Sasayama’s Weblog


2005/01/09 Sunday

ノロウィルスってなんだ?

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2005/01/09
 
null広島県福山市の特別養護老人ホーム「福山福寿園」で入所者7人が死亡した問題で、市保健所は9日、ウイルス検査を行った入所者ら12人のうちの9人の検体からノロウイルスを検出したと発表した。

また、神奈川県の大和市下鶴間の介護老人保健施設「大地」で昨年12月28日以降、入所者と職員の計46人が下痢や吐き気などの症状を訴え、このうち入所者の女性(87)が5日に死亡していたと発表した。

このほか、全国では、昨年の年末から今年の年始にかけて、このページの一番下に書いてあるように、全国的な広がりを見せている。

ところで、このノロウィルスという妙な名前はどこからきたのだろうか?

1968年にノーウオークで発見されたノーウオークウイルスが最初

http://www.urban.ne.jp/home/takao/EM/SRSV.html
によれば、1968年に米国オハイオ州ノーウオークの小学校において胃腸炎の集団発生があった際に,患者の便から電子顕微鏡を使って見つかった直径27nm の粒子を、発見された地名にちなんで、ノーウオークウイルス(Norwalk virus)と呼ぶのだそうだ。

2002 年8月にパリで開かれた国際ウイルス学会の分類委員会 でこのノーウオークウイルス(Norwalk virus または NLVs)を、ノロウイルス(Noro Virus または Norovirus または、NORs)という新たな属名で呼ぶことが決定された。

イギリスでは、これをsmall round structured virus (SRSV) と呼んでいるようである。

奇妙なことに、このノロウィルスは、これまで、腸管内のみで増殖するとされ細胞培養が不可能であるとされてきたが、近年、菌株の遺伝子配列が解明され、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法での検出が可能になったという。

ノロウィルスの遺伝子型は、5つある

http://web.sapmed.ac.jp/viralge/calici/bunrui.html
に見るように、このノロウィルスは、カリシウイルス科ウイルス(the calicivirus family)のなかの一つの属とみられている。

このカリシウイルス科ウイルスには、(1)Noroウイルス属( Norovirus ) (2)Sapoウイルス属(Sapovirus ) (3)Lagoウイルス属( Rabbit hemorrhagic disease virus 等。Lagoはギリシア語に由来し「野ウサギの」を表す。)、Vesiウイルス属 ( Swine vesicular exanthema virus, Feline calicivirus 等。Swineは、豚、Felineは、猫)があるとされる。

このうち、Norovirus、Sapovirusが、ヒトに感染するウイルスであり、その他は、動物に感染するウィルスである。

しかし、近年、Norovirus、Sapovirusに類似したウイルスゲノムがウシやブタから検出されおり、やや混乱しているよううだ。

ノロウィルスの遺伝子型として、G1型(Genogroup1)とG2型(Genogroup2)とG3型(Genogroup3)とG4型(Genogroup4)とG5型(Genogroup5)がある。(genogroup II (GGII)などと表記)

このうち、人間に感染するのは、G1型とG2型とG4型で、G3型は、牛にのみ、G5型は、マウスに、伝染するものとされている。

さらにアミノ酸配列にもとずく20のクラスター分類がある

これらの遺伝子型は、さらに、全体のカプシド遺伝子のなかから、少なくとも、アミノ酸配列にもとずく約20のクラスター群に分かれうる。

ノロウィルスのクラスター分類については、このサイトhttp://www.iah.bbsrc.ac.uk/virus/Caliciviridae/norovirus/Norwalk.htmに詳しい。

http://aem.asm.org/cgi/content-nw/full/65/12/5624/F2http://aem.asm.org/cgi/content-nw/full/65/12/5624/F3等によれば

G1型には、Norwalk, Southampton(SOV), Desert Shield(DSV), Queens Arms, Winchester、Saratoga,

G2型には、Hawaii, Mexico, Lordsdale, Melksham, Hillingdon, Grimsby、Bristol,Snow Mountain(SMV),Toronto、DOUG4770, 536/96/Net, JENA

G3型には、Napier,GWYNEDD,

などがある。

遺伝子型と、クラスター番号をあわせたものでは、
「Infections virales d’origine alimentaire Calicivirus humains」http://www.infectiologie.com/public/enseignement/dia-desc/2004/Infalim-lefrere-DESCMIT0504.pdfでのTamie Ando 氏(the National Centre for Infectious Diseases in Atlanta)の分類によれば、

G/1=Norwalk(NV) G/2=Southampton(SOV),  G/3=Desert Shield(DSV),  G/4=Cruise ship(CSV) G/5=(378) 

