかまれば、原油への需要増となり、原油価格を引き上げる。」

「ドル価値が下がっているとき、ドル建ての原油価格の手取り実収の目減りを回避するために、原油価格を上げる。」

というのが、これまでの「OPECの3方程式」なのだが、今回は、この方程式も、ちょっと様変わりを見せているようだ。

第一、OPECが、原油価格を上げたいのか、上げたくないのか、やむを得ず上げるのか、その誘因が単純ではない。

だから、これからは「OPECの3方程式」というものではなく、「生産限界におちいったOPECの価格コントロール不能時代の原油高のもたらす逆方程式」という、これまでとは因果逆転した考えで行かなければならないのではないのかなとも、思う。

すなわち、OPEC側の意向や思惑にかかわらずに、必然的に原油価格が値上がりする時代となり、原油高になれば、玉突き衝突的に、どの要因に影響が出てくるのか、という視点からの原油方程式の再構築である。

その要因とは、「ドル安」「アメリカの長期金利」「米国債」「アメリカの「双子の赤字」-財政赤字と貿易・経常収支赤字」である。

「原油高になれば、金高になり、基軸通貨ドルへの信頼が、相対的に、減価してきて、ドル安の方向となる。」

「ドル安になれば、アメリカの債券安すなわち長期金利の上昇を招く。」

「本来貿易赤字は、ドル安によって、是正されるはずなのに、いまのアメリカでは、ドル安のもとで貿易赤字がふくらみつつあるという事態も想定される。」

「原油高のもとでのアメリカの財政赤字の存在は、いっそうの将来不安を招き、長期金利の上昇に拍車をかける。」

「長期金利の上昇が続けば、保有債券の含み損が拡大する。」

「保有資産の含み損が膨らんでくると、ドル資産のユーロや金へのシフトが始まる。」

てな方程式を仮に考えてみたが、ちょっと、悲観的にすぎるかな?

これを、米国債を大量に保有している日本から見ての方程式だって十分考えられるが、こっちのほうは、もっと悲惨な方程式になってしまうようだ。

ところで、早くも、グリーンスパン・バッシングが始まったようで、何やら、アメリカ経済にも、先行きの不透明感がいっそう増してきたようだ。

このサイト「Greenspan out of favor, out of touch」(「人気を失い、現実を直視しないグリーンスパン」とでも、訳すのでしょうか?)http://www.newsday.com/news/columnists
/ny-opmcc174178084mar17,0,3711452.column?coll=ny-news-columnists

では、一時は「神」といわれるまでのオーラのあったグリーンスパンの衰え振りを、「グリーンスパンの風格(patina)がなくなった。」とか、「グリーンスパンは、雇われ政治家(”a political hack”)になってしまった。」とか、「グリーンスパンは、クリントンからブッシュに早変わりした。」とか、こっぴどい表現で書いている。

ああ、世の東西を問わず、晩節は汚したくないものですね。

参考  原油の単位

1 barrel = 42 gallons = 158.9873 liters = 5.6146 cu ft = 0.159 cu meters = 0.136 metric ton

1 metric ton of crude = 7.35 barrels of crude

「メトリックトン」は、ヤード・ポンド法でのトンと区別してメートル法での単位であることを明示するために使う表現です。(1トン=1,000kg)

http://www.nigerianmuse.com/important_documents/what_barrel_of_crude_oil_makes.htmご参照

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241

2005/03/15 Tuesday

はやくもOPECは、内部不統一の状態

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:46:19

  
2005/03/15(Tue)

null明日からイランのイスファハンで始まるOPEC定例総会を前にして、サウジアラビアのAli al-Naimi大臣が、昨日、「OPECとして、日産五十万バーレルの増産をして、1.9パーセントの増加をはかることにより、日産二千七百五十万トン生産体制にこぎつかせたい。」とのプランを出したが、これに対して、OPEC加盟国のアルジェリアと、リビアが、「とても、このサウジアラビアの提案には、乗れない。」とその提案を拒否した。

その理由として、アルジェリアのChakib Khelil大臣は、「われわれとしても、このサウジアラビアの提案に対して、好意的な姿勢を見せたいのは、山々だが、現在の原油価格の低下に対しては、この提案は、何の意味もなさないと考える。われわれは、増産に幾バーレルかは足すことは出来るが、それが、原油価格安定には、つながらない。経済成長は、減速に向かっている。」と述べている。

リビアのFathi Shatwan代表は、「もし、われわれOPECが、この時点で増産してしまえば、将来、もう、何もすることはなくなってしまう。われわれには、増産余力は、もはやないのだ。」といっている。

また、イランの Bijan Namdar Zanganeh大臣と、クゥエートのSheikh Ahmad Fahd al-Sabah代表は、昨日、会談し、「当面、OPECの生産体制は、現状維持とすべき」との意見で一致した。

このように、サウジアラビアのOPEC増産体制提案が、受け入れられがたいと見た原油先物市場は、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場で、ウエスト・テキサス・インターミディエート(WTI)4月渡し価格の終値は前週末比0・52ドル高の1バレル=54・95ドルと、2004年10月22日と26日につけた終値ベースの史上最高値(55・17ドル)に次ぐ水準となった。

http://quote.bloomberg.com/apps/news?pid=
10000006&sid=aMEtmOR37UBI&refer=home
 参照

2005/03/16追記

OPECは、今日の総会で、日産五十万バーレル増産し、日産二千七百五十万バーレルにすることとした。

また、これによっても原油高がとまらない場合は、第二四半期に入って、さらに五十万バーレルの増産を追加する権限をアマハド議長に付与することについて合意した。

また、ナイミ石油相は、『われわれは、原油価格水準を40ドルから50ドルの間に維持したい。』と述べた。

さらに、ナイミ大臣は、『七十万バーレルの漏れを含むOPECの生産上限は、これまでの二千七百七十万バーレルから、二千七百二十万バーレルに拡大する。』とした。

これに向けて、リヤドは、二十五万バーレルの生産拡大をし、クウェートは、十二万バーレル分の増産体制を敷いた。

しかし、市場は、その増産体制の実現性のなさを見透かして、3月16日のニューヨーク商業取引所の原油先物相場は、過去最高値である55.67ドルを突破し、56.50ドルまで買われ、終値は、56.46ドルとなった。

また、ロンドン国際石油取引所(IPE)の原油先物相場も、北海原油ブレント4月きりは一時1バレル=54.95ドルと、史上最高値を更新し、終値は前日比0.95ドル高の54.80ドルとなった。
 
さらに、ガソリンのこれまでの史上最高値は、1ガロン2.064ドルだったが、ドライブシーズン到来を目前にして、今日発表のアメリカの週次の原油在庫統計では、在庫積み増しの過少が懸念され、アメリカ・エネルギー省の予測では、この最高値に10パーセントの積み増しがあるであろうとしている。

今後の原油価格の見通しとしては、近々、一バーレル60ドルを試す展開となるであろうとのことである。
http://www.canada.com/ottawa/ottawacitizen
/news/business/story.html?id=5934290e-d2d2-4141-9a88-4ff2d1b6739f
参照

参考  原油の単位

1 barrel = 42 gallons = 158.9873 liters = 5.6146 cu ft = 0.159 cu meters = 0.136 metric ton

1 metric ton of crude = 7.35 barrels of crude

「メトリックトン」は、ヤード・ポンド法でのトンと区別してメートル法での単位であることを明示するために使う表現です。(1トン=1,000kg)

http://www.nigerianmuse.com/important_documents/what_barrel_of_crude_oil_makes.htmご参照

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2005/03/13 Sunday

OIEを巻き込んでSPS協定の政治的利用をしているのは、むしろ、アメリカ側なのではないのか?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:45:58

2005/03/13(Sun)
 
null米国は3月9日に開かれた世界貿易機関(WTO)動植物検疫措置(SPS)協定に関する会合で、日本に米国産牛肉の輸入再開を正式に求めたというのだが。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050313-00000688-jij-int

例のアメリカ下院議会での対日経済措置の決議の中でも、こう書かれていた。

「WTOにおけるSPS合意は、WTOのメンバーに対して、SPS施策を、科学的根拠にもとづいて、人間や動物や植物ブラントの健康保護のためにのみ、適用することを求めている。
中略
SPS合意は、WTOの加盟国に対して、勝手に、貿易差別や貿易制限をする権利を許すとは規定していない。」

として、あたかも、日本がSPS協定(衛生植物検疫措置の適用に関する協定;Agreement on the Application of Sanitary and Phytosanitary Measures)を政治的に利用しているがごとき表現があった。

しかし、どちらが、SPS協定を政治的に利用しようとしているのであろうか。

SPS協定(全文は、次のサイトhttp://www.wto.org/english/tratop_e/sps_e/spsagr_e.htm 日本語では次のサイト http://organization.at.infoseek.co.jp/wto/sps-/sps-j0.htm)は、WTO加盟国が人、動物または植物の生命、健康を保護する措置について、貿易に対する悪影響を最小限にするための国際的規律を定めたもので、これには、

1.国際的な基準がある場合(SPS協定3.1条遵守)
2.国際的な基準がない場合(SPS協定2条5条 遵守)
とがあり、

さらに、国際的な基準がある場合には、
1.国際的基準よりも高い、または、異なる保護を求める場合(SPS協定3.3条
2.国際的基準と同等の保護を求める場合(SPS協定3.1条
とがあり、

さらに、
「国際的基準に基づかない措置が例外的に認められる場合」(SPS協定3.3条規定。SPS協定5条遵守を条件)として、
1.科学的に正当な理由がある場合
2.自国の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))を決定した場合(SPS協定5.1から5.8条の関連規定遵守)
とがあり、

「国際的な基準がある場合」(SPS協定5条)
1.危険性評価(risk assessment)をする場合
2.危険性管理(risk management)をする場合
とがある。

「国際的な基準がない場合」(SPS協定5条)にも
1.危険性評価をする場合
2.危険性管理をする場合
とがある。

現在の日本のアメリカの牛肉に対する状況がどの段階にあるかといえば、

「第五条 危険性の評価及び衛生植物検疫上の適切な保護の水準(ALOP(Appropriate Level of Protection))の決定」
において、

「1 加盟国は、関連国際機関が作成した危険性の評価の方法を考慮しつつ、自国の衛生植物検疫措置を人、動物又は植物の生命又は健康生育に対する危険性の評価であってそれぞれの状況において適切なものに基づいてとることを確保する。」のなかでの
アメリカがBSE発生という「状況」において
「適切なものにもとづいて」「危険性の評価」をしようとしているのだが、、

