Sasayama’s Weblog


2005/03/06 Sunday

再び世界経済に、原油高の洗礼

Filed under: 未分類 — 管理人 @ 10:45:38

2005/03/06
 
null先週3月3日に、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)の原油先物相場が、米国産標準油種(四月渡し)で、 一バレル55.20ドルとなり、昨年10月25日の史上最高値の55.67ドルに迫った。

この四週間では、18パーセントもの上昇となった。

その後、終値は、53.57ドルとなったが、この高値の要因としては、次のものがあったと、見込まれている。

第一は、クウェートの日刊紙アルカバス(Kuwaiti daily al-Qabas)
http://www.kuwait-webdesign.com/alqabas/start.html
が、3月3日に、OPECのアドナン・シハブエルディン事務局長代行(Dr. Adnan Shihab-Eldin,)とのインタビューを掲載したことを、ダウ・ジョーンズ・ニュースワイヤー(Dow Jones News Wires)が、配信したことである。

その中で、アドナン・シハブエルディン事務局長代行が、今後二年間の原油価格見通しについて、「原油価格が、近いうちに、一バーレル80ドルにまで、上昇する可能性はひくいが 、 もし、大規模な供給途絶があれば、 今後二年以内には、一時的に1バレル80ドルとなる可能性はある。」との発言をし、これに市場が、過敏に反応した。

この発言の一週間前に、サウジアラビアの石油相のAli al-Naimi氏が、「今年年内は、一バーレル40ドルから50ドルの間で推移するであろう。」との見解を示した後だけに、今回のアドナン・シハブエルディン事務局長代行の発言は、市場に衝撃を与えたようだ。

アドナン・シハブエルディン事務局長代行は、次のように述べている。

「近いうちに一バーレル80ドルになる可能性は、低いということはいえる。しかし、私は、今後二年間で、一バーレル80ドルとなることを排除はできない。 しかし、もし、原油価格が、たとえば、 産油国が日産百万バーレルから二百万バーレルの供給不足になるなど、何らかの理由で、その水準に達したとしても、そのような価格急上昇が、長く続くものとは思えない。」

一方、氏は、アラブ首長国連邦の新聞 Khaleej Times http://www.khaleejtimes.com/index00.aspでは、「今年は、石油需要は、根強いままに推移するであろう。」とし、「その年間需要伸び率は、1.5パーセントとなり、そのピークは、2025年までに、日産一億一千百万バーレルになるであろう。」といっている。

また、氏は、「現在、サウジアラビアなどが産油能力を高める投資をしているので、将来における原油不足については心配ない。」としている。

氏は、(掘削装置の数を、これまでの34から70以上に増やしたり、資源調査を強化することなどによって)「サウジアラビアでは、この2−3年で、産油能力を日産一千五百万バーレル増強しうる」ものと見ている。

「もし、原油価格が、二年以上、 一バーレル50ドルから60ドルの水準で推移するとすれば、 産油能力拡大のための投資を拡大することによって、究極は、需要にマッチした供給増で、価格を低水準に押さえ込めるであろう。これが経済学の法則でもある。」と、氏は、いう。

また、「2004年は、(中国・インドからのこれまでにない需要圧力などによって)原油価格形成構造に、変化が生じ、これが、現在の構造的な原油高を招いているのだ。」として、「この構造変化があったため、OPECとしては、これまでの一バーレル22ドルから28ドルの価格帯を維持する方針を、一時、棚上げしているのだ。」としている。

第二は、同じく、3月3日に、アメリカのボドマン(Samuel Bodman)エネルギー長官が、 上院委員会の公聴会で、「OPECへの介入には、限界的」との主旨の発言をしたことによる。

ボドマン エネルギー長官は、ワイデン(Ron Wyden)民主党上院議員からの「原油価格が上昇しているにもかかわらず、エネルギー長官が、OPECに対して、適切な連絡をとっていない。」との追求にたいして、 「わが国を代表するものは、だれでも、OPECに与えられる影響力は、限られている。」と発言し、今月3月16日に、イランのイスファンで開かれるOPEC定例総会への増産要請の限界を示唆したことによる。

When Democratic Sen. Ron Wyden of Oregon asked Bodman why he had not telephoned OPEC ministers to lobby them to lower energy prices, the secretary responded: “I have a lot on my plate.”