G/1=Hawaii(HV) G/2=Snow Mountain(SMV), G/3=Toronto(TV) G/4=Bristol(BV) Lordsdale,G/5=White River(WR) G/6=(269) G/7=Gwynedd(GV) G/8=(539) G/9=(378) G/10=(Yav94/UK)
となっている。

全体のノロウィルス感染発生させる菌のなかで、73パーセントが、G2型であり、26パーセントが、G1型であり、1パーセントが、新しい遺伝子グループに属するものであるとされている。

これらの遺伝子型のアミノ酸配列は、G1型とG2型とでは、お互い遠位の関係にあるとされる。

人から人への感染を繰り返す、新しいノロウィルスG/4出現の脅威

G2型のなかで、G/1,G/4,G/j 型による、老人ホームでの発生が、他の発生環境にみらべて、もっとも多いとされている。

このことは、老人が、これらG/1,G/4,G/j 型のような、特定の菌に犯されやすいということをあらわしている。

1995年から1997年にかけて、世界中の老人ホームや病院で蔓延したのも、このG/1,G/4,G/j 型のノロウィルスであったとされる。

ある研究によれば、血液型によって、その人の持つノロウィルスへのレセプターの有無が、感染に影響しているのではないかとの説もある。

たとえば、GII/4は、O型、A型、B型にレセプターをもち、G/2は、A型、B型にレセプターをもつが、O型には持たず、G/1は、O型、A型にレセプターをもつが、、B型には、持たないといった具合のようである。

これについては
Hutson AM, Atmar RL, Graham DY, Estes MK. Norwalk virus infection and disease is associated with ABO histo-blood group type. J Infect Dis 2002 185: 1335-1337.
http://www-micro.msb.le.ac.uk/3035/Caliciviruses.htmlなどをご参照。

2004年2月28日に、Lancetに発表された「Increase in viral gastroenteritis outbreaks in Europe and epidemic spread of new norovirus variant.」
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?cmd=Retrieve&db=PubMed&list_uids=15001325&dopt=Abstractという論文において、イギリスのHealth Protection AgencyのLopman B氏をはじめとする研究者たちは、2002年のイギリス、ウェールズ、ドイツ、オランダにおけるノロウィルス大発生は、ノロウィルスの新しい変異種遺伝子であるG4型が、ノロウィルス大発生の元になったとした。

このG4型ノロウィルス (GII-4またはGII/4またはGII.4 などと表記、Bristol(BV) Lordsdale ウィルス)とは、遺伝子グループ(genogroup) IIに属していて、クラスターナンバー( cluster )または、サブグループが 4 という意味である。

GII/4 は、遺伝子を形成するたんぱく質の一部が、微妙に、これまでのものと、異なっているという。

この変形によって、これまでのノロウィルスよりも、猛毒のウィルスとなっていると、研究者たちは、言っている。

ウイルスは、http://www.virology.net/Big_Virology/EM/norwalk.jpgのような形状をしており、簡単に遺伝子が変異するのが特色であるとされる。

このGII/4ウィルスが最初に発見されたのは、アメリカ・ミシガン州のFarmington Hillsであり、発見当初は、その地名にちなんで、Farmington Hills菌とよばれていた。

また、この新種のGII/4ノロウィルスは、これまでのものと異なり、発生時期が、夏であるという。

従来のノロウィルスの感染経路は、単一の変異でひとつのウィルスが生まれ、それが、ひとつの発生ポイントから、食品による (Foodborne)か、水による(Waterborne)かによって、感染拡大のルートをたどることができた。

しかし、この新種のGII/4ノロウィルスは、いくつかの種への変異を重ねながら、人から人へと、変異し、それぞれ微妙に異なったウィルスが、同時多発的に感染を拡大していくという特徴を持っている。

したがって、感染経路の特定は、不可能とのことである。

http://www.promedmail.org/pls/askus/f?p=2400:1001:10030420710140893853::NO::F2400_P1001_
BACK_PAGE,F2400_P
1001_PUB_MAIL_ID:1010,27518
に、GII/4ノロウィルスの遺伝子配列について、一般的な配列と、2002年のものと2004年のものとの違いが書かれている。

すなわち、一般的な配列と、2002年.2005年のものとが違っている配列ナンバーとしては、5.103.106番であり、一般的な配列と、2002年のもののみ違っている配列ナンバーは、137.209番であり、一般的配列と2005年のもののみ違っている配列ナンバーは、30.89.125.215.223番である。