「2 加盟国は、危険性の評価を行うに当たり、入手可能な科学的証拠、関連する生産工程及び生産方法、関連する検査、試料採取及び試験の方法、特定の病気又は有害動植物の発生、有害動植物又は病気の無発生地域の存在、関連する生態学上及び環境上の状況並びに検疫その他の処置を考慮する。」の中における

「(アメリカの牛肉についての)危険性の評価を行うに当たり、入手可能な科学的証拠」が、不十分な状況の元において、

「7 加盟国は、関連する科学的証拠が不十分な場合には、関連国際機関から得られる情報及び他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報に基づき、暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる。そのような状況において、加盟国は、一層客観的な危険性の評価のために必要な追加の情報を得るよう努めるものとし、また、適当な期間内に当該衛生植物検疫措置を再検討する。」のなかの、

「科学的証拠が不十分な場合には、関連国際機関から得られる情報及び他の加盟国が適用している衛生植物検疫措置から得られる情報を含む入手可能な適切な情報に基づき、暫定的に衛生植物検疫措置を採用することができる。」の規定にもとづいて、

「暫定的に衛生植物検疫措置を採用」し、アメリカからの牛肉の輸入をストップしている状態にあるのであり、なんら、SPS 協定に、背馳しているものではない。

それに対して、アメリカ側が言いたいのは、第2条第2項「2 加盟国は、衛生植物検疫措置を、(中略)第五条7に規定する場合を除くほか、十分な科学的証拠なしに維持しないことを確保する。」の条項を盾にとって、「十分な科学的証拠があるのに、衛生植物検疫措置をとっているのは、隠れたる貿易障壁である。」と主張しているところに、対立点があるというわけである。

なお、SPS 協定の実施根拠としてコーデックス(国際食 品規格委員会)とOIE(国際獣疫事務局)による基準に従うかどうかについては、国際間で、異論がある。

以上のように、このSPS 協定というのは、どちらかといえば、予防原則としてみなされるために、貿易相手国との関係において、これが、見えざる貿易障壁になっているとの指弾を受けがちなものである。

また、それぞれの国の裁量政策にゆだねられている点に、その限界を指摘する声もある。

欧州委員会は、アメリカからのホルモン牛肉をSPS協定のもつ予防原則を理由に、排除しているし、アメリカはアメリカで、南米からの牛肉を、口てい疫を理由に排除している。

つまりは、アメリカが、日本の牛肉貿易についてSPS 協定遵守をしていないと言い出せば、それは、お互い様ということになるのだが。

おまけに、このSPS 協定には、「同等性の原則」と言うのがある。

「同等性の原則」とは、輸出国の基準が輸入国と異なっていても、輸出国の基準が適切なものであると客観的に証明できれば、輸入国は輸出国の基準も自国と同等のものとして扱うという原則である。

すなわち、表面的には、なんら拘束力のないコーデックス(国際食 品規格委員会)やOIE(国際獣疫事務局)に、緩やかな基準を出させ、これをもとに、SPS 協定を振りかざして、SPS 協定加盟国に遵守を迫れば、極端に言えば、どのようなことも可能なわけである。

もし輸出国の基準が適切なものであるとされれば、輸入国は自国の基準を満たしていないことを理由にその食品の輸入を拒否することはできない。

OIEを巻き込んで、SPS 協定加盟国に、輸出国優先のゆるい基準を遵守させようとしているのは、むしろアメリカのほうなのではなかろうか?

なお、アメリカは、今回「ファイナル・ルール」を作成し、カナダを、「BSE Minimal Risk」の地域とすることについて、2003年11月4日付けで、WTO規定にもとづいて、「WTO Notification G/SPS/N/USA/828」の文書でもって、「Docket No: 03-080-1 Title: Bovine Spongiform Encephalopathy; Minimal Risk Regions and Importation of Commodities Contact Person」との題をもって、対象国に対して、コメントを求めた。
http://economics.ag.utk.edu/market/LiveCattleRule10-31-03.pdf参照

このコメント期間中に、アメリカでは、2003年12月23日に、BSEが発生したのであるが、継続し、コメント期間は、2004年4月7日をもって終了した。

日本は、くしくも、アメリカでのBSE発生直後の、2003年12月26日に、在米日本大使館のTadashi SATO氏から、USDAに対し、以下の文書
https://web01.aphis.usda.gov/BSEcom.nsf/
0/a544c311876be1df85256e08005271ee?OpenDocument&AutoFramed

が提出された。

この文書において、日本側は、「Docket No. 03-080-1」についての回答として、要約、次のような内容のものを出している。

「このたび、USDAから提案された修正提案に対して、アメリカがBSE発生国でないという前提で、以下のコメントをするということを確認するものである。
日本側としては、また、2003年12月23日BSE発生とのUSDA発表後のBSEについての近時または将来を考慮した追加コメントをする権利を留保しておきたい。
同時に、日本政府としては、もし、状況が許せるのであれば、コメント締め切り期間の延長を求めたい。
日本政府は、アメリカが提案した枠組みを、反芻動物ならびに反芻動物由来のものの、それらの領域への輸入について、不必要な輸入禁止措置を取り除き、同時に、現在のBSE対策にともめられていると同等の水準の防護措置を維持できることを意図しているのであると理解している。
日本としては、提案された方策が健全で普遍化沙汰科学的原理をベースにして、差別のない方法で適用されるという前提で、それらの基本的な目的をサポートするものである。
(中略)
このような意味において、アメリカは、OIE基準(OIE Code)に定められているような世界的な基準やSPS協定と一致した防護基準でもって、アメリカ国内基準を作られることを望むものである。
もし、輸入国側が、コ内的な事情などを考慮して、アメリカ側が設定した基準よりも、高い基準を設定した場合には、二国間の問題に矮小化することは、望ましくない。
これら、二つの基準が共存しうるような解決策が、この際求められると考える。
今回のアメリカの最終規則は、OIE基準に比して、いくつかの点で、あいまいなところがある。
その結果、提案された修正事項は、アメリカが、「Minimal Risk 地域」の範囲をあいまいな方法で、ひいてしまう権限を有してしまうことになりかねない。
もう一つの問題は、アメリカの提案する「Minimal Risk 地域」が、OIE基準でいうところの「中位のBSEリスクにある地域や国」を含んでしまう危険性がある。
さらに、危険部位についても、OIE基準よりも後退しており、単に、腸の除去だけで、「Minimal Risk 地域」からの輸入が要求されているだけであることも問題である。」

以上が、2003年に日本側が、アメリカに提出した、コメントの概要である。

これらの日本側のコメントを、今の時点で見ると、「カナダを初のthe minimal-risk regionとして、認める。」と受け取れる表現があるなど、すでに、この時点で、アメリカに言質を与えてしまったような記述が、随所に見られる。

その中でも、決定的なのは、次の表現であろう。

「日本政府は、アメリカのおかれたポジションというものを、よく理解しています。なぜなら、日本とアメリカのような巨大貿易国にとって、すべての貿易国に対して、必要な場合に、遅滞なく、同時に、そして、適切に、再類別することは、不可能であるからです。そのことからして、再類別については、それぞれの国での個々の要求にもとづいてはじめることは、不可避なものと思われます。」

なんという、物分りのよさだ。

オランダに本拠地を置くRabobankのメンバーが、現在、アメリカ不在で、日本の牛肉市場を、ほぼ独占しているオーストラリアの農業に関する報告書で、以下のサイトのように、次のようにいっている。

「SPS 協定をベースにした牛肉貿易制限は、ますます、不公平になりつつあリ、それは、「擬似的貿易障壁」となりつつつある。是は、将来、オーストラリアに対しても適用されるであろう。

これらの制限は、WTOの精神にはないものだ。

WTOの元でのSPS 協定の存在は、ますます、疑問視されてきている。

衛生上や技術的な制限という形での保護貿易政策は、普通の国際的貿易障壁とのみわけが、ますます、つかなくなっている。

これまで、SPS 協定との協調のもとで国際標準を設定することに、各国とも、気乗り薄である。
政治的経済的思惑が、SPS にもとづくリスク評価を凌駕することがしばしばある。』といっている。

参照
「Report highlights threat to beef exports」
http://www.theage.com.au/news/Business/Report-highlights-threat-to-beef-exports/2005/02/13/1108229852859.html?oneclick=true

アメリカが、カナダを初のthe minimal-risk regionとする『Final rule』を提出するまでの経緯については、次のサイトをご参照
http://www.nationalaglawcenter.org/reporter/registerdigest/aphis/

68 Fed. Reg. 2703 (January 21, 2003) (advanced notice of proposed rulemaking) (to be codified at 9 C.F.R. Ch. I).

The Animal and Plant Health Inspection Service is soliciting public comment to help it develop approaches to control the risk that dead stock and nonambulatory animals could present as potential pathways for the spread of bovine spongiform encephalopathy, if that disease should ever be introduced into the United States.

68 Fed. Reg. 31939 (May 29, 2003) (interim final rule) (to be codified at 9 C.F.R. Parts 93 and 94).

The Animal and Plant Health Inspection Service is proposing to amend the animal importation regulations to prohibit the importation of Holstein cross steers and Holstein cross spayed heifers from Mexico. The regulations currently prohibit the importation of Holstein steers and Holstein spayed heifers from Mexico due to the high incidence of tuberculosis in that breed, but do not place any special restrictions on the importation of Holstein cross steers and Holstein cross spayed heifers from Mexico. Given that the incidence of tuberculosis in Holstein cross steers and Holstein cross spayed heifers from Mexico is comparable to the incidence of tuberculosis in Holstein steers and Holstein spayed heifers, this action is necessary to protect the health of domestic livestock in the United States.

68 Fed. Reg. 2703 (January 21, 2003) (advanced notice of proposed rulemaking) (to be codified at 9 C.F.R. Ch. I).

The Animal and Plant Health Inspection Service is soliciting public comment to help it develop approaches to control the risk that dead stock and nonambulatory animals could present as potential pathways for the spread of bovine spongiform encephalopathy, if that disease should ever be introduced into the United States.

