2005/01/28
ヴェトナムでの、ヒト→ヒトの鳥インフルエンザ感染の状態が、昨日発表された。
これによると、Long An 県から来た10歳の少女と、Dong Thap 県から来た13歳の少女に、ともに、H5N1陽性の反応が出た。
http://english.eastday.com/eastday/englishedition/world/userobject1ai831457.html参照
この二人は、ホーチミン市の小児病院におり、現在、危篤状態にある。
13歳の少女の母親は、二羽のアヒルを殺した後、病にかかり、1月21日に死亡した。
10歳の少女の家族は、一ヶ月前、家で、病気にかかったトリやアヒルを埋めたという。
昨年12月28日以来、ヴェトナムでは、9人が死亡し、昨年一年では、死亡者は29人にのぼった。
この間において、七十万二千羽の鶏が殺処分された。
来月の旧正月を控え、人や家禽の往来か激しくなるにつれ、呼吸器感染の患者たちが、病院に検査を受けに来る数が増してきているという。
このように、タイ・ヴェトナムをはじめとして、WHOを先頭にして、鳥インフルエンザの人→人拡大阻止に乗り出した、アジア各国だが、次のような、「時 既に遅し」との見解もあるようだ。
「Asia Acts But Helpless if Deadly Bird Flu Occurs 」http://www.planetark.com/dailynewsstory.cfm/newsid/29239/story.htmとの香港からの論説では、香港大学の専門家の話として、次のように伝えている。
香港大学のLeo Poon教授によれば、「もし、ウィルスが、ヒトに適応してしまったら、誰も、どこでも、それに対抗することはできなくなる。なぜなら、そのように変異してしまったウィルスは、あまりに毒性が強く、伝染性が強く、死亡率が高いからである。」といっている。
ここで、各国の鳥インフルエンザ対策を見ると、中国では、鳥へのワクチン接種を促進したり、生体鶏の市場や輸送を監視したり、している。
うち、被害が大きいと見込まれる香港では、タミフルのストックを二倍にしたが、それは人口七百万人のたった5パーセント分にしか過ぎないという。
また、日本では、タミフルを二千万人分備蓄しているが、この量は、日本の人口一億二千七百万人のうちの一部にしか過ぎない。日本では、そのほかの対策として、海外渡航の自粛、学級閉鎖などを考えている。
タイでは、三年間にわたって、一億二千万ドルの予算措置をとり、鳥インフルエンザの研究開発などに当たっている。
また、鶏の販売業者は鶏の死体の運搬に当たっては、ビニールパックを使用させるなどの措置を取らせている。
このような各国の対策は、本格的なヒト→ヒト感染が始まっては、ほとんど、役に立たないと、専門家は見ている。
同じく香港大学のLo Wing-lok氏によれば、鳥インフルエンザH5N1は、SARSよりも、伝染力は、はるかに勝るといっている。
それは、H5N1にかかっていても、発症までの潜伏期間が6日あるために、感染者の隔離や、トレースも、ままならないということが、感染力を高めているとしている。
そして、発症後も、発症期間が、SARSに比して長いため、感染力は、より高まってしまうのだという。
また、アジア各国においては、感染診断のための施設や器具が圧倒的に不足していることも、大きな障害であるとしている。
たとえ検査にいたっても、検査結果が出るまでに、4日も要するということで、その間に感染がひろまってしまうのだという。
香港大学のLo Wing-lok氏によれば、最初の患者クラスターを確認して、その後二日から三日の間に、そのクラスターを隔離できれば、鳥インフルエンザの拡大を防ぐことができるという。
しかし、多くの国では、それができない。
となれば、すべての鳥へのワクチン接種か、全部の鳥の殺処分しか、手がなくなると、氏はいっている。
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2005/01/25
今日のthe New England Journal of Medicine
の「Probable Person-to-Person Transmission of Avian Influenza A (H5N1) 」http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/NEJMoa044021
によれば、
タイの家族のなかで、鶏から人、人から人への鳥インフルエンザH5N1伝染があったかどうかの検証をしており、
○家族の中の17歳の女性が発症したのは、その家の鶏に触れた三-四日後であり、その後死亡したこと。。
○彼女の母親は、衣服工場の勤め人で、異なった行政区から、病気になった彼女を看病に来て、何の防護服等もなくて、昨年9月7日から8日にかけて、16時間から18時間看病し、17歳の彼女を抱きしめたりキスしたりしていた後、9月11日に、肺炎にかかり、娘の死亡後、12日後に死んでしまったこと。
○また、彼女の 叔母さんも、その死んだ母親が発症してから5日後に、発熱し、その一週間後に、肺炎にかかったということ。