このように、同じGII/4ノロウィルスであっても、毎年微妙に、その遺伝子配列を変えているようである。

「症状が治まっても、ウィルスは宿り続ける」という厄介さが感染を広げてしまう

ノロウィルスに汚染されたものに接触してから、発症までには、24時間から48時間かかるものとされている。

発症の症状として、50パーセントが、嘔吐の症状を見せ、この症状は、発熱の症状よりも、多く見られるという。

また、発症の時間は、24時間から48時間の間であり、それを過ぎると、症状は治まってくるという。

ここで、重要なのは、症状が治まっても、48時間以内は、ウイルス自体は、まだ、発症者から、拡大しているということである。

なお、深刻なことに、最近のレポートでは、症状が収まってから3週間もウィルスを撒いているとの説もある。
http://www.journals.uchicago.edu/cgi-bin/embpcgi.pl/cgi-bin/res-page.epl?objid=341408
http://jvi.asm.org/cgi/content/full/77/24/13117#R21

今回の老人ホームの場合、ホームの入所者と職員とが、同時感染して、職員が症状がおさまったということで、ホームの実務に復帰し、入所者へのケアを続けることで、ホーム内での感染が、なお、拡大したのではないかと思われる。

アメリカの長期療養施設での感染例実証

ここに、アメリカのひとつの例がある。
http://www.google.co.jp/search?q=cache:bwGrJoY2uEwJ:www.medscape.com/viewarticle/449025+
norovirus+activity&hl=ja

2002年のワシントン州での長期療養施設(LTCFs)でのノロウィルス感染の状況であるが、アルツハイマー症状をもつ長期療養施設と、そうでない長期療養施設を比較すると、アルツハイマー症状をもつ長期療養施設のほうが、入所者も職員も、ノロウィルスの感染率が、格段に高かったという。

また、発症の症状としては、下痢が84パーセント、吐き気が78パーセント、嘔吐が77パーセントに見られたという。

発症症状の継続期間は、49時間(最小20時間から、最大72時間)、 施設での集団感染の継続時間は、12日間(最小9日間から、最大16日間)とのことである。

それぞれの施設において、集団感染が始まる時期が異なるのは、人から人への感染があったことを示しているという。(この流行曲線を見ると、施設から施設へと、発症のピークがリレーしていく模様がよくわかる。)

患者へのウィルスの潜伏期間は、24時間から48時間であるとしている。

このことから、発症した入所者をそれぞれの個室に帰すことを制限したり、発症した職員をホームの仕事に復帰させるのに、症状回復後、48時間たってから、現場復帰させる、ということが、ウィルスコントロールの決め手になるとしている。

流行性胃腸炎(AGE)発症の主役は、ロタウィルスからノロウィルスへ

このノーウオークウイルス(または、ノロウイルス)は、世界中で発生している非細菌性の流行性胃腸炎(AGE-acute gastroenteritis)の90%以上を引き起こしているといわれ、胃腸炎(AGE)による死亡の7パーセントが、ノロウィルスによるものとされている。

ちなみに、従来考えられていたのは、、胃腸炎を起こすのは、70パーセントがロタウィルスであると思われ、その次が、アデノウイルス(15パーセント)、アストロウィルス(6パーセント)、そして、わずか3パーセントがノロウィルスによるものであると思われていた。

48時間以上、胃腸炎が続いたり、血便を伴った下痢の症状を示した場合には、ノロウィルス以外の細菌感染を疑ったほうがいいという。

これまでの食物・水経由感染から、人-人感染が、いまや主流に

ノロウイルス感染の発症過程に関してはほとんど分かっていないようだが、おおむね、次のことが考えられている。

感染様式としては、
1.牡蠣などの貝類の生食
2.調理従事者の糞便に存在するウィルスが、手指を介して食品に汚染し、それを摂取
3.人から人への感染
等が考えられている。

また、アメリカなどの感染様式の分類としては、次の5つを挙げている
1.食品を介した感染-Foodborne
2.水を介した感染-Waterborne
3.人から人への感染-Person to Person
4.糞便や嘔吐物などの汚染物質の微粒子化(aerosolized vomitus)による空気感染-Airborne particles(大気浮遊微粒子) 
5.媒介物による感染-fomites contamination

これまでのところ、泳ぐプールや地下水・井戸水の汚染によるもの、海水温度10度以下の場合の牡蠣を食した場合などに、多く発生している。

また、牡蠣を食してノロウィルスに罹る例は海外にも見られるが、このサイトhttp://www.foodsafe.ca/downloadfiles/FSArticle03Oysters.pdfにあるように、牡蠣が、水をろ過する性質を持つために、ノロウィルスに汚染された海水を牡蠣がフィルタリングすることで、牡蠣自体が、ノロウィルスに汚染されるためではないかと言われている。