68 Fed. Reg. 62386 (November 4, 2003) (proposed rule) (to be codified at 9 C.F.R. Parts 93, 94, and 95)

The Animal and Plant Health Inspection Service is proposing to amend the regulations regarding the importation of animals and animal products to recognize a category of regions that present a minimal risk of introducing bovine spongiform encephalopathy into the United States via live ruminants and ruminant products, and are proposing to add Canada to this category. It is also proposing to allow the importation of certain live ruminants and ruminant products and byproducts from such regions under certain conditions.

69 Fed. Reg. 10633 (March 8, 2004) (proposed rule) (to be codified at 9 C.F.R. Parts 93, 94, and 95).

The Animal and Plant Health Inspection Service is reopening the comment period for its proposed rule that would amend the regulations regarding the importation of animals and animal products to recognize, and add Canada to, a category of regions that present a minimal risk of introducing bovine spongiform encephalopathy into the United States via live ruminants and ruminant products.

69 Fed. Reg. 42287 (July 14, 2004) (proposed rule) (to be codified at 9 C.F.R. Parts 50, 51, et al.)

Following detection of bovine spongiform encephalopathy (BSE) in an imported dairy cow in Washington State in December 2003, the Secretaries of the U.S. Departments of Agriculture and Health and Human Services announced a series of regulatory actions and policy changes to strengthen protections against the spread of BSE in U.S. cattle and against human exposure to the BSE agent. The Secretary of Agriculture also convened an international panel of experts on BSE to review the U.S. response to the Washington case and make recommendations that could provide meaningful additional public or animal health benefits. The purpose of this advance notice of proposed rulemaking is to inform the public about the panel’s recommendations and to solicit comment on additional measures under consideration based on those recommendations and other considerations.

69 Fed. Reg. 43800 (July 22, 2004) (notice).

This notice announces the Animal and Plant Health Inspection Service’s intention to request an extension of approval of an information collection in support of regulations that restrict the importation of certain animal materials and their derivatives, and any products containing those materials and derivatives, to prevent the introduction of bovine spongiform encephalopathy into the United States.

70 Fed. Reg. 554 (January 4, 2005) (notice).

The Animal and Plant Health Inspection Service is advising the public that it has prepared an environmental assessment relative to a final rule published in today’s issue of the Federal Register to amend the regulations regarding the importation of animals and animal products to recognize, and add Canada to, a category of regions that present a minimal risk of introducing bovine spongiform encephalopathy into the United States via live ruminants and ruminant products. The rule also sets out conditions under which certain live ruminants and ruminant products and byproducts may be imported from such regions.

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

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笹山登生HOME-オピニオン-提言-情報-発言-プロフィール-図書館-掲示板

2005/03/11 Friday

アメリカは、カナダ生体牛輸入問題を解決してから、日本に圧力をかけるべし。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:45:48

  
2005/03/11(Fri)

null対日経済制裁を片手に日本に対して、牛肉貿易再開圧力をかけるのもいいんですけれども、私のブログ「米牛肉交渉、対日制裁の裏舞台をのぞけば?」 http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=236
にも書きましたように、ポイントは、カナダに適用しようとした「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念が、アメリカ議会自らによって否定されてしまっているということが、そもそものボタンの掛け違いなんですね。

本来は、アメリカの思惑としては、
1.この「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念を、手始めにカナダに適用し、
2.カナダからの生体牛輸入によって、この概念を認知させ、
3.それでもって、今度は、アメリカ自体が、OIEのガイドラインに準じて、「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の対象地域とみなされ、
4.その上で、日本からの牛肉貿易再開が可能となり、
5.そして、その上で、OIE総会において、この「最小リスク規則 (the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念を、世界標準として認知させ、米国を「暫定正常国」扱いで認知させるルール作りをし、
6.その上で、今年の7月に、日本との科学的協議によってBEVプログラムの再検討を行い、これによって、カットオフ月齢を昨年10月合意の月齢20ヶ月未満というのを、月齢30ヶ月未満に後退させる、
という手はずだったわけですよね。

ですから、アメリカが、カナダとの国境を封鎖したまま、日本に対して、開国を迫るというのは、上記の「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」「最小リスク地域(minimal-risk regions)」のドミノ的認知の過程を、カナダの段階ですっ飛ばしていることからすれば、まったく、理不尽の圧力なわけですね。

この辺を、もう少し、詳しく見てみましょう。

昨年12月29日に、アメリカUSDAは、BSE ミニマルリスク規則を発表しました。

そのころは、日本では、すでに正月ムードで、誰も、注目しませんでしたけれども。

この規則作成の過程で、USDAが行った広範囲なリスクアセスメントでは、カナダでさらにBSE 例が発見される可能性を考慮に入れています。

OIEのガイドラインによりますと(この辺の関係は、リンクが時系列的に後先になってしまいますけれども、こちらhttp://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=242のブログ記事をご覧になってくださいね。)、過去4 年間連続、24 ヶ月齢以上の牛100 万頭あたり2 頭以下の発症国はミニマルリスク国となり、カナダの場合、24 ヶ月齢以上の牛が550 万頭いますので、BSE 対策や予防措置が効果的に行われている限り11 頭まではミニマルと考えられています。

http://www.usda.gov/wps/portal/usdahome?contentidonly=true&contentid=2005/01/000
1.xml
 ご参照

このミニマル・リスク規則にもとづいて、USDA がBSE のミニマルリスク地域を規定する規則を発表し、ここで、カナダをミニマルリスク地域と規定することによって、カナダから米国への牛肉の輸入を可能としたのです。

このうえで、USDA は12 月29 日、効果的なBSE 予防対策および検出システムがある地域からの30ヶ月齢以下の生きている牛及びその他の製品の輸入を可能とする条件を規定する規則を公表しました。

このアプローチについて、USDAは、「OIE のガイドラインに沿ったもので、適切な科学に基づくリスクmitigation 対策に基づくものである。リスクアセスメントの結果、カナダがこのミニマルリスクエリアに初めて指定されものである。」との見解を発表しています。

にもかかわらず、大統領の拒否権発動という可能性は残されてはいますが、カナダからの生体牛の輸入阻止を目的とした、「カナダとの生体牛貿易再開に反対する議案(.J.RES.4 Providing for congressional disapproval of the rule submitted by the Department of Agriculture under chapter 8 of title 5, United States Code, relating to risk zones for introduction of bovine spongiform encephalopathy.」が、上院で、賛成52.反対46で、可決されたのですね。

このことは、何を意味するかといえば、USDAが12月29日に発表した、「最後の規則−ファイナル・ルール」とする、ミニマル・リスク規則とミニマルリスク地域を規定する規則を、アメリカ上院議会自らが、否定したということなんですね。

このままでは、アメリカにとって、カナダが、ミニマルリスク地域でないばかりでなく、日本にとっても、アメリカがミニマルリスク地域でないという理屈になりますね。
つまり、たとえ、日本が、アメリカの理屈に最大限沿ったとしても、アメリカがミニマルリスク地域とならない限り、アメリカは、日本に対して、牛肉を輸出できないことになりますね。

それなのに、どうして、日本がアメリカから、牛肉輸入の開国要求圧力を受けるのか、私には、その意味が、さっぱりわかりませんね。

日本のマスコミは、このカナダと日本との関係について、まったく記事を書かないのですが、まさに、この問題のポイントは、カナダの開国によって、「最小リスク規則 (the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念が認知されるかどうかの問題にあるわけです。

そこが認知されさえすれば、後は、なし崩し的に、という方向なんですね。

もし、日本の食品安全委員会が、アメリカからの直接的、間接的圧力の下で、月齢20ヶ月未満の安全性にゴーサインを出すということは、結果的に、このカナダにも適用されていない、「最小リスク規則 (the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念を、世界に先駆けて認知してしまうと言うことになりかねないのです。

その点は、日本の食品安全委員会も、そのことの重大さについて、認識していただきたいものですね。

「アメリカは、カナダ生体牛輸入問題を解決してから、日本に圧力をかけるべし。」このことを、アメリカの議会の皆さんにも、声を大にして言いたいのです。

それと、もうひとつ、CAFTAのアメリカ議会承認の代償として、日本に対して、牛肉貿易再開を求める動きがあるというのも、理不尽な話ですね。

米国政府が中米5ヵ国(コスタリカ、ホンジュラス、エル・サルバドル、グアテマラ、ニカラグア)との自由貿易協定(CAFTA)がようやく妥結して、ブッシュ政権は、アメリカ議会の承認に持ち込みたい考えのようですが、ここにきて、アメリカ国内においても、米国以外のCAFTA加盟国でも、批准反対論が噴出しているようです。

それは、CAFTAと同じ考えでやってきたNAFTA(北米自由貿易協定 アメリカ カナダ メキシコ)が、今のカナダとの生体牛貿易問題にみるごとく、それほど効をなさかったという反省の上にたってのことなのでしょうね。

とくに、購買力のないメキシコの加盟は、アメリカにとっては、雇用の域内輸出入に過ぎなかったという、思いもあるのでしょう。

また、アメリカ国内砂糖業者にとっては、CAFTA加盟によって、新たな競争者が現れることになります。

特に投資家保護をあまりにもあらわに出しすぎた、現在のNAFTA協定にあるChapter 11条項というものが、CAFTA協定にも適用されるのではないかという疑心暗鬼があるのではないでしょうか。

つまり、CAFTA加盟国が、投資家保護に違反した場合は、Chapter 11条項をもとにしての、国を相手取っての訴訟合戦がはじまるというわけです。

加盟国内の一企業が、何らかの政策決定によって利益を損なわれた場合には、他の加盟国の政府に対して、訴訟をおこしうるという、条項ですね。

そこで、ブッシュ政権が、CAFTA協定を議会に承認してもらうための道連れに選んだのが、「日本とのアメリカ牛肉貿易再開問題」であるといえるのではないでしょうか。

CAFTAは、アメリカにとっては、市場にならないが、日本という牛肉市場に風穴をあければ、何とか、議会も、まるく収まるだろうという思惑なのでしょう。

とんだアメリカ議会の取引材料に、日本の牛肉貿易再開問題が使われたものです。

もっとも、アメリカの消費者団体であるパブリックシチズンは、以下のサイト http://www.citizen.org/pressroom/release.cfm?ID=1883で、こういつていますね。