http://www.reuters.com/newsArticle.jhtml?type=politicsNews&storyID=7813771参照

第三は、3月4日付けウォールストリートジャーナル紙で、昨年の原油と天然ガスの在庫が、6パーセントもダウンしたと報じられていたオイルメジャーのChevron Texacoが、かねてから中国からの買収話も合った Unocal Corp.,を買収する予定であると発表したことである。

このUnocal Corp.,は、ビルマに、Yadana-Yetagunガスパイプラインを有していて、タイへ供給しているという。

また、この日のウォールストリートジャーナル紙は、「Oil May Hit $60 a Barrel,Analysts Say 」との記事も掲載している。

第四は、前記のOPECのアドナン・シハブエルディン事務局長代行の発言に対して、ヘッジファンドが、「2005年中は原油高に推移する」との自信を得て、大量の投機マネーを West Texas Intermediate(WTI 指標原油) 米国産原油先物取引へ投入したことによる。

パリにあるSociete Generale のエネルギーアナリストのDeborah White氏によれば、世界の一日当たり消費量よりはいくらか少ない原油量に相当する、これまでの二倍の投機資金が先週、流入したという。

今回のヘッジファンドの投機資金投入規模は、昨年6月以来最高の規模とされ、3月1日には、ショートポジションで、60,173コントラクト(取引単位 1コントラクトは、千バーレル)をこえるものであっとされている。

West Texas Intermediate(WTI 指標原油 )のこれまでの最高値は、昨年10月の55.65ドルであったが、先週は、その高値に近づくく55.20ドルに達した。

Deborah White氏の言うに、「今年は、ヘッジファンドからの需要は、再び強くなってくる。」ものとしている。

そして、「昨年、われわれが経験した原油価格の高騰が、人々がおもっていたほどには、有毒なものではなかった。」との見方をしている。

この点については、アナリストの見方も、二分されている。

Barclays CapitalのKevin Norrish氏は、「昨年から今年のかけての18ヶ月の経験では、原油高が世界経済を破壊する原因にはならないことがわかってきたので、原油価格については、もう少し「At Ease」であっていいとおもう。」と、Deborah White氏同様の見解を述べている。
http://www.smh.com.au/news/Business/OPEC-says-US80-oil-possible-before-long/2005/03/04/1109700679624.html?oneclick=true参照

また、ヘッジファンドの市場攪乱要因についても、「世界の寒波という異常気象がいつまでも続くわけではないのだから、原油先物市場におけるヘッジファンドのポジションも、これまでほどのものは、ないのではないのか。」という楽観論もある。

フィナンシャルタイムズ紙では、OPECの戦略が、これまでの価格から、在庫引き当て増に向かっていると分析している。

11の産油国からなるOPECでは、現在、日産二十九万バーレルを生産している。

これは、世界の供給量の三分の一に当たる。

事故やストライキや戦争や、その他の不足の要因による生産減のための予備的な代替産出量は、百万バーレルから百五十万バーレル程度といわれている。

OPECでは、非公式な石油備蓄量目標値を、55日分としてきたが、アナリストの見るところ、近時では、それが52日に減ってきているという。

これらの要因も、投機筋の思惑を呼んでいるものと思われる。

第五は、依然としての中国・インドをはじめとしたアジアでの石油需要の堅調である。

アジアでの需要の堅調ぶりを測る指標として、Nymex WTIとロンドンの International Petroleum Exchange(IPE )の指標であるBrent(北海ブレント先物)との乖離幅が上げられているが、先週になって、この両者の差は、二ドル差に縮まっている。

これまでのIPE Brentの高値は、昨年10月27日の51.94ドルであったが、この2-3週間で10ドル以上の伸びを見せ、先週3月3日の木曜日には、53ドルに達した。

これは、アジア各国の製油所での毎年の定期点検期間が、アメリカの製油所での定期点検期間にさきだって、終了することも、要因であるとしている。

また、中国・インドでは、この5月から6月にかけて、国内環境規制が変わると見込まれているところから、これまで以上に、硫黄分の少ないものを求めてきているという。

OPEC諸国が生産の主力とするのは、Heavy Sour Crude Oil であり、中国・インドが求めているのは、Light Sweet Crude Oil であるところから、たとえOPECが増産体制に入っても、中国・インドの需要増には、こたえきれないという、ミスマッチが、今年の5月から6月にかけて、おこってくるのではないかと、Energy IntelligenceのAxel Busch氏は、http://www.smh.com.au/news/Business/OPEC-says-US80-oil-possible-before-long/2005/03/04/1109700679624.htmlで予測している。