さらに、汚染された水が人の手を通じて、たとえば、サラダバーなどで、人から人へ伝播することもあるという。

外国でも、老人ホームでの感染のケースが圧倒的に多いのだが、この理由として、老人は、これらのウィルスの微妙な変異にも影響を受けやすいためとしている。

また、クルージングで発生することも、謎のひとつである。

以上に見るように、感染様式の主流は、これまでの食物・水経由のものから、完全に、人-人への感染様式に、世界的に移行しているようだ。

ノロウィルス感染の有無を迅速に診断する診断キットとしては、いくつか、出されている。

SRSV()-AD「生研」http://www.denka-seiken.co.jp/japanese/pro-srsv2.htm が代表的なものであるが、 最近になって、東京大大学院医学系研究科の牛島広治教授が開発した、イムノクロマト法による簡便診断キットが注目されている。

とかく、ノロウィルスを、食中毒の症状としてのみ扱いがちな日本の現状では、根本的な解決は難しいのではなかろうか。

世界的にノロウィルス対策に取り組む時代になってきた

厄介なことに、このノロウィルスには、即効的な治療薬もワクチンもなく、休養と、整腸による体外排出と、脱水症状を改善するための水分補給と、しか方法が無いようである。

しかし、遺伝子タイプの解明が、近年、すすんできており、ワクチンの開発は、間近である。

昨年5月25日、LigoCyte Pharmaceuticals, Inc社が、ベイラー医科大学(Baylor College of Medicine )と提携し、ノロウィルスワクチンの開発と、治療方法の開発に乗り出した。
また、ワシントン大学でも、ノロウィルスワクチンの開発が進んでおり、実現が近いと伝えられている。
http://www.ligocyte.com/articleview.aspx?ID=43
http://news.bbc.co.uk/1/hi/health/4052291.stm参照

この背景には、近年、ノロウイルスの遺伝子解明が急速に進んでいることが、追い風になっている。

ノロウイルスのコントロールの上で重要なのは、老人ホームなどでの集団感染の場合、症状が治まった入所者や職員を現場復帰させるには、少なくとも、48時間以後にすることで、二次感染を防ぐことができる。

この辺のコントロール体制をまず、敷くことであろう。

(アメリカが行っているコントロール方法については、以下参考欄記載の「参考1.アメリカのコロラド公衆衛生環境局(Colorado Department of Public Health and Environment)作成の、長期滞在型ケア施設での集団感染についての調査と管理のマニュアル」(INVESTIGAINVESTIGATION AND MANAGEMENT OF NOROVIRUS OUTBREAKS IN LONG TERM CARE FACILITIES)http://www.cdphe.state.co.us/hf/download/Norovirus_guidelines.pdfのさわり部分を概訳してあるのでご参照ください。

また、http://www.show.scot.nhs.uk/scieh/documents/NV_Guide/NV_Guide.pdf は、スコットランドのNHSが作成した「観光業・旅行者のためのノロウィルス集団感染発症確認・管理マニュアル」(The Identification and Management of Outbreaks of Norovirus Infection in Tourists and Leisure Industry Settings Guide for NHS Boards and Local Authorities )です。
感染管理のための書式集などが整っており、参考になります。)

さらには、ウイルスの遺伝子タイプの早期確定の必要と、ウイルス遺伝子タイプのデーダベースの構築の必要性である。

ノロウイルスの発生シーズンにおいては、各国とも、同じタイプのウィルスが、同時発生する傾向が、近年強まってきている。

しかも、これらは、人から人へと感染を繰り返しやすい新種の変異タイプのGII/4ノロウィルスである場合が多くなってきた。

これらのウィルスは、約5年ごとに、これまでのタイプを変えて、世界中に蔓延する傾向になってきている。

したがって、これまでは、他のウィルスに比してとかく軽視されがちだったノロウィルスについても、世界的な取り組みを必要とする時代になってきたようだ。

以上

参考1-1.アメリカのコロラド公衆衛生環境局作成の、長期滞在型ケア施設でのノロウィルス集団感染についての調査と管理のマニュアル

http://www.cdphe.state.co.us/dc/epidemiology/Norovirus_guidelines.pdf
http://www.cdphe.state.co.us/hf/download/norovirusguidelines.pdf
による。