「カナダの畜産業者たちが、アメリカの国境封鎖による損害補償を、NAFTA協定のChapter 11条にもとづいて、膨大な金額を請求してくるであろうし、これが、NAFTA+CAFTAともなれば、両加盟国からのアメリカ政府に対する補償請求は、ますます、莫大な額になるであろう。結局、それらの補償費の国の負担は、消費者にかぶさってくるのだ。」といっていますね。

つまり、日本の牛肉貿易再開をトレードオフにして、CAFTAの議会承認をしたところで、将来、CAFTA加盟国についても、今回のNAFTA加盟国であるカナダの牛肉問題のような問題が多発して、結局は、アメリカは、Chapter 11条的条項にもとづいたCAFTA加盟国からの膨大な補償問題が発生すれば、何にもならないじゃないか、という視点ですね。

日本政府も、この辺のアメリカのお国の事情をよくわきまえた上で、対日経済制裁にたいし、きっちり対応するようにしないと、いけませんね。

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238

2005/03/06 Sunday

再び世界経済に、原油高の洗礼

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:45:38

2005/03/06
 
null先週3月3日に、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場が、米国産標準油種(四月渡し)で、 一バレル55.20ドルとなり、昨年10月25日の史上最高値の55.67ドルに迫った。

この四週間では、18パーセントもの上昇となった。

その後、終値は、53.57ドルとなったが、この高値の要因としては、次のものがあったと、見込まれている。

第一は、クウェートの日刊紙アルカバス(Kuwaiti daily al-Qabas)
http://www.kuwait-webdesign.com/alqabas/start.html
が、3月3日に、OPECのアドナン・シハブエルディン事務局長代行(Dr. Adnan Shihab-Eldin,)とのインタビューを掲載したことを、ダウ・ジョーンズ・ニュースワイヤー(Dow Jones News Wires)が、配信したことである。

その中で、アドナン・シハブエルディン事務局長代行が、今後二年間の原油価格見通しについて、「原油価格が、近いうちに、一バーレル80ドルにまで、上昇する可能性はひくいが 、 もし、大規模な供給途絶があれば、 今後二年以内には、一時的に1バレル80ドルとなる可能性はある。」との発言をし、これに市場が、過敏に反応した。

この発言の一週間前に、サウジアラビアの石油相のAli al-Naimi氏が、「今年年内は、一バーレル40ドルから50ドルの間で推移するであろう。」との見解を示した後だけに、今回のアドナン・シハブエルディン事務局長代行の発言は、市場に衝撃を与えたようだ。

アドナン・シハブエルディン事務局長代行は、次のように述べている。

「近いうちに一バーレル80ドルになる可能性は、低いということはいえる。しかし、私は、今後二年間で、一バーレル80ドルとなることを排除はできない。 しかし、もし、原油価格が、たとえば、 産油国が日産百万バーレルから二百万バーレルの供給不足になるなど、何らかの理由で、その水準に達したとしても、そのような価格急上昇が、長く続くものとは思えない。」

一方、氏は、アラブ首長国連邦の新聞 Khaleej Times http://www.khaleejtimes.com/index00.aspでは、「今年は、石油需要は、根強いままに推移するであろう。」とし、「その年間需要伸び率は、1.5パーセントとなり、そのピークは、2025年までに、日産一億一千百万バーレルになるであろう。」といっている。

また、氏は、「現在、サウジアラビアなどが産油能力を高める投資をしているので、将来における原油不足については心配ない。」としている。

氏は、(掘削装置の数を、これまでの34から70以上に増やしたり、資源調査を強化することなどによって)「サウジアラビアでは、この2−3年で、産油能力を日産一千五百万バーレル増強しうる」ものと見ている。

「もし、原油価格が、二年以上、 一バーレル50ドルから60ドルの水準で推移するとすれば、 産油能力拡大のための投資を拡大することによって、究極は、需要にマッチした供給増で、価格を低水準に押さえ込めるであろう。これが経済学の法則でもある。」と、氏は、いう。

また、「2004年は、(中国・インドからのこれまでにない需要圧力などによって)原油価格形成構造に、変化が生じ、これが、現在の構造的な原油高を招いているのだ。」として、「この構造変化があったため、OPECとしては、これまでの一バーレル22ドルから28ドルの価格帯を維持する方針を、一時、棚上げしているのだ。」としている。

第二は、同じく、3月3日に、アメリカのボドマン(Samuel Bodman)エネルギー長官が、 上院委員会の公聴会で、「OPECへの介入には、限界的」との主旨の発言をしたことによる。

ボドマン エネルギー長官は、ワイデン(Ron Wyden)民主党上院議員からの「原油価格が上昇しているにもかかわらず、エネルギー長官が、OPECに対して、適切な連絡をとっていない。」との追求にたいして、 「わが国を代表するものは、だれでも、OPECに与えられる影響力は、限られている。」と発言し、今月3月16日に、イランのイスファンで開かれるOPEC定例総会への増産要請の限界を示唆したことによる。

When Democratic Sen. Ron Wyden of Oregon asked Bodman why he had not telephoned OPEC ministers to lobby them to lower energy prices, the secretary responded: “I have a lot on my plate.”

http://www.reuters.com/newsArticle.jhtml?type=politicsNews&storyID=7813771参照

第三は、3月4日付けウォールストリートジャーナル紙で、昨年の原油と天然ガスの在庫が、6パーセントもダウンしたと報じられていたオイルメジャーのChevron Texacoが、かねてから中国からの買収話も合った Unocal Corp.,を買収する予定であると発表したことである。

このUnocal Corp.,は、ビルマに、Yadana-Yetagunガスパイプラインを有していて、タイへ供給しているという。

また、この日のウォールストリートジャーナル紙は、「Oil May Hit $60 a Barrel,Analysts Say 」との記事も掲載している。

第四は、前記のOPECのアドナン・シハブエルディン事務局長代行の発言に対して、ヘッジファンドが、「2005年中は原油高に推移する」との自信を得て、大量の投機マネーを West Texas Intermediate(WTI 指標原油) 米国産原油先物取引へ投入したことによる。

パリにあるSociete Generale のエネルギーアナリストのDeborah White氏によれば、世界の一日当たり消費量よりはいくらか少ない原油量に相当する、これまでの二倍の投機資金が先週、流入したという。

今回のヘッジファンドの投機資金投入規模は、昨年6月以来最高の規模とされ、3月1日には、ショートポジションで、60,173コントラクト(取引単位 1コントラクトは、千バーレル)をこえるものであっとされている。

West Texas Intermediate(WTI 指標原油 )のこれまでの最高値は、昨年10月の55.65ドルであったが、先週は、その高値に近づくく55.20ドルに達した。

Deborah White氏の言うに、「今年は、ヘッジファンドからの需要は、再び強くなってくる。」ものとしている。

そして、「昨年、われわれが経験した原油価格の高騰が、人々がおもっていたほどには、有毒なものではなかった。」との見方をしている。

この点については、アナリストの見方も、二分されている。

Barclays CapitalのKevin Norrish氏は、「昨年から今年のかけての18ヶ月の経験では、原油高が世界経済を破壊する原因にはならないことがわかってきたので、原油価格については、もう少し「At Ease」であっていいとおもう。」と、Deborah White氏同様の見解を述べている。
http://www.smh.com.au/news/Business/OPEC-says-US80-oil-possible-before-long/2005/03/04/1109700679624.html?oneclick=true参照

また、ヘッジファンドの市場攪乱要因についても、「世界の寒波という異常気象がいつまでも続くわけではないのだから、原油先物市場におけるヘッジファンドのポジションも、これまでほどのものは、ないのではないのか。」という楽観論もある。

フィナンシャルタイムズ紙では、OPECの戦略が、これまでの価格から、在庫引き当て増に向かっていると分析している。

11の産油国からなるOPECでは、現在、日産二十九万バーレルを生産している。

これは、世界の供給量の三分の一に当たる。

事故やストライキや戦争や、その他の不足の要因による生産減のための予備的な代替産出量は、百万バーレルから百五十万バーレル程度といわれている。

OPECでは、非公式な石油備蓄量目標値を、55日分としてきたが、アナリストの見るところ、近時では、それが52日に減ってきているという。

これらの要因も、投機筋の思惑を呼んでいるものと思われる。

第五は、依然としての中国・インドをはじめとしたアジアでの石油需要の堅調である。

アジアでの需要の堅調ぶりを測る指標として、Nymex WTIとロンドンの International Petroleum Exchange(IPE )の指標であるBrent(北海ブレント先物)との乖離幅が上げられているが、先週になって、この両者の差は、二ドル差に縮まっている。

これまでのIPE Brentの高値は、昨年10月27日の51.94ドルであったが、この2-3週間で10ドル以上の伸びを見せ、先週3月3日の木曜日には、53ドルに達した。

これは、アジア各国の製油所での毎年の定期点検期間が、アメリカの製油所での定期点検期間にさきだって、終了することも、要因であるとしている。

また、中国・インドでは、この5月から6月にかけて、国内環境規制が変わると見込まれているところから、これまで以上に、硫黄分の少ないものを求めてきているという。

OPEC諸国が生産の主力とするのは、Heavy Sour Crude Oil であり、中国・インドが求めているのは、Light Sweet Crude Oil であるところから、たとえOPECが増産体制に入っても、中国・インドの需要増には、こたえきれないという、ミスマッチが、今年の5月から6月にかけて、おこってくるのではないかと、Energy IntelligenceのAxel Busch氏は、http://www.smh.com.au/news/Business/OPEC-says-US80-oil-possible-before-long/2005/03/04/1109700679624.htmlで予測している。

第六は、その他、 アメリカの石油精製工場での生産障害や、世界的な寒波の影響などの要因によるものである。

暖房用石油価格が、一ガロン1.49ドルと、異常気象の割には、小幅な上昇にとどまったのに対して、ガソリン価格は一ガロン1.4914ドルと、大幅な値上げとなり、 これまでの最高値の昨年5月の水準1.47ドルを大幅に上回っている状況にある。

また、アメリカでは、テキサスなど、3つの石油精製所が生産障害の状況にあり、現在のアメリカの石油精製能力は、フル稼働対比89.3パーセントの状況にあるとされ、これは、この四ヶ月間で、一番低い水準にあるといわれている。

また、これは、かねてから懸念されていたことであるが、需要増に対して、石油精製能力の増強が、機敏に対応できていないことや、地方によって、求められる石油のスペックが異なるために、地方間の融通が利かない点などが、懸念材料として、挙げられている。

