Sasayama’s Weblog


2005/03/11 Friday

アメリカは、カナダ生体牛輸入問題を解決してから、日本に圧力をかけるべし。

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:45:48

  
2005/03/11(Fri)

null対日経済制裁を片手に日本に対して、牛肉貿易再開圧力をかけるのもいいんですけれども、私のブログ「米牛肉交渉、対日制裁の裏舞台をのぞけば?」 http://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=236
にも書きましたように、ポイントは、カナダに適用しようとした「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念が、アメリカ議会自らによって否定されてしまっているということが、そもそものボタンの掛け違いなんですね。

本来は、アメリカの思惑としては、
1.この「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念を、手始めにカナダに適用し、
2.カナダからの生体牛輸入によって、この概念を認知させ、
3.それでもって、今度は、アメリカ自体が、OIEのガイドラインに準じて、「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の対象地域とみなされ、
4.その上で、日本からの牛肉貿易再開が可能となり、
5.そして、その上で、OIE総会において、この「最小リスク規則 (the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念を、世界標準として認知させ、米国を「暫定正常国」扱いで認知させるルール作りをし、
6.その上で、今年の7月に、日本との科学的協議によってBEVプログラムの再検討を行い、これによって、カットオフ月齢を昨年10月合意の月齢20ヶ月未満というのを、月齢30ヶ月未満に後退させる、
という手はずだったわけですよね。

ですから、アメリカが、カナダとの国境を封鎖したまま、日本に対して、開国を迫るというのは、上記の「最小リスク規則(the minimal-risk rule)」「最小リスク地域(minimal-risk regions)」のドミノ的認知の過程を、カナダの段階ですっ飛ばしていることからすれば、まったく、理不尽の圧力なわけですね。

この辺を、もう少し、詳しく見てみましょう。

昨年12月29日に、アメリカUSDAは、BSE ミニマルリスク規則を発表しました。

そのころは、日本では、すでに正月ムードで、誰も、注目しませんでしたけれども。

この規則作成の過程で、USDAが行った広範囲なリスクアセスメントでは、カナダでさらにBSE 例が発見される可能性を考慮に入れています。

OIEのガイドラインによりますと(この辺の関係は、リンクが時系列的に後先になってしまいますけれども、こちらhttp://www.sasayama.or.jp/wordpress/index.php?p=242のブログ記事をご覧になってくださいね。)、過去4 年間連続、24 ヶ月齢以上の牛100 万頭あたり2 頭以下の発症国はミニマルリスク国となり、カナダの場合、24 ヶ月齢以上の牛が550 万頭いますので、BSE 対策や予防措置が効果的に行われている限り11 頭まではミニマルと考えられています。

http://www.usda.gov/wps/portal/usdahome?contentidonly=true&contentid=2005/01/000
1.xml
 ご参照

このミニマル・リスク規則にもとづいて、USDA がBSE のミニマルリスク地域を規定する規則を発表し、ここで、カナダをミニマルリスク地域と規定することによって、カナダから米国への牛肉の輸入を可能としたのです。

このうえで、USDA は12 月29 日、効果的なBSE 予防対策および検出システムがある地域からの30ヶ月齢以下の生きている牛及びその他の製品の輸入を可能とする条件を規定する規則を公表しました。

このアプローチについて、USDAは、「OIE のガイドラインに沿ったもので、適切な科学に基づくリスクmitigation 対策に基づくものである。リスクアセスメントの結果、カナダがこのミニマルリスクエリアに初めて指定されものである。」との見解を発表しています。

にもかかわらず、大統領の拒否権発動という可能性は残されてはいますが、カナダからの生体牛の輸入阻止を目的とした、「カナダとの生体牛貿易再開に反対する議案(.J.RES.4 Providing for congressional disapproval of the rule submitted by the Department of Agriculture under chapter 8 of title 5, United States Code, relating to risk zones for introduction of bovine spongiform encephalopathy.」が、上院で、賛成52.反対46で、可決されたのですね。

このことは、何を意味するかといえば、USDAが12月29日に発表した、「最後の規則−ファイナル・ルール」とする、ミニマル・リスク規則とミニマルリスク地域を規定する規則を、アメリカ上院議会自らが、否定したということなんですね。

このままでは、アメリカにとって、カナダが、ミニマルリスク地域でないばかりでなく、日本にとっても、アメリカがミニマルリスク地域でないという理屈になりますね。
つまり、たとえ、日本が、アメリカの理屈に最大限沿ったとしても、アメリカがミニマルリスク地域とならない限り、アメリカは、日本に対して、牛肉を輸出できないことになりますね。