手順

1.まず施設に、感染性胃炎患者はいないかとたずねる。
2.いた場合、それは、集団感染かどうか-報告された患者数によって判断。
3.集団感染と判断される場合、予備的調査を開始-
調査内容は、入所者の発症者数、職員の発症者数、施設内発症開始の日時、症状、発症期間、施設内での発症の分布、入院者と死者の数。流行曲線(Epi−curve)
これらによって、
感染疑い(suspect)(症状は、ノロウィルスのものに近似しているが、検便検体が採取されておらず、便の検査は、病原菌のみで、ノロウィルス検査の結果がまだ出ていない場合。)なのか、
感染確認(confirmed)(症状が、ノロウィルスのものと一致しており、ノロウィルスの検査結果が、少なくとも、その施設内で、二人以上、陽性であった場合。)か

を判断する。
(なお、感染疑い(suspect)にカウントする患者は、次の定義によるものとする。
1.入所者と職員のなかで、嘔吐または下痢をしたものであって、その下痢とは、24時間以内に二回以上、軟便をしたものをさす。
また、それらの症状の始まりが、一定の日付から始まっており、その症状の原因が、ほかに見当たらないこと。)

これらの調査を元に、さらに
コモンソース(common source ourbreak または、point source outbreak 発生のルートが、食や水関連の点的なもの)か、
人から人への感染(person-to-person outbreaks または、propagated outbresks)なのか。

を判断。

4.コモンソース(発生のルートが、食や水関連の点的なもの)の場合(流行曲線が右肩下がり)
感染拡大が、急上昇だったか?
発症原因となる水や食物が特定できたか?
出血を伴う下痢であったり、高熱であったり、2-3日以上、症状改善が見られなかったり、複数の病院に入院していた患者死者であったり、するなど、ノロウィルスの症状とは異なる症状をみせていたか?

を確認したうえで、総合的な疫学的調査を要請

5.人から人への感染の場合(流行曲線が右肩上がり)
個々の患者の発症開始日時が、ここ数日にわたっていたか?
症状が、ノロウィルスの症状(血を伴わない下痢、嘔吐、低熱、症状が1-2日でおさまる。)と一致していたか?

を確認したうえで、発症者一覧(ラインリスト)を作成し、新発症者が出たら、これに加えていく。
施設側が、コントロール手段を徹底的に実施するように、監視し、同時に、集団感染の広がり状況を追跡。
集団感染が広がらず、終局した場合に、施設側から報告書提出要求。

参考1-2.アメリカのコロラド公衆衛生環境局作成の、長期滞在型施設でのノロウィルス集団感染についての調査と管理のマニュアル

http://www.cdphe.state.co.us/hf/download/Norovirus_guidelines.pdfによる。

感染管理の方法と手順

入所者
ノロウィルス感染の症状を見せた入所者は、感染管理の担当者に報告されなければならない。そして、その後、その入所者の 名前、性別、年齢、発症の日時、症状、ルームナンバー、入居の号棟、入院状態、、発症の期間、検便検体などをラインリストに記録しなければならない。
発症した入所者は、接触予防措置がとられるべきであり、下痢と嘔吐がおさまった後、すくなくとも2日間は、できるだけ。個室にとどまってもらう。
入所者の間でのグループ活動は、集団感染が終わるまでは、控えるべきである。
職員は、発症した入所者の孤独感を癒すように努力すべきである。
その入所者の家族に対しても、もっと頻繁に、家族から入所者に電話をかけるように薦めるなどの配慮をすべきである。
入所者は、感染エリアから非感染エリアへの移動はすべきでない。
職員の担当棟の割り当ては、感染以前と同じ割り当てを維持すべきである。
嘔吐する入所者に対しては、嘔吐抑制剤の使用を考えるべきである。
もし、入所者が、病院に移転する場合には、その病院に対して、「この患者は、感染性胃腸炎の集団感染が発生している施設からきたものである」ことを、注記すべきである。