さらには、硫黄分排出環境規制の強化によって、一日当たり十万バーレル分が、失われているとの試算もあるようだ。

ガソリンの年間の最需要期である夏を控え、いまだに、過去二-三ヶ月でのガソリン在庫積み増し不足への懸念があることが、ガソリン価格の異常な高騰を招いているものと見られいる。

もし、この5月から9月にかけてのドライブシーズンに原油価格が一バーレル80ドルの水準に達したとすれば、ガソリンスタンドでのガソリン価格は、相当な高騰を見せるものと思われる。

以上が、 先週の4ヶ月ぶりの原油高の要因である。

IEAでは、今年の原油需要の伸び率を日産百五十万バーレルと見ているが、これは、過小見積もりではないのかという見方もある。

ファイナンシャルタイムズ紙の見方では、今年の伸び率は、日産二百二十万バーレルから二百三十万バーレル(この過去二年間では、日産ニ百七十万バーレルであり、これは、 この28年で最高の伸び率であった。)となるのではないかという見方をしている。

なお、今月3月16日にイランのイスファハンで開かれるOPEC定例総会では、当初、冬場のピークを終えた需要減に備えて需給を引き締める予定だったが、この原油価格の高騰によって、4月以降も現行の公式生産枠である日量2700万バレルを維持した上で、「価格がさらに上昇すれば必要に応じて増産を検討する」との方向で調整を進めていると伝えられている。

3月16日のOPEC定例総会までの、ここ10日間は、市場は不安定に推移するものと見られるが、ここにきて、3月6日には、OPECのSheik Ahmad Fahad Al Ahmad Al Sabah議長が、http://www.canada.com/vancouver/theprovince/news/money/story.html?id=a2429ed7-8782-432f-bfc2-c35f7a00c4e0に見るとおり、週明け市場を鎮める発言をしたり、アメリカのスノー財務長官が市場に対し、過度な反応を戒める発言をするなど、市場の沈静化にこれつとめている。

しかし、原油高への流れは、もはや、せき止められそうもないようだ。

Kerr Trading InternationalのKevin Kerr氏は、これからの事態を、次のように予測している。
http://www.investors.com/breakingnews.asp?journalid=26256060&brk=1参照

「世界的な寒波到来と、アジアからの根強い需要増、石油精製所の混乱、ガソリン供給への懸念、これらが、複合要因となって、すべてのトレーダーの心にのしかかっている。
もはや、原油高への流れをせき止めることはできない。
私の予測するに、もし、供給サイドの問題が何らかの形で、静まらない限り、来週にも、原油価格は、新高値をつけるであろう。
そして、原油価格は、一バーレル60ドル台に突入することになるであろう。」
と、述べている。

以上

http://www.finfacts.com/irelandbusinessnews/publish/article_1000712.shtml 参照

参考  原油の単位

1 barrel = 42 gallons = 158.9873 liters = 5.6146 cu ft = 0.159 cu meters = 0.136 metric ton

1 metric ton of crude = 7.35 barrels of crude

「メトリックトン」は、ヤード・ポンド法でのトンと区別してメートル法での単位であることを明示するために使う表現です。(1トン=1,000kg)

http://www.nigerianmuse.com/important_documents/what_barrel_of_crude_oil_makes.htmご参照

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

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2005/03/04 Friday

米牛肉交渉、対日経済制裁の裏舞台をのぞけば?

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:45:28

2005/03/04
 
nullことは、先月2月23日に、アメリカの畜産地帯選出の上院議員が在アメリカ合衆国日本大使館を訪れ、アメリカ合衆国駐箚特命全権大使 加藤良三氏に対して、20名の上院議員の署名を付した「日本が早期に、アメリカとの牛肉貿易再開に応じるよう」要求する書簡を手渡したことからはじまるhttp://www.sanluisobispo.com
/mld/sanluisobispo/news/politics/10973462.htm

参照。

書簡の中には、次のように書かれてあった。

「アメリカ側は、これまで、日本側の抱く懸念に対処するように、誠実に対応してきた。
もし、日本政府が、早急に、貿易再開に踏み切らない場合、私どもが懸念しているのは、アメリカ議会が、日本に対して、公平で、報復的な経済 (制裁)措置を進めるであろうということである。
私どもは、これらの事態になることが回避されるよう、望んでいる。」

“America has acted in good faith to meet Japan’s concerns.
If the government of Japan does not act soon to lift these sanctions, then the U.S. Congress may
pursue retaliatory actions. It is my hope this situation can be avoided.”

書簡の中身については、http://allard.senate.gov/press/releases/022405.pdfをご参照。

この書簡に署名したアメリカの上院議員の名前は、次の20名である。

Ben Nelson (D-Nebraska), Pat Roberts (R-Kansas), Ken Salazar (DColorado),Jim Talent (R-Missouri), Larry Craig (R-Idaho), Kit Bond (R-Missouri), John Cornyn(R-Texas), Johnny Isakson (R-Georgia), Chuck Hagel (R-Nebraska), Mike Crapo(R-Idaho),Mike DeWine (R-Ohio), Gordon Smith (R-Oregon), George Voinovich (R-Ohio), Mitch McConnell (R-Kentucky), John Thune (R-South Dakota), Kay Bailey Hutchison (R-Texas), Max Baucus (D-Montana), James Inhofe (R-Oklahoma) and Pete Domenici (R-New Mexico)

なお、在米日本大使館の加藤大使に対しては、これらの動きに先立って、1月27日に、ジョハンズ農務長官が、同様の趣旨の会談をしている。
内容についてはhttp://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2005/01/0031.xmlをご参照。

また、年初来のUSDAの一連の動きについては、次のサイトhttp://farmpolicy.typepad.com/farmpolicy/をご参照。

これらの動きと同時に、Kent CONRADをはじめとするアメリカ上院議員が、カナダとの生体牛貿易再開に反対する議案(S.J.RES.4 Providing for congressional disapproval of the rule submitted by the Department of Agriculture under chapter 8 of title 5, United States Code, relating to risk zones for introduction of bovine spongiform encephalopathy.)を提出していた。

この議案提出に署名した上院議員は次の12人である。( [  ] 内記載は選挙区名である。)

Sponsor: Sen Conrad, Kent

COSPONSORS(11):Baucus, Max [MT] Bingaman, Jeff [NM] Burns, Conrad R. [MT] Domenici, Pete V. [NM] Dorgan, Byron L. [ND] Durbin, Richard [IL] Johnson, Tim [SD] Reid, Harry [NV] Salazar, Ken [COThomas, Craig [WY] Wyden, Ron [OR]

なお、この法案の関連法案として、「H.J.RES.23 Disapproving the rule submitted by the Department of Agriculture relating to the establishment of minimal-risk regions for the introduction of bovine spongiform encephalopathy into the United States.  」がある。

上記の在米日本大使館に経済制裁予告の書簡に署名した上院議員と、カナダ牛貿易再開反対に署名している上院議員とで、ダブっているのは、次のPete Domenici. Max Baucus 、 Ken Salazar の三氏である。

米政府が3月1日に発表した2005年版の「通商年次報告」で、日本の米国産牛肉輸入再開問題での対応を「昨年10月に輸入再開で基本合意したにもかかわらず、その後の進展がないため米牛肉産業が深刻な損害を受けている」として、次のように批判した。

このhttp://www.ustr.gov/assets/Document_Library/
Reports_Publications/2005/2005_Trade_Policy_
Agenda/asset_upload_file454_7319.pdf
 の222ページで、次のように記載している。

「アメリカ政府は、この再開がなるように、あらゆる方法をとる予定である。」(The United States will take all appropriate steps to ensure that this occurs.)

3月2日、かねてからブッシュ政権に対して批判的な R-CALF USA が今年の1月に提訴していた「カナダ産牛の輸入再開差し止め請求」が、3月7日予定のカナダとの生体牛輸入再開直前に、モンタナ地裁よって、認められた。

2005年3月2日、米連邦地裁判事Richard F. Cebull 氏は、「生体牛と、追加の肉製品についてカナダの国境を再開する」とのUSDAの「ファイナル・ルール」に対して、R-CALF USAが、予備的禁止命令を求めていることについて、これを認めた。

米連邦地裁判事Richard F. Cebull 氏は、その意見として、次の8点を挙げている。

1.USDAは、アメリカ全体の牛肉産業が、潜在的に、破滅的なダメージを蒙ってしまうような決定を下しているような、恣意的アプローチをしているように見受けられる。
2.もし、カナダが、BSEが発見された2002年以前のように、一年間にアメリカに百七十万頭の牛を出荷したなら、BSEに感染したカナダの牛が、アメリカに輸入されるであろうということは、仮想的には、確実なことであるということは、検査で示されている。
3.これらの事実は、アメリカの人々の健康と福祉を護るという法定の負託を無視しているUSDAが、カナダからの生体牛の輸入のために国境を再開するという最終ゴールを設定し、それ以降に、このゴールを補強し、正当化しようとしたということを、強く示している。
4.この証拠は、次のことによって、示されいる。すなわち、カナダが、カナダでのBSE感染率を正確に評価しうるための十分なBSE検査を行わなかったということによって示されている。
一年半の間に、アルバータ州で、BSEに罹患した4頭の牛が発見されたが、このことは、「カナダでは、BSE発生率が、非常に少ないか、最小である。」とするUSDAの主張とは、一致しない。
5.「カナダの飼料禁止措置が、有効であり、更なるBSE発生のリスクは、重要でないとされるに十分、長い期間実施されてきた。」とのUSDAの主張は、事実と食い違っており、それゆえ、恣意的であり、気まぐれである。
6.カナダ牛由来の、または、カナダから輸入されてきた、食べられる牛の製品について、消費者がこれらの製品を買わないよう選択できるように、ラベルを貼るとの要求を、零細企業が、かなえることによって、ファイナル・ルールの反対効果を緩和できるようには、USDAは、考えていない。
7.USDAは、ラベリングに関して、次のように議論している。
すなわち、「ラベリングは、消費者に対して、追加情報を提供するものの、それは、食品安全情報にもならなければ、動物保護対策にもならない。」と。
そのような声明は、紛らわしいものであり、確かに、アメリカの消費者に対して、カナダの牛肉消費の安全性について、USDAのいう「無視しうる」「リスクが非常にに少ない」「かなりありそうもない」とのリスクに見せかけることを、許してしまっている。
そのようなラベリングを張ることによって、カナダとの国境再開と同時に、消費者が牛肉を買うときに、情報に通じた消費をする機会を可能にすることになる。
ラベリングにかかるコストは、BSEに汚染された出所不明の肉を食べることによるリスクに比べれば、最小のものですむことになる。
8.強制検査にかかわる費用対効果について、USDAが十分な考慮をしなかったということ、BSEと識別されないBSEの発生によって、取り返しの付かない傷を負う可能性があるのに、なぜ、強制検査が正当化されないのかについて、少なくとも、大衆に対して、それらの利益を説明することを、USDAがしなかったということ、は、恣意的であり、気まぐれである。