○この母親からの組織と、叔母さんからの鼻咽頭とのどから、綿棒で採取したものからは、A型H5N1の陽性反応が、RT-PCR法によって検出されたということ。
これらのことから、トリ→ヒト→ヒト感染のH5N1伝播が疑われている。
この今日のThe New England Journal of Medicineの情報は、瞬く間に世界を駆け巡り、各国とも、ヒト-ヒト伝播の場合の鳥インフルエンザ対策に、本格的に乗り出したようだ。
http://dailytelegraph.news.com.au/story.jsp?sectionid=1268&storyid=2564995では、その模様を伝えている。
特に、アメリカやイギリスの科学者たちは、今回のタイ・ヴェトナムでの家族感染にみるヒト-ヒト感染の鳥インフルエンザは、世界の二千万人以上の発症者を出す前触れであると警戒している。
英国政府は、手回しよく、英国でのヒト-ヒト感染(Person-to-Person Transmission)に備えた、「最後の審判のためのシナリオ」を作ったようである。
それには、感染者の死体を隔離するための膨らまして使うポータブルな霊安室まで用意されているという。
WHOのクラウス・ストール博士が言うに、今回の鳥インフルエンザウィルスは、ローカルな範囲では起こらずに、世界的な範囲で起こるであろうと予測している。
イギリスの見方では、1918年から1919年にかけて発生した、イギリスでの死亡者の二十二万八千人を、今回は上回るのではないかとみている。
そして、世界的には、二千五百万人以上の死亡者が出ると見ている。
このよう英国の過剰とまでいえる今回の鳥インフルエンザ対策に医学界は驚いているようだ。
また、ワクチンのストックも不足していることから、もし、このような事態になった場合は、手の打ちようがないとしている。
さらに、今回のウィルスは、変異によって、相当の毒性があるようなので、新しいワクチンの開発が急がれるとしている。
ところで、日本は大丈夫?
http://www.heraldsun.news.com.au/common/story_page/0,5478,12050473%255E401,00.html
も、ご参照
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197
2004/12/18
もう一年近くたとうとしていて、忘れがちだった今年2月の京都府での鳥インフルエンザだが、ここにきて、当時、鳥インフルエンザの消毒に当たった関係者五人の血清から、H5N1ウイルスに対する抗体が検出されていたことが十七日、分かったという。
血液検査したのは、2−3月に鶏の殺処分などに従事した、元養鶏場従業員16人、家畜保健衛生所職員20人、京都府本庁職員22人で、そのうち、ウイルス抗体陽性者は元養鶏場従業員4人と家畜保健衛生所職員1人であったとされる。
厚生労働省と国立感染症研究所は18日、陽性となった5人のうち、農場従事者の男性1人の感染をほぼ確認した。
残り4人については、さらに検査を継続し、感染の有無を慎重に判断するという。
五人は作業前に、インフルエンザ治療薬のリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)を服用。フード付きの防疫服とゴーグル、マスクで厳重に防備していたが、マスクなどが密着していなかった可能性もあるという。
私の掲示板でも、安易な体制で、府の職員などに人海戦術の作業をさせることの危険性をはやくから指摘していた。
とくに、「5935 全くの素人に鶏の処理をさせる愚行」では、 平和屋さんから、重大な指摘があった。
2002年3月中旬、アメリカ・バージニア州のShenandoah Valleyの家禽農場で、政府職員が、鳥インフルエンザにかかった鶏を殺処分中にH7N2に感染し、熱・のどのいたみ・咳・頭痛などの症状を訴えたという例がある。
また、2003年4月オランダDen Boschでなくなった57歳の獣医師は、二日間、感染農場ではたらいた後、重症の肺炎となり、2003年4月17日に死亡している。
このとき、防疫に従事した人も、数十人のヒトが結膜炎を、十数人が、インフルエンザ様症状を呈したのことだ。
死亡した獣医師1名の肺から鳥インフルエンザウイルスH7N7が分離された。
また、養鶏従事者の家族内で3人に結膜炎と軽い呼吸器症状がみられたという。
さらに、今年に入っては、3月に、カナダのブリティッシュコロンビアのFraser Valleyで、鳥インフルエンザを消毒中の12人の作業員が、防護服を着用していたにもかかわらず、インフルエンザ症状を見せ、そのうちの二人からは、H7N3が検出されたという例がある。
これについては、こちらもご参照。
高病原性鳥インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の防御に対するWHOの暫定的勧告によれば、次の通りの体制をとるべきとしている。
1、処分と輸送にあたる人員には以下のごとき個人防御具を適切に供与しなければならない。