施設
施設側は、地域の公衆衛生当局と協力し、集団感染が終息するまで、新規入所者の受け入れを控えるべきである。
その新規入所者受け入れ抑制期間は、少なくとも、新規発症者がいなくなって、ニ潜伏期間が経過しなければならない。
掃除と、消毒は、集団感染以前よりも、より頻繁にやらなければならない。
特に、浴室、浴槽、トイレの掃除、手すりやドアノブなど、入所者が頻繁にさわる設備については、より丹念にすべきである。
その場合の消毒液としては、家庭用の塩素漂白剤の10%溶液(一カップの漂白剤を九カップの水で薄めたもの)または、病院で使う消毒液が望ましい。
血圧計など、一般的な医療機器についても、十分に清掃し、消毒しなければならない。もし、できれば、血圧計など、頻繁に使用する機器については、感染エリア専用のものを備えたほうがいい。
大便や嘔吐物で汚染されたエリアは、病院用の消毒液や漂白溶液で、敏速に消毒されなけれはならない。
トイレの嘔吐物や便は、直ちにフラッシュしなければならない。
発症した入所者が触った食品は、適切に廃棄しなければならない。
汚れたリネンや衣類は、できるだけ処理しなければならない。
これらを洗濯機にかける場合は、洗濯機が可能な限りの長時間で、熱水で洗剤を溶かして洗濯し、乾燥機にかけなければならない。
病原体を効果的に取り除く通常の食器洗い機があれば、特に、使い捨ての皿や用具を使用する必要はない。
この施設が、感染性胃腸炎発症増加をしたことがある施設であることを、外部に告知しなければならない。

訪問者とボランティア
年配のかたや子供、そして、治療中の人の、施設への訪問は、集団感染が終息した後に、延期すべきである。
訪問者やボランティアに対しては、手洗いを励行させるようにする。
症候を示している家族や友人は、症候が納まるまで、訪問を避けるように頼み込む。
施設のボランティアについては、症状をモニターし、もし発症していれば、回復から少なくとも2日間は、ボランティアの仕事からはずす。

以上

参考1.老人施設での多数死亡事例(毎日新聞1月8日号より引用)

●98年2〜3月 東京都・三宅島の特養ホームでインフルエンザの13人が死亡
●99年1〜2月 岐阜県大和町の特養ホームで60〜97歳の10人が肺炎や気管支炎などで死亡
●00年1月 青森県西部の3特養ホームで男女8人、北海道秩父別町の特養ホームで5人がインフルエンザの疑いで死亡
●01年8月 病原性大腸菌O157集団食中毒で埼玉県岩槻市の特養ホームの女性2人が死亡
●02年8月 宇都宮市の老人保健施設で9人がO157食中毒で死亡
●03年1月、長野県松本市の特養ホームで7人(70〜91歳)が肺炎で死亡。
●04年12月末〜05年1月5日 広島県福山市の特養ホームで81〜91歳の6人が死亡

参考2.ノロウィルスの統計

1)食中毒統計
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/index.html
医師の届出によって保健所が検査し、厚生労働省にウイルス性 食中毒として報告され集計
ノロウィルスは「小型球形ウイルスによる食中毒」分類に入る。
ノロウィルスによる集団食中毒実績は、
     平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年
事件数(件) 123    116    245    269  268
患者数(名) 5,213  5,217   8,080   7,358  7,961

2)感染症発生動向調査(週報)
http://idsc.nih.go.jp/idwr/冬季の感染性胃腸炎関連ウイルスとして集計。主に散発の感染性 胃腸炎患者数

3)病原微生物検出情報(月報)
http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html
地方衛生研究所で検査され、 ノロウイルスであることが確認されたものが集計。

2006/12/14追記 ノロウイルスのワクチン開発について。

日本列島に猛威をふるっているノロウイルスだが、上記に書いたように、現状では、このノロウイルスに対するワクチンは、ない。

しかし、 LigoCyte Pharmaceuticals, Inc.という会社で、現在ワクチンを開発済みで、FDAの認可取得に向けての各種検査をしている段階のようだ。

このLigoCyte 社で開発のワクチンは、粘膜ワクチンといわれるもので、乾燥した白い粉を鼻腔内に吸い込むもののようである。

このワクチンは、ウイルス状粒子(VLP)をプラットフォームにしたもので、転写の遺伝子物質を取り除いたものであり、また、鼻でのデリバリーを最大限にしうる、また、ワクチンの防護効果を果たしうるアジユバントを含んだものであるという。

LigoCyte 社は、現在、このノロウイルスVLPワクチンについて、9つのパテントをとっており、このワクチンについてのcGMP(現行医薬品の製造管理及び品質管理に関する基準)準拠テストと、GLP(毒性試験実施に関する基準)準拠毒性テストを行っており、2007年の第二四半期には、フェーズ1のセーフトライアルを実施する計画であるという。

このフェーズ1のセーフトライアルにおいては、健康なボランティアによるワクチンの安全性評価テストと、免疫原性(免疫反応を起こす抗原性)評価テストを行うという。
参照「Norovirus Vaccine Program