以上が、米連邦地裁判事Richard F. Cebull 氏の、予備的禁止命令許諾に関する意見である。
これについては、http://www.faithlivestock.com/r-calfworks2.htmをご参照

今回のモンタナ地裁決定について、上院議員たちは、このサイトhttp://www.startribune.com/stories/535/5270201.html
http://www.reuters.ca/locales/c_newsArticle.jsp;:4226b0f0:462012b1cf8d1c87?type=topNews&localeKey=en_CA&storyID=7789551
などに見るように、「モンタナ地裁は、すでに、カナダとすすめているボックスミート取引まで、USDAルールを見直させる気か」などと、いきり立っているようだ。

また、このサイト
http://www.macleans.ca/topstories/politics/news/shownews.jsp?content=n0302105Aによれば、カナダ農民は、「今日は最悪の日だ。ロビー活動は無駄だった。」と嘆いている。

USDAは、上告については、現在白紙だとしながらも、今回の一時差し止めについて、ジョハンズ USDA長官は、次のようなコメントを出した。

「私は、本日のモンタナ地裁が、カナダから月齢30ヶ月未満の生体牛貿易の再開となるであろう、USDAの「最小リスク規則」の実施について一時的遅延命令を出したことに対して、非常に失望しております。
USDAは、最小リスク規則が、すでにアメリカでもカナダでも始まっている、動物衛生と公衆衛生との共同によって、アメリカの消費者にとっても、牛にとっても、最大の保護を可能とするものであることを、確信し続けております。
われわれは、また、カナダを最小リスク地域とするOIEガイドラインにしたがって、開発してきたリスクアセスメントについても、絶対の自信を、依然、持っています。
今日の裁判所命令は、最小リスク規則についての考慮に基づくものではなく、むしろ、裁判官が、今回の訴訟例の(双方の)比較利益秤量をするための手続き的な遅れであります。
われわれは、科学的根拠の上に立った牛肉の国際貿易が、早急に再びなされるべきであると、信じ続けております。」
http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2005/03/0072.xml
参照

ちなみに、 かねてからのR-CALF USAの主張点とは、次のようなものだ。
「カナダの体制が、あまりにも、世界標準からおとっているため、このまま、カナダとの牛の国境再開に踏み切った場合、長期的には、アメリカは被害をこうむり、結果、アメリカは、カナダの不良な牛肉製品のゴミ捨て場と化すであろうとしている。」(これについては、私のブログのhttp://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=211をご参照)

3月3日になって、アメリカ下院議員が米政府に報復的(retaliation)な対日制裁の発動を求めるとの決議案(H.RES.137
Title: Expressing the sense of the House of Representatives regarding the resumption of beef exports to Japan. )を提出した。

提出者は、スポンサーがJerry Moranであり、以下の53名の下院議員が名を連ねている。( [  ] 内記載は選挙区名である。)

Sponsor:Moran, Jerry [KS-1]

COSPONSORS(58) Barrow, John [GA-12] Berry, Marion [AR-1] Bishop, Sanford D., Jr. [GA-2] Blunt, Roy [MO-7] Boehner, John A. [OH-8] Boozman, John [AR-3] Cole, Tom [OK-4] Conaway, K. Michael [TX-11] Cubin, Barbara [WY] Culberson, John Abney [TX-7] Everett, Terry [AL-2] Foxx, Virginia [NC-5] Goode, Virgil H., Jr. [VA-5]Goodlatte, Bob [VA-6] Graves, Sam [MO-6] Gutknecht, Gil [MN-1]Hastings, Doc [WA-4] Hayes, Robin [NC-8] Holden, Tim [PA-17] Hulshof, Kenny C. [MO-9] Jenkins, William L. [TN-1] Kennedy, Mark R. [MN-6] King, Steve [IA-5] Kingston, Jack [GA-1] Larsen, Rick [WA-2] Latham, Tom [IA-4] Lucas, Frank D. [OK-3] Marshall, Jim [GA-3] McCaul, Michael T. [TX-10] McMorris, Cathy [WA-5] Miller, Jeff [FL-1] Musgrave, Marilyn N. [CO-4] Neugebauer, Randy [TX-19] Nunes, Devin [CA-21] Nussle, Jim [IA-1] Osborne, Tom [NE-3] Otter, C. L. (Butch) [ID-1] Pence, Mike [IN-6] Peterson, Collin C. [MN-7] Peterson, John E. [PA-5] Pickering, Charles W. (Chip) [MS-3] Putnam, Adam H. [FL-12] Rehberg, Dennis R. [MT] Rogers, Mike D. [AL-3] Ross, Mike [AR-4] Scott, David [GA-13] Shimkus, John [IL-19] Simpson, Michael K. [ID-2] Skelton, Ike [MO-4] Terry, Lee [NE-2] Tiahrt, Todd [KS-4] Walden, Greg [OR-2] Westmoreland, Lynn A. [GA-8]

以上が3月3日に賛同した議員であり、3月10日に、以下の5議員が、賛同に加わっている。

Kuhl, John R. “Randy”, Jr. [NY-29] Doolittle, John T. [CA-4]
McGovern, James P. [MA-3] LaHood, Ray [IL-18] Herseth, Stephanie [SD]

この決議案の中身は、次のとおりである。

以下、概訳

タイトル「日本への牛肉輸出に関する下院の公式意見表明」(Expressing the sense of the House of Representatives regarding the resumption of beef exports to Japan. )

決議

「日本への牛肉輸出の再開について、アメリカ下院としての意見を、ここに、公式表明する。

次なる説明条項(whereas clause)を持って、意見を表明するものである。

農場経営者・牧場労働者・牛肉加工業者・牛肉小売業者を含むアメリカの畜産業は、アメリカの地域経済にとって、そして、アメリカ経済全体にとって、非常に重要な構成体となっている。
アメリカの生産者は、アメリカや世界に対して、豊富で安全な食品供給をしていることを、誇りに思っている。
日本は、ワシントン州において、カナダからきた一匹の牛がBSE牛として発見された2003年12月以来、アメリカからの牛肉の輸入規制をしている。
アメリカの農業は、日本への牛肉輸出が途絶えたことによって、全体として、十七億ドルの損失をこうむっている。
アメリカは、厳しくも完璧なサーベイランス・プログラムに着手しており、BSE検査については、 OIE標準として、国際的にみとめられており、人間や動物の健康を守る保護策として実行されている。
日本は、 OIEのメンバーであり、このOIE標準に同意している。
WTOにおけるSPS合意は、WTOのメンバーに対して、SPS施策を、科学的根拠にもとづいて、人間や動物や植物ブラントの健康保護のためにのみ、適用することを求めている。
アメリカと日本は、2004年10月23日に、アメリカから牛肉を輸入再開するためのプロセスを確定した合意を締結したが、まだ、そのような輸入再開には、いたっていない。
USDAや米国通商代表部の当局者たちの最善を尽くした努力にもかかわらず、日本政府は、健全な科学や消費者の安全にもとづかない要素にもとづいて、アメリカからの牛肉輸入を遅らせている。
SPS合意は、WTOの加盟国に対して、勝手に、貿易差別や貿易制限をする権利を許すとは規定していない。
日本は、これまで、適切な貿易条件を確立し、アメリカとの牛肉貿易を再開できるに、十分な期限を与えられてきた。
そして、日本政府は、日米貿易の永くも深遠な歴史を危険にさらそうとしている。

上記のゆえに、われわれアメリカ下院は、次のことを決議するものである。
もし、日本政府が、2004年10月23日に、アメリカ政府と合意に達した合意書の元に「アメリカ牛肉の輸入再開」という、義務を果たすことを遅らせ続けるのであれば、アメリカ通商代表は、直ちに、日本に対して、報復的経済制裁を課すであろう。」

以下は、原文である。

「RESOLUTION

Expressing the sense of the House of Representatives regarding the resumption of beef exports to Japan.

Whereas the livestock industry in the United States, including farmers, ranchers, processors, and retailers, is a vital component of rural communities and the entire United States economy;

Whereas United States producers take pride in delivering an abundant and safe food supply to our Nation and to the world;

Whereas Japan has prohibited imports of beef from the United States since December 2003, when a single case of Bovine Spongiform Encephalopathy (BSE) was found in a Canadian-born animal in Washington State;

Whereas the United States agriculture industry as a whole has been negatively affected by the Japanese ban and the loss of a $1,700,000,000 export market to Japan;

Whereas the United States has undertaken a rigorous and thorough surveillance program and has exceeded internationally recognized standards of the World Organization for Animal Health (OIE) for BSE testing and has implemented safeguards to protect human and animal health;

Whereas Japan is a member of the OIE and has agreed to such standards;

Whereas the Sanitary and Phytosanitary (SPS) Agreement of the World Trade Organization (WTO) calls for WTO members to apply SPS measures only to the extent necessary to protect human, animal, and plant health, based on scientific principles;

Whereas the United States and Japan concluded an understanding on October 23, 2004, that established a process that would lead to the resumption of imports of beef from the United States, yet such imports have not resumed;

Whereas despite the best efforts of officials within the United States Department of State, the United States Department of Agriculture, and the Office of the United States Trade Representative, the Government of Japan continues to delay imports of beef from the United States on the basis of factors not grounded in sound science and consumer safety;

Whereas the SPS Agreement does not provide to WTO members the right to discriminate and restrict trade arbitrarily; and

Whereas Japan has been provided a reasonable timeframe to establish appropriate trade requirements and resume beef trade with the United States, and the Government of Japan is putting a long and profound bilateral trading history at risk: Now, therefore, be it