・上下つなぎの作業服と不浸透性のエプロン、または、長袖で袖口が締まるサージカルガウンと不透過性のエプロンの組み合わせによる防御服
・頑丈で消毒可能なゴムの作業用手袋
・N95呼吸器マスクが望ましい1。N95呼吸器マスクが入手不可能であれば標準的なぴったり合ったサージカルマスクを使用する2。
・ゴーグル
・消毒可能なゴムまたはポリウレタンの長靴、あるいは使い捨ての防御用の靴カバー
(中略)
4、感染した鶏や感染が疑われる農場への暴露を受ける人はすべて、地域の健康当局により密接な監視下に置かれるべきである。
・殺処分員と殺処分に携わる農業従事者においてH5N1呼吸器感染が疑われる際の治療に対し、オセルタミビルがすぐに利用できるようにしておくことが推奨される。
・その人たちはまた、ヒトインフルエンザと鳥インフルエンザの同時感染を避け、ウイルス遺伝子の再構成が起こる可能性を最小限にするため、現在のWHOの推奨するインフルエンザワクチンを接種していなければならない。
(以下略)
これまでのことからいえば、単なる防護服とタミフルの服用だけでは、感染を防げないと見てもいいだろう。
緊急の場合には、必ずしも、適合するワクチンがそろわない場合もあるだろうが、それらの場合は、HNタイプが異なってもいいから、何らかのワクチン接種を義務付けるべきではなかろうか。
今回の京都府の例を貴重な経験として、行政は、消毒作業に当たる人々への体制を、早期にマニュアル化しておくべきである。
偶然か、京都府は、17日、「府高病原性鳥インフルエンザ防疫対策要領」と現場対応用のマニュアルを整備したと発表したが、これら消毒体制については、どのように書かれているのだろうか。
ちなみに、既にマニュアルが確立している大分県の「大分県高病原性鳥インフルエンザ防疫対策実施要領」では、「県対策本部は、健康対策課と連携し、作業従事者等に予防薬の投薬等について、必要に応じて適切な処置が図られるよう努める」とあるが、これでは、不十分なのではなかろうか。
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2004年02月29日
京都府は2月29日未明、高病原性鳥インフルエンザウイルスの確定を受けて同日朝、家畜伝染病予防法に基づき、浅田農産船井農場に対し、生きている鶏約13万羽の殺処分命令を出す方針を発表した。
既に死んだ7万羽近くと合わせて埋設処分することになる。
しかし、京都府が京都府丹波町の養鶏場「浅田農産船井農場」を実態調査したのは、2月19日、府南丹家畜保健衛生所の獣医師が実態調査に出向き、鶏舎には入らず、事務所で現場責任者と面談し「異常なし」との回答を得て引き上げたという。
養鶏場の言葉をまともに信じれば、「翌日から鳥が死にはじめ、20日に約1000羽、26日かけて計約1万羽が死んだ。」という。(左記表は京都新聞より引用)
現場に10棟ある鶏舎のうち2棟で集中して死んでいたという。
一部の報道によれば、2月23日、浅田農場はアリノベに対し、全農場の鳥20万羽の処理を要求し、アリノベ側も、この時点では、同意したという。
2月25−26日、兵庫県八千代町の鶏肉処理業者の「アリノベ」が鶏を仕入れる際、10棟ある鶏舎のうち、既に大量死が目立っていた棟から鶏を持っていくよう浅田農産側に指示されていたという。
「アリノベ」に出荷された鶏のうち約60羽が、京都市の卸業者を通じ、同市と滋賀県草津市、大阪府摂津市、兵庫県伊丹市の4市に流通し、一部が飲食店でスープなどに利用されていた。
兵庫県は、2月25日、「アリノベ」に、定例の情報確認をおこなっていたが、この時点では、事態は確認されていなかった。
そして、2月26日夜七時半、匿名の電話通報を受けて、京都府は、2月27日未明、立ち入り検査に入り、京都府南丹家畜保健衛生所と中央家畜保健衛生所で2 月27日、簡易キットによる検査を行い、インフルエンザの陽性反応を検出、これを受け、独立行政法人・動物衛生研究所(茨城県つくば市)で2月28日夜、京都府から届いたウイルスを鑑定した結果、「H5亜型」のA型インフルエンザウイルスが検出され、高病原性鳥インフルエンザと最終確認し、本日2月29 日、ようやく、殺処分決定に至った。
同農場での鳥インフルエンザ発生から、京都府の殺処分命令にいたるまで、10日間のブランクがあるという、発展途上国の対応にも、遅れをとる、お粗末ぶりである。
これまでは、タイ・インドネシアの隠蔽(Cover-Up)騒動を笑ってみていたが、そうもいかなくなったようだ。
経営者の責任は、もとより、このようなずさんで、業者馴れ合いの検査体制を敷いている知事をはじめとする京都府当局の責任も、この際問われるべきである。
しかし、それ以前に、農林水産省の現行の鳥インフルエンザ管理体制についても、下記に記すような問題点がいろいろ、浮かび上がってくる。
いろいろあるが、その中でも、早急に改めるべきは、「高病原性」(HPAI)と確定するまでに時間がかかり、その間の対応が遅れ、更なる病気の蔓延を防げないでいる現状の改善である。
現行の農林水産省>「高病原性鳥インフルエンザ防疫マニュアル」ならびに、家畜伝染病予防法の問題点を整理すると、次のようになる。
1.県畜産主務課及び家畜保健衛生所が行うモニタリング・プログラムの内容は、「地域の実態にあった」という名目で、県任せ
