2004/12/18
もう一年近くたとうとしていて、忘れがちだった今年2月の京都府での鳥インフルエンザだが、ここにきて、当時、鳥インフルエンザの消毒に当たった関係者五人の血清から、H5N1ウイルスに対する抗体が検出されていたことが十七日、分かったという。
血液検査したのは、2−3月に鶏の殺処分などに従事した、元養鶏場従業員16人、家畜保健衛生所職員20人、京都府本庁職員22人で、そのうち、ウイルス抗体陽性者は元養鶏場従業員4人と家畜保健衛生所職員1人であったとされる。
厚生労働省と国立感染症研究所は18日、陽性となった5人のうち、農場従事者の男性1人の感染をほぼ確認した。
残り4人については、さらに検査を継続し、感染の有無を慎重に判断するという。
五人は作業前に、インフルエンザ治療薬のリン酸オセルタミビル(商品名タミフル)を服用。フード付きの防疫服とゴーグル、マスクで厳重に防備していたが、マスクなどが密着していなかった可能性もあるという。
私の掲示板でも、安易な体制で、府の職員などに人海戦術の作業をさせることの危険性をはやくから指摘していた。
とくに、「5935 全くの素人に鶏の処理をさせる愚行」では、 平和屋さんから、重大な指摘があった。
2002年3月中旬、アメリカ・バージニア州のShenandoah Valleyの家禽農場で、政府職員が、鳥インフルエンザにかかった鶏を殺処分中にH7N2に感染し、熱・のどのいたみ・咳・頭痛などの症状を訴えたという例がある。
また、2003年4月オランダDen Boschでなくなった57歳の獣医師は、二日間、感染農場ではたらいた後、重症の肺炎となり、2003年4月17日に死亡している。
このとき、防疫に従事した人も、数十人のヒトが結膜炎を、十数人が、インフルエンザ様症状を呈したのことだ。
死亡した獣医師1名の肺から鳥インフルエンザウイルスH7N7が分離された。
また、養鶏従事者の家族内で3人に結膜炎と軽い呼吸器症状がみられたという。
さらに、今年に入っては、3月に、カナダのブリティッシュコロンビアのFraser Valleyで、鳥インフルエンザを消毒中の12人の作業員が、防護服を着用していたにもかかわらず、インフルエンザ症状を見せ、そのうちの二人からは、H7N3が検出されたという例がある。
これについては、こちらもご参照。
高病原性鳥インフルエンザに感染した可能性のある動物の殺処理に携わる人員の防御に対するWHOの暫定的勧告によれば、次の通りの体制をとるべきとしている。
1、処分と輸送にあたる人員には以下のごとき個人防御具を適切に供与しなければならない。
・上下つなぎの作業服と不浸透性のエプロン、または、長袖で袖口が締まるサージカルガウンと不透過性のエプロンの組み合わせによる防御服
・頑丈で消毒可能なゴムの作業用手袋
・N95呼吸器マスクが望ましい1。N95呼吸器マスクが入手不可能であれば標準的なぴったり合ったサージカルマスクを使用する2。
・ゴーグル
・消毒可能なゴムまたはポリウレタンの長靴、あるいは使い捨ての防御用の靴カバー
(中略)
4、感染した鶏や感染が疑われる農場への暴露を受ける人はすべて、地域の健康当局により密接な監視下に置かれるべきである。
・殺処分員と殺処分に携わる農業従事者においてH5N1呼吸器感染が疑われる際の治療に対し、オセルタミビルがすぐに利用できるようにしておくことが推奨される。
・その人たちはまた、ヒトインフルエンザと鳥インフルエンザの同時感染を避け、ウイルス遺伝子の再構成が起こる可能性を最小限にするため、現在のWHOの推奨するインフルエンザワクチンを接種していなければならない。
(以下略)
これまでのことからいえば、単なる防護服とタミフルの服用だけでは、感染を防げないと見てもいいだろう。
緊急の場合には、必ずしも、適合するワクチンがそろわない場合もあるだろうが、それらの場合は、HNタイプが異なってもいいから、何らかのワクチン接種を義務付けるべきではなかろうか。
今回の京都府の例を貴重な経験として、行政は、消毒作業に当たる人々への体制を、早期にマニュアル化しておくべきである。
偶然か、京都府は、17日、「府高病原性鳥インフルエンザ防疫対策要領」と現場対応用のマニュアルを整備したと発表したが、これら消毒体制については、どのように書かれているのだろうか。
ちなみに、既にマニュアルが確立している大分県の「大分県高病原性鳥インフルエンザ防疫対策実施要領」では、「県対策本部は、健康対策課と連携し、作業従事者等に予防薬の投薬等について、必要に応じて適切な処置が図られるよう努める」とあるが、これでは、不十分なのではなかろうか。
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