Resolved, That it is the sense of the House of Representatives that if the Government of Japan continues to delay in meeting its obligations under the understanding reached with the United States on October 23, 2004, to resume beef imports from the United States, the United States Trade Representative should immediately impose retaliatory economic measures on Japan.」

これが審議される委員会は、the House Ways and Means Committee (
歳入委員会)である。

なお、 OpenSecretsによると、今回の『対日経済制裁法案」では、以下のスポンサーが、それぞれの国会議員に対して、献金をしている。
http://www.govtrack.us/も、参照

主なスポンサー
National Assn of Realtors: $357,250
http://www.realtor.org/rocms.nsf
National Auto Dealers Assn: $306,000
http://www.nada.org/
National Beer Wholesalers Assn: $284,000
http://www.nbwa.org/public/login.aspx
Mantech International: $36,000
http://www.mantech.com/
American Medical Assn: $188,000
http://www.ama-assn.org/
その他

主な献金先

National Assn of Realtorsは、最高 $15,000 を Virginia Foxx [R-NC] James Marshall [D-GA] Lynn Westmoreland [R-GA]Marilyn Musgrave [R-CO]へ、後の議員に対しては、 $10,000から $2,000 を、小分けにして献金。

National Auto Dealers Assnは、最高 $15,000 を Tim Holden [D-PA]へ、後の議員に対しては、 $12,000から $5,000を、小分けにして、献金。

National Beer Wholesalers Assnは、最高 $15,000をVirginia Foxx [R-NC]へ、後の議員に対しては、 $10,000 から $5,000を小分けにして献金。

Mantech Internationalは、全額 $36,000 を Jerry Moran [R-KS]へ。

American Medical Assnは、 最高$15,000 を Lynn Westmoreland [R-GA]へ、後の議員に対しては、 $12,500から $3,000を、小分けにして献金。

上記の献金総額は、1,171,250ドルとなる。

Jerry Moran議員は、その提出趣旨を、次のサイト
http://www.house.gov/apps/list/press/ks01_moran/JapanResolution.htmlで、述べている。

これによると、

今回の対日経済制裁は、先に在米日本大使館の加藤大使に対して、アメリカの議員団が、書簡を提出した際に、日本政府が、この牛肉貿易再開問題について、行動が欠如した場合には、経済制裁をも辞さないとの示唆をしたことにもとずくものである。

Jerry Moran議員は、日本に対して、2003年10月23日の日米合意事項の早急な履行をすることを求めている。

もし、日本がこの履行をすることができないのなら、アメリカ通商代表部は、直ちに、日本に対して、報復的な経済措置を開始すべきであるとしている。

同じ3月3日、かねてから超党派議員によって提出されていた「カナダとの生体牛貿易再開に反対する議案(.J.RES.4 Providing for congressional disapproval of the rule submitted by the Department of Agriculture under chapter 8 of title 5, United States Code, relating to risk zones for introduction of bovine spongiform encephalopathy.」が、上院で、賛成52.反対46で、可決された。

http://www.reuters.ca/locales/c_newsArticle.jsp;:4227ae4e:1fcda9bb5e32566a?type=topNews&localeKey=en_CA&storyID=7803064
によれば、当初、ブッシュ政権は、カナダとの国境再開を先例にして、日本側に牛肉貿易再開を迫ろうとのプランを持っていたが、今回の「カナダとの生体牛貿易再開に反対する議案」可決によって、米議会議員の日本に対する苛立ちは、より増してくるとのことである。

法案賛成議員数が、三分の二にいたらなかったため、ブッシュ大統領は、下院においても可決された場合には、これに対して、拒否権を発動する見通しである。
http://www.suntimes.com/output/business/cst-fin-cow04.html参照

この議案の可決について、ジョハンズUSDA長官は、「今回の議案可決は、これまで、USDAが日本側に対して、科学的根拠にもとづいた牛肉貿易再開を呼びかけてきた努力を無きがものにするものであり、アメリカの牛肉産業の経済的混乱は、これからもつづくであろう。」とのコメントを出した。
http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2005/03/0074.xml
参照

また、この法案可決のとばっちりは、対日本に及び、ペン農務省次官は、「もはや、この問題は、農業問題ではなく、政治問題に変質した。」とのコメントを述べている。

一昨日、モンタナ地裁の差し止め命令が出たことで、法廷の場における決着は長引くと見たアメリカ議会の議員たちが、カナダ国境再開反対論に雪崩をうって傾いたというのが真相なのだろう。

以上、この二週間でのアメリカ議会におけるカナダと日本の牛肉貿易再開を巡るあわただしい動きについて、概説した。

要は、3月7日に迫ったカナダとの月齢30ヶ月未満の生体牛輸入再開を控えて、USDAは、カナダに適用したOIEガイドラインにしたがった最小リスク規則が、科学的根拠にもとづいたものであり、これをカナダを最小リスク地域とすることが認められたとの背景の下に、日本に対しても、科学的根拠にもとづき牛肉の安全性が確保されたとの合意で、日本との牛肉貿易再開にこぎつけたかったおもわくが、カナダとの最小リスク規則が、身のうちのアメリカ議会によって否定されてしまった形になってしまったわけである。

今後の展望であるが、カナダとの貿易再開が長引いたことで、アメリカ国内ミートパッカー業者たちは、いっそう苦境に立たされることになり、日本との牛肉貿易再開のみを頼りに、ロビー活動を協力に展開させていくことになるであろう。

今回モンタナ地裁に提訴した R-CALF USAとは、いつも敵対関係にある全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、今後のカナダとの貿易再開条件について、11項目の要望書をUSDAに提示した上で、対日経済制裁の中身についても、どのような経済制裁が適当なのかについて、USDAやアメリカ議会と話し合っていく用意があると、
http://www.cattlenetwork.com/content.asp?contentid=4122
で、述べている。

ただ、決定的なのは、これまで、USDAが唯一科学的根拠のある安全性原則として、そのよりどころとしてきた「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念が、いかに大統領の拒否権発動があったにせよ、アメリカ議会によって、実質否定されたものを、日本において、適用するということは、理論上、できないのではなかろうか。

この「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念は、2004年12月29日に、当時のヴェネマン農務長官時代に、Final Ruleとして設定されたものである。

その概要は、
http://www.usda.gov/wps/portal/!ut/p/_s.7_0_A/7_0_1OB?contentidonly=true&contentid=2004/12/0525.xml
に見るとおり、次のようなものである。
http://www.aasrp.org/hot_topics/2005/January/FinalRule.htm も、ご参照

「最小のリスクのある地域では、人間の健康に対しても、牛の健康に対しても、実質的には、何のリスクもない。」という考えで、
「このアプローチは、OIEのガイドラインと一致しているものであり、科学的な根拠にもとづいた the Harvard-Tuskegee Risk Model Study を主体としたリスク・ミチゲーションの手法(Risk mitigation measures)によったものである。」とし、
「カナダが、この「minimal-risk regions」として認知されうる最初の国であり、月齢30ヶ月以下の生体牛や一定の牛肉製品をアメリカに輸出しうる資格を有しうる最初の国となりうる。」ものとしている。

いってみれば、、カナダへの「minimal-risk regions」適用を、OIEガイドラインに準拠していると正当化したうえで、BSE汚染国カナダからの輸出を可能とした上で、その次には、自らがBSE汚染国であるアメリカが、日本を始めとする各国へ、アメリカ牛肉輸出を「minimal-risk regions」適用のアメリカ国として、ドミノ的に、正当化しようとする思惑が、このカナダ国への「minimal-risk regions」適用にあったと見なければならない。

つまり、BSE汚染国アメリカが日本などのアメリカ牛肉輸入拒否国に対して牛肉輸出を可能とさせるためには、その露払いとして、同じBSE汚染国カナダへの「minimal-risk regions」適用が、ぜひとも必要だったというわけである。

そのカナダへの「minimal-risk regions」適用が、アメリカ議会自らの手で否定された今日、今、日本側がなすべきことは、これまで、アメリカ側が牛肉の安全性の科学的根拠としてきた「the minimal-risk rule」 と「the minimal-risk regions」の概念の安全性の真偽について、再検証することなのではなかろうか。

3月12日追記
米上院農業委員会のチャンブリス委員長らは11日、加藤良三駐米大使と上院内で会談し、BSE発生に伴い停止している米国産牛肉の輸入を早期に再開するよう求めた。

これに対して同大使は日本の国内手続きを説明したが、議員の中からは「なぜこんなに時間がかかるのか」「いつまでに手続きを終えるという予定は示せないのか」などという疑問の声が相次いだ。

これらの議員は、the National Cattlemen’s Beef Association (NCBA)からの突き上げにあっているようだ。

これらの議員は、今日の行動を「(日本を)角で突いた」と、the National Cattlemen’s Beef Association (NCBA)から礼賛されている。

この会談の後、Bennett Robert 上院議員は、次のような、日本に対する国辱( national disgrace)的な言葉を発している。

Robert上院議員の言葉
「アメリカでは、動かない牛を動かすときには、牛を突いて動かすものだ。」
「”In the U.S. we use cattle prods to move cattle,” 」

この会談で、同席した、アメリカ上院議員と下院議員の名前は次のとおりだ。
http://www.cattlenetwork.com/content.asp?contentid=4208参照

上院農業委員長(1) Saxby Chambliss (R-GA),

上院議員(10)
Wayne Allard (R-CO), Robert Bennett, (R-UT), Thad Cochran (R-MS), John Cornyn (R-TX), Michael Crapo (R-ID), *Chuck Hagel (R-NE), * Ben Nelson (D-FL), * Pat Roberts (R-KS), ○* Ken Salazar (D-CO), *John Thune (R-SD),

下院議員(2)
◎Jerry Moran (R-KS)
◎Marilyn Musgrave (R-CO)

◎印は、対日経済制裁法案への署名者
○印は、カナダ生体牛輸入ストップ法案提出者
*印は、2月23日に加藤大使にわたした書簡への署名者

3月14日追記

3月11日に引き続き、加藤大使と次の上院議員が、本日面会した。

委員長Charles Grassley (R-IA)
Max Baucus (D-MT)
Jeff Bingaman (D-NM),
Conrad Burns (R-MT),
Larry Craig (R-ID),
Gordon Smith (R-OR)
Craig Thomas (R-WY)

3月18日追記

3月17日、アメリカ上院議員Thune, John氏が、賛同上院議員9名とともに、対日経済制裁法案を提出した。

以下が、賛同した上院議員の名前である。

法案名
S.RES.87
Title: A resolution expressing the sense of the Senate regarding the resumption of beef exports to Japan.