検査対象(家きん飼養農場)・農場抽出1 農場/各都道府県・農場内抽出10 羽/農場
検査時期1 回/1 〜2 か月(可能な限り毎月実施する)。
検査週齢6 週齢以上
とあるが、今回の京都の例では、どうだったのか。
「地域の実態」を重んじるあまり、業者を刺激しない形での、業者との馴れ合いの検査体制を生み出してはいなかったのか。
2.モニタリングの報告が、形骸化
県畜産主務課は、毎月20 日までに前月のモニタリングの状況を別記様式1 により
衛生管理課に電子メールにて報告するとなっているが、今回の京都の例では、発生の前日19日に、鶏舎への立ち入りなし、実地検査もせずに、異常なしと報告。
3.家畜保健衛生所における病性鑑定から、殺処分決定に至るまでのタイムラグをなくせ
「検査実施前の3 日間の家きん群の死亡率が10 %以上(以下「一定以上の死亡率」という)であることが確認され、臨床症状等から本病の発生が疑われる農場においては、移動の自粛を要請した上で、直ちに臨床症状を呈する家きん及び死亡家きんを対象に病性鑑定を実施する。」とあるが、「検査実施前の3 日間の家きん群の死亡率が10 %以上」だけの分類規定では、異常緊急事態に対応できない。
日本の家畜伝染病予防法においては、3日間で死亡率10%以上、AI分離陽性の場合はHPAI(高病原性鳥インフルエンザ)の患蓄とし、10%以下の死亡率の場合は、亜型を調べ、H5、H7であれば、HPAI(高病原性鳥インフルエンザ)の患蓄とするとしている。
上記マニュアルは、この定義にそって、まず、死亡率を確認し、それから、H5、H7如何を確認すると言う手順になっているものと思われる。
しかし、これでは、今回のような異常事態には、到底対応できない。
今回の例のように、「浅田農産船井農場」の総羽数20万羽に対しては、2月22日から、兵庫県八千代町の鶏肉処理業者「アリノベ」へ出荷する前日の2月24 日までの三日間の死数が、上記表によれば、6,524羽であるから、総羽数の10パーセントには至らなくとも、一鶏舎あたり飼養羽数としては、二万羽近くあったわけだから、そのなかの二鶏舎を中心にして、一鶏舎あたり約三千二百五十羽の死数、ということであれば、一鶏舎あたりの死亡率は、15パーセントを超える数値となっていたはずであり、2月24日の時点で、当然、異常事態と判断できたはずである。
となれば、鶏肉処理業者「アリノベ」への出荷は、まさしく、鳥インフルエンザの蔓延を知っての上での行為だと断定されても仕方がないのではなかろうか。
このことからみても、農林水産省の規定する「一定以上の死亡率」という概念は、OIE基準に沿っているとはいえ、あまりにも、杓子定規なラインであり、この、「一定以上の死亡率」の概念は、同一鶏舎内での死亡率が高い場合にも、適用可能なように改めるべきである。
また、このような緊急異常事態に対して、超法規的な対応が可能なようにすべきである。
4.「一定以上の死亡率」があった場合には、H5、H7の亜型確定前に殺処分命令ができるようにすべき
第17 条では、鳥インフルエンザに関していえば、「高病原性鳥インフルエンザの患畜・疑似患畜についての殺処分を、都道府県知事は命じることができ」、また、「命令をすることができない場合において緊急の必要があるときは、都道府県知事は、家畜防疫員に当該家畜を殺させることができる。」となっているが、「10%以下の死亡率」の場合はともかく、「3日間で死亡率10%以上、AI分離陽性」の場合はHPAIの患蓄となりうるのだから、H5、H7の亜型を調べずとも、3での定義にもとづく「一定以上の死亡率」があった場合には、ただちに、殺処分命令を出せるようにすべきである。
5.自主淘汰も含めた殺処分への総合的な補償措置が必要
農場経営者への自主淘汰へのインセンティブがないままでは、病原が蔓延すればするほど、第58条の手当金の対象となり、結果、殺処分への費用負担が軽減されてしまうという、逆バネのインセンティブが働いてしまうということ自体は避けなければならない。
現在、BSE後、畜産などについては、民間ベースで、海外悪性伝染病防疫互助事業などの名で、「淘汰互助金」として、法に基づく手当金や家畜共済金がえられる発生農場の患畜・疑似患畜以外を対象として、移動制限地域内で家畜防疫員の指導等により家畜の自主淘汰をしたときに、出される互助金制度をしいているところもある。
自主淘汰も含めた殺処分への総合的な補償措置が十分であれば、養鶏場における発症時の早期公表の引き金となることを考えれば、補償基金造成などによって、殺処分後の経営再建資金までをも考慮に入れた、何らかの措置が必要と思われる。
なお、ニワトリを殺処分する場合は、第58条の手当金算定にあたって、農水省が被害額を評価するのであるが、患畜・疑似患畜の羽数確認に長時間を要するのが、常である。
これに手間を取られる、蔓延阻止に機を逸することのないよう、大量羽淘汰の場合の被害額査定の簡略化も検討すべきである。
6.死体の焼却と埋却についてのインセンティブを改善すべき
第21条においても、「高病原性鳥インフルエンザの患畜・疑似患畜」とあるが、これを 4と同じく、高・低病原性にかかわらず、処理できるように改める必要がある。