それなのに、どうして、日本がアメリカから、牛肉輸入の開国要求圧力を受けるのか、私には、その意味が、さっぱりわかりませんね。

日本のマスコミは、このカナダと日本との関係について、まったく記事を書かないのですが、まさに、この問題のポイントは、カナダの開国によって、「最小リスク規則 (the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念が認知されるかどうかの問題にあるわけです。

そこが認知されさえすれば、後は、なし崩し的に、という方向なんですね。

もし、日本の食品安全委員会が、アメリカからの直接的、間接的圧力の下で、月齢20ヶ月未満の安全性にゴーサインを出すということは、結果的に、このカナダにも適用されていない、「最小リスク規則 (the minimal-risk rule)」ならびに「最小リスク地域(minimal-risk regions)」の概念を、世界に先駆けて認知してしまうと言うことになりかねないのです。

その点は、日本の食品安全委員会も、そのことの重大さについて、認識していただきたいものですね。

「アメリカは、カナダ生体牛輸入問題を解決してから、日本に圧力をかけるべし。」このことを、アメリカの議会の皆さんにも、声を大にして言いたいのです。

それと、もうひとつ、CAFTAのアメリカ議会承認の代償として、日本に対して、牛肉貿易再開を求める動きがあるというのも、理不尽な話ですね。

米国政府が中米5ヵ国(コスタリカ、ホンジュラス、エル・サルバドル、グアテマラ、ニカラグア)との自由貿易協定(CAFTA)がようやく妥結して、ブッシュ政権は、アメリカ議会の承認に持ち込みたい考えのようですが、ここにきて、アメリカ国内においても、米国以外のCAFTA加盟国でも、批准反対論が噴出しているようです。

それは、CAFTAと同じ考えでやってきたNAFTA(北米自由貿易協定 アメリカ カナダ メキシコ)が、今のカナダとの生体牛貿易問題にみるごとく、それほど効をなさかったという反省の上にたってのことなのでしょうね。

とくに、購買力のないメキシコの加盟は、アメリカにとっては、雇用の域内輸出入に過ぎなかったという、思いもあるのでしょう。

また、アメリカ国内砂糖業者にとっては、CAFTA加盟によって、新たな競争者が現れることになります。

特に投資家保護をあまりにもあらわに出しすぎた、現在のNAFTA協定にあるChapter 11条項というものが、CAFTA協定にも適用されるのではないかという疑心暗鬼があるのではないでしょうか。

つまり、CAFTA加盟国が、投資家保護に違反した場合は、Chapter 11条項をもとにしての、国を相手取っての訴訟合戦がはじまるというわけです。

加盟国内の一企業が、何らかの政策決定によって利益を損なわれた場合には、他の加盟国の政府に対して、訴訟をおこしうるという、条項ですね。

そこで、ブッシュ政権が、CAFTA協定を議会に承認してもらうための道連れに選んだのが、「日本とのアメリカ牛肉貿易再開問題」であるといえるのではないでしょうか。

CAFTAは、アメリカにとっては、市場にならないが、日本という牛肉市場に風穴をあければ、何とか、議会も、まるく収まるだろうという思惑なのでしょう。

とんだアメリカ議会の取引材料に、日本の牛肉貿易再開問題が使われたものです。

もっとも、アメリカの消費者団体であるパブリックシチズンは、以下のサイト http://www.citizen.org/pressroom/release.cfm?ID=1883で、こういつていますね。

「カナダの畜産業者たちが、アメリカの国境封鎖による損害補償を、NAFTA協定のChapter 11条にもとづいて、膨大な金額を請求してくるであろうし、これが、NAFTA+CAFTAともなれば、両加盟国からのアメリカ政府に対する補償請求は、ますます、莫大な額になるであろう。結局、それらの補償費の国の負担は、消費者にかぶさってくるのだ。」といっていますね。

つまり、日本の牛肉貿易再開をトレードオフにして、CAFTAの議会承認をしたところで、将来、CAFTA加盟国についても、今回のNAFTA加盟国であるカナダの牛肉問題のような問題が多発して、結局は、アメリカは、Chapter 11条的条項にもとづいたCAFTA加盟国からの膨大な補償問題が発生すれば、何にもならないじゃないか、という視点ですね。

日本政府も、この辺のアメリカのお国の事情をよくわきまえた上で、対日経済制裁にたいし、きっちり対応するようにしないと、いけませんね。

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