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#〇*Thune, John [SD]

賛同上院議員(9名)
Bond, Christopher S. [MO]
Bunning, Jim [KY]
#〇Craig, Larry E. [ID]
#*Crapo, Mike [ID]
#◎Domenici, Pete V. [NM]
#Inhofe, James M. [OK]
#◎Johnson, Tim [SD]
〇*Roberts, Pat [KS]
〇Talent, Jim [MO]

上記のうち、〇印は、先月2月23日に、加藤良三大使に当てた書簡に署名をしていた上院議員。
◎印は、カナダとの生体牛貿易再開に反対する議案(S.J.RES.4)の提出賛同者となっていた上院議員。
#印は、カナダとの生体牛貿易再開に反対する議案(S.J.RES.4)に賛成した上院議員
http://www.senate.gov/legislative/LIS/roll_call_lists/roll_call_vote_cfm.cfm?congress=109&session=1&vote=00019参照
*印は、3月11日に、米上院農業委員会のチャンブリス委員長とともに、加藤良三大使に面会した上院議員

なお、この法案のスポンサー献金先一覧は、こちらのサイト「アメリカ上下院の対日経済制裁法案に対するスポンサー献金明細」http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=247にまとめてるあるので、ご参照ください。

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

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2005/03/01 Tuesday

世界に戦慄と波紋を呼ぶ日本の鉄鋼大手の鉄鉱石7割値上げ合意

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:45:01

2005/03/01(Tue) (関連記事「さらに、気がかりになってきた、鉄鋼・鋼材価格の推移 」(2005/04/21記)もご参照ください。)

null2月22日に、日本の鉄鋼大手が、ブラジルのリオドゼとの、2005年度の鉄鉱石価格交渉で、前年比7割増で決着したことが、世界の鉄鋼関係者の間に、恐怖に近い戦慄を振りまいている。

以下のBBCの記事
http://news.bbc.co.uk/1/hi/business/4303915.stm
では、MEPSのPeter Fish氏が、そのへんの事情をリアルに伝えている。

Peter Fish氏によれば、今の鉄鋼価格は、この50年以来なかった高値状況にあるという。

今回の日本の鉄鋼メーカー新日鉄が、ブラジルの鉄鉱石メーカー大手二社の Companhia Vale do Rio Doce (CVRD)と、 the Anglo Australian firm Rio Tintoとの間で妥結した値上げ率は、71.5パーセントであった。

また、韓国の鉄鋼メーカーPoscoや、台湾のChina Steel Corpも、オーストラリアのBlue Scope Steelも、中国のBaosteelも、CVRDと、同じく 71.5パーセントで妥結した。

この71.5パーセントという数字は、近代にもない値上げ率であり、昨年の平均値上げ率は、19パーセントであり、一昨年の値上げ率は、9パーセントであった。

ヨーロッパと、アメリカの鉄鋼メーカーと、鉄鉱石メーカーとの価格交渉はこれからのようであるが、Peter Fish氏の見通しでは、この日本の作った価格水準が基準になるであろうとし、せいぜい、下がっても、幅5パーセント以下の小幅なものとなるであろうとしている。

なぜ鉄鉱石メーカーは、これほどまでに、強気な価格交渉をしているのかについて、Peter Fish氏は、「それは、簡単な理由で、鉄鉱石メーカーは、過去二年間にわたる三分の二以上の鉄鋼価格の上昇分のパイの分け前を狙っているに過ぎない。」としている。

また、Peter Fish氏は、これほどの鉄鉱石の値上がり分を、鉄鋼メーカーが吸収しうるかとの点については、「ドミノ現象による鉄鋼ユーザーへの価格転嫁によって、容易に吸収しうる。」としている。

鉄鉱石メーカー側は、これまで、鉄鋼価格が最高度に値上がりするのを横目に見ていて、これまで、値上げの機会を逸していたのだともいう。

鉄鋼価格の値上がりは、スクラップ鉄や石炭・コークスの値上がり、輸送費の高騰などの副次的な理由はあるにせよ、ひとえに、主因は、中国経済のバブル現象によるものとする。

日本の鉄鋼メーカーがブラジルの鉄鉱石メーカーと71.5パーセントもの値上げを決めるまでは、Peter Fish氏は、鉄鋼価格のピークを、せいぜい、今年の夏までと見ていたという。

しかし、今回の日本の鉄鋼メーカーの値決めで、鉄鋼価格の上昇は、今年2005年いっぱいは続くのではないかと、見方を修正したという。

なぜなら、鉄鉱石価格は、前年までの鉄鋼価格に連動する傾向があり、翌年の鉄鋼価格見通しに連動することはないからだという。

Peter Fish氏のいうに、「このことが何を意味するかといえば、鉄鉱石メーカーは、常に追いつけ競争をしているのであり、いかなる不景気のときでも、利益の一定のシェアは確保できることを意味する。」といっている。

nullアナリストの見るに、鉄鉱石価格の値上がりは、鉄鋼最終価格に10パーセントの上乗せをもたらすが、この値上がり分は、ユーザーに価格上昇分受け入れの余裕があるとないとにかかわらず、ドミノ的に転嫁されると見ている。

ただ、これが、直ちに自動車の価格上昇につながるかといえば、そうではなく、翌年度の価格は、すでに決まっているという。

では、この鉄鋼価格上昇がどこまで続くかということなのだが、結局は、中国の過熱経済成長が一段落するまでは、続くものと見なければならないという。

なお、上記の環境変化を受け、日本国内においても、鉄鋼大手と自動車・造船など主要ユーザーとの鋼材価格の値上げ交渉が本格化している。

鉄鋼側は、あらゆる面でのコストダウンによる鉄鉱石価格アップ分の吸収をはかるとしながらも、業界全体の平成十七年度の原料調達コスト増負担額を、この鉄鉱石値上げ分に加え、昨年末に決着した原料炭(還元剤)の大幅値上げ分(今年度対比二・二倍)や、原油高による船賃上昇分などをも含めると、「1兆円程度」と試算しており、4月出荷分から価格に転嫁したい考えとのことである。

また、日本独自の事情として、もともと、国内価格が、国際価格と比較し10,000円程度低いこと、店売りと(主要需要家向けの)ひも付きとの価格差(10,000から20,000程度)があること、などの、特殊事情がある。

一部では、すでに、4、5月に減産し、値上げへの体制をととのえるところもあるようだ。

これによる国内ユーザーへ転嫁される鋼材価格アップ分は、普通鋼材−H形鋼、厚・中板、熱延・冷延薄板など−については、トン当たり7,000円から10,000円、特殊鋼材-ステンレス鋼板、高張力鋼など、-については、トン当たり15,000円から20,000円程度 に上るものと見られている。

参考 1.
「鉄鋼新聞相場表」http://www.kouzai.com/7_souba/7_index.html による近年の鉄鋼材価格推移
(東京での高値)(単位:円/トン)

鋼材 種類2001/01・2002/01・2003/01・2004/01・2005/01
条鋼(建材)製品      
異形棒鋼 ・・・・・28,000・・・27,000・・・ 35,000・・・42,000・・・62,000
(SD295 16-25ミリ 直送)
H形鋼 ・・・・・・・37,000・・・ 37,000・・・39,000・・・51,000・・・77,000
(5.5 / 8 X 200 X 100)

鋼板
熱延鋼板 ・・・・44,000・・・ 41,000・・・ 46,000・・・51,000・・・80,000
(1.6ミリ,3X6)
冷延鋼板 ・・・ 52,000・・・44,000・・・ 54,000・・・65,000・・・92,000
(1.0ミリ,3X6)
厚板 ・・・・・・・44,000・・・ 39,000・・・42,000・・・49,000・・・88,000
(12ミリ,5X10)

鋼管
黒ガス管 ・・・・75,000・・・74,000・・・ 74,000・・・76,000・・102,000
(高炉品,50A)

特殊鋼
冷延ステンレス鋼板250,000・220,000・230,000・250,000・320,000
(SUS304,18-8,2〜3ミリ)
機械構造用炭素鋼・74,000・・70,000・・ 71,000・・71,000・・82,000
(SC材,40ミリ)

2,3次製品
溶融亜鉛めっき鋼板121,000・115,000・ 118,000・ 122,000・137,000
(亜鉛鉄板)
(0.27ミリ X 3 X 6)
電気亜鉛めっき鋼板・ 70,000・61,000・ 66,000・80,000・104,000
(冷延下地)
(1.0ミリ X 3 X 6)
丸釘 ・・・・・・・・75,000・・・ 69,000・・・ 72,000・・・76,000・・・98,000
(100ミリ)

鉄スクラップ・・・3,500・・・3,200・・・ ・ 7,500・・・・12,000・・・・13,000
H2
(特級)

参考 2.過去四年間での値上がり指数(2001/01を100とした2005/01の価格指数)

異形棒鋼 221  H形鋼 208  熱延鋼板 181 冷延鋼板 176 厚板 200  黒ガス管 136 冷延ステンレス鋼板 128  機械構造用炭素鋼 110 溶融亜鉛めっき鋼板 113  電気亜鉛めっき鋼板 148 丸釘 130  鉄スクラップ 371   

参考.3. 2001年を100とした世界の鉄鉱石・コークス・スクラップ鉄の価格指数(UK SteelのRaw material prices.)

下記サイトにあります。

鉄鉱石 124(2001年を100として2004年の価格指数)( CVRD Carajas fines(FOB価格))

コークス 654(2001年を100として2004年の価格指数)( 中国の輸出用コークス(12/12.5% ash cokeでFOB価格)

スクラップ鉄
 299(2001年を100として2004年の価格指数)( OA heavy steelのイギリス向け消費者価格)

http://www.uksteel.org.uk/stats3.htm

参考 4.パワーポイントによる「世界の鉄鉱石市場」(英語)

http://www.aztecresources.com.au/get/2384700704/0

参考 5.日本銀行横浜支店の「神奈川県内企業における鋼材需給逼迫の影響」

http://www3.boj.or.jp/yokohama/kouhyou/shiryou/w050203.pdf

海外鉄鋼産業状況については、「Metal Place」http://metalsplace.com/ご参照

以上

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