第六は、その他、 アメリカの石油精製工場での生産障害や、世界的な寒波の影響などの要因によるものである。

暖房用石油価格が、一ガロン1.49ドルと、異常気象の割には、小幅な上昇にとどまったのに対して、ガソリン価格は一ガロン1.4914ドルと、大幅な値上げとなり、 これまでの最高値の昨年5月の水準1.47ドルを大幅に上回っている状況にある。

また、アメリカでは、テキサスなど、3つの石油精製所が生産障害の状況にあり、現在のアメリカの石油精製能力は、フル稼働対比89.3パーセントの状況にあるとされ、これは、この四ヶ月間で、一番低い水準にあるといわれている。

また、これは、かねてから懸念されていたことであるが、需要増に対して、石油精製能力の増強が、機敏に対応できていないことや、地方によって、求められる石油のスペックが異なるために、地方間の融通が利かない点などが、懸念材料として、挙げられている。

さらには、硫黄分排出環境規制の強化によって、一日当たり十万バーレル分が、失われているとの試算もあるようだ。

ガソリンの年間の最需要期である夏を控え、いまだに、過去二-三ヶ月でのガソリン在庫積み増し不足への懸念があることが、ガソリン価格の異常な高騰を招いているものと見られいる。

もし、この5月から9月にかけてのドライブシーズンに原油価格が一バーレル80ドルの水準に達したとすれば、ガソリンスタンドでのガソリン価格は、相当な高騰を見せるものと思われる。

以上が、 先週の4ヶ月ぶりの原油高の要因である。

IEAでは、今年の原油需要の伸び率を日産百五十万バーレルと見ているが、これは、過小見積もりではないのかという見方もある。

ファイナンシャルタイムズ紙の見方では、今年の伸び率は、日産二百二十万バーレルから二百三十万バーレル(この過去二年間では、日産ニ百七十万バーレルであり、これは、 この28年で最高の伸び率であった。)となるのではないかという見方をしている。

なお、今月3月16日にイランのイスファハンで開かれるOPEC定例総会では、当初、冬場のピークを終えた需要減に備えて需給を引き締める予定だったが、この原油価格の高騰によって、4月以降も現行の公式生産枠である日量2700万バレルを維持した上で、「価格がさらに上昇すれば必要に応じて増産を検討する」との方向で調整を進めていると伝えられている。

3月16日のOPEC定例総会までの、ここ10日間は、市場は不安定に推移するものと見られるが、ここにきて、3月6日には、OPECのSheik Ahmad Fahad Al Ahmad Al Sabah議長が、http://www.canada.com/vancouver/theprovince/news/money/story.html?id=a2429ed7-8782-432f-bfc2-c35f7a00c4e0に見るとおり、週明け市場を鎮める発言をしたり、アメリカのスノー財務長官が市場に対し、過度な反応を戒める発言をするなど、市場の沈静化にこれつとめている。

しかし、原油高への流れは、もはや、せき止められそうもないようだ。

Kerr Trading InternationalのKevin Kerr氏は、これからの事態を、次のように予測している。
http://www.investors.com/breakingnews.asp?journalid=26256060&brk=1参照

「世界的な寒波到来と、アジアからの根強い需要増、石油精製所の混乱、ガソリン供給への懸念、これらが、複合要因となって、すべてのトレーダーの心にのしかかっている。
もはや、原油高への流れをせき止めることはできない。
私の予測するに、もし、供給サイドの問題が何らかの形で、静まらない限り、来週にも、原油価格は、新高値をつけるであろう。
そして、原油価格は、一バーレル60ドル台に突入することになるであろう。」
と、述べている。

以上

http://www.finfacts.com/irelandbusinessnews/publish/article_1000712.shtml 参照

参考  原油の単位

1 barrel = 42 gallons = 158.9873 liters = 5.6146 cu ft = 0.159 cu meters = 0.136 metric ton

1 metric ton of crude = 7.35 barrels of crude

「メトリックトン」は、ヤード・ポンド法でのトンと区別してメートル法での単位であることを明示するために使う表現です。(1トン=1,000kg)

http://www.nigerianmuse.com/important_documents/what_barrel_of_crude_oil_makes.htmご参照

为翻译对汉语, 使用这 ⇒http://translate.livedoor.com/chinese/

nullTranslate
笹山登生HOME-オピニオン-提言-情報-発言-プロフィール-図書館-掲示板

No Comments »

No comments yet.

RSS feed for comments on this post. | TrackBack URI

Leave a comment

XHTML ( You can use these tags): <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <code> <em> <i> <strike> <strong> .