消費者は、何も、日用品をスーパーで買う消費者ばかりではない。
金融機関に金を預け、融資というイーブンのサービスを利用する顧客も、消費者である。
これを「金融消費者」と名づけるとすれば、りっばに、金融消費者は、金融機関に物申す資格が十二分すぎるほどあるはずである。
しかし、そのような「金融消費者」の権利は、守られているとはいえないのが現状だ。
一昨日の三菱UFJ証券の部長代理による顧客名簿の横流し事件は、まさに、その極たるものだろう。
「金融消費者」の権利は、ここでも踏みにじられている。
また、昨年のリーマン・ショック以降、ちょっとした富裕層があつまれば、必ず出るのが、銀行の言われるままに投資信託・仕組み債を買わされ、挙句の果ては、大幅な目べり・含み損を余儀なくされた彼らの嘆き節である。
食品でいえば、中国製毒入れ餃子を買わされた生活用品消費者とかわりはない。
これらの目減りは、自己責任という免責条項からは、かなり程遠い、詐欺的行為に近い金融機関共犯のもとでの「金融消費者」に対する損失転嫁である。
では、借入者の立場での金融消費者への権利侵害の実態はどうだろう。
金融機関は、サービサーに債権譲渡をするが、その売却債権の仕入れ値は、一切、金融消費者たる債務者には、明らかにされていない。
100あった債権価値が、その1割の十でサービサーが仕入れたとしても、債務者への免責は、考慮されないばかりでなく、その仕入額の公表もされていない。
いっぽうのサービサーに債権譲渡したもともとの金融機関は、損きりによって、税効果会計による税制上の恩典を受けることが出来る。
そればかりでなく、高利の還付金利子が付いた還付金返還のメリットも味わえる。
こればどうみても、弱い金融消費者に対するドミノ的転嫁である。
質流れの商品をまともな新品の値段で返金してくれと、金融消費者にゴネ、迫っているのと同じ事態である。
リーマン以降の金融機関に対する公的支援の拡大によって、金融機関に対する公的免責は拡大しても、末端の金融消費者に対する恩典は、届かないばかりか、むしろ、公的支援をうけたことで、玉突き衝突的に、末端の金融消費者に対する風当たりは、ますます強くなっている、というのが現状である。
貧しい人々が金融サービスから排除される金融排除は、日本のいたるところに起きている。
ブラックスワンの著者で有名なナッシム・タレブ氏は、フアイナンシャルタイムズの2009年4月7日号の「Ten principles for a Black Swan-proof world」というコラムのなかで、次のような辛らつなことを言っている。
すなわち、
「これまで目を隠してスクールバスを運転してきたものへ、再度、スクールバスの運転を許してはならない。」
として、これまでの金融資本の運営者への社会責任からの自粛を求めたたうえで、
「たとえ、痛み止めにしても、これ以上、彼らに麻薬を与える必要はない。」
として、これ以上のモラルハザードを招きかねない公的資金注入の抑制を訴え、さらに、
「市民は、金融のエキスパートの助言に頼るべきではない。」
とし、
「壊れてしまった卵でオムレツを作るように、これまでの資本主義のスキームの立て直しを図るのではなく、資本主義バージョン2.0としての新しいスキームの元で、金融資本主義の立て直しを図らなければならない。」
との趣旨のコメントを寄せている。
このナッシム・タレブ氏のコメントに沿うとすれば、いまこそ、金融消費者は、自らの持つ金融機関に対する権利に目覚め、対等なウィンウィンの関係構築のための主張をするべき時にきていると思われる。
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