また、焼却と埋却とを同列視せず、伝搬力によって、その処理の仕方を、明示すべきである。
今回の日本の鳥インフルエンザの処理は、近隣に民家がある場合、養鶏場敷地内での処分鶏大量焼却は困難であるところから、すべて、埋却によっているが、井戸水汚染など、周辺地下水などへの影響など、その処理の仕方を疑問視する向きもある。
焼却は、埋却に比し、滅菌には、完璧であるわけだから、この処理法については、もっと、詳細な規定を設けるべきである。
現在の混在化した養鶏場の立地状況からすれば、焼却・埋却いずれの処理方法にせよ、近隣住民からの苦情・抵抗は必至であり、近隣見舞金についても、59条「焼却又は埋却に要した費用」の中に、明文化すべきである。
埋却・焼却の費用負担については、家畜伝染病予防法第59条「費用の負担」「国は、第21条第1項の規定により焼却し、又は埋却した家畜の死体又は物品の所有者に対し、焼却又は埋却に要した費用の2分の1を交付する。」として、国二分の一、県二分の一の交付があるものの、現在の仕組みのままでは、殺処分やそれに付随する都道府県負担が膨大になってしまう。
これについての、財政的補填措置を考えるべきである。
また、自主淘汰した場合の焼却・埋却費用負担へのインセンティブはゼロである。
「焼却・埋却等互助金」精度として、殺処分又は自主淘汰した家畜を焼却・埋却した費用についての互助金制度も用意すべきときだ。
今の混住化した養鶏場での処分は、移動を前提としない限りは、焼却も、埋却も、近隣住民の理解が得られず、ほとんど、不可能となっている。
移動焼却炉での淘汰鶏の焼却や、近隣の一般ゴミの焼却施設の利用など、ある程度、処理する鶏の移動も考えて、処理の方法を考えないとやっていけない事態となっているのではなかろうか。
7.移動制限損害と、補償問題
5.6とも関係するが、現在の家畜伝染病予防法では、移動制限などで損害を被った農家の補償は明記していない。
現在、BSE後、畜産などについては、民間ベースで、海外悪性伝染病防疫互助事業などの名で、「淘汰互助金」として、法に基づく手当金や家畜共済金がえられる発生農場の患畜・疑似患畜以外を対象として、移動制限地域内で家畜防疫員の指導等により家畜の自主淘汰をしたときに、出される互助金制度をしいているところもある。
また、「導入互助金」として、法に基づき殺処分された家畜又は自主淘汰した家畜を飼養していた農場に新たに家畜を導入したときへの互助金制度もある。
鳥インフルエンザについても、移動制限を受けている家畜の所有者に対する同様の損害補償措置なり、民間補填システムの用意が必要である。
8.毒性のあるなしにかかわらず、H5.H7のサブタイプのA型インフルエンザのすべてをコントロールの対象にするべき
最後に、これは、家畜伝染病予防法における高病原性鳥インフルエンザの定義に関する問題であるが、この法律でもって定義されている高病原性鳥インフルエンザとは、いかなるタイブをさすのであろうか。
また、何ゆえをもって、それを、低病原性鳥インフルエンザに比して、危険とみなしているのであろうか。
先にも述べたように、日本の家畜伝染病予防法においては、3日間で死亡率10%以上、AI分離陽性の場合はHPAI(高病原性鳥インフルエンザ)の患蓄とし、10%以下の死亡率の場合は、亜型を調べ、H5、H7であれば、HPAIの患蓄とするとしている。
OIEが2003年5月18−23日にまとめたTHE USE OF VACCINATION AS AN OPTION FOR THE CONTROL OF AVIAN INFLUENZAという資料においては、高病原性鳥インフルエンザが、H5.H7サブタイプの低病原性鳥インフルエンザを始祖として生まれてきたものである限り、論理的には、鳥インフルエンザのコントロールの対象は、高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザの双方を対象にして行わなければならないとしている。
したがって、毒性のあるなしにかかわらず、H5.H7のサブタイプのA型インフルエンザのすべてをコントロールの対象にするべきだとしている。
ここにおいて、まず対処の仕方として、6つの方法が提示されている。
1.HPAI(高病原性鳥インフルエンザ)/LPAI(低病原性鳥インフルエンザ)であって、発生場所が裏庭であって、家禽産業に拡大しておらず、家禽の集密度稠密度が高くも低くもある場合には、殺処分
2.HPAI/LPAIであって、発生場所が裏庭であって、すでに家禽産業に拡大していて、家禽の集密度稠密度が低い場合には、殺処分
3.HPAI/LPAIであって、発生場所が裏庭であって、すでに家禽産業に拡大していて、家禽の集密度稠密度が高い場合には、ワクチン対応
4.HPAI/LPAIであって、発生場所が家禽産業であって、他の家禽産業に拡大しておらず、家禽の集密度稠密度が高くも低くもある場合には、殺処分
5.HPAI/LPAIであって、発生場所が家禽産業であって、他の家禽産業に拡大しており、家禽の集密度稠密度が低くい場合には、殺処分