2006/12/18追記 ノロウイルスの空気感染について。

テレビでのコメンテイターたちのなかにも、この点については、まだ、誤解があるようなのが、ノロウイルスの空気感染についてである。

私のブログにも以前書いたように、ノロウイルス患者たちの糞便や嘔吐物などの汚染物質が微粒子化(aerosolized vomitus)して、大気浮遊微粒子(Airborne particles)となり、エアコンなどがおこす対流に舞って、空気感染するというのが、ノロウイルスのヒト→ヒト感染の大きな要因となっている。

このサイト「Evidence for airborne transmission of Norwalk-like virus (NLV) in a hotel restaurant. Epidemiol Infect 2000」(by Marks PJ, Vipond IB, Carlisle D, Deekin D, Fey RE, Caul EO.)(Epidemiology and Infection (2000), 124:p.481-487.)は、その辺の分析を克明にしているようだ。

これは、イギリスのホテルのレストランでの発症例で、一人の客が嘔吐し、集団発症したのだが、発症者のテーブルごとの発症率を調査したところ、最初の嘔吐者のテーブルに近いテーブルほど、発症率が大きかったということで、嘔吐物などの汚染物質が微粒子化(aerosolized vomitus)して空気感染したと分析している。

2006/12/18 追記 ノロウイルスのGII/4変異株は、なぜ、毒性が強いのか?

結論から言うと、まだわかっていないということになるらしい。

GII.4遺伝子配列から見ると、22のカプシドたんぱく質(capsid protein)配列に変異が見られるようで、ORF1(オープンリーディングフレーム= 開始コドンから終止コドンまでの遺伝子の読み枠)配列(非構造蛋白をコード)のC領域末端(the C-terminal end of ORF1 )から、 ORF2 配列(660アミノ酸の構造蛋白をコード)のN領域(the N-terminal region of ORF2 )にかけてエンコードされたVP1(大きなカプシドたんぱく質)とVP2(小さなカプシドたんぱく質)のうち、この両者がオーバーラップ(塩基重複)しているジャンクション部分における変異に、大きななぞがあるとしている。

つまり、遺伝子組換えがORF1/ORF2オーバーラップ領域でおこっていることに、毒性の強いことへの何らかの関係があるのではないか、ということである。

なお、ノロウイルスのデータベースとしては、「The UK National Database for Norwalk-like viruses (NLVs)」がある。

参照「Emergence of a New Norovirus Genotype II.4 Variant Associated with Global Outbreaks of Gastroenteritis

参考 GII/4の遺伝子配列の例

VIRAL GASTROENTERITIS UPDATE 2004 (36)」
より
(不一致があるのは、5.30.89.103.116.125.137.209.210.215.223各番目)

10 20 30 40
GGII4 cons CAGCCCTAGA AATCATGGTT AAATTCTCCT CAGAACCACA
GGII4 2002 CAGCTCTAGA AATCATGGTT AAATTCTCCT CAGAACCACA
GGII4 2004 CAGCTCTAGA AATCATGGTT AAATTCTCCC CAGAACCACA
50 60 70 80
GGII4 cons TTTGGCTCAG GTAGTCGCAG AAGACCTTCT TTCTCCTAGC
GGII4 2002 TTTGGCTCAG GTAGTCGCAG AAGACCTTCT TTCTCCTAGC
GGII4 2004 TTTGGCTCAG GTAGTCGCAG AAGACCTTCT TTCTCCTAGC
90 100 110 120
GGII4 cons GTGGTGGATG TGGGTGACTT CAAAATATCA ATCAATGAGG
GGII4 2002 GTGGTGGATG TGGGTGACTT CACAATATCA ATCAACGAGG
GGII4 2004 GTGGTGGACG TGGGTGACTT CACAATATCA ATCAACGAGG
130 140 150 160
GGII4 cons GTCTCCCCTC TGGGGTGCCC TGCACCTCCC AATGGAACTC
GGII4 2002 GTCTCCCCTC TGGGGTACCC TGCACCTCCC AATGGAACTC
GGII4 2004 GTCTTCCCTC TGGGGTGCCC TGCACCTCCC AATGGAACTC
170 180 190 200
GGII4 cons CATCGCCCAC TGGCTTCTCA CTCTCTGTGC GCTCTCTGAA
GGII4 2002 CATCGCCCAC TGGCTTCTCA CTCTCTGTGC GCTCTCTGAA
GGII4 2004 CATCGCCCAC TGGCTTCTCA CTCTCTGTGC GCTCTCTGAA
210 220 230 240
GGII4 cons GTTACAAACT TGTCCCCTGA CATCATACAG GCTAATTCCC
GGII4 2002 GTTACAAATC TGTCCCCTGA CATCATACAG GCTAATTCCC
GGII4 2004 GTTACAAACT TGTCTCCTGA CACCATACAG GCTAATTCCC