6.HPAI/LPAIであって、発生場所が家禽産業であって、他の家禽産業に拡大しており、家禽の集密度稠密度が高い場合には、ワクチン対応
としている。
OIE基準では、HPAI(高病原性鳥インフルエンザ)かLPAI(低病原性鳥インフルエンザ)の判定は、IVPI(The intravenous pathogenicity index )(静脈内病原性指標) の数値に元ずく。
この指標は、SPFの鶏の静脈に、希釈したウィルスを十日間にわたって24時間に一回、注入し、
その結果を、1.正常、2.病気、3.麻痺、4.死亡 の四分類に分けていくものである。
この場合、スコアリングの手法により、経過日にちごとに、症状ごとのウェイト付けをし、たとえば、正常の場合は、ウエイト0、病気の場合には、ウェイト1、麻痺状態の場合は、ウェイト2、死亡の場合は、ウェイト3を、個体数に掛けて、その総合指数をIVPVとするものである。
上記に掲げる表では、縦軸に、症状、横軸に、経過日ごとの症状の分類を記載していき、表右のトータルの症状ごとの数にウェイトを掛けて、それを合計して、IVPI を算出することになる。
そして、たとえば、IVPI の数値が200-300の場合、高病原性(Highly pathogenic )であり、100 – 200の場合は、低病原性(Intermediate )であり、100以下の場合には、非病原性(Non- pathogenic)であるといった具合に判断するわけである。
この表では、50の検体について、最終五日間で全部が死亡したが、ウェイトゼロの正常な状態が続けば続くほど、IVPI の数値は、低くなり、ウェイトゼロの正常な状態が短いほど、IVPI の数値は、高くなることになる。
なお、このIVPIと同じような手法で、ICPI(Intracerebral pathogenicity index )(大脳内病原性指標) があるが、これは、ニューカッスル病などの劇症判定などに使われている。
このほか、塩基性アミノ酸配列によって、HPAIかLPAIかを判定する方法もあるが、まだ、確とした毒性を持つ配列の定義にまではいたっていない。
ちなみに、H7のサブタイプの 低病原性インフルエンザ・ウィルスの塩基性アミノ酸配列は、-PEIPKGR*GLF- または、 -PENPKGR*GLF-であるのに対して、高病原性鳥インフルエンザ・ウィルスの塩基性アミノ酸配列は、-PEIPKKKKR*GLF-, PETPKRKRKR*GLF-, -PEIPKKREKR*GLF-, -PETPKRRRR*GLF-であるとされる。
これについては、OIE資料http://www.oie.int/downld/AVIAN%20INFLUENZA/MANUAL%20CHAP.pdfの4ページを参照
以上のことから、鳥インフルエンザのコントロールの対象は、H5.H7のサブタイプについては、毒性のあるなしにかかわらず、低病原性鳥インフルエンザについても、高病原性鳥インフルエンザに突然変異しうる有力候補として、コントロールの対象に加えるというのが、出来るだけ早期に蔓延防止対策に踏み切りうる、今日的対応のようである。
HPAI/LPAIについては、ドイツ語サイトではあるが、このサイトhttp://www.vetvir.unizh.ch/Lehre/pdf_files/04_Influenza.pdfのスライドがある。
なお、以下に、1959年から今日までに、世界で発生した高病原性鳥インフルエンザのタイプをDRAFT REPORT OF THE MEETING OF THE OIE AD HOC GROUP ON AVIAN INFLUENZA にもとずき記す。
Primary HPAI virus isolates from poultry* since 1959
1. A/chicken/Scotland/59 (H5N1)
2. A/turkey/England/63 (H7N3)
3. A/turkey/Ontario/7732/66 (H5N9)
4. A/chicken/Victoria/76 (H7N7)
5. A/chicken/Germany/79 (H7N7)
6. A/turkey/England/199/79 (H7N7)
7. A/chicken/Pennsylvania/1370/83 (H5N2)
8. A/turkey/Ireland/1378/83 (H5N8)
9. A/chicken/Victoria/85 (H7N7)
10. A/turkey/England/50-92/91 (H5N1)
11. A/chicken/Victoria/1/92 (H7N3)
12. A/chicken/Queensland/667-6/94 (H7N3)
13. A/chicken/Mexico/8623-607/94 (H5N2)
14. A/chicken/Pakistan/447/94 (H7N3)
15. A/chicken/NSW/97 (H7N4)
16. A/chicken/Hong Kong/97 (H5N1)
17. A/chicken/Italy/330/97 (H5N2)
18. A/turkey/Italy/99 (H7N1)
19. A/chicken/Chile/2002 (H7N3)
20. A/chicken/The Netherlands/2003 (H7N7)
以上に追加して、韓国(2003年、H5N1)、ベトナム(2004年、H5N1)などがあり、2004年にはいり、H5N1亜型の感染がベトナム、タイ、カンボジア、中国、ラオス(H5亜型)、インドネシア(亜型不明)など東アジア各国に拡大し、ベトナムとタイではヒトの死者と感染者が発生した。また台湾では弱毒のH5N2亜型による鳥インフルエンザが発生し、パキスタンでは強毒H7亜型が報告された。
日本においては、山口、大分,京都において、 H5N1が発生した。
このサイトの中での、鳥インフルエンザ関連記事
1.「人にSARS以上の危険をもたらす鳥インフルエンザ問題の推移と今後の課題 」
2.「鳥インフルエンザに関するニュースリンク集」
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2004年02月03日
UPIの本日付記事 http://www.upi.com/view.cfm?StoryID=20040202-032855-2475rの仮訳です。
保健専門家は、2月2日月曜日、「現在東南アジアを中心として蔓延している鳥インフルエンザのウィルスが人から人へ伝染する可能性について、大きな関心をもっている。」と述べた。
このような発生は、大陸を横断し家禽に蔓延している新しいウィルスが、人間に適合し、世界的な疫病流行につながってしまうことになることを意味している。
「われわれは、将来がどうなるかについて、いまだ、はっきりしたことについて、知りうる状態にはない。なぜならば、いまだに、安全対策として殺処分されるべき鳥が、数百万羽といわずとも、数万羽は、いるからだ。」と、WHOのジュネーブのスポークスマンであるDick Thompson氏は、UPI紙記者にいった。
「その殺処分がなされるまで、そして、人間の鳥インフルエンザのケースが終焉するのを見届けるまで、我々は、本当には、安心できない。」ともいった。
先月ヴェトナムで最初に人間に浮上した新しい鳥インフルエンザ菌株は、ヴェトナムとタイで、10人の死をもたらすことにつながってしまった。
調査の初期の段階では、このウィルスは、それ以前から家禽に住み着いていたものであろうとの、調査結果であったが、しかし、これまでのところ、専門家は、それが、どこから発生したものかについて、正確に指摘することが出来ないでいる。
つい最近までは、すべての人間のケースでは、その人間が、H5N1のサブタイプである新らしい鳥インフルエンザに感染した鳥に、接触したところまで、さかのぼりえた。
WHOの当局者は、タイ・ヴェトナム地域では、感染した鳥に人間が接触したことを確認できない感染例が4つあったとしている。
そのケースのひとつが、ヴェトナムでの、二人の姉妹と、兄と兄嫁が、家族で、ともに感染した例である。
このことは、次のような結論を導き出しうることになる。
すなわち、「限られた関係や範囲の中における人から人への伝染がありうるということが、一つの解釈として成り立ちうる。」ということである。
このヴェトナムの家族の例では、回復した兄嫁を除いては、すべて死亡した。
アメリカのアトランタにあるCDCP(疾病管理予防センター)では、アジアに調査団を送り、この人から人への鳥インフルエンザウィルスの拡大の可能性について、より詳しく見たいといっている。
「我々が直ちに、答えを迫られているのは、このケースが人から人への伝染によるものであるかどうかについてである。」と、CDCのスポークスマンであるTomSkinner氏はいう。
「WHOから発表された鳥インフルエンザの人から人への伝染の可能性についてのレポートは、非常に正確なものではあるが、我々としては、このケースについて、より学ぶ必要がある。」と、彼はいった。
「ウィルスが鳥から人間へと種を飛び越え、人間に適合したウィルスになってしまうことを、我々はみんな恐れているので、このケースには、非常に関心があるのです。」と、アメリカ・バージニア州にあるthe Infectious Diseases Society of Americaの副所長であるMartinBlaster博士はいう。
「ウィルスを全滅しうる機会はあるが、それがなされたとしても、新しい変異ウィルスが出てくる。これは、まさにSARSの二の舞である。」と、ニューヨーク大学のBlaster氏はいう。
ヴェトナムの姉妹家族のケースが、人から人への伝染の真のケースであったとしても、専門家がいうには、これらの感染した家族が、ウィルスをつたえていなかったという、なんらかの事実をみいだしたといった。
「もっとも重要なポイントは、これらの家族が、他の人に病気を伝えていなかったということである。」とThompson氏はいう。
「我々が懸念していることは、人から人へ簡単に伝搬しうるウィルスの出現です。このヴェトナム家族のクラスターでは、そのようなことは起こらなかったことは、明らかです。」と、彼はいった。
新しい鳥インフルエンザは、鳥にとっては致死的であり、感染したほとんど百パーセントを死に至らしめる。