2006/12/19追記  ノロウイルスの検査方法の一長一短

ノロウイルスの検査方法としては、ELISA法(酵素免疫定量法)によるものと、RT-PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)法によるもの、その一部としての遺伝子増幅法(核酸増幅方法-nucleic acid amplification method-)をもちいたもの、
がある。

ELISA( enzyme-linked immunosorbent assay)法を 利用した検査方法としては、NV-AD「生研」(日本のデンカ生研(株))、IDEIA(イディア)NLV kit(イギリスのDako diagnostics Ltd社)、RIDASCREEN Norovirus( ドイツ R-Biopharm社)がある。

このうち、 NV-AD「生研」とIDEIA(イディア)NLV kitとを比較してみると、

NV-AD「生研」-高感度、特異度(陰性識別の度合い)は劣る。G機G兇箸慮鮑紅娠性あり(偽陽性を示す可能性がある。)。サポウイルスとの交差反応性あり。

IDEIA(イディア)NLV kit-低感度、特異度(陰性識別の度合い)100パーセント(交差反応性なし。)、G機G狭蓋兇箸亮永未できる。

という結果となり、以上のことから、NV-AD「生研」も、IDEIA(イディア)NLV kitも、RT-PCR法に取って代わることはできない。

しかし、この正確なRT-PCR法も、検査開始から反応が出るまでに約6時間かかるのが難点となっている。

nRT-PCR(a nested reverse transcription-PCR ) (逆転写・入れ子式ポリメラーゼ連鎖反応 )法は、 GII検出のために作られており、検出率は、100パーセントである。

NV2oF2 と NV2oRは、以前のセットであるG2F3 と G2SKR とともに使うように、設計されている。

遺伝子増幅法を用いた診断キットとしては
栄研化学社「LoopampノロウイルスG妓―仍醋凜ット」
「Loopamp ノロウイルス G狂―仍醋凜ット」
(Loop-Mediated Isothermal Amplification )(こちらのサイトもご参照)
などがある。

12月14日から発売で話題の島津製作所の「アンプダイレクト・テクノロジー・ノロウイルスG1検出試薬キット/同G2検出試薬キット」(糞便直接RT-PCR法)(こちらの英語サイトもご参照)も、この遺伝子増幅法を用いた診断キットである。

約3時間で反応が出て、報告まで約1週間と従来のPCR法の半分に短縮でき、1度に30人分(全自動の検便塗布装置では、1時間に約300人分を処理)を検査でき、また、検体あたりのコストも安い(島津製作所のもので48検体65000円、妓‖里△燭1400円程度)ようだ。

参考
Evaluation and Comparison of Two Commercial Enzyme-Linked Immunosorbent Assay Kits for Detection of Antigenically Diverse Human Noroviruses in Stool Samples
Emergence of a New Norovirus Genotype II.4 Variant Associated with Global Outbreaks of Gastroenteritis

2006/12/28 追記 航空機でのノロウイルス対策について

国土交通省は 殺菌に有効な塩素系漂白・除菌剤の航空機への持ち込みを認める通知を航空業界団体に 出し、これを受けて全日空は27日、日本航空も26日から機内に塩素系漂白剤を積み込み、 今後は、ノロウイルスの感染 のおそれがある際は、客室乗務員が運航中に処理する時点で薄めた塩素系漂白剤を使うという。

ノロウイルスは、通常、クルージングの長期航海などで、なぞの病気として発生していることで有名であるが、航空機での発生は、まれ、とされている。

しかし、このサイト『Norovirus decimates crew on international flight』にあるように、

2002年に、ロンドン-フィラデルフィア間の飛行機で、14人の航空乗務員のうち8人が、下痢症状を起こしたため、これらの8人は、業務から解放し、飛行機の後ろの座席に座らせて、感染拡大を防ぎ、その後、8時間のフライトを続けたとされていう。

着陸後、二人は、入院し、ノロウイルスとわかったようだ。

その飛行機の乗客194人についてアンケート調査したところ、全体の5.4パーセントが、18時間後から60時間後の間に、ノロウイルスの症状を見たという。

調査では、この感染拡大の原因として、乗務員も乗客も共同につかう飛行機のトイレが原因だとしている。

以上

後記
ノロウイルスについては、同じ私のブログ「感染症としてのノロウイルス対策が必要な時。」もご参照


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