同時に、それは、人間にとっても、高い死亡率をもたらしうる。
これまでにも、感染がわかった13人のうち、9人を死に至らしめている。
鳥インフルエンザが、種の壁を越え、人間に感染したのは、今回が最初ではない。
最初に立証されている例としては、1997年の香港で起こった例であり、6人の死をもたらした。
それ以後、鳥インフルエンザは、香港や他の国で、数回人間に感染した。
したがって、世界の保健衛生機関は、このようなウィルスの広がりをコントロールすることと、防ぐことに、精通してきた。
最初にやるべきウィルス抑制方法は、感染したすべての家禽を殺すことであり、アジア中の農家は、すでに、何百万羽の家禽を、殺している。
しかし、この鳥インフルエンザの発生が、一気に、数カ国で発生してしまったために、当局は、最近の鳥インフルエンザの大発生を抑えられなくなっている。
これまでのところ、家禽に鳥インフルエンザウィルスがみつかっているのは、カンボジア、中国、インドネシア、日本、韓国、ラオス、タイ、ヴェトナム、そして、香港での一匹のハヤブサである。
「問題は、これまで、我々は、多くの国でいっせいに鳥インフルエンザが発生するという事態に直面したことがなかったということです。」と、Thompson氏はいう。
1997年の香港での鳥インフルエンザ発生の場合は、発生国が限られていたために、比較的に、制圧が簡単でした。」と、彼は付け加えた。
もう一つの問題は、今回の鳥インフルエンザ発生国が、いずれも、タイやカンボジアのように、貧困国であることだ。
「そのような国では、政府は、資源が限られているため、完全な鳥インフルエンザ対策を講じるのが難しい。」と彼はいう。
Thompson氏がいうに、これらの国は、養鶏農家に殺処分をさせるのに十分な奨励金の資金がないし、零細規模養鶏農家にとって見れば、これらの鶏なくして、生計を立てる道がないということだ。
WHOは、昨日、他の国に対して、補償支払い募金への金銭的支援協力を求める声明を発表した。
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2004年02月01日
http://www.abc.net.au/am/content/2004/s1032103.htm の仮訳
Tim Palmer「昨年9月、インドネシアで、鶏が何千羽も死んだとき、あなたや、同僚の研究者達は、最悪の事態になることを恐れましたね。11月には、鳥が死んだのは、政府が言うようなニューカッスル病によるものではなく、H5N1ウィルスの鳥インフルエンザによるものであることが、海外の事例などから、確信的に言えるようになってきました。そのような結果を受けてのジャカルタ政府の反応は、期待されたようなものではありませんでした。」
MATIN MALAWLA「そのとき、インドネシア政府は、何もしませんでした。」
Tim Palmer「でも、インドネシア政府は、それが、鳥インフルエンザ、しかも、H5N1によるものと知って、政府は何をしたのでしょう。」
MATIN MALAWLA「政府は、その事態を理解しようとすらしませんでした。われわれの意見について、議論すらしようとしませんでした。鶏肉の輸出活動にのみ、専念したのです。」
Tim Palmer「鳥インフルエンザを封じ込めるには、もう遅いですか」
MATIN MALAWLA「今となっては、もう遅いです。」
Tim Palmer「インドネシアの農業大臣Bungaran Saragih氏は、昨日、カメラの前で、忙しく、鶏肉をがつがつ食べて、いかなることがあっても、インドネシア人は、鶏肉を食べ続けるよう、促したのです。今日になって、当の大臣は、これまでの5ヶ月間、鳥インフルエンザの発生を警告する報告を受け取りながら、それを葬っていたことについての説明責任を求められているのです。」
MATIN MALAWLA「これは、隠蔽ではありません。われわれ専門家の間でも、これを鳥インフルエンザとするかどうかについての論争があったのです。われわれは、これがH5N1であるとしましたが、他の専門家の間では、まだ、十分な証拠がないとしたのです。」
Tim Palmer「この2ヵ月半の間、近隣諸国や、インドネシア国民に対して、あなた方 科学者達が、これは、H5N1鳥インフルエンザであると、警告をしたほうがよかったのではありませんか。」
MATIN MALAWLA「この段階では、人間にとって致命的な状況ではありませんでした。」
Tim Palmer「アジアのどこでも致命的ではない、という意味ですか。」
MATIN MALAWLA「アジアについては知りませんが、少なくとも、インドネシアにおいてはという意味です。」
Tim Palmer「インドネシアでは、感染者がいないという大臣の抗弁については、この数日以内に、そうであるかどうか検査結果が、わかるでしょう。鳥インフルエンザが蔓延している農村地帯では、警告もない状態の中で、肺炎や鳥インフルエンザに似た症状で死ぬ人が、増えています。ですから、鳥インフルエンザで死んでも、見落されているケースが多いものと思われます。」
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